『 第28回 北海道撮影旅行記 』

2025年 7月13日〜22日
・・・ 北海道で,8種類の珍蝶と特産種を探す・・・
       杉 坂 美 典..........
● プロローグ
 台湾遠征から帰国して10日目に北海道へ遠征することにした。今回は、久しぶりの北海道遠征で5回目である。期間は10日間なので、大雪山の周りを大きく一周する。目標種は、大雪山の高山蝶のウスバキチョウ、アサヒヒョウモン、ダイセツタカネヒカゲ、カラフトルリシジミ、層雲峡のオオイチモンジ、ジョウザンシジミ、シロオビヒメヒカゲ、カラフトタカネキマダラセセリの8種類で、北海道の特産種や亜種を撮影したいと考えている。さて、どのような珍蝶が現れてくれるだろうか。

●7月13日  晴れ  セントレア→新千歳空港→栗山公園→層雲峡
 セントレア空港を予定通り離陸し、新千歳空港には、11時には着くことができた。そこで、レンタカー会社に電話し、迎えのバスが来て、12時には栗山町のオオムラサキの撮影に向かうことができた。
 北海道栗山町産のオオムラサキは、後翅表面の肛角部に近い場所の斑紋が特異である。栗山公園のオオムラサキ館では飼育して保護しており、容易に撮影することができた。

オオムラサキ ♀  羽化不全

 その他、フタスジチョウの北海道亜種がたくさんいて、楽しむことができた。建物の周りでは、モンキチョウ、モンシロチョウ、キバネセセリを撮影することができた。
 栗山公園の横には、大型のショッピングセンターがあった。ツキノワグマ用のクマスプレーは持っていたが、先日、北海道でヒグマに殺されてしまう方が出たので、新たにヒグマ用のクマスプレーを購入した。これで、3個のクマ鈴と2本のクマスプレーを腰に付けて探索ができるようになった。
 次に、宿泊地が層雲峡温泉なので、上川町の国道35号線沿いの脇道で、良さそうな場所を探して撮影することにした。
 最初に入った林道では、夕方だったので、いろいろな蝶が占有行動をしており、シータテハ、エルタテハ、クジャクチョウ、コキマダラセセリ、エゾミドリシジミを撮影できた。
 次に入った林道では、北海度特産種のアカマダラ、クジャクチョウを撮影できた。
 明日は、いよいよ大雪山赤岳のコマクサ平に行く。どんな珍蝶が現れるか楽しみである。
(歩いた距離 5.1km/5.1km)(撮影枚数 1,886枚/1,886枚)

●7月14日  晴れ  大雪山 赤岳 コマクサ平
 コマクサ平での目標種は、ウスバキチョウ、アサヒヒョウモン、ダイセツタカネヒカゲ、カラフトルリシジミである。
 8時15分にホテルを出て、9時には赤岳のコマクサ平への登山口がある銀泉台に着くことができた。そこから2.5kmの山道を登った先にコマクサ平がある。
 登山道を進むと、ミドリヒョウモン、クジャクチョウ、エルタテハなどが次々と姿を現し、楽しく道を進むことができた。そして、いよいよ登り道が始まった。カメラを左手で持ち、岩場の登りが続く道は、私の人生で最も厳しい登山となった。ひたすら足元を見つめ、岩を踏み外さないように一歩一歩、登って行った。すると雪渓が現れた。雪が冷たく、クジャクチョウが吸水に来ていた。さらに道は急角度で上っており、強い気持ちで登っていった。

 そこへ大型の望遠レンズを付けたカメラを持った登山客が山道を下ってきた。「何を撮られているんですか?」と声をかけてみると、「ナキウサギを撮っている。今年だけで20回近く来ているが全く撮れていない。貴方は何を?」と聞かれたので、「蝶を撮っています。」と答えた。「今日は、ウスバキチョウは全く見ていないし、今年は発生が早かったので、もう、終わったんじゃないかな。」と教えてくれた。「情報、ありがとうございます。」とお礼を言ったが、少々がっくりした。それでも、頑張って登ることにした。
 すると大雪渓が現れた。スパイク付きのロングブーツを履いているが、滑らないように気を付けて進んだ。足元の雪の状態を見ながら黙々と進んだ。そして、無事、雪のない岩場にたどり着くことができた。ほっとして時計を見ると、登り始めて2時間、ようやく眼下に開けた景色が見えるようになっていた。

 すると、1頭の小さなシジミチョウが現れた! カラフトルリシジミだ! 止まってくれ! すると地面に止まった! とても綺麗な個体であった。数カット撮影することができた。目標種の1種目、達成! やったー! と叫びたい気持ちである。風が強いと体を横に倒して風を逃がす行動も観察できた。

 十分満足したのでさらに先に進むことにした。
 しばらく進んだところで、大勢の人が下山してきた。警察と消防の方々17名で、遭難者の救助訓練をされておられた。一輪車のようにタイヤの着いた担架に乗せたゲガ人役の人を交代で岩場の道を運んでおられた。私は、道の横の空き地に避けていたので、先頭にいた警察の方がいろいろ話しかけてくれた。ケガ人役の人も大変なんだと貴重な話を聞くことが出きた。私が熊スプレーを2本、腰に付けているのを見て、対策はしっかりできていますね。と言ってくれた。この大きい方のスプレーは、北海道で熊が頻繁に出ているので、北海道に来てから買ったことを話すと笑っておられた。

 一行が通り過ぎて行かれたので、登山を続けた。
 クジャクチョウ、コヒオドシ、エルタテハが次々と現れた。そんな中に、やや小型のヒョウモンチョウ類が小さな花に止まった。急いで撮影すると、アサヒヒョウモンだ! 数カットであるが撮影できた。これで目標種の2種目、達成である。
 
 そこで、さらに先に進んだ。そしてようやくコマクサ平と書かれた道標がある場所に着いた。
 大きな岩がゴロゴロと点在する間にコマクサが花を咲かせていた。いろいろな種類のタテハチョウ、エゾシロチョウが飛んでいる。

 そんな中を1頭の中型の半透明の蝶が飛んできた。ウスバキチョウだ! しかし、全く止まらない。発生期の盛期は6月下旬なので、7月中旬では見ることは厳しいと思われたが、元気に飛ぶ姿を見ることができた。その後、約30分間にもう4回、姿を見せたが全く止まらない。これは、撮影することは無理だなと感じた。そこにカメラを持った方が山頂方向から降りて来られた。聞いてみると、やはり山頂付近までウスバキチョウを撮影に行ったが、止まらないので撮影できなかったとのことであった。
 そこで少し先に進んでみた。すると岩場で占有行動をしている小型の蝶を見つけた。ダイセツタカネヒカゲだ! 数カット撮影することができた。しかも、その岩場から離れようとしない。さらに十数カット撮影することができた。これで目標種の3種目の撮影である。

 するとカラフトルリシジミも数頭現れ、たくさんの写真を撮ることができた。アサヒヒョウモンもきれいな写真を撮らせてくれた。後は、ウスバキチョウだけである。クジャクチョウやエルタテハ、コヒオドシは元気に飛び回っているが、ウスバキチョウは、ほとんど現れないし、飛んできても全く止まらない。これの繰り返しであった。
 午後1時まで粘ったが、どうしてもウスバキチョウだけは撮影できなかった。それでも見ることはできたので、後ろ髪をひかれる思いがあったが下山することにした。
 20分間ほど下山し、岩場で休憩をした。「うーん、2度とコマクサ平に来ることはないかな。よし、もう一度、コマクサ平に戻ろう!」 再び、厳しい山道を登ってコマクサ平に戻った。

 ウスバキチョウを何度も見かけた場所で待つことにした。すると、本当にウスバキチョウが現れた。止まってくれ! やはり、ハイマツの上を飛び超えていった。また現れた! やはり遠くに消えていった。午後2時を過ぎたので、今度出たら最後にして下山しようと考えていた。そして現れた! 止まってくれ! すると本当に吸蜜を始めたではないか! かなり遠いが、数カット撮影することができた。しかも飛び立ったウスバキチョウは、こちら側にやってくるではないか! 止まった! 数カット撮影することができた。そしてさらに直ぐ近くで止まった! たくさんの写真を撮ることができた! やったー! 

 声は出せないので、両手を大きく突き上げて、万歳をした! これで大雪山の目標種の全てを撮影することができた! 
 午後2時半近くになっていたので下山することにした。
 下山も本当に厳しい道で、足が疲れているので、膝がガクガクである。なので歩幅を狭めて滑落しないように気を付けて進んだ。そして、無事、銀泉台に着くことができた。午後5時を過ぎていた。ほっとして着替えをしていると、エゾシカが現れ、草を食べ始めた。その大きさに驚かされた。

 今日は、厳しい登山と珍蝶の写真が数多く撮れ、一生忘れられない一日になった。
(歩いた距離 7.9km/13.4km)(撮影枚数 7,846枚/10,543枚)

●7月15日  曇り時々晴れ  旭川層雲峡自転車道→銀河の滝の奥→銀泉台林道
 今日の目標種は、銀河の滝の奥でのオオイチモンジ、ジョウザンシジミ、シロオビヒメヒカゲ、銀泉台林道のオオイチモンジ、カラフトタカネキマダラセセリである。
 8時半にホテルを出て、旭川層雲峡自転車道に向かった。ここは、以前来た時、たくさんの蝶がいた場所だからである。
 着いてすぐの場所では、カラスシジミが吸蜜に来ていた。アカマダラ、サカハチチョウ、コキマダラセセリ、コチャバネセセリ、コヒオドシ、エゾスジグロシロチョウが次々と現れ、白化したヒメウラナミジャノメ、スジグロシロチョウ、ウラゴマダラシジミ、シータテハ、メスグロヒョウモンなどを撮影することができた。
 次に、銀河の滝の奥へ行った。
 たくさんの花が咲いており、そこに見たことがないほど数多くの蝶たちが群れていた。コヒオドシ、ミドリヒョウモン、ギンボシヒョウモン、ホソバヒョウモン、アカマダラ、イチモンジチョウなどが見られた。さらに奥に進むと、フタスジチョウ、ウラギンヒョウモン、ミドリシジミが姿を現した。しかし、オオイチモンジは見つからなかった。
 ジョウザンシジミのポイントに着いた。しかし、姿はなかった。すると地面を這うように小さなジャノメチョウ類が現れた。シロオビヒメヒカゲだ! 数カット撮影することができた。しかも3頭、姿を現し、たくさんの写真を撮影することができた。これで目標種の5種類目達成である。

 そして、さらに奥へとかなりの距離を歩いたが、これ以上進んでも変わりばえしないと思われたので引き返すことにした。すると足元に熊の大きな糞があった。やはり熊はいるな、と思った。帰り道では、地元の採集者やカメラマンが3人いて、いろいろ話を聞けた。やはり今日はオオイチモンジを見ていないそうで、今年は、発生が早かったそうである。また、ここは最近熊が良く現れるそうで、シカを食べており、熊鈴を付けていても逃げないそうである。また私が腰に熊スプレーを2本着けているのを見つけられて、「対策はしっかりできているね」 と再び言われた。
 その後は、オオチャバネセセリ、ヒオドシチョウを撮影することができた。すると、中型のシジミチョウが花に止まっていた。ゴマシジミだ! 13年前に見て以来である。数カット撮影することができた。そして、駐車場に着いた。
 時間は午後2時を過ぎたので、最後に銀泉台林道に行くことにした。
 林道の奥には渓流に沿って進む小道がある。熊が出そうな人が歩いた形跡がない道であった。それでも先に進んで、以前、カラフトタカネキマダラセセリがいた場所を探索した。しかし見つからなかった。オオイチモンジもおらず、午後3時になったので引き返すことにした。途中、きれいなエゾシロチョウを撮影することができた。そして、無事、車を止めた空き地に着くことができ、ホッとした。
 車を止めた場所の近くにある白樺の木には、樹液が出ており、イチモンジチョウ、ヤマキマダラヒカゲが集まっていた。そして林道の入口付近まで戻って来ると、大きな木の幹にたくさんのイチモンジチョウが群がっているのが見えた。そこで、近寄ってみると、何と100頭以上のイチモンジチョウが3mほどの範囲で、樹液に群がっていた! 採集者が仕掛けたバタフライトラップであった。
 そこで、望遠カメラで下から順に観察していくと、何とオオイチモンジがいた! しかも2頭!
 

 翅を開いて止まっていて、時々場所を変えてくれるので、たくさんの撮影ができ、十分に楽しませてくれた! これで目標種の6種類目を撮影できた。もう十分なのでホテルに帰ることにした。
 今日は、30種類を超える撮影ができ、1万5千枚近くの撮影ができた。
 明日は、午後から雨が降る予報なので、午前中に銀河の滝の奥とオオイチモンジがいた場所に、再度、行ってみる予定である。

(歩いた距離 10.0km/23.4km)(撮影枚数 14,957枚/25,500枚)

●7月16日  曇り 午後 小雨   銀河の滝の奥→銀泉台林道
 今日の目標種も、銀河の滝の奥のオオイチモンジ、ジョウザンシジミ、シロオビヒメヒカゲ、銀泉台林道のオオイチモンジ、カラフトタカネキマダラセセリである。
 今日は雨が降り出すまでの勝負である。8時過ぎにはホテルを出発し、8時半前には銀河の滝の奥に着くと、既に採集者が一人来ていた。
 昨日と同じような種が姿を見せ、ミドリシジミがいた場所に着くと、やはりミドリシジミの雌が葉上に止まった。きれいな写真を撮ることができた。するとエゾミドリシジミの2頭の雄が乱舞を始めた。十分間以上、乱舞を続けてくれるので、飛翔写真を撮ることができた。たくさんの写真が撮れたので先に進むことにした。
 たくさんの花に数えきれないくらいの蝶たちが吸蜜に来ている。その中に一回り大きなシロチョウが止まっている。オオモンシロチョウだ! ここで見るのは初めてである。数カット、撮影できた。さらに先に進んだ。
 低い草むらに小型のセセリチョウが飛んでいるのが見えた。撮影するとカラフトセセリであった! 3頭いて、十数カット、撮影することができた。そして、ジョウザンシジミのポイントに着いた。
 コンクリートの壁をトントン棒でそっと触っていった。すると小さな蝶が飛び出した。ジョウザンシジミだ! きれいな個体である。壁に止まったり、花に止まったりしてくれたので、たくさんの写真を撮ることができた。これで目標種の7種類目を撮影することができた。

 さらに奥に進んで、シロオビヒメヒカゲのポイントに向かった。ところが、雨が降り出した。急いでシロオビヒメヒカゲのポイントに行って捜したが、今日は全くいなかった。そこでカメラを防水カバーで包み、帰路に着いた。車に戻る前には雨が止んだ。そこで、銀泉台林道に行くことにした。
 オオイチモンジのポイントに着くと、2頭の雄が吸蜜に来ていた。しばらく撮影していると、さらに大型の白い個体が現れた! オオイチモンジの雌だ! 数カット、撮影することができた。

 そこで、林道の奥に行ってカラフトタカネキマダラセセリを狙うことにした。
 林道の奥は、やはりほとんど蝶はいなかった。しばらく探索したが見つからず、雨が降って来たのでホテルに帰ることにした。残念ながら、カラフトタカネキマダラセセリは撮影できなかった。
 午後1時には、ホテルに着くことができた。今日もたくさんの撮影をすることができた。
(歩いた距離 4.8km/28.2km)(撮影枚数 10,692枚/36,192枚)

●7月17日  曇り 時々晴れ  層雲峡→帯広市
 今日は移動日である。
 層雲峡のホテルを7時にチェックアウトし、所要のため名寄市に向かった。丘陵地の頂上にあった草原でカラフトセセリを撮影することができた。その後は、帯広市に向かい、層雲峡を通るのでオオイチモンジのポイントに寄ってみることにした。
 オオイチモンジのポイントに着いた。しかし、バタフライトラップには、たくさんの蝶が来ていたものの、オオイチモンジは来ていなかった。ヤマキマダラヒカゲ、エルタテハ、シータテハなどが来ていた。そこで、周りを探索してみると、フキの葉の上にオオイチモンジの雌が止まっているのを見つけた! しかし、全く動かない。よく見ると綺麗な個体であるが、頭部が落ちており、ハナグモに捕まってかじられたのではないかと思われた。

 その後、層雲峡から東に向かい、糠平湖の横の駐車場で休憩し、周辺を探索することにした。
 クジャクチョウ、コヒオドシ、コムラサキ、ホソバヒョウモンなどを撮影できた。すると、小さなセセリチョウが吸蜜に来ていた。カラフトセセリであった。3頭がいて数カット撮影することができた。

 明日は、帯広の南西部の山を探索するつもりである。
(歩いた距離 3.0km/31.2km)(撮影枚数 2,743枚/38,935枚)

●7月18日  曇り 後 小雨   帯広市の南西部の丘陵地
 今日の目標種は、北海道特産種や特産の亜種である。
 8時にホテルを出発し、帯広市の南西部の丘陵地に向かった。
 林道を車で走っていると、ジャノメチョウが飛んでいるのが分かった。急いで車を安全な場所に止め、草地に向かった。数頭のジャノメチョウが飛び回っていた。北海道で見たのは初めてである。サカハチチョウ、メスグロヒョウモン、コキマダラセセリ、ミヤマカラスアゲハを撮影することもできた。
 さらに林道を進むと、ウラギンヒョウモン、エゾスジグロシロチョウ、アカマダラ、シータテハ、コムラサキが乱舞しており、カラスシジミ、ルリシジミを撮影することができた。
 最初の目的地の美生ダムに近づいた時である。フジバカマに多数の蝶が集まっているのが分かった。そっと近寄ってみると、ウラギンスジヒョウモン、ギンボシヒョウモン、ウラギンヒョウモンが十数頭いて、トラフシジミ、カラスシジミもいた。
 しかし、美生ダムの奥は、林道の工事をしており、通行止めになっていた。そこで、帯広岳の南にある縄文ロードに向かうことにした。
 この林道は、とても蝶の数が多く、車で走っていると次々と路上の蝶が飛び立った。シータテハ、エルタテハ、クジャクチョウ、クロヒカゲ、ヤマキマダラヒカゲ、コムラサキ、エゾスジグロシロチョウ、モンキチョウ、コチャバネセセリ、各種ヒョウモンチョウ類である。しばらく進むと、黒い大きな塊が見えた。20頭以上のミヤマカラスアゲハが吸水集団を作っていた。北海道に来たら見たかった光景である。車を止めて撮影した。すると、その横の木で白い小さなシジミチョウが飛んだ! ジョウザンミドリシジミが2頭いた。たくさんの写真を撮ることができた。路上にはキバネセセリも多かった。すると、キタキツネが現れた。私を見て逃げるのかと思いきや、平然とこちらに向かって歩いてきた。そして、5mほど離れた草むらを通って茂みに消えていった。しっぽが病気なのか白くなっていた。

 午後2時を過ぎ、小雨が降り出したので、ホテルに帰ることにした。帰る途中、もう1頭のキタキツネを見ることができた。こちらは綺麗な個体であった。
 今日もたくさんの撮影ができた。先回の台湾遠征は18日間で43,000枚以上の撮影ができたが、今回の北海道遠征は、今日で7日目であるが、撮影枚数は44,000枚を超えた。北海道が如何に蝶の種類と個体数が多いか、本当に驚かされた。
 明日は、日高山脈の北の端を探索しながら札幌に向かう。
(歩いた距離 5.7km/36.9km)(撮影枚数 5,330枚/44,265枚)

●7月19日  小雨→曇り→薄曇り  帯広市→日勝峠→ちちろルピガーデン→札幌市・定山渓
 今日の目標種も、北海道特産種や特産の亜種である。
 8時にホテルを出て、274号線沿いの林道を探索しながら札幌市に向かうことにした。
 日勝峠は、標高が1000mを越しており、面白そうな場所がいくつかあったが、小雨が降っているので、探索はできなかった。しかし、峠を越した辺りで曇りになり、パーキングがあったので寄ってみると、ヒメキマダラヒカゲが十数頭、樹液に吸蜜に来ているのを見つけ、たくさんの写真を撮ることができた。
 三井の沢林道では、10頭以上のミヤマカラスアゲハが吸水集団を作っており、エゾスジグロシロチョウも集団吸水をしていた。そして、林道の入口に戻ってきたとき、そこにあった人家の庭にたくさんの花が植えてあり、十数頭のヒョウモンチョウ類が集まっていた。そこで車を止めて撮影してみると、ウラギンスジヒョウモンが多く、ウラギンヒョウモンも混じっていることが分かった。すると家の人が出てきたので、「蝶の撮影をしているのですが、よろしいでしょうか?」と聞いてみると、「どうぞ! 私も山の動物の生態写真を撮っています。よろしければ、家の中に写真が展示してあるので、見てください!」と誘ってくれた。そこで、写真を見せていただくことにした。モモンガ、クマゲラ、アカゲラなどたくさんの写真が展示してあった。しばらく懇談した後、お暇することにした。「この近くの"ちちろルピガーデン"には、たくさんの花があるので、寄って行かれるといいですよ。」と教えてくださった。そこで、お礼を言って、さっそく行ってみることにした。
 "ちちろルピガーデン"には、本当にたくさんの花が植えてあり、多数の蝶が飛んでいた。すると、足元の黄色の花に小さなセセリチョウが数頭、吸蜜に来ていた。急いで撮影すると、何と、ヘリグロチャバネセセリであった! 

 その花壇だけで十数頭の個体が吸蜜に来ていた! こんな光景は初めてである。数十カットの撮影ができた。さらに、膨大な数のミドリヒョウモンがいて、その中に後翅の表面が白色になっている斑紋異常の個体を見つけることができた。

 ウラギンヒョウモン、ウラギンスジヒョウモン、アカタテハ、クジャクチョウ、キアゲハなど多数の写真を撮ることができ、そろそろ帰ろうとしたとき、オオモンシロチョウが現れた。数カット撮影することができた。偶然の出会いが貴重な蝶の撮影の機会を与えてくれ、本当に感謝、感謝である。
 明日は、札幌市の南西部の丘陵地を探索する予定である。
(歩いた距離 3.2km/40.1km)(撮影枚数 7,280枚/51,545枚)

●7月20日  曇り  定山渓→札幌・銭函→札幌市
 今日の目標種は、定山渓のジョウザンシジミ、銭函のゼフィルス類である。
 8時に定山渓のホテルを出発し、近くの錦橋付近でジョウザンシジミを探した。しかし、全く見つからないため、定山渓の西部の丘陵地を探索することにした。キアゲハが多く、集団吸水をしていた。オオウラギンスジヒョウモン、クジャクチョウなどを撮影でしたが、奥地は通行止めになっており、そうそうに銭函に行くことにした。
 銭函では、オオミドリシジミ、ミズイロオナガシジミを撮影できた。しかし歩いて探索するには広すぎて、明日の探索のために、植物の生えている状況を確認するため、ゼフィルス類のポイントを車で回って、把握することにした。そして、概要が分かったので、いよいよ明日、その散策を行う。
(歩いた距離 5.9km/46.0km)(撮影枚数 740枚/52,285枚)

●7月21日  晴れ  札幌市→銭函→定山渓→札幌市
 今日の目標種は、銭函のゼフィルス類である。
 8時にホテルを出て、銭函に向かった。昨日、探索したポイント回った。しかし、ゼフィルス類は、ほとんどおらず、いても樹上高く上ってしまい、全く撮影ができなかった。エルタテハ、ジャノメチョウがいたぐらいであった。そこで、札幌市の西部の丘陵地に行くことにした。
 丸山公園、五天山公園へ行ったが、大したものはおらず、定山渓に行くことにした。
 定山渓には、午後1時に着いた。ウラギンヒョウモン、キバネセセリ、カラスシジミ、エルタテハを撮影できたが、新に何か見つかることは難しそうなので、ホテルに帰ることにした。
 明日は、夕方には自宅に着く予定である。
(歩いた距離 4.0km/50.0km)(撮影枚数 1,376枚/53,661枚)

●7月22日  晴れ  札幌市→新千歳空港→自宅
 8時にホテルをチェックアウトし、新千歳空港の近くのレンタカー会社に車を返し、空港に着くことができた。午後5時半には、無事、帰宅することができた。

●エピローグ
 台湾に18日間、遠征した後、10日間後にこの北海道遠征を企画し、10日間の北海道遠征を終え、約1か月間の遠征で、体がボロボロになった感じである。しかし、今回の北海道遠征は、5万枚を超える数の撮影ができ、蝶の密度の濃さは、場所によっては台湾に負けないほどであることを実感できた。
 特に、大雪山のコマクサ平の高山蝶たちは、私の脳裏に強烈な印象を与えてくれた。また、層雲峡のオオイチモンジの圧倒的な存在感、帯広岳への縄文林道や日高山脈の林道の蝶の多さには、本当に驚かされた。
 大雪山や帯広市の林道の奥では、ヒグマの糞が各所で見られ、常に熊スズを鳴らしながら、夢中で蝶の撮影をしたことは一生の思い出となった。
 今回は、目標種の8種類中、7種類が撮影できた。再び北海道に来る機会があれば、ゼフィルス類狙いで、7月の上旬に行きたいと思う。




「台湾の蝶」
「蝶の生態写真集」
「蝶の研究」
杉坂美典」のトップページ
E−mail