2002年初夏にツマグロヒョウモンが激減した理由の解明

                          杉坂 美典
1.はじめに
  ツマグロヒョウモンは,2000年代に入ってからは,市内の各所で数多く見られる  蝶となった。しかし,2002年は,5月になってもほとんど見られず,7月になって  ようやく各所で見られるようになった。これは,冬の寒さが越冬できる状態を越えてお  り,幸運にも越冬できた個体から,第2化が発生し,現在に至るものと思われる。   そこで,岡崎市のここ数年の最低気温の変化を再度,調べてみることにした。
2.気温に関するの資料の収集    岡崎市における2000年12月から2003年3月までの3年間について,名古屋  地方気象台に出かけて調べた。 3.調査結果    岡崎市の冬季の最低気温をまとめると下記の資料1のようになった。
年度
’78
’79
’80
’81
’82
’83
’84
’85
’86
’87
’88
−3℃以下−4℃未満
の日数
14
16
24
25
18
33
15
29
−4℃以下−5℃未満
の日数
10
14
14
17
−5℃以下〜     
の日数
年度
’89
’90
’91
’92
’93
’94
’95
’96
’97
’98
’99
−3℃以下−4℃未満
の日数
10
25
14
16
15
−4℃以下−5℃未満
の日数
10
−5℃以下〜     
の日数
年度
’00’01’02
−3℃以下−4℃未満
の日数
−4℃以下−5℃未満
の日数
−5℃以下〜     
の日数
(資料1) 岡崎市の冬季の最低気温が−3℃〜−5℃を下回った日数
(資料2) 岡崎市の冬季の最低気温が−3℃〜−5℃を下回った日数のグラフ
年度
’78
’79
’80
’81
’82
’83
’84
’85
’86
’87
’88
ツマグロヒョウモン
の記録数
年度
’89
’90
’91
’92
’93
’94
’95
’96
’97
’98
’99
ツマグロヒョウモン
の記録数
15
123
116
年度
’00
’01
’02 
5〜6月
7〜12月
5〜6月
7〜12月
5〜6月
7〜12月
ツマグロヒョウモン
の記録数
45
89
56
95
78
(資料3) 岡崎市における年別のツマグロヒョウモンの記録数
年度
’00
’01
’02
−5℃以下〜の日数
    最低気温
−5.2
−−−
−5.7
(資料4) 岡崎市における最低気温の数値 7.考察  ・ 2000年度,2001年度と2002年度のツマグロヒョウモンの発生数には,   大きな差が現れた。しかも,越冬直前の発生数には変化がないことを考えると,越冬   中の2002年度に,何かの環境の変化があったとしか考えられない。  ・ 2000年度,2001年度と2002年度の最低気温の温度ごとの日数には,大   差ないことが分かった。  ・ 2002年度が,それ以前と違っている点は,最低気温が−5.7にまで下がったこ   とである。  ・ つまり,ツマグロヒョウモンの幼虫が越冬できる最低気温を2002年度は下回っ   たため,多くの幼虫が死滅し,第1化の個体数が激減したものと思われる。しかし,   第2化でかなり復活し,第3化以降は,例年通りの個体数まで復活したのではないか。 8.おわりに    2003年の夏,岡崎市内の各所でツマグロヒョウモンは発生し,個体数も例年のよ  うに多数の個体が見られるようになった。本年度は,ナガサキアゲハも市内で確認され,  温暖化の影響による蝶の分布の変化は,今後,さらに拡大していくように思われる。



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