『 第15回 台湾撮影旅行記 』

 ・・・・・ モクセイアゲハへの再挑戦 ・・・・・

2017年 3月 27日 〜 4月 7日

       杉 坂 美 典..........
● プロローグ
 昨年の春、2回、のべ15日間、モクセイアゲハの撮影に挑戦した。このチョウは、早春しか出現しないチョウである。昨年の初回は天候に恵まれず、
2回目は、発生地には行けたが、時期が遅いようで、見ることはできなかった。そこで、今回は、満を持しての再挑戦となった。
 今年は、実質10日間の撮影期間があるが、モクセイアゲハは、撮影できるのであろうか…。

● 3月27日  晴れ
 台北のホテルに着いたのは、午後1時半であった。そこで、荷物をフロントに預け、剣南山へ撮影に出かけた。
 剣南路駅までは、台北総駅から、MRTで、約40分間であった。そして、剣南路駅からあるいて10分ほどで、剣南蝶園に着いた。
 階段を上ると、最初に現れたのは、ヒメウラボシシジミの♀であった。新芽に産卵をしていた。発生期は、3月中旬が
ピークのようで、かなり痛んでいたし、2♀♀がいただけであった。さらに階段を上って、少し下ったところに谷があり、たくさんの
チョウがセンダングサに集まっていた。モンシロチョウ、タイワンモンシロチョウ、シロオビアゲハ、クロアゲハ、アオスジアゲハ、ミカドアゲハなどが多か
った。
 さらに、スジグロカバマダラの♂がいて、タイワンキマダラ、ダイミョウセセリも現れた。木陰には、リュウキュウアサギマダラ、タイワンルリシジミ、タイワ
ンキチョウもいた。
 ちょっと時間があるときには、立ち寄ってみると面白い場所である。その後は、山に登る道を進んだが、アオバセセリがいたが、他にはほとんど何も
いなかった。
 アオバセセリは、30分以上も5m四方の空間を飛び続け、全く止まらなかった。不思議な行動であった。アオバセセリの観察を終え、帰路に着いた。
 明日は、烏来の福山村へ出かけ、モクセイアゲハを探す!

台北の街並み

● 3月28日  晴れ
 モクセイアゲハのポイントである烏来の福山部落にある胡蝶公園へ行くことにした。
 昨年、一昨年にこれまで数回、いったことがあるので、ポイントはよく分かっている。これまでは、7時にホテルで出る朝食を食べていたので、ポイン
トに着くと、9時半頃になってしまう。カバシタアゲハやアサクラアゲハは、10時半ころになると河原から離れてしまうので、1時間くらいしか撮影ができ
ない。
 そこで今回は、ホテルで朝食をとらずに、台北を6時の始発に乗り、西門駅で乗り換え、新店駅まで行った。待ち時間は、ほとんどなしであった。さ
らに、烏来行きのバス停に行くと、5分も待たないうちにバスがやって来た。そして、何と、7時には、烏来に着いてしまいいたのである。ここからは、タ
クシーで30分である。
 福山部落に着くと、タクシーの運転手に、馬家という店の前に、午後3時に迎えに来るように伝え、もう少し先にある公園へ降りる下り道まで送っても
らった。代金は、昨年と同じ600元であった。
 7時40分には、河原近くの標識がある場所に着いた。ポイントまで、あと200mである。これまでより、約2時間も早くこれたのである。
 ところが、ポイントに着いてみると、愕然とした! ポイントのすべてが、道になっていたのである。胡蝶公園の遊歩道を延長して、川に橋を架けるつ
もりらしい。工事の車両が入るための道が作られ、機材が置かれていいた。チョウは全くいない。いる訳がない・・・。

 昨年、上流にある堰堤の先に、川渡りをすれば、1ヶ所だけ、同じような河原の環境があることを思い出した。しかし、危険な川渡りをしなければなら
ない・・・。
 でも、行くしかない! そこで、持っていた大きなビニル袋にカメラを3台とも入れ、例え私が水に落ちても、カメラが濡れないようにして、袋ごとリュッ
クに入れた。
 堰堤を超えると、やはり、昨年通りの河原が残っていた。川を渡るルートも同じで行けることが分かった。足は、かなり滑るので、いっぽいっぽ、慎重
に進んだ。水は、膝を超えるところまでの深さであった。そして、渡り始めて15分。ようやく対岸に無事着くことができた。しかし、全く蝶はいなかった。

 時間は、8時20分であった。気温がまだ低いので、ブルーシートを手のひら大に切って、石で固定したトラップをかけてじっくりと待つことにした。
 8時40分頃、ついにカバシタアゲハがやって来た。そして、トラップに降りた。これで、ここに来た甲斐があり、撮影も無事住んでホッとした。すると、
もう一頭、カバシタアゲハがやってきて、トラップに降りた。さらにもう一頭・・・。9時過ぎには、何と12頭ものカバシタアゲハを1フレームに収めることが
できた。昨年は、これが、ミカドアゲハやアオスジアゲハであり、時期が3週間、早いので、全く違うチョウの集まり方であった。しかし、モクセイアゲハは
おらず、それどころか、近似種のアサクラアゲハもいない。モクセイアゲハは、アサクラアゲハを20頭見つけて、その中に1頭いればOKという程度の
確率だそうで、これでは全く駄目だと思った。

 結局、11時まで待ったが、アサクラアゲハでさえも1頭も現れなかった。
 中洲はかなり広いので、いろいろと歩き回ったが、しかし、センダングサが咲いている場所にも、モンシロチョウしか来ていなかった。
 再び、トラップの場所まで戻ってしばらくすると、小型の小さなチョウが現れた。新記録種のマエルリシジミだ! トラップには、全く反応しない。速いス
ピードで飛び回り、目で追うのがやっとである。でも、運よく、3m程離れた岩の上に止まった。急いで忍び寄って、連写。何とか2カット、撮影することが
できたが、直ぐに飛び立ってしまった。後を目で追ったが、下流へ飛び去って行った。
 その後、ヒメアカタテハも台湾での2頭目を撮影することができた。
 そろそろ次の場所へ移る時間になったので、後髪を引かれる思いで、公園を後にすることにした。タクシーの迎えまで、約4時間なので、予定通り、上
の道に戻り、さらにこの渓谷を奥に進んでみるつもりであった。
 カメラを防水袋に入れ、必死の思いで川を渡り、上に道に上がった。11時30分になっていた。
 舗装された上り道をひたすら歩いた。時々、タイワンアサギマダラやアサギマダラが現れてくれるが、他には、何もいない状態が続いた。そして、午後
1時、行き止まりになっている場所まで着いた。すると、そこには、通路があって、さらに先に進めるようになっていた。早速行ってみると、ジャングル状
態であるが、小道があった。ホソバキマダラセセリがいた。しばらく進むと、道が急に下りはじめ、装備がないと降りられない状況になった。そこで戻るこ
とにした。
 行き止まりのフェンスがある場所で簡単に昼食を済ませ、タクシーの待ち合わせ場所に向かうことにした。午後1時20分であったので、ゆっくりと下る
ことにした。
 しばらく進むと、タイワンヤマキチョウが現れた。しかし、止まらないので撮影はできなかった。上りではいなかったルリタテハ、メスチャヒカゲを撮影す
ることができた。
 午後2時頃、胡蝶公園への道を過ぎ、少し行くと、桜の木が花を咲かせていた。すると何かが飛んでいる。キボシアゲハが吸蜜に来ていた! 十数
枚、撮影することができた。さらに、アオバセセリも撮ることができた。それならば、他に桜の木はないかと道を下っていくと、もう一本あった。そこには、
2頭のカバシタアゲハの♀が吸蜜に来ていた。時間ぎりぎりまで撮影をした。そして、ジャスト3時には、待ち合わせ場所に着き、カメラを閉まっている
と、タクシーもやって来た。
 明日は、モクセイアゲハの記録がある烏来の東の渓谷へ行くつもりである。
 
● 3月29日 晴れ
 昨日、タクシーの運転手に、「7時には烏来に着くので、桶後林道へ行きたい」とを告げていたので、新店でバスが予定通りに来るか心配だったが、
そのバスは、MRTが6時27分に着くことを知っていて、乗客を待っていてくれた。6時30分には、予定通り、バスに乗れ、7時少し前には、烏来に着
くことができた。
 タクシーは、ちゃんと待っていてくれ、7時40分には、桶後林道の行き止まりまで行くことがでいた。しかし、途中、数ヶ所、道路工事をしていて、タク
シーはうまく進めなかったので、帰りは、午後3時に迎えを頼んだが、時間通りに来れないかもしれないので、余裕があったら、歩いて戻ってきてくれれ
ば、途中で会えるので、都合が良いことを教えてくれた。OKを出し、帰りは、林道を歩きながら撮影することにした。

 行き止まりの場所からは、歩いて奥に進める道があった。50cmの道で、左側は渓谷で、落ちたらあの世行きである。慎重に歩きながら前に進んだ。
しばらく行くと、崖崩れになっており、先に進むことはできるけれど、河原にも降りられる状況であった。そこで、河原に降りてみることにした。
 中洲には、トラップをかけるのに丁度良い小石の場所があった。しかし、そこに行くには、またまた川渡りが必要であった。しかたなく、水深は膝下で
あったが、再び、靴の中はぐしょ濡れになってしまった。
 トラップをかけ、チョウがやってくるのを待った。しかし、1時間がたっても、全く何もやってこない。9時半まで待ったが、やはり何も来ないので、あきら
めて、元の道に戻り、さらに奥へ行くことにした。10分ほど歩くと、ツツジの花が咲いており、カバシタアゲハ、キボシアゲハがたくさん、吸蜜に来ていた。
足の下のセンダングサにも吸蜜に来ていた。しかし、アサクラアゲハやモクセイアゲハは、着ていなかった。そして、さらに10分ほど歩くと、河原に降り
られ、そこが行き止まりであった。
 しばらく河原を探索したが、何も来ていなかった。そこで、来た道を戻ることにした。崖崩れの場所を超えるのは、本当に大変であったが、無事、渡る
ことができた。後は、タクシーが、午後3時近くに来るはずなので、ひたすら歩くだけであった。
 途中、桜の花に、カバシタアゲハやキボシアゲハがたくさんいる野を見つけ、たくさんの写真を撮ることができた。
 その後は、ほとんどチョウが現れない状況の中、歩き続けた。そして、少し明るくなった場所に出たとき、山側から小さなチョウが飛立ち、川側の低木
の葉上に止まった。 シジミタテハだ! 新記録種である。数枚撮影した。しかし、じっとして全く飛ばない。そこで、木の枝を投げて、飛ばしてみた。
すると、近くの葉に止まった。数枚、撮影することができた。シジミタテハは、あまり飛ばないのでこれまで見つけることができなかったことを実感した。
再度、小枝を投げてみると、今度は、奥の木の向こう側へ飛んで行ってしまった。その周辺に、他の個体がいないかと探したが、見つからなかった。
 その後は、さらに歩いて、午後2時40分、タクシーと出会い、無事、帰ることができた。
 明日は、モクセイアゲハの記録がある熊空に行くつもりである。

● 3月30日 晴れ
 予定通り、烏来の西の山を越えた場所にある熊空に行くため、朝6時の始発のMRTに乗り、板南線の終点の頂埔で降りた。熊空は、モクセイアゲ
ハの記録がある場所である。
 頂埔の駅前にはタクシーが数台いて、便利であった。行先の熊空の蜂蜜世界というバス停を持参した地図で教え、約40分間で着くことができた。
料金は、700元であった。
 バス停で、帰りの時間を調べると、12時と午後3時であった。多少は前後するので、気を付けて、早めにバス停に戻ってくることにした。
 最初に、北東に延びる渓谷に入った。かなり良さそうなポイントがあり、トラップをかけながら、上流に上がっていくことにした。3ヶ所にかけたところで、

道がかなり急になり、渓谷が2つに分かれていたので、左側の渓谷に入った。しばらく登ったが、渓谷が日陰になっていて、何もいない状況であった。
そこで、下山し、右側の渓谷に入った。すると、白い花が咲いている木を見つけた。よく見ると、アオバセセリが飛来していた。数枚、撮影することが
できた。しかし、それ以外は何もいなかったので、3ヶ所のトラップを見に行くことにした。しかし、3ヶ所とも、残念ながら、ルリシジミ類がいたものの、カ
バシタアゲハは飛んでいるが、トラップには降りず、撮影はできなかった。そこで、他の谷に行くことにした。
 渓谷の分岐点まで戻ると、ミスジチョウの仲間が橋の袂で飛んでいた。撮ってみると、ナカグロミスジであった。しかし、それ以外には、クロアゲハ、
イシガケチョウ、ナガサキアゲハがいただけであった。バス停までもどり、南東に延びる渓谷に入った。林道が狭く、良さそうであったが、コノハチョウ、
リュウキュウムラサキ、カバシタアゲハはいたが、モクセイアゲハ、アサクラアゲハはいなかった。
 仕方なしに、午後12時10分のバスで帰ることにした。
 ところが、12時30分になっても来ないし、折り返すバスも上がって行っていない。これは、午後3時まで待つしかないと考え、ここで待っていても仕
方がないので、バス通りを下っていくことにした。すると、40分遅れで、バスが登って行った。そこで、次のバス停まで歩いて行くと、そのバス停横に
タイワンルリシジミの♀がいて、数枚、撮影することができた。そして、バスがやってきて、無事乗ることができた。さらに、途中でバスを乗り継ぎ、MR
Tの終点の頂埔に着き、台北に戻ることができた。
 熊空は、あえてやってくる必要はないと感じた場所であった。
 明日は、天候が悪いので、曇りでもシラホシヒメワモンが狙える七堵へ行こうと思う。

● 3月31日 曇り 後 雨
 天候があまり良くなかったが、七堵へ出かけた。台北から列車で30分、料金は36元であった。着いてみると、北側の山は良さそうな感じであった。
大きな谷は、北西側と北側にあるのせ、最初は、北西側の谷に向かった。
 約1時間かっかて谷の入口に着いた。ところが、その谷は私有地で、検問所があり、通ろうとしたら呼び止められて、入れないことを伝えられた。
仕方がないので、北側の谷に行くことにした。しばらく行くと、雨が降り出したので、今日は諦め、次の機会にチャレンジしてみることにし、台北に
戻った。
 明日は、牡丹駅に行こうと思う。

● 4月1日 雨 後 曇り 後 晴れ
 8時には、雨が上がったので、台北の南東の方向の山の中にある牡丹駅に行き、そこからは歩いて、南の山に行くことにした。台北駅から牡丹駅
までは、列車で1時間20分かかった。着いてみると、渓谷沿いに道があり、なかなか良さそうな場所であった。しかし、台湾には寒気がやってきてい
るみたいで非常に寒かった。チョウは、アサギマダラが1頭、上空を飛んでいるだけで、他には何もいない状態であった。そこで、探索は次回にし、
台北市立動物園内にある虫虫探索谷に行ってみることにした。
 虫虫探索谷は、いつも変わったチョウがいる谷で、楽しみであった。早速、姿を現したのは、ムラサキイチモンジであった。しかし、残念ながら、撮
影はできなかった。そして、ホリシャアカセセリ、アトムモンセセリ、キレバヒトツメジャノメが現れ、突き当りの場所では、ホソバオオウラナミジャノメ、
トビイロセセリを撮影することができた。
 その後は、動物園の近くにある猫空の山にロープウェイで登ってみた。しかし、コヒトツメジャノメ、モンシロチョウがいただけであった。
 明日は、先日、行けなかった七堵の北の山に行ってみようと思う。

● 4月2日 晴れ
 8時20分の列車で、予定通り、七堵の北の山へ出かけた。川にかかる赤い大きな橋を渡ると、北東に入っていく谷があった。そこで、道を登って
行くと、私有地で、通行止めになっていた。仕方がないので引き返し、大きな道路まで戻ると、右側に登山道があった。そこで登ってみたが、階段が
急で、このまま登っていくのは辛いと感じ、再び元の道に戻った。
 メインの道は北の山に続いており、感じが良さそうであった。
 道を数百メートル上がっていくと、右側に小さな小川があり、半日陰になっている小道があった。台湾の東北部にしかいないシラホシヒメワモンは、
このような環境を好むので早速、登って行った。その道は、50m程続いていたが、行き止まりであった。仕方なく戻ることにし、入口近くに来たとき、
目の前にシラホシヒメワモンが現れた。とてもきれいな個体で、羽化直後という感じであった。数枚、撮影したが、残念ながら、ジャングルの奥へ飛
んで行った。しばらく待っていたが、戻ってこなかったので、メインの道の戻り、さらに奥へ進むことにした。

シラホシヒメワモン がいた場所
 しばらく進むと、橋があり、その右側に川に沿って進む道があった。そこで、行ってみると、100m程で行き止まりになったが、キミスジ、テングチョ
ウ、ナガサキアゲハ、リュウキュウミスジ、タイワンホシミスジを撮影することができた。
 元の道に戻って先に進むと、道の左右には、センダングサが多くみられるようになり、ミナミキチョウ、カラスアゲハ、オオルリモンアゲハを撮影する
ことができた。そして、道は、さらに奥へと続いていたが、急に登りがきつくなったので、ここで引き返すことにした。
 先程、シラホシヒメワモンがいた道に入ってみたが、コジャノメがいたものの、シラホシヒメワモンはいなかった。
 今日は、今回の目標の1つであったシラホシヒメワモンが撮れて、運が良い日であった。
 明日は、烏来の福山部落へ行くつもりである。

● 4月3日 晴れ
 天候が落ち着き、川の水量も減っている考え、再度、烏来の福山部落へ出かけた。
 堰堤の下の対岸に良さそうな場所があったので、工事のためにかけてある借り橋を渡って対岸に移り、トラップをかけた。そして、1時間がたったが、
何も現れない。西高東低の気圧配置で、寒気が入っており、気温が低いせいかもしれないと考えた。しばらく待ったが、これはだめかなと思っている
と、工事の人から、借り橋を外すので、こちらへ戻ってくるように言われた。そこで、対岸に戻って、堰堤を越え、先日のポイントへ行くことにした。
 カメラ等を防水袋に入れ、リョックに入れた。今回は、杖の代わりになる木を2本探して、両手に1つずつ持って、4つ足動物のようにして川を渡っ
たので、足が安定していて、川渡りがとても楽であった。しかし、膝上まで、しっかりと濡れた。
 トラップをかけ、1時間ほどすると、アオスジアゲハ、ミカドアゲハが現れ、タイワンタイマイも撮影することができた。しばらくすると、カバシタアゲハ
が現れ、だんだん増えて、6頭を1フレームの中に撮影することができた。キボシアゲハも現れた。しかし、アサクラアゲハは現れす、モクセイアゲハ
も期待薄になってきた。
 明日は、烏来を攻めても仕方がないので、陽明山の南側にある聖人瀑布に行こうと思う。

● 4月4日 快晴
 台北駅からMRTの淡水象山線を使って士林まで行き、そこからは、バスで聖人瀑布まで行った。バスは、30分おきに出ているので便利であ
る。
 聖人瀑布は、観光地で、人がかなり多かった。しかし、滝を見る場所から川には降りられないった。しかし、下りている人がいたので、どこからか
降りられる場所があるはずで、探していると、入口の左に小道があった。そこで、その道に入って行くと、やはり川に降りることができた。

聖人瀑布


聖人瀑布の横を流れる内雙渓
 川は大きな岩石が続くような環境になっており、歩いて上流に楽に上がれる状態であった。そこで、上流に進んで行くと、ツマベニチョウ、ナガ
サキアゲハ、ムラサキイチモンジ、ホリシャミスジを撮影することができた。さらに上流へ行くと、だんだん渓流が狭くなり、岩渡りのルートを見つけ
るのに苦労したが、奥へと進むことができた。すると、ウラキマダラヒカゲ、シロオビヒカゲが現れた。さらに、オオウラナミジャノメ、ウラギンシジミ、
ムラサキシジミなども撮影できた。そして、岩の大きさが上流へは上がれない状況になったので下ることにした。
 聖人瀑布のバス停に戻り、そこからは、舗装された道を歩いて、山に入ることにした。
 左側の道を進むと、日当たりのよい場所に、タイワンホシミスジが占有行動をしていた。さらに進むと、山際の日陰には、オオウラナミジャノメ、
コウラナミジャノメ、タイワンウラナミジャノメの3種が同じ場所で見ることができた。そして、しばらく登ったが、同じような環境なので、戻ることに
した。すると、最初の分岐点の所で、ムラサキイチモンジが吸蜜しており、その場を離れないので、たくさんの写真を撮ることができた。
 分岐点の右側の道を登ってみたが、環境が開けすぎていて、モンシロチョウ、タイワンモンシロチョウ、タイワンイチモンジがいただけであった。
そこで、聖人瀑布の下流の道を進んで見ることにした。テングチョウ、ヤエヤマイチモンジ、タイワンイチモンジなどがいたが、大したことはなく、
観光客が多く、午後2時を過ぎたので、台北に戻ることにした。
 明日は、陽明山の標高の高い場所から南側の斜面を下っていき、その途中にある絹糸瀑布に行くつもりである。

● 4月5日 晴れ
 北の駅裏にある陽明山行きのバスに乗るため、いつもの場所に行くと、昨年までは、バス停に屋根がないため、日差しが暑かったが、今年は、
屋根がある待合所ができていた。朝7時45分に陽明山行がやって来た。約1時間で、陽明山総站に着くことができた。この7:45のバスは、総
站に行くが、8:00のバスは、陽明山公園まで行ってしまうので、バス停陽明山で降りなければならないので、なかなかややこしい。
 陽明山総站から、最初は、歩いて行ける横峰古道に行くことにした。歩いて10分で、古道の入口に着いた。早速、古道に入ってみると、古道
が山の北側にあるので、日陰になっており、チョウが全くいない状態であった。そこで、すぐに諦め、総站まで戻り、かつてアリサンクロセセリがい
た鞍部站の先にある大屯溪の源流部に行ってみることにした。
 駐車場の横の小道を降り、うっそうとした林の中を進んで行った。そして、約30分で源流部に着くことができた。しかし、アカタテハがいたもの
の、アリサンクロセセリはいなかった。しばらく周辺を探索し、もう少し下流部まで探したが、何もいなかった。仕方がないので、二子坪まで歩い
ていき、さらに、大屯山自然公園に行くことにした。
 10時30分には、大屯山自然公園に着いた。かつては、カルミモンシロチョウが発生したことがある場所である。池のほとりに行くと、白い花の
桜が満開であった。近寄ってみると、キボシアゲハ、アサクラアゲハが数頭、吸蜜に来ていた。11時00分まで撮影した。そして、山を一回りして
11時20分に桜の場所に戻ってくると、何と、全く蝶がいなくなっていた。この時間になると吸蜜を終え、どこかへ飛翔してしまうのだろうか。同じ
現象を昨年、烏来の福山部落でも見ており、このような習性があるのかもしれないと思った。

陽明山にある 大屯自然公園
 そこで、違う道をたどって、山の周辺を探すことにした。周回する道夫を外れた小道に入ると、小さな褐色のチョウが背の高さ位の木の上を飛
んでいた。近寄ると、シジミタテハであった。数枚、撮影することができた。本当にこの蝶は、なかなか飛ばないので、撮影するチャンスが少ない。
運よく飛んでいるのを目にしないと、その場を通り過ぎてしまうからである。シジミタテハは止まったまま動かないので、小枝を投げて飛ばしてみ
ることにした。すると、背の高い木の葉の先端で、占有行動をする格好で止まった。何とか、撮影することができた。そこでさらに木を少しゆすっ
てやると、飛び立って林の奥へ消えて行った。
 そして、大屯自然公園を離れ、二子坪まで歩いて行って、12時には、冷水坑を通る周回バスに乗ることができた。
 冷水坑からは、歩いて絹糸瀑布まで行き、さらに下って、バス道路まで行って、台北へ帰る予定であった。
 12時20分には、渓谷への入口に着くことができた。早速、道を進んで行ったが、何もいない状態で、さらに樹林の中の階段を下りたり、上が
ったりする道で、足元を見ながら歩かなければならず、撮影もままならぬ状況であった。所々、日差しが差す明るい場所に出るので、チョウを探
してみるが、ウラフチベニシジミ、タイワンルリシジミがいただけであった。
 約1時間歩いたころ、渓谷に橋がかかり、明るくなっている場所に出た。すると、褐色の小さなチョウが岩の上を飛んできた。急いて近寄ると、
何と、シジミタテハであった。傷のない個体で、数枚撮影することができたが、1分もたたない内に、樹林の中へ消えていった。しかし、2頭もシ
ジミタテハを見ることができるなんて、本当に運のよい日であった。
 そこからは、恐ろしい位、下りの傾斜がきつい階段に出た。まだ下る方なのでよいが、登ってくる人は、本当に大変だと思った。そして、20分
ほど歩くと絹糸瀑布に着いた。何かいないかと探したが、全く何もいなかった。そこで、下山することにした。
 渓谷を出て、公道に出るとると、劍潭站行きのバス停があり、午後2時30分のバスに乗り、約1時間で台北に戻ることができた。
 明日は、最後の撮影日である。目標のモクセイアゲハの最後のチャンスなので、烏来の福山部落に行くつもりである。

● 4月6日 晴れ 後 曇り
 春の台湾遠征の最後の一日となった。後悔のないように、烏来の福山部落の胡蝶公園へ行った。
 台北を6時の始発のMRTに乗り、西門で乗り換え、これまで通り、6時27分には、新店に着くことができた。バスは、バス停に着いていて、6時
には出発した。そして、烏来には6時55分には着くことができた。すると、この間使ったタクシーが待っていてくれた。そこで、この間と同じで、福
山部落の胡蝶公園へ行き、帰りは午後3時に大羅蘭に迎えに来るように頼んだ。
 胡蝶公園の工事は、少し進んでいて、橋を架ける足下駄が完成していた。その横を通り過ぎ、堰の上へ出た。この開いた隠しておいた杖を探
すと、ちゃんとあってホッとした。そして、無事、対岸へ渡ることができた。しかし、時間が7時50分で、チョウが飛ぶ時間としては早いのでやはり
何もいなかった。
 早速、トラップを仕掛けた。ブルーシートの切れ端に加え、昨日、購入した赤と水色のパッケージのお菓子の中身を出し、パッケージを置いた。
準備完了である。
 8時30分頃、ようやくタイワンルリシジミがやって来た。さらに、ホリシャルリシジミがやって来た。そして、カバシタアゲハも姿を現し、トラップに
来た。
 9時30分頃、新記録種のキスジチャバネセセリが現れ、たくさんの写真を撮ることができた。撮影に夢中になっていると、アサクラアゲハが1頭、
トラップの近くを通ったが、トラップには止まらず、そのまま下流へ飛び去って行った。ひょっとして、モクセイアゲハかもと都合の良い考えが浮か
んだ。さらに、9時40分頃、もう一頭やって来たが、やはりそのまま下流へ飛んで行った。
 次にやって来たのは、ミカドアゲハで、トラップに止まった。カバシタアゲハの数がどんどん増えだし、10時頃には、8頭ほどがトラップに集まり
だした。
 天候がだんだんと悪くなり、空全体が曇ってしまった。しかし、蒸し暑さが増し、トラップにはたくさんの蝶が集まるようになった。
 ふと、上流を見上げると、アサクラアゲハがやって来た。運よく、トラップのすぐ近くに降りた。
2枚連写した。撮った! えっ!! アサクラじゃない! モクセイアゲハだ!! さらに、連写した。数分すると、下流へ飛び去って行った。そこ
で、写真がきちんと撮れているか確認した。バッチリ、ピントが合っていた! やった!! 大声を出して叫んだ! その後、上流からもう一頭が
やって来た。カバシタアゲハの中に飛び込んで、トラップから離れようとしない。十数枚の撮影ができた。さらに、もう一頭のモクセイアゲハが下流
から現れ、2頭一緒の写真を撮ることができた。そして,1頭が下流へ姿を消し,その後,しばらくしてから,もう1頭も下流へ飛んで行った。

モクセイアゲハ
 カバシタアゲハは、11時20分になると、全てのチョウがトラップから離れ、周辺を飛び回るようになり、その後、姿を消してしまった。
 これでは、モクセイアゲハは、もうやって来ないだろうと思っていると、何と、単独で現れ、その後,飛び去ったが,さらに下流からもう1頭が現れ,
午後12時40分過ぎまでトラップにいたが,その後,上流へ飛び去った。結局、計5頭のモクセイアゲハが入れ替わり立ち代りにトラップに来た。
そして、計1416枚を超える写真を撮ることができた。
 結局、アサクラアゲハは1頭もおらず、全てモクセイアゲハだった。本当に不思議なことである。
 午後2時まで同じ場所で粘ったが、もう現れそうもないので、カメラを防水袋に入れ、荷物をまとめ、川渡りをして、公道に戻ることができた。
 ゆっくりと下山しながら、他の蝶を撮影し、午後3時にタクシーが来たので、無事、烏来まで戻り、台北へ着くことができた。

● 4月7日 雨 後 曇り
 帰国する日に雨になり,この12日間,天候に恵まれ,本当に幸運であった。
 チェックアウトまで時間があるので,昨日撮ったモクセイアゲハの写真の整理をすることにした。すくなくとも4頭はいて,撮影した時間を個体ご
とに分析すると飛翔活動の分析ができることが分かった。膨大な時間がかかりそうであるが,面白そうなデータであった。夢中で作業をしていた
ら,チェックアウトの時間になった。
 台北から桃園国際空港まで,これまではバスで移動していた。ところが,行ってみるとバスターミナルがない! そういえば,台北から桃園国際
空港までのMRTが完成していたので,撤去してしまったのであろう。仕方なしに近くにあるMRTの駅へ行ってみると,普通と快速の2種類のM
RTがあり,快速に乗り,無事,桃園国際空港に着くことができた。時間的には速いので,ありがたかった。

● エピローグ
 昨年から,のべ25日間、モクセイアゲハを狙った。そして、最後の一日に出会うことができ、たくさんの写真を撮ることができるとは、本当に運
が良かったと思う。
 今後、春の台湾に来る予定はないので、今回のモクセイアゲハ、マエルリシジミの撮影ができたことは、嬉しい限りである。
 特に、モクセイアゲハの出現期については、たくさんの情報を集めた。そこで、発生のピークを4月2日頃と予想し、今回の旅行を計画した。
しかし、今年の台湾は、天候が良かったが、寒気に覆われ、気温の低い日が続いたため、モクセイアゲハの発生が遅れた感じがした。
 これで台湾のアゲハ類ビッグ5のフトオアゲハ、コウトウキシタアゲハ、モクセイアゲハ、アケボノアゲハ、ホッポアゲハを無事、撮影することが
できた。幸運に感謝である。




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