『 第22回 台湾撮影旅行記 』

2019年7月8日〜25日
初夏の台湾をぐるり一周して珍蝶を探す
・・・ 204kmを歩いてめぐり会えた珍蝶たち ・・・
       杉 坂 美 典..........
● プロローグ
 今回の目的地は、中部山岳の碧緑と南部の玉山の南東部、高雄の東部の山岳地帯である。
碧緑は、神木の農園には、道路工事のため入れないことが分かっているので、神木までの道沿いでポイントを探すことになる。つまり、すべて歩いての探索となる。宿の果樹園から神木までは、片道5q。さらに他を探索するので、毎日13q前後は歩くことになりそうである。台湾最高峰の玉山の南部、池上地区、知本へも足を延ばす。その後、太魯閣から碧緑までのルートを数か所探索し、再度、碧緑に滞在する。つまり昨年同様、碧緑には、時期をずらして2回滞在し、その後は、高雄市の周辺を探索する。さて、どのような旅になるであろうか。

● 7月8日(月) 桃園空港→台北站→花蓮站→碧緑  曇り
 予定通りに桃園国際空港に着くことができた。入国審査票は、出発前にネットでアクセスし、記入しておいたので、パスポートを提示するだけで入国できた。しかし、ここからはこれまでと違い、移動が不便な台湾の東海岸を列車で南下するので不安がある。
 台北からの列車の切符は、当日では、売り切れていて買えないことが多いので、2週間前からネットで購入し、引換券を入手している。後は、発車の30分前までに、本物の切符と交換してもらえばよいので楽である。今回は,東海岸で4回、列車に乗るが、本日,全ての切符を入手することができた。
 台北站から花蓮站まで、高速列車で行き、そこからはタクシーで、1時間50分で、目的地の慈恩・何家果樹には、20時40分には着くことができた。西海岸を南下して、埔里を経由する経路では、埔里で1泊する必要があるが、この東海岸南下経路は、その日の内に着くことができるし、花蓮站から何南果樹までのタクシー代は1800元で、列車代も安く、経費は3分の1で済むことが分かった。しかし、列車の切符の予約など、事前の準備は必要であった。

スモモや桃を栽培して売っている果樹園

 明日は、天候があまりよくないが、碧緑神木からその先にある農園までの道路が工事中のため、農園のポイントに入れないので、神木までの国道沿いをじっくりと探索する予定である。

写真の下の方にあるのが宿


● 7月9日(火) 碧緑  曇り 時々晴れ 時々小雨 
 今日は、7時半に果樹園を出発し、碧緑神木までを往復、歩いた。途中、羊頭山の登山口から渓谷を登ったが、全くいなかったので、すぐに引き返した。

登山道の入口

羊頭山への登山路

 そして、ポイントさぐりながら、碧緑神木まで歩き、農園までの道が封鎖されているのを確認した。 

工事中の道

碧緑神木

 11時になると、雨が降ってきたので、果樹園まで引き返した。遅めの昼食を取り、少し休憩した後、果樹園よりも東の道を探索した。しかし、昨年、ミドリシジミ類がたくさんいた場所には、全くチョウはおらず、がっくりして引き返した。
 植物の発生状況は、昨年と比べると10日間ほど遅れていて、ミズキの花が咲き始めたばかりであった。セセリチョウが好きな丸い小さな花は、昨年の7月上旬では枯れていたのに、まだ蕾の状態であった。碧緑に16日から再度来るので、その時には、おそらく満開になっているはずで、楽しみである。果樹園の人の話では、春先に天候が不順で長雨で気温が低く、果樹の収穫は、例年に比べてよくないとのことであった。
 果樹園から神木までは、いくつかのポイントを探索した。スギタニイチモンジを撮影でき、GIF動画にできるタカムクウラナミジャノメ、ウスアオゴマダラシジミ、シータテハ、タカムクシロチヨウなどの写真が撮れた。
これまで日本では、日々,なるべく歩くようにしてきたが、今日は、足に疲労感が強く、万歩計では、16.9km歩いていた。驚きである。
 明日は、今日とほぼ同じコースを歩く予定である。

● 7月10日(水) 曇り  晴れ 午後 曇り時々晴れ
 7時25分に宿を出ると、天候は晴れ。最高である。これでチョウがいないようであれば、本当にやばい状態である。
 宿を出て、最初のポイントは、大きながけ崩れがあった場所で、道の近くにミズキの群落がある。着いてみると、タイワンコヤマキチョウが吸蜜に来ており、タイワンアサギマダラが近くにある他の黄色い花に集まっていた。そこで、道の反対側にあるミズキにパイナップビールと砂糖で作ったトラップ液を吹きかけておいた。タイワンコヤマキチョウやタイワンアサギマダラは、GIF動画に使える動きをしてくれ、さらにホッポアゲハも飛来し、後という間に時間が過ぎていった。すると道の反対側のトラップを掛けたミヅキに大きなタテハチョウが止まっているではないか。車に気を付けて道路を渡ると、花には、スギタニイチモンジが飛来していた。GIF動画をたっぷりと撮影できた。その後は、次のポイントへ移動した。
 ミズキの花は、200m毎くらいに咲いているが、咲き始めたばかりで、蜜が出ていないのか、チョウの姿はほとんどない。たまに止まっているのは、タカムクウラナミジャノメとタカムクシロチヨウくらいであった。
 さらに、ポイントをいくつか探索し、ようやく神木に近いポイントに着いた。黄色い花が咲き、下草には、小さな白い花が群落を作っていた。よく見ると、その小さな白い花に、小さなセセリチョウがいるではないか。カメラでのぞくと、何と、新鮮なバンダイホシチャバネセセリであった。他に、ホソバキボシセセリ、ニイタカキマダラセセリなども撮影できた。
 神木に着くと、今日は本格的に工事をしており、近寄ることもできなかった。そこで、さらに先に進むことにした。
 神木より先は、山の北側に作られた国道を進むので、日陰が多く、ポイントはほとんどなかった。そこで神木から2km進むと、ようやく国道は山の南側に出た。そこには、ミヅキの群落がいくつかあったが、ほとんどチョウはいなかった。午後1時になり、125kmという道路標識がある場所まで行ったが、やはり何もいないので引き返すことにした。
 帰り道は、下り道なので、歩きやすいが、チョウがほとんどいないので、苦痛の歩きになった。しかし、谷になっている場所だけは、ウラキマダラミスジ、スギタニイチモンジ、ウスアオゴマダラシジミが現れて、止まってくれたので、気分転換をすることができた。そして、午後4時半には、宿に着いた。飛翔写真なしで、昨日の3倍の3,365枚の撮影ができたが、全身が筋肉痛になった。万歩計は、19.7kmであった。
 昨年に比べると、昨年は数多くいたタカムクシロチヨウは少なく、アリサンルリシジミは見つからず、ミドリシジミ類は、あれだけ乱舞していたのに、全くいない。植物は、発生が遅れているが、チョウ類はそうでもなく、種類数や発生数が少ないだけのようである。
 明日は、宿から東の道を探索した後、神木までのポイントを巡る予定である。

● 7月11日(木) 碧緑  晴れ 午後 曇り時々晴れ 後 雨
 7時30分に宿を出て東へ向かった。500m程進むと、ミヅキの群落がある。しかし、そこは日陰になっていた。仕方なしに、さらに先に進むと、目指す谷も日陰になっていることが分かった。この東のポイントは、午後に来ないとダメである。そこで、道を引き返し、昨日と同じコースで神木まで行くことにした。
 日の当たる谷まで行くと、ミヅキの群落には、昨日と同じくタイワンコヤマキチョウとタイワンアサギマダラがいたが、他のものはいなかった。そこで、長居はせず、先に進んだ。
次のポイントに近づくと、遠くからでもミズキの花にアゲハチョウ類の何かが吸蜜に来ていることが分かった。急いて近づくと、綺麗なホッポアゲハの♂であった。たくさんのGIF動画用連写ができ、ホームページのTOPに掲載できそうである。
さらに先に進むと、ウスアオゴマダラシジミが下草に吸蜜に来ていた。綺麗な個体で、たくさんの撮影ができた。他には、シータテハ、テングチョウ、ホリシャルリシジミなどの撮影ができた。
しばらく進み、ついにバンダイホシチャバネセセリのポイントに着いた。よく見ると、やはり1頭の♂が吸蜜に来ていた。十数カット、撮影することができた。アマミウラナミシジミの綺麗な♀も現れ、開翅までの連写ができた。しかし、バンダイホシチャバネセセリがいたのも10分間ほどで、そのポイントは、午前11時には日陰になってしまうことが分かった。
12時には、神木に着いたが、アカタテハがいただけで、12時30分には下ることにした。
今年の碧緑は、午後になるとだんだん曇り出すようで、午後1時には、曇り出した。そこで、昼飯にすることにした。リュックを置いて、ふと近くにある木を見ると、小さなシジミチョウがふらふらと飛んできて止まった。飛び方が違う! 急いでカメラをのぞくと、何と、オナガシジミ! 新記録種である。数枚撮影し、よりアングルのよい場所に移動。するとオナガシジミが翅を動かし出した!最高のアングルで連写をすることができた。しかし、次の瞬間、パッと飛び立ち、茂みの奥へ消えていった。そこで、トントン棒(3.6mの渓流竿)を使って、周辺をたたいてみたが、何もいなかった。夢のような出来事であった。
その後は、天候が本曇りになり、小雨が降り出した。宿に着いた時には、しっかりと雨で、宿の東の谷に行くことはできなかった。
今日は、昨年は見られなかったウラナミシジミ、タイワンシロチョウがいて、ウスアオゴマダラシジミ、スギタニイチモンジ、タイワンコヤマキチョウは盛期を迎えており、初夏のチョウが出現しており、やはりチョウについては発生が遅れていないと感じた。
明日は、タクシーで新城站に行き、列車で池上站まで移動する。宿を出る時間は、10時を予定していたが、宿を通してのタクシー運転手の話だと、途中で道路工事があって,通行止めになるかもしれないので、9時30分スタートで、12時に新城站着の予定だそうである。料金は、少々高く、2000元。花蓮站からここまでが1時間50分の1800元だったので、メーターで新城站まで行けば、1400元くらいのはずだが、タクシーを呼び寄せての移動なので、2000元は、これで良いのかもしれない。1時間30分は撮影ができるので、天候が良ければ、西のポイントをいくつか探索する予定である。

● 7月12日(金) 碧緑→新城站→池上站  晴れ
 タクシーの迎えは9:30なので、2時間の撮影時間がある。そこで、神木への道の途中まで行ってみることにした。
 最初のミヅキの群落があるポイントでは、何もいかなった。そこで、すぐに次のポイントに向かった。そこは、日当たりのよい場所で、これまでと同じく、タイワンアサギマダラが群れで吸蜜していた。他には、タカムクウラナミジャノメがいただけであった。そこでつぎのポイントに向かおうとすると、濃いブルーのルリシジミが現れた。今回初めてのアリサンルリシジミの♂であった。運よく止まってくれたので、数カット、撮影することができた。この時期に新鮮な♂が1頭だけ見つかるとは、発生が遅れているのだろうか?10分間くらいは周辺を飛び回っていたが、やがて谷に下りて行った。
 次のポイントでは、スギタニイチモンジが日光浴をしていた。GIF動画用の連続写真を撮ることができた。
 ここで1時間がたったので、引き返すことにした。途中、ミヤマシロオビヒカゲの♂が現れ、数カット、撮影することができた。
 9時には、宿に着くことができ、支度を整えて道路まで出ると、迎えが来ていた。案の定、白タクであった。宿の人に、16日の夕方に再度来ることを伝えてあるので、そのことを確認し、お礼を言ってタクシーに乗り込んだ。
 途中、大型トラックと普通車が接触事故を起こしていたが、その脇を何とか通り抜けて進むことができた。道路工事も何か所かでやっていたが、大した待ち時間もなく、無事、新城站に着くことができた。1時間30分のドライブであった。
 座席を取った列車の時間までは3時間もあり、撮影データ処理や読書で過ごした。そして、無事、池上站に着き、ホテルに入ることができた。

池上站の東にある池と山

 明日は、タクシーで移動である。天池という玉山の南部の山岳地帯に行きたかったが、まだ山岳道路が閉鎖されているようで、その手前の向陽国家森林遊楽区に行くことした。タクシーは、ホテルを7時に出発でチャーター料は4000元であった。

● 7月13日(土) 池上→向陽→池上  快晴
 7時少し前にタクシーが来た。やはり白タクであった。でも、行く場所の地図と写真を印刷した紙を渡し説明すると、すぐに理解をしてくれた。そして、標高2,330mの向陽国家森林区を目指した。
 タクシーが山道に入ってしばらくすると,何と,車の大きさの巨大な落石が2つ,道路をふさいでいた。向陽には行けない…,そう思ったら,タクシーは前に進みだした。崖と落石の間に,何とか,車が通れそうな隙間があったのである。ゆっくり進んで,無事,通過することができた。そして,帰りによる3か所のポイントを確認しながら,1時間40分かかって向陽に着いた。

落石の多い崖

 向陽では、入山のための氏名、時間等の記録を書き、門をくぐった。
 しばらく歩くと、山道になった。道の日の当たる側には、色々な植物が繁茂しており、碧緑では、セセリチョウ類が好む小さな丸い花をつける植物は、まだ蕾の状態であったが、この向陽では、満開の状態であった。しかも、群生の規模が、碧緑の10倍以上で、かえって、チョウ類が分散してしまう状況であった。それでも、丁寧に探索していくと、小さなセセリチョウが飛びだした。バンダイだ! 止まった!やや遠くから連写して確認した。間違えない!しかも2頭いる。しかし、やや遠い。そこで、茂みのある斜面の角度を見極めると、登れない角度ではない。思い切って登って近づくことにした。草をつかみながら、足を滑らせないようにして登って行った。そして、目の前にバンダイがいる状態になった。連写!連写!やった!歓喜の雄たけびを挙げた!しばらくは、最高の気分であった。そして、バンダイは飛び去っていった。では、降りるとしよう。かなり斜度がキツイ。足を滑らせて落下すれば、命が危ないことに気づいた。これはマズイ!また危ないことをやってしまった。後ろ向きで、足場を確認しながら、手は抜けないような草をつかんで、一歩ずつ降りた。バラも所々生えていた。道に着いたときは、本当にほっとした。降りているときは気が付かなかったが,左手の指がバラのトゲで切れて,血が流れていた。でも死ななくてよかった。もう,危険な行動はしないことを強く誓った。
 道をさらに進むと、タカサゴシロチョウが数多く、タイワンコヤマキチョウ、ウスアオゴマダラシジミがいて、動画データを撮影することができた。すると別のシジミチョウが現れた。ウスアオゴマダラシジミだろうとファインダーをのぞくと、何と、新記録種のシロゴマダラシジミではないか!動画データも撮影することができた。さらにミドリヒョウモンも現れたが止まらなかったので、撮影はできなかった。あっという間に、予定の2時間半が過ぎてしまった。
 次は、霧鹿砲台に向かった。40分後に着いたが、標高が下がっているので、台湾南部の一般的なチョウ層になっていた。タイワンモンキアゲハ、キミスジ、タイワンミスジ、ヤエヤマイチモンジなどを撮影することができた。40分間の撮影でタクシーに戻った。
 次は、霧鹿林道に向かった。しかし、林道に入ったら乾燥していて、これではチョウがいないことが分かったので、次のポイントに移動することにした。
 最後のポイント、下馬林道に着いた。山から小さな川が流れており、色々なチョウが飛び回っていた。40分間で戻ると運転手に伝え、道を進んだ。いろいろと撮影しながら上っていった。オオウラナミジャノメ、ホソバキボシセセリ、シロウラナミシジミなどを撮影した。すると、大きなジャノメチョウ類が現れた。急いで後をつけていくと、止まった! えーっ! トガリワモン! 綺麗な写真を撮ることができた。外来種がここまで来ていたとは! 本当に驚かされた。戻る時間になったので、山を下りることにした。帰り道もいろいろと撮影することができた。すると、かなり大きなウラナミジャノメが止まった。オオウラナミジャノメかなと思いながらファインダーをのぞくと、何と、カノウラナミジャノメではないか! しかも、GIF動画用の連写もできた! 台湾南部では、3頭目の記録となった。そして、時間になったので、タクシーに戻り、ホテルに帰った。充実した1日になった。
 明日は、池上地区の東部の山を歩いて探索する予定である。
 
● 7月14日(日) 池上  晴れ
 7時30分、ホテルを出発し、南東部の丘陵地を目指した。
 ホテルの近くには、小さな雑木林があった。そこで、まず、そこに向かった。途中、センダングサの群落があり、立ち寄ってみると、アオタテハモドキ、タテハモドキ、カバマダラ、キタテハなどを撮影することができた。雑木林には、ウラベニヒョウモンが数多く見られたのであるが、なかなか止まらないので撮影は難しかった。その後は、南東部の丘陵地に向かった。
 大きな池があり、その東側を回り込む道沿いに進んだ。水路があり、何かいるのではないかと思ったからである。歩いていると、ウラベニヒョウモンがセンダングサに止まっていることが多く、簡単に撮影することができた。雑木林では、オスがメスを探して飛んでいるので、なかなか止まらないが、やはり、撮影は吸蜜に来ているときに限ると思った。そして、しばらく進んでいくと、ウラベニヒョウモンよりもより褐色が濃いタテハチョウ類が水路沿いを飛んでいるのを見つけた。しかし、なかなか止まらない。すると、もう1頭、同じ種類の個体が現れ、追飛を始めた。そして、2頭が離れると、そのうちの1頭が止まったではないか。よく見ると、何と、カバタテハではないか!中部山岳の本部渓、南山渓以来である。
 カバタテハは、明るい場所が好きではなく、止まるのは、日陰ばかりであった。そこで、カメラの露出補正をマイナスにし、暗い場所でも明るく撮れるようにした。そして、たくさんの連続撮影を行うことができた。カバタテハは、この場所には、3頭を確認することができた。
 さらに水路沿いを進んでいくと、カバタテハが水路沿いを時々飛んでいくが、止まらないので撮影はできなかった。そして小さな雑木林に着いた。ウスキシロチョウが乱舞しており、近寄っていくと、足元から、大きなタテハチョウが飛び立った。翅に大きな白い斑紋が見えた。メスアカムラサキの♂だ!何と、台湾で2頭目である。とてもきれいな個体で、止まって翅を動かしている。連写撮影することができた。さらに、数カット、撮影することができたが、その後、雑木林の向こうに飛び去っていった。
 道は、水路を離れ、山道につながった。そこで、かなりの斜度があったが、登って行った。そして、尾根に出た。
 尾根には、ミカンの果樹園があり、周辺は、雑木林やセンダングサの草原が広がっていた。タテハモドキ、アオタテハモドキ、タケアカセセリなどが現れた。さらに、メスアカムラサキの♂が現れ、かなり痛んでいたが撮影することができた。
 その後は、小道を探索したが、同じような種類なので戻ることにした。
 途中、ウラキマダラヒカゲを撮影することができた。そして、メスアカムラサキがいた雑木林に着いた。そっと近づいていくと、やはり同じ場所にいる! 数カット、撮影することができたが、茂みの奥に飛んで行った。そこで、昼飯を食べながら戻ってくるのを待ったが、戻って来なかった。
 その後は、水路沿いを戻ったが、あれだけいたカバタテハは全くいなかった。午前中だけ、集まっていたようである。不思議である。
 昼食時以外は、全く座っていなかったので、ベンチを見つけたので休憩をしようと、整備された芝生の上を歩いていった。すると、木陰からジャノメチョウ類が飛び出して止まった。カメラをのぞくと、ウスイロコノマチョウではないか! 数カット、撮影することができた。
 この池上の周辺では、普通種ばかりだろうと予想していたが、珍種も含めて、3000枚近くも撮影でき、驚きの1日となった。
 明日は、さらに列車を使って南下し、珍蝶の宝庫である知本渓谷へ行くことにし、無事、列車の切符も買うことができた。知本での滞在時間は4時間であるが、どのような種が顔を出してくれるか、楽しみである。

● 7月15日(月) 池上→知本→池上  晴れ
 予定通り、知本站に着き、タクシーで白玉瀑布に向かった。20分ほどで着くことができた。料金は250元であった。
 白玉瀑布は道が壊れており、立ち入り禁止になっていたが、目的地はこの道を西に進んだ小道であるので、支度をしてかなりきつい斜度の道を進んでいった。
 目的の小道は、舗装がされてなく、人が一人、ようやく通れるほどの小道であった。まず、最初に現れたのは、ヒメウラボシシジミであった。数頭が狭い範囲に密生していた。数カット、撮影することができた。
 道を進むと、分かれ道になった。その分岐点には、樹液の出ている木があり、タイワンコムラサキが3頭、ヒョウマダラが2頭、吸蜜に来ていた。連写を行うことができた。しばらく撮影した後、右の道は私有地で入るなという立札があったので左の道に入った。すると、低木から、小さなシジミチョウが飛び出した。止まったのでよく見ると、アサクラシジミであった。さらに、次から次へと現れ、ここはアサクラシジミの群生地であることが分かった。ほとんどの個体が新鮮で、今が盛期であることが分かった。たくさんの写真を撮ることができた。
 さらに進むと、エグリシジミ、クラルシジミが現れた。そして、小さな灰色の蝶が目の前に止まった。珍蝶のシロモンクロシジミの♂であった。やはりこの小道は面白いだろうという予想が当たった。
 道は、半日蔭になっていて、条件が良い。トントン棒で周りの木をたたきながら進んでいくと、ウラナミジャノメ類の飛び方をするチョウが現れた。カメラでのぞくと、やはり珍蝶のタッパンウラナミジャノメであった。知本に来た甲斐があった。綺麗な♀であった。たくさんの連写をすることができた。
 タケアカセセリ、アトムモンセセリ、ユウレイセセリ、タイワンアオバセセリ、オオクロボシセセリなども撮影することができた。
 夢中で撮影していたら、予定していた引き返す時間になった。仕方なしに来た道を戻った。
 アオスジアゲハ、イシガケチョウ、クロテンシロチョウなどの連写をすることができた。
 予定通りの時間にバス停に戻り、知本火車站に着くことができた。列車が車で、40分ほどあったので、近くの雑木林を探索することにした。すると、中型のシロチョウが飛んでいた。この飛び方は、ひょっとすると、と遠くからシャッターを押して確認してみると、やはりヤエヤマシロチョウであった。台湾の南部では、秋には数多くみられるものの、こんなに早い時期にいるなんて、初めてである。♂が2頭、♀が1頭いたが、花がないので、なかなか止まらず、撮影は難しかった。それでも、♂♀とも数カット撮影することができた。
 明日は、ホテルを早朝に出て、池上站から新城站へ行き、碧緑に戻る。タクシーで行くので、途中、4か所のポイントを撮影しながら向かい、果樹園に着くのは夕方になるはずである。碧緑とは違うどんなチョウが現れるか、楽しみである。ただ,台風5号が発生し,台湾に向かってくるようなので,ちょっと心配である。

● 7月16日(火) 池上站→新城站→碧緑  晴れ
 ホテルを6時30分に出発し、無事、列車に乗り込むことができた。新城站でおり、タクシーに慈恩の何家果樹まで行きたいが、途中、4か所を2時間から1時間、探索しながら行くので、いくらになるかと聞いたところ、4000元であった。まあ、相場であるので、OKを出した。
 最初の目的地は、緑水歩道である。タクシーの運転手には、地図と駐車場の写真を印刷した紙を渡したので、すんなりと行くことができた。ここでは、2時間、待ってくれと話してあるので、かなり奥まで行けそうであった。
 山道を登り始めると、周りの木は、かなり茂っていて、良い感じであった。しばらく進むと小道があった。そこで、入っていくと、かなり太い木の根元から、白い蝶がパッと飛び立った。飛び方が速い! シロタテハだ! 止まってくれと願ったが、ジャングルの奥へ消えていった。どうしてこんな所から? と木の根元を見ると、樹液が出ていた。スズメバチ、ルリタテハ、ヒョウマダラ、ルリモンジャノメが吸蜜に来ていた。これらのチョウの連写はできたが、残念無念である。
 小道を進むと、岩場があった。すると小さな黒いシジミチョウがチラチラと飛んでいる。タイワンクロツバメシジミだな,とレンズをのぞくと、やはりそうであった。昨年,松崗で撮ったムシャクロツバメシジミは、なかなかいないもんだな、と思いつつ、連写することができた。
 さらに道を進んだが、大したものはいなかった。そこで、道を引き返し、さっきの樹液の所でシロタテハが戻ってきているかもしれないと期待しながら、その木を目指した。
 木がある場所に近づいたので、そっと近寄っていくと、全く何もいない。何とそこには、キノボリトカゲがいるではないか!これでは、虫が近寄るわけがない! トントン棒でキノボリトカゲを追い払い、5分もすると、ルリタテハ、ヒョウマダラは戻ってきたが、10分経ってもシロタテハは戻ってこなかった。諦めて、山道を下った。
 タクシーが待っている場所まで、もう少しだなと考えていると、目の前に小さなチョウが飛び出した。そして、頭上の木の葉の裏に止まった、怪しい!急いで撮影すると、何と、ギンスジミツオシジミではないか! 台南で、林さんとあれだけ探しまくった珍蝶が目の前にいる! 逃げないでくれと願いながら撮影できた。日蔭なので、撮影状況を確認すると、少し暗い。急いでカメラ感度を上げ、撮影し、確認すると、めちゃくちゃ綺麗! さらに飛び立って、場所を変えてくれ、数カット、撮影し、連写も行うことができた。しかし、その後は、ジャングルの奥へ消えていった。なら、この近くに他の個体がいるのではないか。トントン棒でそっとたたきながら進んでいくと、パッ飛び出した小さな蝶! ギンスジだ! ♀だ! 止まった! 数カット、撮影することができた。その後、やはりジャングルへ消えていった。それからしばらくは、その辺りをうろうろとトントンしながら探索したがいなかった。
 タクシーに戻り、なかなか気さくな運転手だったので、ギンスジの写真を見せると、とても喜んでくれた。
 その後は、緑水上下台地へ行った。「立ち入るな」と書かれた看板があったが、ちょっとだけ行ってみると、草木は1本もない岩ばかりの崖が続いていた。しかも左側の断崖に着いている道は,道幅がたったの30cmしかなく、右側は100m以上の落差がある谷で,川の流れが遠くの足下にあった。危険なことは絶対しないと誓ったし,こんな道、行っても蝶がいるわけがないと諦めて引き返した。
 次に行ったのは、洛韶慈恵堂であるが、谷に着いている道は私有地で、入ることができなかった
 次は、新白楊服務站である。トイレがあり、その奥は鬱蒼とした暗い空間が広がるジャングルになっていた。入ってみると、コジャノメがおり、数カット撮影できてホッとしていると、より大きなヒカゲチョウが飛び出した。タイワンクロヒカゲモドキだ! 止まってくれと願っていると、本当に止まった! 連写でき、数カット撮影することができた。その後は、谷下へ消えていった。
 タクシーに戻り、目的の何家果園に向かった。宿に着くと,宿の娘さんが,満面な笑顔とジェスチャーで迎えてくれ,その光景にタクシーの運転手も驚いていた。
 宿に着くと、先日1度しか行けなかった果園の東のポイントに行くことにした。リュックは持たずに軽装で出かけた。ポイントに着いてみると、ゼフィルスはいないものの、ミヤマシロオビヒカゲの♀、ダイミョウキゴマダラが吸水に来ており、連写することができた。
 帰り道、セセリチョウが好きな小さな丸い花が咲いている場所を見つけた。セセリチョウの仲間が吸蜜に来ていた。撮影して確認すると,何と,新記録種のキライザンチャバネセセリではないか! 数カット,撮影することができた。さらに,シルビアキマダラセセリも撮影することができた。しかし、あっという間に日蔭になってしまい、ここはチャンスの時間が短いことが分かった。
 宿に戻ると、宿の人から,明後日には、台風が来るので、山から下りないと、出られなくなると教えてくれた。そこで、急きょ、明日の午後3時にタクシーで新城站まで行くことにした。ホテルの予約もないし、明後日からは、台北で台風が通り過ぎるのを待つしかないことが分かった。でも、まあ何とかなるだろう。スマホでいろいろ検索したら,無事,新城と台北でホテルを取ることができた。

ホテルから見た新城の山々

明日は、神木までのルートを探索し、オナガシジミがいた場所を丹念に探索し、午後2時には戻ってくる予定である。
これからが、大変な旅になりそうである。
 
● 7月17日(水) 碧緑→新城站  晴れ 時々雲 一時雨
 朝7時半、西の山に行こうと宿を出て国道に上がると、宿の人に呼び止められた。雨が降ると崖崩れが起こって新城に行けなくなるので、14時には、ここを出発した方が良いとのことであった。そこで、午後1時には戻ってくることを伝え、出発した。
 5日ぶりの碧緑であったが、大分様子が違っていた。チョウの数が少ない。さらに夏のチョウに移っているといった感じである。数多くなっているのは、ホリシャルリシジミくらいであった。
 バンダイホシチャバネセセリのポイントに着いた。しかし、小さな丸い花は咲いておらず、チョウは全くいなかった。道路標識を見やすくするため、刈り込まれてしまったのが影響しているのかもしれない。仕方なしに、周辺を探していると、小さな蝶が現れた。バンダイホシチャバネセセリの♀であった。数カット撮影できたが、ジャングルの奥へ消えていった。やはりここは発生地なのであった。しかし、1頭だけしかいなかったのは、集まる花がないからであろう。
 時間がないので、長居せず、さらに先に進んだ。そして、オナガシジミがいた場所に着いた。丹念に木々をたたいて探索したが、何もいなかった。仕方なしに先に進んだ。
 小さなかけ崩れがあった場所に着いた。すると小さなシジミチョウが谷沿いに下ってきて、道路沿いの草地に止まったのが見えた。急いで駆け寄り、シャッターを切った。ルーミスシジミであった!しかし、1カット撮れただけで、あっという間に谷下に飛び去っていった。綺麗な写真が撮れたが、もう少し見ていたかった。
 その後は、大したものはおらず、碧緑神木に着いた。チョウが集まりやすいようなこんもりとした木々とその横の探索路を探すと、タイワンキマダラヒカゲがいた。さらに、オスアカミスジが2頭、日光浴をしていた。綺麗な写真を撮ることができた。
 引き返す時間になったので、来た道を戻ることにした。ルーミスシジミがいた場所では、周辺を探索したが、やはりいなかった。
 宿まで1qほどになったころ、急に曇りだし、さらに雨が降り出した。急いでポンチョを着て、傘を差した。これで碧緑の撮影は終わりだなと思った。ところが、宿の直前になると、あっという間に晴天になり、色々なチョウが飛び出した。宿に着いたときは、12時30分であったので、東のセセリチョウ類が集まるポイントに行ってみることにした。
 小さな花が咲いている場所に着くと、セセリチョウを探した。いた! 撮影して確認するとシルビアキマダラセセリである。さらに他の種類も飛んでいる。撮影して確認するとキライザンチャバネセセリであった。しかも、たくさんのカットを撮影することができた。本当に幸運である。
 さらに時間があったので、道を下って、川が流れている谷まで行ってみることにした。
 着いてみると。空き地には、綺麗なダイミョウキゴマダラの♂が地面に止まって翅を動かしているではないか。連写しても飛び去る気配はなく、数カット撮影することができた。12時50分になったので、先ほどのセセリチョウ類がいる場所まで戻ることにした。
 着いてみると、まだ色々なセセリチョウ類が吸蜜に来ていた。数カット撮影することができた。すると、宿の人がバイクでやってきて、「この晴れているうちに下山した方がいいし、タクシーは来ているよ。」と言ってくれた。そこで急いで宿に戻り、支度をして帰ることにした。
 部屋の鍵を渡すと、宿のおかみさんがハグをしてくれた。娘さんも子供さんを連れて見送りに来てくれた。本当に楽しく素晴らしい碧緑であった。
 昨日、新城站の近くのホテルをスマホで予約し、台北のホテルも急きょ、予約できたので、後は、新城站から台北站までの列車の切符を取るだけであった。
 白タクの運転手は、この間とは別の人であった。恐ろしく飛ばす運転で、2時間弱かかるところを1時間半で着いてしまった。チェックインをして、すぐに站に行った。予定していた列車は満席であったが、第2希望の列車を取ることができた。
 明日からの2日間は、台風5号の台湾直撃で、急きょ、予定の変更を余儀なくされたが、20日には、陽明山に行けるといいなと考えている。

● 7月18日(木) 新城站→台北站  晴れ 後 雨
 朝起きてみると、晴れていて風もない。そこで朝食後、チェックアウトまでに2時間の余裕があるので、ホテルの周りを探索してみることにした。
 道路を南に向かって歩いていくと、水路沿いに大きな空き地が広がっていた。すると、褐色のチョウが数頭、追飛をしていた。急いで近寄ってみると、ホソチョウであった。10頭弱が飛び回っている。ホソチョウを見るのは3年ぶりである。連写し、たくさんの写真を撮ることができた。
 さらに道を南に進み、カバマダラを撮影することができた。1時間が過ぎたので、道路の反対側に渡って、探索しながら帰ることにした。すると小さな公園があった。
掃除をしている人に挨拶をすると、何を撮っている? と聞かれたので、珍しいチョウの写真を撮っていると答えた。すると、私の後についておいでと言うではないか。そこで、何かいるのかなと思いながら歩いていくと、その人が、ウマノスズクサの群生地の中を指さしている。そこにあったのは、何と、キシタアゲハの蛹であった。さらに、指さすところには、キシタアゲハの終齢幼虫がいた。すると、キシタアゲハの♂が、悠々と飛んできたではないか! 残念ながら、キシタアゲハは止まらなかったので、綺麗な写真は撮れなかったが、蛹と幼虫の写真は撮れ、案内してくれた人にお礼を言ってホテルに戻った。思いがけない収穫に驚かされた2時間になった。
その後は、予定通り、台北に移動した。台北は雨であった。
台風5号は、台湾から少し東にずれたので、影響は大きくないように思える。せっかく台北に来たので、初夏の陽明山を探索したいものである。

● 7月19日(金) 陽明山→剣南山  晴れ 時々 曇り
 台北站を7時10分発のバスに乗り、8時過ぎには陽明山総站に着いた。陽明山の周回バスは、乗り場がこれまでと違っていて、建物の反対側になっていた。そして、8時40分には、二子坪に着いた。
 今回の目的地の大屯自然公園へは、ここから歩いて約1kmの場所にある。大きな道路に沿って歩いて行ったが、少し前に雨が降ったのか、道路が濡れていて、チョウは全く飛んでいなかった。
 大屯自然公園に着くと、曇っていた空が晴れてきた。すると、センダングサの群落には、スジグロカバマダラがいて、ミズキの花にはクロアゲハが数頭、集まっていた。そして、センダングサには、褐色のセセリチョウがいた。ひょっとしてと、カメラでのぞくと、何と、トガリオオチャバネセセリではないか!この陽明山で1回しか見たことがなく、しかも、その後、10回近くチャレンジしたが見つからなかった珍蝶である。センダングサの吸蜜に夢中で飛び去らなかったので、連写することができ、たくさんの写真を撮ることができた。しかも、センダングサの群落には、3頭いることが分かった。他には、アトムモンセセリ、ヒメイチモンジセセリ、シロシタセセリ、タケアカセセリなど、色々なセセリチョウ類がいた。
 十分撮影できたので、池の周りを探索することにした。以前は、タイワンシジミタテハがいたので探したが、見つからなかった。ミヅキの花には、クロアゲハがいたが、センダングサがなく、チョウは、シロウラナミシジミ、ツマグロヒョウモンがいるだけであったので、公園の入口に戻ることにした。
 11時を過ぎていたので、センダングサの群落には、チョウは減っていたが、トガリオオチャバネセセリ、ユウレイセセリ、クロセセリがいたので、撮影することができた。そして、二子坪へ戻る途中、コノハチョウ、ナカグロミスジを撮影することができた。
 午後は、天気が良さそうなので、剣南山に行ってみることにした。
 陽明山総站からバスでMRTの剣澤站まで行き、MRTを乗り継いで、剣南路站に着いた。そこからは、歩いて10分で剣南蝶園である。
 階段を上り始めると、ヒメウラボシシジミが飛んでいた。しかし、このチョウは、なかなか止まらないので、撮影は諦め、色々なチョウの食草が植えてある場所に急ぐことにした。
 ミヅキの花のポイントに着くと、たくさんのチョウが集まっていた。タイワンキマダラ、アオスジアゲハ、ミカドアゲハ、クロアゲハ、オオクロボシセセリ、クロボシセセリ、シロウラナミシジミ、タケアカセセリなどがいた。そして、よく探すと、目的のイワカワシジミを見つけた。2頭いて、1頭はとても新鮮な個体で、たくさんの撮影をすることができた。
 その後は、食草が植えてある場所に移動した。しかし、周辺に花がなく、食草にも飛来してなかったので、奥のバナナセセリのポイントに向かった。
 鬱蒼としたジャングルの中は蒸し暑く、バナナの群落をトントン棒でたたいてバナナセセリを探したが、残念ながらいなかった。そこで、さらに奥へ行ってみることにした。
 すると足元から大型のチョウが飛び出した。止まったので確認してみると、トガリワモンであった。薄暗いので、フラッシュをたいて撮影することができた。クロコノマチョウもいた。しかし、とても蒸し暑いので、退散することにした。
 ミズキの花のポイントには、アカボシゴマダラが吸蜜に来ていた。とてもきれいな個体で、たくさんの写真を撮ることができた。
 午後2時を過ぎていて、雨が降り出しそうな雲が迫っていたので、ホテルへ戻ることにした。カメラの撮影枚数を確認すると、今日だけで6,000枚を超えていた。飛翔写真は撮っていないので、いかに多くのチョウがいたかに驚かされた。
 明日は、天候が良さそうなので、陽明山総站から西の北投地区を探索する予定である。

● 7月20日(土) 陽明山→北投
 昨日と同じ、台北站を7時10分のバスに乗り、陽明山総站に着いた。ここからは、歩いて横嶺古道に入った。
 横嶺古道は、朝だと山の陰になるので、チョウは全くいなかった。そして、古道を抜け、北投站への山道に入った。
 山道は下りなので、歩くのは楽であった。しかし、開発が進んでいて、家が立ち並び、予想とはだいぶ違う光景が続いた。
 川が流れていたので、橋が架かっている場所で探索してみると、ナカグロミスジがいて数カット、撮影することができた。また、小道があり、入ってみると、木陰に大型のチョウがいた。近寄ってみると、トガリワモンであった。しかし、それ以外は、大したチョウはいなかった。

北投温泉の源泉

 これまでかなり歩いてきたので、足首に疲れがきているのか、左足首をひねって捻挫しそうになり、その後、右足首もひねって危なかった。足場の悪い道では慎重に歩いて山を下った。
 昼過ぎには、北投站に着いた。今日は、これで台北に戻ることにした。
 明日は、高雄へ移動である。南部での未記録種の探索が楽しみである。

● 7月21日(日) 台北→高雄  晴れ
 今日は移動日である。新幹線で左営站へ向かった。
 左営站で荷物をコインロッカーに預け、タイワンヒメシジミがいるポイントに向かった。
 ポイントに着いてみると、光景が全く変わっていた。手入れがしてないため、雑草が伸び、タイワンヒメシジミの食草は、ほとんどない状態であった。しかし、ポイントを一回りして入口付近に近づいたとき、ようやく1頭のタイワンヒメシジミを見つけることができた。数カット撮影でき、動画データも撮影することができた。さらに、ヤエヤマシロチョウ、オナシアゲハ、ウラナミシジミ、タイワンキチョウを撮影することができた。
 その後、左営站に戻り、高雄のホテルに入った。
 明日は、霧台の山に探索に行くので、タクシーが8時に迎えに来るようにホテルに依頼した。
 
● 7月22日(月) 霧台
 タクシーは、8時にちゃんと来ていた。早速、霧台の地図を渡し、行く場所を説明した。
 霧台のポイントには、9時30分に着いた。11時30分には戻ってくることを告げ、山道を下った。
 最初に現れたのは、エサキキチョウ、ジャノメタテハモドキであった。ヤエヤマイチモンジの♀は、背中に白点が4つ現れるが、その白点がないヒラヤマミスジにそっくりな異常個体が現れた。しかし、翅の斑紋がヤエヤマイチモンジなのでがっくりした。その後は、ミツボシフタオツバメ、コシロウラナミシジミなど色々なチョウが現れたが、驚くような珍種は現れなかった。
 11時30分には、タクシーに乗って、午後1時にはホテルに戻った。
 明日は、半屏山に行く予定である。

● 7月23日(火) 半屏山  晴れ
 8時にホテルを出て、MRTで新幹線の左営站まで行った。そこから、タイワンヒメシジミのポイントに行った。
 ポイントについて、さっそくタイワンヒメシジミの食草をトントン棒でたたきながら探索していった。すると、1頭が飛び出した。産卵行動をしている。面白い動画データをたくさん撮ることができた。その後は、近くを探したが、他に見つけることはできなかった。
 そして、半屏山の登山口に向かった。登山口は、綺麗に整備されていて、タイワンミスジ、リュウキュウムラサキがいた。登山路は、自然林の中に作られており、環境的には良い感じであった。しかし、川が流れていないため、植物相が貧弱で、チョウはほとんどいない状態であった。仕方なしに、頂上まで登ることにした。
 山頂の展望台は、少し開けていた。センダングサの群落があり、1頭のシロチョウが飛んでした。近寄ってみると、タイワンスジグロチョウであった。綺麗な個体で、動画データをたくさん撮ることができた。その後は、山の反対側に下山したが、大したものはいなかった。
 明日は、高雄市の西にある寿山に行くつもりである。
 
● 7月24日(水) 寿山  晴れ
 8時にホテルを出発し、MRTを乗り継いで、西子湾站に着いた。そこからは歩いて登山口に向かった。
 30分後、登山口に着いた。ウスキシロチョウ、ホリシャルリマダラは、非常に多く、あらゆる場所で飛んでいた。山道を登り始めると、ナガサキアゲハ、シロオビアゲハ等が現れたが、シジミチョウ類が全くおらず、目的のヒカゲチョウ類もいなかった。約1時間後、展望台に着いた。すると、シロチョウ類の♀が産卵をしていた。ウスキシロチョウの♀かなと思ったが、食草が違う。なかなか止まらないので、飛翔写真を撮ってみると、ウラナミシロチョウの♀であった。止まるのは込み合っている葉の裏側が多く、止まっても短時間なので、思うように撮影ができなかったが、何とか、数カット、撮影することができた。

寿山から台湾の西の海を臨む

野生の猿

 その後は、山を下りながら探索したが、オナシアゲハがいたものの止まらず、撮影できなかった。そして、站に着き、全ての撮影が終わった。
 明日は、ホテルをチェックアウトし帰国する。

● 7月25日(木) 高雄→左営→桃園→桃園国際空港→日本  晴れ
 予定通り、9時にホテルをチェックアウトし、新幹線で左営站から桃園站に行き、MRTで桃園国際空港へ行き、無事、帰国することができた。

● エピローグ
 今回の訪台は、途中、台風5号に遭遇したが、雨に降られることはほとんどなく、天候に恵まれた旅であった。
 碧緑の神木の奥の農園には、道の工事のために行けなかったが、宿から神木までのルートでは、バンダイホシチャバネセセリ、ホッポアゲハなど沢山の珍蝶に出会うことができたし、新記録種のオナガシジミを撮影することができた。
 南部の玉山の南東麓の向陽国家公園、下馬林道では、新記録種のシロゴマダラシジミ、珍蝶のカノウラナミジャノメを撮影できた。
 池上では、珍蝶のカバタテハ、メスアカムラサキを撮影することができた。
 知本では、タッパンウラナミジャノメを撮影することができた。
 再訪した碧緑では、新記録種のキライザンチャバネセセリを撮影することができた。
 予定になかった陽明山では、珍蝶のトガリオオチャバネセセリを撮影することができた。
 しかし、高雄では、タイワンヒメシジミ、タイワンスジグロチョウ、ウラナミシロチョウを撮影できたものの、大した成果はなかった。
 来年は、碧緑神木の奥の農園へ行くことができるので、雨季明けの可能性が高い6月下旬から7月上旬に行ってみたいと考えている。




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