ヒョウモンチョウ類5種類の小呂湿地における出現期について (その2)

杉坂 美典.........

1 はじめに
 岡崎市では,ミドリヒョウモンなどの大型のヒョウモンチョウ類は,2010年以降,再びその数を増やしている。そこで,私は,昨年から岡崎市にある小呂湿地にて,9月中旬から10月中旬にかけて定点調査を行い,その出現数を調査している。
ここに2016年の調査結果をまとめ,昨年の結果と比較検証する。さらに来年も継続して調査を行う予定であるので,関係諸氏からの情報の提供やご指導・ご意見を賜りたいと思う。  


2 調査場所     岡崎市小呂町小呂湿地一帯


3 調査時間帯    晴天(雲量8以下)時の午前10時前後


4 調査方法
 湿地の周辺を飛翔していたり,花に飛来したりしている個体を同時間帯で確認し,写真撮影することによって個体の特徴を確認し,重複してカウントしないように注意する。


5 調査日  2016年の調査日は,次の通りである。
       9月15日 9月19日 9月21日 9月24日 9月26日 9月30日 10月2日 10月5日 10月7日 10月10日
      10月12日 10月15日 10月18日


6 種ごとの調査結果と出現数の変化

(1) オオウラギンスジヒョウモン

オオウラギンスジヒョウモン ♀
@ 記録日と個体数
・10月 2日 1♀

(2) ミドリヒョウモン

ミドリヒョウモン ♂
@ 記録日と個体数
・ 9月19日 1♂
・ 9月26日 5♂♂
・ 9月30日 2♂♂1♀
・10月 2日 4♂♂1♀
・10月 5日 1♂1♀
・10月 7日 2♂♂1♀
・10月10日 1♀
A 出現数の変化

(3) ツマグロヒョウモン

ツマグロヒョウモン ♂
@ 記録日と個体数
・ 9月26日 1♂
・10月 2日 2♂♂
・10月10日 1♂1♀
・10月12日 1♂
・10月15日 1♂
A 出現数の変化


7 結果
  次は,ミドリヒョウモンの出現数と岡崎市の最高気温,最低気温のデータである。


8 考察
・ 下の表は,2015年のミドリヒョウモンの出現数と岡崎市の最高気温,最低気温をグラフ化したものである。

・ 2015年の9月は,晴天の日が続いたため,ミドリヒョウモンの出現数は1日の最多数が9頭で,安定して増減していた。しかし,2016年の9月は,悪天候が続き,晴れの日が少なく,出現数は1日の最多数が5頭であった。これは,2015年の約半数で,日によって増減の差が大きかった。雲量が8に達したような晴天日では,気温26度以上に上がらなかったことが原因しているように思える。

・ 2016年9月の上旬から中旬は特に雨天や曇天の日が多かった。そのため,2015年9月のように放射冷却が起こりにくく,最低気温が20度を超える日が続き,下がり方も鈍かったので,夏眠から覚める個体数が少なく,出現数が少なかったと思われる。

・ 昨年と今年の結果から,9月になって最低気温が18度を下回るようになると夏眠から覚めはじめると考えられ,飛来する個体は,9月の終わりから10月初めに最も多くなると思われる。 

・ 10月2日を過ぎると,最低気温が15度を下回るようになり,夜間の体温低下によって死滅する個体が多くなると思われる。

・ 夏眠後の成虫の生存期間(写真の個体識別では,推定10日間程度)はほぼ決まっていて,早く目覚めた個体は,早く産卵を終わらせて早く死に,遅く目覚めた個体は,遅くまで生存するのではないだろうか。このことによって,出現数の変化が9月下旬から10月上旬をピークとした山型になると思われる。

・ ツマグロヒョウモンは,亜熱帯である台湾にも広く分布する種であるが,晩秋の寒冷にも適応している。岡崎市内では,11月での記録は多く,1999年12月2日に新鮮な個体が記録されており,小呂湿地でも同様に晩秋になっても出現していると思われる。


9 おわりに
 今年の悪天候は,小呂湿地において,ヒョウモンチョウ類の出現数が減っただけでなく,種類数も少なくなった。この状況は,おそらく市内の丘陵地でも同じであると思われる。この現象が,来年の春のヒョウモンチョウ類の発生に影響を与えなければよいと思う。





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