『 第16回 台湾撮影旅行記 』

2017年7月10日〜8月2日

..・・・・・ 夏の台湾の珍蝶を探して 1 ・・・・・..

       杉 坂 美 典..........
● プロローグ
 今回の遠征は、台湾の貴重な蝶の写真を提供してくださった林本初氏にお会いして、直接、感謝の意をお伝えすることが一番の目的である。そして、拉拉山でオスアカミスジ、スミナガシ、谷関の八仙山でイナズマチョウ、埔里で高山蝶、台南でツバメシジミ、タイワンツバメシジミ、新北市でカメヤマウラナミジャノメの撮影ができれば最高である。どこまで撮影ができるかは、探求心と運次第である。長い1ヶ月間がスタートした。

● 7月10日  晴れ
 桃園国際空港には、12時半には着くことができた。早速、林さんと電話でお話することができた。そして、今後、連絡を取り合っていくことを話した。この空港からの移動はタクシーを使った。午後2時には、上巴陵に着くことができた。そこで、直ぐに支度をして、上巴陵の西の山へ行くことにした。そこは、自然開発がされておらず、たくさんの珍蝶が集まる場所である。最初に姿を現したのは、タイワンオオシロシタセセリである。♂と♀がセンダングサに吸蜜に来ていた。シロシタセセリも数頭いて、キマダラコチャバネセセリもいた。さらに道を進むと、アオバセセリ、トビイロセセリがおり、オオベニモンアゲハもいた。そして行き止まりまで行ったので戻ることにした。帰りは、ホソバオオウラナミジャノメ、ホソバキボシセセリを撮ることができた。時刻は、午後4時であったので、すぐ下の道に入ってみた。すると、ワイルマンクロヒカゲ、ワモンチョウがいた。そして、少し開けた場所に出ると、何と、オオムラサキが4頭、上空を飛び回っていた。さらに少し離れた木の葉の上に、オオムラサキの♀が翅を開いて止まっていた。少々痛んでいたが、満足のいく写真を撮ることができた。スミナガシもやって来たが、木の葉に隠れており、あまりきれいではなかったが、数枚、撮ることができた。3時間の撮影であったが、充実した時間を過ごすことができた。
 宿へ戻ってから、林さんと連絡を取り、いろいろ教えていただくことができた。
明日は、早朝に上巴陵のポイントに寄ってから、拉拉山の南西の麓へ行くつもりである。

● 7月11日  晴れ 午後 雷雨
 今日は、拉拉山の麓の林班口の手前にある山の斜面に入ることにした。林班口へのバスは、上巴陵に8時45分くらいに着くそうなので、それまでは、上巴陵の西の山へ行くことにした。最初に、昨日、オオムラサキがいた場所に行った。やはり、オオムラサキはいたが、スギタニイチモンジやタカサゴイチモンジが強く、追い払われてしまうので、写真を撮ることができなかった。オオムラサキは、体が大きいのに、タカサゴイチモンジに負けてしまうとは、不思議なものである。数十枚の写真が撮れたので、本命の場所に向かった。昨日、珍蝶がたくさんいた場所に入ったが、大したものはいなかった。朝は、日陰になってしまう場所が多いので、良くないかもしれない。それでも、タイワンキマダラヒカゲ、シロオビクロヒカゲを撮ることができた。バスが来るまで、後、40分になったので、下山することにした。途中、タイワンタイマイがミズキの花に来ており、納得のいく写真を撮ることができた。バス停には、8時35分には着くことができた。台湾のバスは、到着時刻は適当なので、十分、余裕があると思っていたが、何と、2分後には、バスが来た! 1日に2本しかなく、朝は、これしかないので、本当に運が良かった。おかげで、9時少し前には、永隆農場のバス停に着くことができた。道を進むと、予定通り、左の谷に下りる道があった。その道を進んでいくと、センダングサの群落があり、珍蝶のシナオオチャバネセセリ、ニトベミスジ、タイワンキマダラヒカゲを撮影することができた。行き止まりは、桃の果樹園であった。そこで、元の道まで戻り、バスの終点の林班口まで歩いていった。約20分の行程であった。林班口の左の谷には、センダングサの群落があり、ニイタカキマダラセセリ、ウスアオオナガウラナミシジミ、ホリシャキコモンセセリ、タイワンキマダラヒカゲ、タイワンヤマキチョウ、ワタナベシジミを撮ることができた。そこで、拉拉山の奥へ行こうと、しばらく進んだが、昨年と同じ状況で、何もいない状態が続いた。そこで、先程の西の谷に戻ることにした。まだ、入っていない道があったので、早速、入ってみると、ヒゲジロキコモンセセリ、ワタナベシジミを撮ることができた。ところが午後1時を過ぎた頃から、空が曇り始め、あっという間に豪雨になった。雷が鳴り、危険を感じたので、早く上の道に戻ることにした。午後2時30分には、上の道のバス停に着くことができた。バスは、少し遅れでやって来たが、無事、上巴陵に戻ることができた。
天気予報を見ると、しばらくは曇り時々雨の日が続く予報なので、移動にバスは使わず、歩いて行ける北西の谷か南東の谷に行くつもりである。

● 7月12日  晴れ 午後 雷雨
 昨夜は、ずっと雨だったので、今日も雨かと思っていたが、起きてみると快晴であった。しかし、いつ雨に降られるか分からないので、歩いて行ける南東の谷の下の道に行くことにした。
 6時半に起き、近くの店で朝食を済ませ、7時半に宿を出た。南東の谷は、早朝は山の影になっているので、まずは、西の山に行くことにした。
途中のミズキの花のポイントでは、タイワンカラスアゲハを撮影することができた。そして、ポイントの下の道では、ホリシャイチモンジが路上に止まっていて、きれいな写真を撮ることができた。さらに、少し進んだ場所では、スミナガシが止まっていて、数枚、撮ることができた。しかし、その奥のオオムラサキのポイントには、何もいなかった。夕方が良いのかもしれない。
 その後、元の道に戻り、本命の南東の谷に向かった。山を少し下った場所では,エサキキコモンセセリ,カノウラナミジャノメ、スギタニイチモンジ、タカサゴイチモンジを撮ることができた。
 9時になったので、山を下り、南東の谷の下の道に入った。
 道は、グーグルマップで調べた通り、平坦な道で、とても歩きやすかった。最初に現れたのは、アカボシゴマダラであった。路上で吸水していたので、たくさんの写真を撮ることができた。道を進むと、ヒカゲチョウ類が次々と姿を現し、ワモンチョウも十数頭は見ることができた。しかし、ワモンチョウは時期が遅く、痛んでいるものばかりであった。さらに進むと、オオムラサキの♂が地面に止まっていた。痛んでいたが、間近で撮影することができた。さらにオスアカミスジの♂を見つけた。数枚、撮ることができたが、とても敏感で、すぐに飛び去ってしまった。ところが、続いて♀が現れ、地面に止まって逃げようとしない。たくさんの写真を撮ることができた。さらに道を進むと、少し離れた場所に、オスアカミスジの♂が飛んでいるのが見えた。そこで、そっと近寄ると、とてもきれいな写真を撮ることができた。
 南東の谷に入ってから約3時間が過ぎた。スギタニイチモンジ、ホリシャイチモンジ、タカサゴイチモンジがたくさんおり、ホウライコムラサキも撮影することができた。昼を過ぎていたので、雨が心配で、そろそろ引き返そうと考えていたとき、峠に差し掛かり、右に降りる小道があった。そこで入ってみると、何と、スミナガシが3頭いて、テリトリーを作り、直ぐに止まるので、たくさんの写真を撮ることができた。
 午後1時になったので、引き返すことにした。途中、ホウライコムラサキが数頭、現れ、ワモンチョウが6頭も樹液に集まっているのを見ることができた。
 午後2時を過ぎると、やはり雨が降りだした。急ぎ足で宿に向かい、午後3時には、着くことができた。その後、どしゃ降りになり、こういう天気が続くのかなと思った。
 明日は、晴れていたら、南東の谷の上の道に行くつもりである。

● 7月13日  終日 晴れ
 7時00分に、西の山に入ったが、さすがに早すぎて、ほとんどチョウはいなかった。そこで、下山し、南東の谷の上の道にいくことにした。
 町から右に降りて、直ぐに左に入った。登りがきつかった。しかも、延々と登りが続いている。これはヤバイと思ったが、行くしかないので登り続けた。途中、キマダラコチャバネセセリがいたり、ミツボシフタオツバメがいたりしたが、車の往来が多く、予想外の道であった。
 地獄の登りを3時間程歩いたら、ようやく平坦な道になった。しかし,環境が整備されていて、大したものがいなかった。それでも、そのまま進んで行くと、ようやく、脇道が見つかった。入ってみると、オスアカミスジが現れ、ナカグロミスジもたくさんの写真を撮られてくれた。しかし、直ぐに行き止まりになり、元の道に戻るしかなかった。
 そこから先の道は、割合に平坦であったので、奥へと進むことにした。脇道があったので入ってみると、シロツメクサの群落があり、珍蝶のモンキチョウを撮影することができた。さらに、ホウライコムラサキ、オスアカミスジ、アカボシゴマダラ、タカムクウラナミジャノメを撮ることができた。そして、いくつかの脇道に入ったが、エサキキコモンセセリ、シナオオチャバネセセリ、シロオビクロヒカゲを撮影出来たが、他には大したものはいなかった。そして、正午になったので、帰ることにした。
 途中、ホウライコムラサキ、オオムラサキ、ナカグロミスジを撮影することができた。
 このルートは、登りがきつく、車の往来が激しいので、撮影コースとしては良くないことが分かった。
 午後3時半には宿に着いたが、天気は良いので、そのまま、再度、西の山に行くことにした。しかし、キマダラコチャバネセセリがいたくらいで期待外れであった。
 明日は、上巴陵の終日撮影できる最終日なので、再度、南東の谷の下の道を探索しようと思う。

● 7月14日  終日 晴れ
 予定通り、南東の谷の下の道に入った。しかし、2日前とは、かなりチョウの種類が違っていた。ホリシャイチモンジが時々、姿を現し、スギタニイチモンジも多かった。オスアカミスジは、♂がよく見られ、♀はほとんどいなかった。2時間ほど歩いた場所で、ワモンチョウが8頭ほど集まって飛んでいるので、何かあるのではと周辺を探してみると、樹液の出ている木があった。そこには、新鮮なワモンチョウ、スミナガシ、オオムラサキ、コノハチョウもいた。たくさんの写真を撮ることができた。
 さらに道を1時間ほど進むと、峠に出た。1昨日は、スミナガシがいた場所である。しかし、全くいなかった。奥まで行ってもヒカゲチョウ類ばかりであった。諦めかけていた時、草むらから小さなチョウが現れた。「ルーミスシジミだ!」 2カット、撮ることができた。さらに撮ろうとカメラを構えると、パッと飛び立ち、直ぐ上のカシ類の木の樹上に飛んでいってしまった。しばらく待っていたが、降りてくる気配はないので、あきらめて峠まで戻ることにした。
 峠までの途中、ホウライコムラサキが木の葉の裏に隠れていた。タイワンコムラサキは、午前中に占有行動をし、ホウライコムラサキは、午後から占有行動をすることが、この数日の観察で分かった。
 そこで今日は、峠からさらに奥へと進むことにした。道は、下ったり、登ったりが激しく、かなりキツイ行程であった。1時間ほど進むと、川が流れる音がしてきた。そこで、かなり急な下り道であったが、降りてみることにした。しばらく進むと、渓流が流れる場所に出た。オスアカミスジの♂がいて、撮影することができた。道に水がしみ出している場所では、アゲハチョウ類が集まっていたが普通種ばかりであった。そこから道はかなり急な登りになり、しばらく進んだが、ニイタカキマダラセセリがいたぐらいであったので、下山することにした。
 途中、峠のルーミスシジミがいた場所に行ってみたが、やはりいなかった。しかし、スミナガシが1頭、占有行動をしていたので、撮影することができた。
 帰り道では、樹液の出ている場所に行ったが、全く何もいなかった。樹液に集まるのは,午前中だけなのかもしれない。不思議なことである。一昨日には、ホウライコムラサキがたくさんいた場所も探索したが、全くおらず、こうも変わるものかと驚いた。
 明日は、谷関へ移動である。

● 7月15日  終日 晴れ 
 上巴陵を10時少し前のバスに乗り、約2時間半かかって、桃園站に着くことができた。そこで、列車に乗るため、豊原站までの切符を買おうと切符売り場に行くと、その日の列車の座席指定は、全て満席で、席のない切符ならあるという状況であった。仕方がないので、自強号(特急列車)の席なしに乗ることにしたが、それでも列車に乗るまで1時間待ちであった。私は,大きな荷物があるので、列車の内部に乗ることができず、出入り口の冷房の効かない場所で、豊原站に着くまでの1時間半、乗ることになった。幸い、キャリーバックが座れるようになっているので、厚さだけが苦痛であった。午後3時、ようやく豊原站に着いた。ここからはタクシーなので楽であった。そして、谷関のホテルに着いた。ホテルの前はコンビニがあるので、ここでの4泊は快適に過ごせそうである。
谷関に移動するには、新幹線を使って桃園站から台中站まで行き、そこからタクシーを使うコースが良いことが分かった。
明日は、八仙山森林遊楽区に行く予定である。

● 7月16日  晴れ 夕方 雷雨
 8時に宿を出て、川向こうの北の谷に入ってみた。しかし、谷全体が日陰になっており、何もいない状態であった。そこで、八仙山森林遊楽区に行くことにした。宿からの距離は4.5kmほどで、道は緩い登りである。川沿いの道なので、何かいるはずと探しながら歩いたが、ほとんど何もいない。1時間ほど進んだ所に、川を渡る橋があり、その両岸に上流へ続く小道があった。そこで,行き止まりになる場所まで行ったが、ウラナミシジミがいただけであった。そこで、元の道に戻り,その道を進むと、車は進入禁止になっている脇道があった。そこで、その道に入ってみると、ホリシャミスジが現れ、オスアカミスジの♂の写真を撮ることができた。しかし、他にはほとんどチョウはいない。仕方なしに、また元の道に戻り、八仙山森林遊楽区の登山口まで行った。午後1時になっていた。バス停があり、土日のみの運行で、1日に2往復しかないが、バスで来ることができることが分かった。バスが来るのは、午後2時35分なので、それまでの時間は、八仙山への道を探索することにした。マダラチョウ類が花に集まっており、ムラサキツバメもいたが、痛んでいたので撮影しなかった。タイワンコムラサキもいた。バス停に戻る時間になったので、登った道とは違う道で降りることにした。レンガが敷き詰めてある場所に出た。すると、何か黒いチョウが飛んでいる。近寄ってみると、何と、イナズマチョウではないか! 新鮮な個体で、レンガの間の水分を吸っている。少し飛んでは歩き回るのを繰り返していたので、100枚を超える写真を撮影することができた。時間にして数分間であるが、最高の時間を過ごすことができた。その後、イナズマチョウは、山の方へ飛び立っていった。帰りは,八仙山森林遊楽区からバスで谷関温泉まで戻ることができた。
 バス停についてから,そこに書いてある時刻表を確認すると,谷関温泉から八仙山森林遊楽区へのバスは,土日しか,運航していないことが分かった。
 宿へ戻って写真をみると、動画にできそうなのでやってみると面白い動画ができた。
 明日は、街の東と北の山を探索する予定である。

● 7月17日  雨 
 久しぶりに朝から雨になった。止む様子もなく、今日は、写真の整理に充てることにした。
 明日は、バスで松鶴まで行き、松富農場の周辺を探索する予定である。

● 7月18日  終日 晴れ
 予定通り、バスで松鶴まで行った。帰りのバスは、1時間に1本あるので、適当な時間で切り上げることができるのでありがたい。橋を渡って、町を抜け、予定通り、松富農場への道を進んだ。車はほとんど通らないし、川沿いの道で環境的にもよい感じだった。しかし、チョウはあまりいない。谷関は、特別な蝶はいるが、全体的にチョウの種類も個体数も少ないことが分かった。
 しばらく進むと、中型のタテハチョウが姿を現した。ダイミョウキゴマダラであった。数枚、撮影することができた。さらに道を進むと、道の湿った場所に、アゲハチョウ類が吸水に来ていた。その中にタイワンカラスアゲハがいて、数枚、撮影することができた。道は、さらに奥へとつながっていた。しばらく進むと脇道があったので入ってみた。すると、センダングサの群落に新鮮なミツボシフタオツバメが2頭いたので、きれいな写真を撮ることができた。しかし、それから1時間ほどは急な登り道を進んだが、大したものはいなく、さらに道が行き止まりになり、引き返すことにした。
 山を下り、バス停まで20分の町の端に着いた時、ベニモンシロチョウが1頭、飛んでいるのを見つけた。止まってくれないものかと願っていると、何と、斜面のセンダングサに止まったではないか! 台湾南部の桃源で撮った以来である。しかも完璧に撮れた! 止まったのは一瞬であったが、飛翔行動を観察していると、この広い空間から離れようとしないことが分かった。さらに、崖から50m程下の空き地に植えてある白いランタナの花に止まったではないか。しかも2♂♂1♀の3頭がいることが分かった。そこで、急いでその空き地に向かった。
 そこは、駐車場になっていて、白や赤のランタナが植えてあった。そして、ほとんど飛び続けているベニモンシロチョウが、たまに白や赤のランタナにやってきて、吸蜜することが分かった。数十枚の写真を撮ることができた。ところが、その3頭とも、そこにいたのは20分間ほどで、一斉に姿を消してしまった。幻を見ていたようであった。何もいなくなったので、バス停に戻ることにした。バスが来るまで、少し時間があったので、北側の山に登ってみた。シロスジマダラ、ヒメフタオチョウ、ホシボシキチョウがいた。ホシボシキチョウは飛び続けていて止まらないので、1カット撮れただけであった。
 時間になったので戻ると、計算していたより早くバスが来て、無事、谷関に戻ることができた。
 明日は、埔里に移動である。バスを使うこともできるが、時間がかかりすぎるので、タクシーを使うことにした。

● 7月19日  晴れ 夕方 雷雨
 今日は移動日で、予定通り、谷関から埔里へタクシーで移動した。約2時間かかった。
 埔里では、コインランドリーで洗濯をしたり、果物を買ったりして、明日から7日間の撮影日に備えた。
 明日は、バスで、梅峰(標高2067m)へ行くつもりである。

● 7月20日  晴れ 夕方 雷雨
 今日は、バスで、標高2000mを超える梅峰まで行き、そこから山の斜面の道を8q歩いて、仁壮まで行くことにした。
 梅峰のバス停を降り、500m国道を歩いて、ようやく斜面に降りる入口に着いた。すると、小さな木の周りを褐色のシジミチョウが舞っていた。「止まってくれ!」と願っていると、本当に止まった。「タカサゴミドリシジミだ!」 十数枚を撮影することができた。しかし、次の瞬間、密林へと飛び去って行った。でも、手応えのある写真を撮影できた確信があった。急いで確認すると、ジャスピンであった!「やった!!」、思わずで叫んでいた! 
 山の斜面に入ったが、初夏に比べると、格段にチョウの数が少ない。やはり、6月がベストなのであろう。
しばらく進むと小道があり、入ってみると、珍蝶のミヤマウラナミジャノメがいた。標高2000mを超えると、やはり出てくるものが違うと感じた。ヤマナカウラナミジャノメ、タカムクウラナミジャノメ、タカムクシロチヨウなどの高山蝶を撮影することができた。しかし、1時間もすると、道は乾燥した果樹園を通る道になり、結局、仁壮までの4時間は、何もいない状態であった。
 歩き始めて5時間後の午後2時に仁壮に着いたので、10分も歩けば、ナールー湾に行けるので、行くことにした。
 ナールー湾では、スギタニイチモンジ、ヤマナカウラナミジャノメ、タカムクウラナミジャノメを撮影でき、きれいな夏型のホッポアゲハの♂を撮影することができた。
 その後、バスに乗って、国民賓館まで行き、北側の道を探索したが、ほとんど何もいない状態であった。
 明日は、再度、高山地帯の翠峰に行き、徐々に山を下ってみようと思う。

● 7月21日  晴れ 夕方 雷雨
 7時10分発の翠峯行きのバスに乗り、約2時間後の9時丁度に翠峰(標高2289m)のバス停に着いた。
 山を下り、キャンプ場を経由して、三角峰林道に入った。ミズキの花には、高山蝶のタカサゴミヤマシロチョウ、ワイルマンシロチョウが吸蜜に来ていた。さらに道を進むと、新鮮なアケボノアゲハの♂が現れた。しかし、花には止まらず、飛んでいるだけなので、撮影することはできなかった。三角峰林道は、400m程で急な登りになったので、先に進むのは諦めて、国道に戻り、梅峰まで歩いていくことにした。
 国道の両側の草むらには、ミズキやセンダングサが生えているが、チョウは全くいない。7月の高山地帯は、天候が良くても、チョウの最盛期が過ぎていることを再度、実感した。しばらく歩いていると、タイワンタイマイ、テングチョウが現れたが、花には止まらず、飛び去っていった。
 梅峰に着く手前で、ミズキの花に黒っぽいアゲハチョウ類が吸蜜に来ているのが見えた。走っていくと、何と、ホッポアゲハの♂であった。数枚、撮影出来たが、あっという間に飛び去って行った。確認してみると、1枚、納得のいく写真が撮れていた。
 その後、昨日行った梅峰から南下する林道に入り、ミヤマウラナミジャノメのポイントまで行ったが、高山蝶のタカムクウラナミジャノメがいただけだった。仕方なく、国道まで戻り、午後1時のバスに乗って、本部溪にいくことにした。
 本部溪の入口では、毎回のごとく、たくさんの蝶が出迎えてくれた。高山地帯とは、全く別天地である。
オナシモンキアゲハ、ヤエヤマイチモンジを撮影した。しばらく行くと、やや明るい草むらから、カバタテハが現れた。2頭いたので十数枚、撮影することができた。そしてさらに道を進むと、様子が一変した。昨年の秋、台風が連続して台湾に上陸したので心配していたが、本部溪の河岸に木々は全くなくなっており、道は復旧されているものの、チョウは全くいない状態であった。その状態は、道が山に登る場所まで続いていた。河川沿いの道の約3分の2は、崩壊した状態になっていたのである。これが元の状態に戻るには、何十年かかるか分からない状態である。仕方なしに、今日は、ここで引き返すことにした。途中、フタオチョウが現れ、数枚、撮影することができた。数日後には、再度、本部溪を訪れ、山道を探索してみようと思う。
 明日は、梅峰へ行き、別の林道を探索し、その後、南山溪に行こうと思う。

● 7月22日  晴れ 時々 曇り
 梅峰には、8時50分には着くことができた。今、台湾も夏休みの真最中で、高原地帯への国道は大渋滞である。
 梅峰からは、台湾大学の演習林の横を通る道があるので予定通り入ってみた。しかし、かなり暗い場所で、何もいない。森を抜けると今度は、畑で、何もいない。このルートは、撮影には向いていないことが分かった。さらに先に進むと、マップ上ではみちがあるのに、実際は、道がない。2回ほど、突き当りを2回ほど行ったり来たりしていると、マップ上にある道が見つかった。何と、ジャングルの中に入っていく獣道であった。仕方なしに入っていくことにした。すると、人が1人、ようやく通れるような小道が続いていた。スマフォのナビでもあっていた。そこで、道をどんどん進んで行くと、今度は、小道が地図から外れるようになってきた。しかし、戻るわけにはいかないし、大体の方角はあっているので、先に進むことにした。1時間くらいは、ジャングルの中を進んだ。するとようやく部落の中の道に続くことが分かった。そして、ついに舗装された道に出た。スマフォがなければ、完全にアウトであった。この道は、絶対に行ってはならないことが分かった。そして、松崗のバス停に着くことができた。
 バスは、始発なので、南山溪へは、楽に行けると思っていた。ところが、バス停に着くたび、大勢のトランクを持った人たちが乗り込んできた。そして、あっという間に、バスは大混雑になり、何となく予感がしたので、最前列の席に座っていたが、それでもバスの昇降口までトランクで埋まり、降りる人がいると、何人かが外へ出て、通路を開けなければならない状態であった。
 1時間半後、バスは、ようやく南山溪に着いた。下車鈴を押し、「降ります」と中国語で言って、ようやく、通路を開けてくれて、無事、降りることができた。7月下旬の土日の高原地帯は、行くべきではないことが分かった。
 南山溪に入ると、最初に姿を現したのは、何と、ベニモンシロチョウであった。ランタナの花に止まってくれたので、たくさんの写真をとることができた。この部落のあちこちで見ることができ、部落を離れると、全く姿が見られず、この周辺で発生しているらしい。
 南山溪の道も自家用車が多く、次々と登ってくる。キャンプ場があるので、そこで泊まるらしい。車に気を付けながら、どんどん先に進むと、ようやく車が来なくなり、原生林に入るころには、静かになった。しかし、チョウは、タイワンウラナミジャノメ、オオウラナミジャノメ、メスシロキチョウ、ウスムラサキシロチョウがいるくらいで、大したものがいない状態であった。そして、奥の川を渡る場所まで来たが、何もいないので、仕方なく、帰ることにした。ジャングルを抜けた草原では、ホシボシキチョウを見つけることができた。しかし止まらないので、撮影することができなかった。すると、そこへ、白斑が目立つタテハチョウ類が現れた。そして止まった。メスアカムラサキだ! この数年間、探していたが、全く見つからなかったチョウである。十数枚撮影できたが、あっという間に飛び去っていった。
 その後は、何もいない状態で部落まで戻ると、やはり、ベニモンシロチョウが3頭、飛び回っていたが、花には止まらなかったので、撮影することはできなかった。
 バス停に着いたが、あの混雑状態では、時刻表は関係がなく、バスはいつ来るか分からないので気を付けていると、バス停について2分もしない内に、バスがやってきて、さらに空いていて、座って帰ることができた。そのバスは,観光地ではない蘆山から来ていたから空いていたのだろう。
 明日は、本部溪に行くため、早い時間のバスに乗って混雑を避け、今日の帰りの時間帯のバスで帰ろうと思う。
 
● 7月23日  終日晴れ
 埔里を8時半のバスに乗り、9時前には本部溪に着くことができた。人家がある場所の横のブッシュで、コモンタイマイを見つけたが、撮影することはできなかった。その後、先日、カバタテハがいたポイントに行ったが、何もいなかった。しばらく探索したが、やはりいないので、山道に向かうことにした。
 山道は、台風の影響はほとんど受けておらず、環境は以前とあまり変わらなかった。しかし、チョウの種類数は少なく、やはり、盛期が過ぎている感じがした。
 峠近くのカシ類の生えている場所では、ホリシャイチモンジ、タカサゴイチモンジ、タイワンコムラサキ、ヒメミツオシジミなどがいた。数が少ないホリシャイチモンジの♀もいたが、止まらないので撮影することができなかった。
 昼近くになったので、峠を下り、バス停に戻ることにした。しばらく進むと、明るい林の横で、中型のタテハチョウが目の前を横切った。そして止まった。「アサクラコムラサキだ!」 数枚、撮影することができた。さらに飛んでいったので後を追うと、また止まったので、数枚、撮影することができた。しかし、その後は、樹林の奥へと飛び去って行った。飛んできたアサクラコムラサキと道で出会うタイミングが偶然に一致したのである。本当に幸運であった。
 その後は、ホシボシキチョウ、フタオチョウが現れ、今日の撮影を終えた。
 明日は、恵孫林場へ行く予定である。

● 7月24日 終日 晴れ
 恵孫林場へ8時55分のバスで行き、10時30分には着くことはできた。昨年は、山道には行かなかったので、早速、入ってみた。しかし、道が整備され過ぎていて、これでは何もいないと感じたので、昨年行った渓流沿いの道に入ることにした。
 まず、ランタナの花畑に寄った。タイワンカラスアゲハ、タイワンコムラサキの♀のきれいな写真を撮ることができた。その後、道を下って、渓流沿いの道に入った。
 しばらく行くと、カノウラナミジャノメの♀がいたが、とても痛んでいたので撮影はしなかった。他には、ムラサキツバメがいて、十数枚、撮影することができた。さらに道を進むとキンミスジがいて、たくさんの写真を撮ることができた。
 道は、渓流に降りることができたので行ってみた。昨年は、豪雨になったので、行けなかった場所である。しかし、チョウは何もいなかった。午後12時半になっていたので、昼食をとり、引き返すことにした。
 道に戻ると、フタオチョウが現れたが、止まらないので撮影することはできなかった。しかし、タイワンイチモンジの♀がいて、撮ることができた。ムラサキツバメがいた場所には、やはり2頭のムラサキツバメがいて、さらにアサクラシジミもいた。このポイントは、ムラサキシジミ類が好む場所であることが分かった。その後は、大したものがおらず、再び、ランタナの花畑に着いた。
 羽化したてのアカネシロチョウの♀がいて、十数枚、撮影でき、さらに♂がやってきて、交尾する瞬間も撮影することができた。また、コモンタイマイが飛び回っていて、なかなか撮影ができなかったが、吸蜜しだすと、1〜2秒くらいであるが連続して止まるようになることが分かった。そこで、そのタイミングを計って、カメラのファインダーを覗かないで、撮影する方法に挑戦し、きれいな写真を十数枚、撮影することができた。なかなか面白い技術であることが分かった。
 その後は、午後3時30分のハスに乗り、午後5時には、埔里に着くことができた。
 明日は、霧社へ行き、東と南の斜面を探索してみようと思う。

● 7月25日  終日 晴れ
 午前8時のバスで霧社へ行った。霧社の東斜面は、それほどきつい斜面ではなかった。しかし、大したものがいなかった。そこで、霧社へ戻り、松崗行きのバスで、ナールー湾へ行くことにした。ところが、このバスは、ナールー湾の手前の青青草原が終点であった。埔里の総站で出している全てのバスの時刻の予定表では、松崗まで行くことになっているのに不思議である。
 そこで、青青草原のバス停の横にある脇道に入った。ホッポアゲハが上空で占有行動をしており、連写で撮ったところ、数枚、撮影することができた。その後、この森の上の道に入る脇道まで歩いて行った。
 最初に現れたのは、ヤマナカウラナミジャノメで、ホッポアゲハが上空で飛んでいた。先日いたタカムクウラナミジャノメは、全くいなかった。不思議なことである。さらに新しく作られた道へ行ってみると、珍蝶のタイワンコヤマキチョウがセンダングサで吸蜜をしていた。たくさんの写真を撮ることができた。シータテハ、ツマグロヒョウモン、キンミスジ、タイワンヤマキチョウなどもいて、このポイントは、いつも期待させる何かがいてよいポイントである。その後は、本部溪にいくことにした。
 本部溪は、先日、カバタテハがいたポイントまで行ったのであるが、やはりいなかった。カバタテハは、初日、偶然に現れただけなのだろう。帰りに、本部溪の入口の所で、キタテハが2頭、占有行動をしていた。数枚、撮影することができた。
 明日は、埔里の最終日なので、翠峰まで行き、三角峰林道と梅峰林道、ナールー湾を探索してみようと思う。

● 7月26日  終日 晴れ時々曇り
 予定通り、翠峰に着くことができた。早速、オジロクロヒカゲを探したが、いなかった。そこで、三角峰林道に向かった。20分ほどで、林道に着くことができた。しかし、ミズキの花には、何も来ていなかった。そこで、林道の奥に進むことにした。すると、先日と同じ場所にアケボノアゲハが飛んでいた。止まらないので、飛んでいる蝶をファインダーを覗かないで連写で撮る技術を使ってみると、2枚、綺麗な写真を写すことができた。他には、タカムクウラナミジャノメ、ヤマナカウラナミジャノメを撮影することができた。
 再び、国道に戻り、梅峰から東の林道に入った。すると、タカサゴミドリシジミが現れ、近くの木に止まり、その梢に少しずつ進んでいく様子を連写することができた。面白い動画が作れそうである。
 その後、オジロクロヒカゲを撮影できたが、ミヤマウラナミジャノメがいたポイントにはいなかった。そこで、さらに道を下ってみることにした。しかし、大したものはいなかった。ここから上の国道まで戻るのは、1時間30分以上の登りとなるし、バスの時間まで1時間40分しかないので、辛い登りを覚悟していた。ところが、何と、下の方からトラックがやってくるではないか! 手を振って止まってもらい、上の道まで乗せてくれないかと頼むと、OKということであった。荷台に乗り、両手で前方の枠をつかんで、スキーの直滑降のような感じで膝を曲げて、車の揺れを吸収し、15分ほどで、国道に着くことができた。トラックを飛び下り、お礼を何度も言って分かれた。時間ができたので、ミズキの花がある場所で時間を過ごし、バス停に戻る途中、阿里山で撮影した以来のミヤマシロオビヒカゲを撮影することができた。ワイルマンクロヒカゲに酷似しているが,大きさが小さいことを実感できた。
 その後は、ナールー湾へ行き、シータテハ、タカムクウラナミジャノメ、ヤマナカウラナミジャノメを撮影し、さらに青青草原へ行った。すると、かなり大型のジャノメチョウ類が2頭いた。カノウラナミジャノメであったが、後翅裏面の眼状紋があまり発達しない個体であった。
 明日は、台南へ移動である。林さんにお会いできるのが楽しみである。

● 7月27日  終日 晴れ時々曇り
 10時00分にホテルをチェックアウトし、バス停まで歩いていき、台中の新幹線の駅に着くことができた。桃園站から台中站までの移動が、切符が買えなくて大変であったので、今回は、新幹線で台南まで行くことにした。案の定、切符は買え、大きな荷物は置き場があるし、正午近くには、新幹線の台南站へ着くことができた。そこからは、タクシーで台南駅前のホテルへ行った。
 早速、林さんと連絡をとり、明日、朝6時にホテル前で待ち合わせて、撮影に出かけることになった。本当に楽しみである。

● 7月28日  終日 晴れ時々曇り
 朝6時にホテルの前に、林さんが来るまで迎えに来てくれた。そして、これまでのお礼を伝え、日本から持ってきた手土産を渡すことができた。本当に、今回の撮影旅行の目的の一つが達成できた瞬間であった。
 まず、車は、林さんの家の前まで行き、奥さんとお孫さん2人を乗せ、いよいよ撮影ドライブが始まった。目的地は、林さんにすべて任せてあったので、どこへ行くか聞いてみると、南部の最高峰である大漢山へ行く予定であるという。約120qも離れている。しかも、狙いはハッセンザンセセリとアサクラコムラサキだという。どちらも珍蝶であるが、特にハッセンザンセセリは無理かなと思った。台湾の撮影者の人でも、ほとんど見ることができないという種であることは知っていたからである。
 高速道路を通り、車は長くて舗装が悪い山道をどんどん進んで行った。そして、出発から3時間後、ようやく最初の目的地に着いた。そこは、アサクラコムラサキのポイントで、すぐにバタフライトラップを仕掛けるという。様子を見ていると、スプレー瓶に入った液体を撮影しやすい木に吹きかけていた。液体の中身を聞いてみると、パイナップルのしぼり汁にいろいろなものを加えた液を約3ヶ月間、発酵させたものであった。においは、良いにおいで、確かにパイナップルの香りがした。そこで、チョウが集まるまで、その周辺を探索することになった。
 小道を入っていくと、ミツボシフタオツバメ、エグリシジミ、タッパンチャバネセセリなどが現れた。台湾の南部に来ているという実感がした。30分ほどして、トラップを仕掛けた場所に戻ったが、ジャノメチョウ類が来ているだけで、目的のアサクラコムラサキはいなかった。天候が曇っていたのが悪かったかもしれない。
 そこで、次は、いよいよハッセンザンセセリの発生地へ向かった。さらに1時間を要した。道は、車が何とか通れそうな山道である。しかも、林さんも1度しか撮ったことはないそうである。ポイントは数ヶ所あり、ポイントに着くたび、車から降り、辺りを探索した。しかし、全くいなかった。林さんは、場所、時期、天候、時間帯、運の5つ全てが揃わないと、撮影するのは難しいと話しておられた。やはり、ここまでの珍蝶は、フトオアゲハと同じなんだなと感じた。
 全てのポイントを見終わり、やはりいなかった。そして、来た道を戻ることになった。しかし、発生地に来れただけでも良かったと思った。帰りは、車に乗ったまま、ポイントのそばで車を止めて、目で探した。しかし、見つからない。最後のポイントに着いた。駄目だなと思っていたら、林さんが、「ハッセンザンセセリ!」と叫んだ。運転席の窓越しに見ると、赤褐色の翅が、新緑の草の上に広がっていた。急いで車を降り、そっと近寄って撮影した。やった! 非常に新鮮な個体であった。林さん、奥さんも撮影に加わった。皆で代わる代わる場所を交代しながら撮影した。ハッセンザンセセリは、あまり人を怖がらず、人の気配を感じると少し飛んで、直ぐに翅を広げて止まる習性があることが分かった。ダイミョウセセリのような習性である。たくさんの写真を撮影することができた。ハッセンザンセセリは、10分間ほどは、その場に留まっていたが、やがてジャングルの中へ消えていった。そして、撮影できた安堵感の中で、林さんと硬い握手をすることができた。
 車は、次に、南東部の山へ行って、ウスイロタテハモドキを探すという。約2時間のドライブであった。着いてみると、懇丁国家公園からして、東北部にある山岳地帯であった。
 車を降り、林道に入った。タッパンウラナミジャノメを撮影することができた。さらに数ヶ所回ったが、ウスイロタテハモドキはいなかった。昨年からは見つかっていないそうで、やはり難しかった。
 そして、家路に向かうことになった。しかし、途中、工事渋滞は事故渋滞があり、ホテルに着いたのは、午後5時半であった。何と11時間半もの撮影ドライブとなった。
 林さんにお礼を言い、明日からは台風が、ここ台南に向かってくるので、明日の朝、状況を見て電話をしてくれることになった。台風さえ来なければ、楽しい撮影ドライブが続けられたのにと、少々、残念であった。しかし、今日のハッセンザンセセリだけで、十分でもあった。
 明日は、天候次第である。

● 7月29日  終日 曇り 時々 小雨
 台風9号が台南市に向かっているが、朝は、曇っていた。すると、林さんから撮影に行こうとの電話があった。そして出発した。最初の目的地は、マルバヒトツメジャノメの発生地であった。しばらく走ると到着したが、残念ながら発生期ではないようで、全く飛んでいなかった。そこで、タイワンヒメシジミの発生地へ向かった。今度は、高速道路を使い、かなり走った。発生地に着いたところ、下草が刈られていて、タイワンヒメシジミはいなかったが、ヒメシルビアシジミを撮影することができた。雨は、降っていなかったが、今にも降りそうな状況であった。そこで、行ってもいないかもしれないが、絶滅危惧種のタイワンツバメシジミの発生地に行ってみることになった。私は、車の中で、「雨よ降らないでくれ…」と願っていた。しかし、小雨が降ってきた。やはりだめかなと思っていると、だんだん小止みになり、ついに止んだ。そして、これまでの場所とは全く違う環境の発生地に着いた。しかし、見つからなかった。次の場所へ行った。しかし、いなかった。3か所目に行った。すると、足元から小さな青いチョウが飛び出した。「タイワンツバメシジミだ!」 草に止まったので、撮影し、確認した。「間違いない!」 雄であった。たくさん撮影することができた。しばらくすると、タイワンツバメシジミは、樹上へ消えていった。林さんの話では、タイワンツバメシジミは、運よく見つけることができたとしても1頭で、複数頭見つけることは、これまでほとんどないとのことであった。この悪天候の中、今回の撮影旅行の目標の1つであるタイワンツバメシジミ出会えて、本当に幸運であった。その後,さらに次のポイントでも雌を撮影することができた。感動であった。
 その後、別の場所にタイワンヒメシジミを探しに行ったが、雨が強く降り出したので、断念し、帰路に着いた。
 明日は、台風が台湾の上空を通過するので、明後日の天候がどうなるか、好天を願うのみである。

● 7月30日  終日 曇り 時々 小雨
 台風9号の影響で大荒れの天気と覚悟していたが、朝、カーテンを開けると、青空が見えた。そこで、林さんに連絡し、7時10分には出発することになった。
 最初の目的地は、珍蝶カギコジャノメの発生地である。1時間30分後、発生地の山の中腹に着いた。
 発生地は、薄暗い場所で、ジャノメチョウ科の蝶が好みそうな場所であった。パイナップル液のトラップをかけ、しばらく待った。しかし、現れなかった。そこで、私は、急な斜面に作ってある階段の小道を探索することにした。以前は、そこでも見られたそうで、気を付けて登ったが、やはりいなかった。そして、次のポイントへ移動し探索したが、見つからず、再度、最初のポイントへ戻ったが、やはりいなかった。今は、成虫の発生期ではないように思えた。そこで、クロウラナミシジミのポイントへ移動した。しかし、見つからず、さらに、ニセキマダラセセリのポイントへと移動した。小雨が降ってきたので、かなり厳しい条件であったが、探していると、ついに見つかった。しかし、撮影する前に、ブッシュの中へ消えていった。残念…。その後も、数ヶ所回ったが、見つからなかった。次回の楽しみになった。
 次に向かったのは、カバタテハ、タイワンヒメシジミのポイントであったが、ヒメシルビアシジミはいたものの、目的のものはいなかった。
 さらに、次に向かったのは、ギンスジミツオシジミのポイントであった。そのポイントに着いて、釣り竿でギンスジミツオシジミの集まる木を軽くたたいで追い出したところ、1頭が飛び出した。しかし、台風の吹き替えしの風が強く、あっという間に、飛び去っていった。
 結局、今日は、コウシュンルリシジミ、ヒメシルビアシジミ、ヒメウラボシシジミ、ミツボシフタオツバメの撮影ができただけであった。
 明日は、台風10号通過してしまうようなので、天候が良かったら,どこかへ行こうということになった。

● 7月31日  終日 雨
 台風10号の影響で終日、雨となり、2回目の休日となった。
 明日は、若干、天候が回復する予報になっているので期待したい。

● 8月1日  終日 雨 後 曇り
 3回目の休日となった。終日、写真の整理をしていた。
 明日は、台北へ移動である。

● 8月2日  終日 曇り
 台風5号が、7日に九州西部にいる予報で、このままでは、7日に帰国できないことが予想された。台風の進路が、台湾からの飛行ルート上にあるため、4日〜6日も飛行機が飛ばない可能性が出てきた。そこで、思い切って、台北を基地とした撮影をキャンセルし、本日中に帰国する計画を立てた。
 6時10分には、ホテルをチェックアウトし、新幹線の台南駅へ行き、台北駅まで行く。そこで、台北のホテルをキャンセルし、台北からMRTで桃園国際空港まで行き、本日帰国できる便を取る計画である。
 そして、色々あったものの、計画通りに進み、無事、帰国でき、自宅へ帰ることができた。

● エピローグ
 林本初氏にお会いすることができ、いろいろな場所に案内していただくことができた。また、それ以外のことでも大変お世話になり、感謝のしようがない。次回の8月25日からは、7日間も行動を一緒にしていただけることになり、本当に感謝している。
 今回、スマフォを持参したのであるが、ジャングルの中で道案内に役立った。もしなかったら、梅峰のジャングルで完全に迷子になっていた。
 台湾に来る前に、私のホームページですぐに同定ができるように、写真を使って分かりやすく解説を加えておいた。セセリチョウ科、シジミチョウ科、タテハチョウ科の酷似しているものは、撮影したその場でスマフォを使って同定することができ、大変役立った。
 撮影の目標としていたものは、ツバメシジミ、カメヤマウラナミジャノメ以外は、ほとんど撮影することができた。さらに、この2種は、8月〜9月の撮影旅行の目標として十分に狙えるものであり、楽しみを繰り越す感じになった。
 今回は、本当に、林さんに助けていただいた撮影旅行となった。心より感謝の意を表し、旅行記を閉じたいと思う。




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