『 第20回 台湾撮影旅行記 』

2018年11月1日〜11月9日

..・・・・・ 秋に見られる蝶たちの動く写真を作るために ・・・・・..

       杉 坂 美 典..........
● プロローグ
 今回の遠征は、初めて11月という秋に台湾を訪問し、珍蝶だけでなく、できるだけ多くの種を動く写真に加工したいと考えている。特に、台湾が保護している5種類の蝶の中で、唯一、動画が撮れていないキシタアゲハを撮りたいと思う。さて、どうなるであろうか。

● 11月1日  桃園→高雄 曇り時々晴れ
 予定通り、桃園国際空港に着くことができた。そして、MRTで新幹線の桃園站に着き、午後3時45分には左営站に着くことができた。
 さっそく荷物をコインロッカーに預け、激減しているタイワンヒメシジミのポイントへ向かった。しかし、時間帯が遅いのか全く見つけることができなかった。ヒメシルビアシジミ、ウラナミシジミは撮影することができた。
 しばらくすると、日が落ち始め、小雨が降り始めたので、ホテルへ行くことにした。
 明日は、高雄市の東部にある大東湿地公園へ行く予定である。

● 11月2日  高雄 曇り時々晴れ
 ホテルを8時に出発し、大東湿地公園に向かった。MRTで美麗島站まで行き、そこから乗り換えて大東站で降りた時は9時であった。公園は、站の隣にあるので、すぐに分かった。
 公園では、多くの人が太極拳をやっていた。所々にランタナの花壇があり、ホリイコシジミが飛んでおり、動いている様子を撮影することができた。しかし、林になっている場所は、工事をやっており、高いフェンスで囲まれていて入ることができなかった。そこで、フェンス沿いに歩いていくと、公園の東の端に着いた。すると、多数のシロチョウが飛んでいるのが見えた。近づいてみると、何と、ヤエヤマシロチョウであった。羽化したばかりの個体が多く、吸蜜の様子を撮影する事ができた。

 そして、フェンスの北側に沿って歩いて行った。すると、足元に小型のシジミチョウがたくさん飛んでいた。撮影するとヒメシルビアシジミであった。ヤマトシジミもいて、翅を動かして休んでいる様子を撮影することができた。クロテンシロチョウ、ウラベニヒョウモンもいたが、止まらないので撮影は難しかった。
 次に向かったのは、昨日、撮影できなかったタイワンヒメシジミのポインである。
 MRTの左営站に着くと、さっそくポイントに向かった。公園に着くと、まず現れたのは、ウスアオオナガウラナミシジミであった。これまで台湾の限られた場所で数頭しか見られなかったが、ここでは数百頭が乱舞している。ウラナミシジミも多く、ルリウラナミシジミ、ホリイコシジミも時々現れた。ヒメウラナミシジミは少なかった。
 花がある場所では、ウスキシロチョウがいて、ウラナミシロチョウも現れ、吸蜜の様子を撮影することができた。
 さらに先に進み、オジギソウが生えている場所に着いた。ヒメシルビアシジミ、ヤマトシジミがいた。すると、小さな黒いチョウが現れた。タイワンヒメシジミだ! 翅を動かしている写真も撮ることができた。しかし、1頭しか見つから なかった。以前は、数十頭が乱舞しており、発生期の問題なのか、発生数が減っているのかは分からない。
 今日だけで4000枚を超える枚数の撮影ができ、これでホテルに帰ることにした。明日は、社頂自然公園へ行く予定である。

● 11月3日  高雄→墾丁・社頂自然公園  晴れ
 ホテルを7時30分に出発し、MRTで左営站に行き、そこから出る高速バスで墾丁の小弯に向かった。バス代は、往復で600元であった。
 2時間10分かかり、終点の小弯のバス停に着いた。帰りのバス停は、道の反対側にあった。帰りは、午後2時半のバスに乗る予定である。高速バスは、30分おきに出るので、心配はない。
 目的地の社頂自然公園までは、タクシーを使うしかない。そこで、周りを見渡すと、少し先にタクシーが止まっているのが見えた。近寄ってみると、運転手が乗っていない。でも、車を磨いていた女性がいたので、社頂自然公園まで行きたいというと、OKと言い、運転手を呼んできてくれた。そして、タクシーの運転手に、午後2時に迎えに来てほしいことを伝えると、了解してくれた。
 タクシー代の片道200元は、5年前と同じであった。15分間で社頂自然公園に着き、時計を見ると11時15分であった。撮影時間は、2時間半程度で、引き返す時間を午後1時20分とした。

 公園の奥へ続く道を進むと、ジャノメタテハモドキが現れ、次に姿を見せたのは、何と、キシタアゲハであった。綺麗な♂が悠然と上空を飛び去っていった。写真は撮れなかったが、今回の目標の一つは、キシタアゲハの動画を作れる写真を連写することなので、この時期にキシタアゲハが発生していることが分かってほっとした。
 さらに道を進むと、シロオビアゲハ、オオゴマダラ、タイワンアオバセセリ、クモガタシロチョウ、キオビコノハなどが現れ、連写することができた。しかし、キシタアゲハはいなかった。そこで、二股になっているポイントBが、キシタアゲハが最もよく現れる場所なので、しばらく待つことにした。でも、現れなかった。仕方なしに、ポイントCに向かった。タイワンイチモンジ、ヤエヤマイチモンジ、ルリマダラなどが現れたが、キシタアゲハはいなかった。そこで、ポイントBまで戻り、ポイントDからEを探すことにした。Dでは、たくさんのオオゴマダラ、リュウキュウアサギマダラ、ウスコモンアサギマダラなどがいた。ポイントEまで着いた。しかし、大したものはいないと思った瞬間、ジャングルの上空からキシタアゲハの♂が現れた。そして、ランタナの花に止まって吸蜜を始めたではないか! 細かく翅を動かし、次々と花から花を飛び回っている。たくさんの連続写真を撮ることができた。最高である! キシタアゲハは、しばらく吸蜜していたが、やがて、ジャングルの奥へ飛び去っていった。本当に幸運であった。
 その後は、タクシーが迎えに来る時間が40分後に迫っていたので、来た道を帰った。カワカミシロチョウ、タイワンシロチョウを撮影する事ができた。
 タクシーは時間通りにやってきた。そして、午後2時15分には、バス停に着くことができた。すると、すぐにバスの前面に高雄と表示したバスがやってきた。少し早いなと思ったが、運転手に聞くと、高雄に行くというので乗り込んだ。バスが走り出して分かったのであるが、高速バスではなく各駅停車のバスであった。しかし、乗客があまりいなく、順調に進み、しかも、高速バスでは行かない高雄站に行くことが分かった。つまり、MRTを使わなくてもホテルへ帰れることが分かった。そして、バスを間違えたのが幸運で、午後4時30分には、無事、ホテルに着くことができた。今日は、5000枚を超える撮影ができ、充実した1日であった。
 明日は、埔里へ移動する日であるが、午前中は、左営站の北側の山の周辺で撮影を行う予定である。

● 11月4日  高雄→左営→高雄→埔里  うす曇りのち晴れ
 今日は、午前中は左営站付近を探索し、その後、高雄のホテルに戻ってチェックアウトし、埔里に向かうことにした。
 ホテルを7時30分に出発し、MRTで左営站に行き、タイワンヒメシジミがいる公園を探索した。ヤエヤマシロチョウ、ヒメシルビアシジミを撮影し、ウスアオオナガウラナミシジミを連写することができた。そして、タイワンヒメシジミのポイントへ行くと、1頭、ようやく見つけることができ、翅を動かす様子を連写することができた。
 その後は、左営站に戻り、北側の山に行くことにした。

 山は、かなり大きく、着くまで10分ほどかかった。カクモンシジミを連写でき、ウスキシロチョウの♀が吸蜜する様子を連写することができた。しかし、山の道は木道になっていて、何もいなかった。山の奥には、池があり、道が池を取り巻くようについていたので、面白そうであったが、時間がなかったので行くことができなかった。
 その後は、左営站に戻り、高雄のホテルを11時半にチェックアウトし、午後3時には、無事、埔里に着くことができた。
 明日は、本部渓に行く予定である。

● 11月5日  本部渓  快晴
 6時30分に朝食のビュッフェが始まり、7時前には、部屋に戻ったが、本部渓は、南北に渓谷があるため、朝日が射しこみにくく、気温が上がりにくい。そこで、8時35分のバスで向かうことにした。
 バスは、予定通りにやってきて、9時には本部渓に着くことができた。
 橋の周辺では、トビイロセセリ、タイワンミスジ、タイワンイチモンジ、ツマベニチョウなどを連写することができた。人家を過ぎた場所では、ルリタテハ、アカボシゴマダラを連写でき、キゴマダの♂♀を連写できたのは久しぶりであった。撮影にかなり時間がかかり、山に登る道で引き返したが、帰り道では、タイワンカラスアゲハ、オナシモンキアゲハ、ホリシャミスジなどを連写することができた。

 秋の本部渓は、これまでの春や夏とは違い、アゲハチョウ類が少なく、シジミチョウ類が多かった。午後2時40分のバスで埔里に向かった。
 埔里には、3時に着くことができた。すると、タクシーの運転手が、にこにこしながら手を振ってくれた。何と、夏に碧緑や屯原に行くのに何回も使ったタクシーの運転手であった。再会できたのは、本当に幸運であり、先回のお礼を言うことができた。
 ホテルへ帰って、撮った写真のデータを確認すると、今日だけで、11300枚、45種類以上、200本以上の動画用連写ができたことが分かった。編集するのに数か月はかかりそうであるが楽しみである。
 明日は、ナールー湾、青青草原、本部渓へ行く予定である。

● 11月6日  ナールー湾、青青草原、本部渓  快晴
 7時10分に翠峰行きのバスに乗り、ナールー湾には、8時30分には着くことができた。
 道を進むと、モンキチョウが現れた。♂♀とも連写することができた。さらに、撮影はできなかったが、アケボノアゲハ♂♀が現れ、ホッポアゲハの綺麗な♂を確認することができた。ヒメアカタテハ、オジロヒカゲを撮影することができた。その後は、青青草原の横の道に行くことにした。
 道の奥のタンクがある場所に着くと、かなり痛んでいたが、ミヤマヒカゲを撮影することができた。そして、バスが来る時間になったので、バス停に向かった。バス停で待っていると、すぐ横の草むらに、小さなシジミチョウが吸蜜に来ているのを見つけた。よく見ると、何と、新記録種のムシャクロツバメシジミではないか! 急いで閉まってあったカメラを取り出し、連写することができた。ムシャクロツバメシジミは、数分間は吸蜜していたが、その後は森林の上空へ飛び去っていった。本当に幸運であった。
 本部渓では、コモンタイマイ、トビイロセセリ、クロセセリ、アオスジアゲハ、カバマダラなどを連写でき、小型のタイワンビロウドセセリも連写することができ、今日も、6000枚を超える撮影ができた。
 明日は、台北へ移動である。

● 11月7日  埔里→台北  晴れ
 9時のバスで埔里から台中に移動し、新幹線で台北に移動した。チェックインまで時間があったので、今日は、休養日にし、台北市内を探索した。明日は、剣南蝶園へ行く予定である。

● 11月8日  台北  晴れ
 8時過ぎにホテルを出て、MRTを乗り継いで、剣南路站に着いた。そして、剣南蝶園に入った。
 
 最初に現れたのは、オオルリモンアゲハであった。しかし、撮影はできなかった。次に現れたのは、ヒメウラボシシジミで、連写することができた。階段を上り、センダングサが群生する場所に着いた。そこには、クロボシセセリ、シロウラナミシジミがいて、連写できた。さらに、上の林に行くと、何と、バナナセセリがバナナの木の葉に止まっているではないか!何とか、連写することができた。その傍のでは、イワカワシジミ、タイワンジャコウアゲハ、タイワンキマダラを連写できた。そこで、さらに道を登っていくと、路上に、トガリワモンが止まっていた。近づくとパッと飛び立ったが、後をついていくと、独特な動きで地上を飛び回る様子を撮影することができた。
 昼近くになったので、山を下り、台北市立動物園の虫虫探索谷に行くことにした。
 MRTの終点にある動物園站に着いたのは、午後1時であった。
 園内の入ると、急いで虫虫探索谷に向かった。谷の入口では、ホリシャルリマダラ、ツマムラサキマダラ、リュウキュウアサギマダラ、ヒメアサギマダラを連写することができた。谷を進むと、コノハチョウ、オオゴマダラ、クラルシジミを連写することができ、これで今回の台湾での撮影を終えた。

● 11月9日  台北→日本  曇り
 午前中は、データの整理をし、11時30分にホテルをチェックアウトし、午後3時25分の便で帰国した。

● エピローグ
 今回の訪台は、秋のため、あまり大したチョウは撮影できないのではないかと予想していたが、ヤエヤマシロチョウ、タイワンヒメシジミを高雄市内で見ることができ、今回の目的の1つであったキシタアゲハを連写することができたことは、本当に幸運であった。中部山岳では、新記録種のムシャクロツバメシジミを連写でき、珍蝶のミヤマヒカゲを撮影でき、モンキチョウ、ヒメアカタテハも連写できた。台北では、バナナセセリ、トガリワモン、コノハチョウなどを連写することができた。
 結局、今回の訪台は、天候に恵まれ、撮影枚数は、3万3千枚をチョウえ、数百本の動画を作れる写真の撮影ができた。これらを動く写真に加工するのは、おそらく半年はかかるだろう。来年の7月には、碧緑だけでなく、これまでに行ったことがない南東部の山岳地帯を探索したいと考えている。




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