『 第25回 台湾撮影旅行記 』

2023年11月3日〜7日
・・・ 秋の台湾に珍蝶を求めて ・・・
       杉 坂 美 典..........
● プロローグ
 今回は,これまでは訪れる機会が少なかった秋の台湾で,珍蝶を撮影したいと考えている。さて,どのような蝶が姿を現してくれるであろうか。

● 11月3日   晴れ   セントレア→桃園国際空港→桃園→左営→高雄
 順調に新幹線の桃園駅まで着いた。ところが,南下する新幹線が120%の込み具合で,1時間半待たないと指定席が取れないことが分かった。終点の左営駅まで2時間も立っていくのは無理なので,指定席を取って,ゆっくりと高雄市に向かうことにした。
 新幹線は順調に左営駅に着いた。そこで,7日に帰る際に,再度,このような状態になると困るので,13:00発の新幹線の指定券を購入した。
 いよいよ明日は,涼山遊楽区の探索である。
(歩いた距離 5.9km/5.9km)
 
● 11月4日   晴れ   高雄→涼山遊楽区→新左営→高雄
 タクシーは,予約通り8時ちょうどにホテルに来てくれた。涼山遊楽区に行くことを告げ,1時間ほどで着き,帰りは,バスで帰ることを告げ,タクシーを降りた。
 涼山遊楽区では,今年,タイリクコムラサキホシミスジが撮影されている。しかし,実際に降りてみると,かなり整備された公園であった。そこで,なるべく山沿いの林道を探索するようにした。

 最初に姿を現した珍蝶は,キオビコノハであった。占有行動をしており,2頭が場所争いをしていた。たくさんの写真を撮ることができた。その他には,ナガサキアゲハの無尾型の♀,メスアカムラサキの♂,フタオチョウの♂が現れたが,止まらなかったので撮影はできなかった。その後,滝の近くまで行ったが,普通種が多かったので,下の道まで戻って隣の谷に入ることにした。
 隣の谷に入ると,道は整備されておらず,自然が残っていて良い感じであった。道端では,春や夏には少ないヤエヤマシロチョウの♀が産卵していたり,台湾では数少ないウラギンシジミが数頭,群れていたりする場所があった。
 しばらく進んで,エサキキチョウシロオビヒカゲが撮影できたので,下山することにした。
 谷を下ってバス停の近くまで来ると,面白そうな林道があった。そこで,入ってみるとセンダングサの草原があり,メスアカムラサキの♂が吸蜜に来ており,たくさんの写真を撮ることができた。しかし,他の蝶はあまりおらず,新左営駅まで行くバスが来る時間が近づいたので,仕方なく涼山遊楽区を後にした。涼山遊楽区は,なかなか面白い場所であった。
 その後,新左営駅の近くのタイワンヒメシジミのポイントに行ってみた。ヒメシルビアシジミはいたものの,場所が荒れ果てていて雑草が伸び放題で,タイワンヒメシジミの食草がなくなっており,全くいなかったので,仕方なく帰路に着いた。明日は,万安親水公園に行く予定である。
 (歩いた距離 12.1km/18.0km)(撮影枚数 1882枚/1882枚)

● 11月5日   晴れ   高雄→万安親水公園→高雄
 8時前にタクシーがホテルに来てくれ,今日は,帰りもタクシーで,午後1時に迎えに来てくれるように頼んだ。そして,9時には万安親水公園に着くことができた。
 川沿いの林道を進むと,予想通り,数多くの種類の蝶が次々と現れた。タイワンクロボシシジミタイワンアオバセセリシロオビアゲハヤエヤマシロチョウコウトウシロシタセセリなどを撮影することができた。
 さらに道を進むと,大きな木の花にたくさんのマダラチョウ類が集まっていた。その中には,ヤエヤマイチモンジもいた。すると,赤い大型のタテハチョウが吸蜜している。メスアカムラサキの♀ではないか! この52年間の訪台で初めての遭遇である。しかも大変きれいな個体であった。たくさんの写真を撮ることができた。
 しばらく林道を進と,道は川に降りることができた。そこで川岸を探索すると,オジロシジミホリイコシジミコモンタイマイヤエヤマイチモンジなどの撮影ができた。

 そろそろ戻る時間になったので,先ほどのメスアカムラサキのポイントを目指して山を下った。途中,キオビコノハクラルシジミリュウキュウミスジなどを撮影し,メスアカムラサキがいた場所に着いた。探してみると,まだいた! 数カット,きれいな写真を撮ることができた。その後は,タクシーとの待合場所に向かった。タクシーは時間より早く来ていたので,すんなりとホテルに戻ることができた。明日は,大崗山である。       
(歩いた距離 7.2km/25.2km)(撮影枚数 1391枚/3273枚)

● 11月6日   晴れ   高雄→大崗山→月世界→南崗山→高雄
 8時にホテルをタクシーで出発し,9時には,大崗山の北側の道路についた。ここからは山越えの歩きである。
 道沿いには,センダングサや各種の花が咲き乱れ,シロオビアゲハヤエヤマシロチョウウスアオオナガウラナミシジミなどを撮影することができた。さらに道を進むと,小さな青い蝶が地面に近い場所を飛んでいる。そして止まったので撮影してみると,コウシュンルリシジミであった。しかも数頭,いることが分かった。さらに,先に進むと,たくさんのコウシュンルリシジミが発生していた。ここは,その大発生地であった。
 そして,センダングサの群落の中に,吸蜜している中型のセセリチョウを見つけた。イチモンジセセリ系ではない。飛び去る様子がないので,撮った写真を確認すると,珍蝶のムモンセセリではないか! 6年前にこの近くで撮影できたことがあるが,それ以来である。数カット,撮影することができた。 ※ この種は,誤同定が非常に多い
さらにウスグロヒメウラナミシジミが林道の湿った場所に多数,集まっているのを見つけることができた。これもなかなか撮影できない蝶である。

ウスグロヒメウラナミシジミ ♂

尾状突起がなく,後翅裏面の斑紋の間隔がほぼ同じになる

 その後は,ウラギンシジミオナシアゲハヤエヤマシロチョウなどを撮影できた。
 帰路は,月世界からバスに乗って,南崗山まで行き,そこからはMRTで高雄,そしてホテルに着いたときは,腰が痛くなっていてヘロヘロであった。
 明日は,帰国する日なので,午前中に,タクシーを往復使って,高雄市内の金獅湖公園に行くつもりである。
(歩いた距離 12.5km/37.7km)(撮影枚数 1976枚/5249枚)

● 11月7日   晴れ   高雄→金獅湖公園→高雄→桃園→日本
 金獅湖公園には,タクシーで約20分間の距離であった。迎えのタクシーは,10時30分に頼んであるので,それまでの探索である。
 温室の前には広い花壇があり,よく管理されていた。たくさんのホリイコシジミが飛んでいるが,やはり止まらないので撮影は難しい。しかし,運よく,交尾している個体を見つけたので,雌雄が分かる面白そうな写真を撮ることができた。カバマダラウスコモンマダラも数頭いた。
 温室は,無料であった。入ってみると,まあまあ管理されている状態であった。オオゴマダラウスキシロチョウがいたが,他にはいなかった。そこで,外に出て,公園を探索することにした。

 道は山をぐるっと回る構造になっていた。最初に現れたのは,ルリモンジャノメであった。その後,タイワンルリシジミを撮影できた。
 入口の花壇の横に戻ると,やや大きなミスジチョウ類が現れた。ヤエヤマイチモンジの♀かなと思ったが,白斑が大きい! シロミスジであった。9年ぶりの4頭目の個体である。すぐに止まってくれるので,撮影は容易であった。

 その後は,ウラベニヒョウモンが発生している柳があり,数カット,撮影することができた。
 タクシーは時間通りに来てくれ,無事,ホテルに戻り,帰国の途に就いた。 
(歩いた距離 7.8km/45.5km)(撮影枚数 1065枚/6314枚)

● エピローグ
 今回は,秋の蝶が予想外に多く見られ,珍蝶のメスアカムラサキの♀やムモンセセリを撮影できた。しかし,タイワンヒメシジミの発生地は,人が手を入れないことによって荒廃し消滅してしまった。本当に残念であった。
 来年は,6月に珍蝶探索の大遠征をしたいと考えているので,今回の反省を生かして体をしっかりと鍛えておきたい。





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