『 第17回 台湾撮影旅行記 』

2017年8月15日〜9月14日

..・・・・・ 夏の台湾の珍蝶を探して 2 ・・・・・..

       杉 坂 美 典..........
● プロローグ
 今回の遠征の最大の目的は、台湾で最も高い場所(標高2500m以上)に棲んでいるナガサワジャノメを撮ることである。そして、翠峰のアケボノアゲハ、先回の遠征で撮影できなかった台湾南部のツバメシジミ、タイワンヒメシジミ、ニセキマダラセセリ、カギコジャノメの撮影ができれば最高である。台風がいくつやってくるか心配であるが、台湾を避けてくれることを期待して、充実した1ヶ月間にしたいと思う。

● 8月15日  曇り
 7月のセントレアでの出発日は、とても混雑していて、搭乗手続きに時間がかかり、フライトギリギリの時間になってしまった。そこで、今回は、45分間、早いバスでセントレアに行ったところ、お盆の関係か、空き空きであった。さらに搭乗する飛行機の到着が50分遅れており、のんびりと空港で過ごすことができた。
 桃園国際空港には、午後12時30分には着くことができた。早速、林さんに電話し、無事着いたことと、8月24日から9日間、お世話になるので、その挨拶をすることができた。
 空港から新幹線の桃園駅までは、バスで行き、台中までは、新幹線で行った。そして、台中から埔里にはバスで行き、午後4時30分には、無事、ホテルに着くことができた。
 明日は、標高2100mの梅峰に行き、林さんから教えてもらったバタフライトラップをかけてみたいと思う。

● 8月16日  晴れ 夕方から雨
 朝7時10分のバスで梅峰に向かい、埔里から1時間40分で、標高2100mのバス停に着いた。
山の天候は、快晴であった。しかし、気温が低いのか、ほとんど蝶は飛んでいなかった。それでも、ミヤマウラナミジャノメのポイントへ向かった。途中、トラップによさそうな木を見つけると、パイナップル液をかけておいた。帰りにどうなっているか、楽しみである。
 ミヤマウラナミジャノメのポイントに近づいたとき、カメラを持った地元の女性に会った。聞いてみると、蝶の写真を撮っているとのことで、いろいろと話すことができた。すると、そこへアケボノアゲハが現れたが、止まらないので撮影することはできなかった。近くに車があり、旦那さんも蝶の写真を撮っていたので、話をすることができた。2人は、ここでアケボノアゲハを狙うそうなので、私は、林道を下ることにした。
 しばらく行くと、再び、アケボノアゲハが現れた。しかし、花には止まりそうもない。しばらく目で追っていると、杉の葉に止まった。しかし、向きが悪い。数枚、後ろからの写真を撮ることができた。 そして、ミヤマウラナミジャノメのポイントに着いたが、やはりいなかった。そこで、引き返すことにした。途中、ミヤマシロオビヒカゲ、ヤマナカウラナミジャノメ、タカムクウラナミジャノメ、クヤニヤシジミを撮影することができた。
 しばらく行くと、先ほどの2人がいたので、下の道でアケボノアゲハを撮影できたことを伝えると、探してみるとのことで、私は、上の国道に向かった。途中、トラップをかけた場所を見回ったが、何もいなかった。
 梅峰のバス停に着いたが、バスが来るまで1時間もあるので、松崗まで歩きながら撮影していくことにした。途中、タイワンコヤマキチョウ、タイワンヤマキチョウを撮影することができた。
 峠に差し掛かり、ミズキの花が咲いている場所に着いた。すると、ホッポアゲハの♀が吸蜜に来ていた。連写で綺麗な写真を撮ることができた。動画にできそうな感じであった。
 松崗のバス停で待っていると、すぐにバスが来た。そして、第2の目的地のナールー湾に行った。
 ナールー湾の下の森では、ヤマナカウラナミジャノメ、タカムクウラナミジャノメを撮影でき、モンキチョウもいたが止まらないので、撮影できなかった。しかし、スギタニイチモンジを撮ることができた。第3の目的地は、青青草原の横の森で、そこまでは歩いて行った。以前、シロキマダラヒカゲがいた場所で、期待をして行ったのであるが、ヤマナカウラナミジャノメ、タイワンウラナミジャノメがいただけであった。仕方がないので、埔里行きのバスを待っていたのであるが、一向にやってこない。しかし、待つしかないのでバスの来る方向を注意しながら待っていると、1台の車が止まった。何と、朝会った地元の夫婦であった。埔里まで行くので、送ってくれるという。本当にありがたかった。さらに、時間があるので、観音瀑布に寄って、撮影していこうということになった。車の中で、ご夫婦の名前が葉さん、黄さんということが分かった。
 観音瀑布は、普通種が多かったが、蝶の個体数が多い場所であった。ナカグロミスジ、キンミスジ、タイワンウラギンシジミ、トガリワモンを撮影することができた。撮影が終わって、車まで戻ると、雨が降り出し、豪雨となった。本当にラッキーであった。
 ホテルまで送ってもらい、お礼を言って別れた。本当にありがたい1日であった。
 明日は、本部渓でトラップをかけて、珍蝶を狙いたい。

● 8月17日  晴れ 
 今日は、8時のバスで本部渓に行った。本部渓は、谷が南北に位置しているので、太陽が射すのが遅いからである。8時30分には、バスが着いたが、やはり谷には、日が射していなかった。そのためか、蝶の数が非常に少なかった。
 橋を渡ろうとしたとき、昨日、お世話になった台湾の葉さん、黄さんの夫婦が、私を待っていてくれた。昨日、私は本部渓に行くことを話していたからであった。そして、昨日渡した私の名刺で、私のホームページを見てくれたことも分かった。ありがたいことである。
 本部渓を3人で歩きながら、いくつかのポイントを説明した。カバタテハがいたポイントでは、しばらく探したが、やはりいなかった。その後は、川沿いの道を進んだが、大したものはいなかった。
 山道に差し掛かると、奥さんの黄さんがいろいろな蝶を撮影していて遅くなるので、葉さんが私に先に行ってくれと言う。そこで、一人で峠のポイントまで行くことにした。
 途中、数か所のポイントに、パイナップル液のトラップをかけながら進んだ。そして、峠のポイントに着いたが、この8月中旬は、普通種しかいないことが分かった。
仕方なく、峠を降り始めると、葉さん、黄さんの夫婦がやってきた。このキツイ山道をよく上ってこられたと感心した。しかし、この先は、ほとんど何もいないので、一緒に山を下りることになった。途中、トラップをかけた場所を探索したが、何も来ていなかったが、タイワンタイマイ、ヒメウラボシシジミ、タイワンカラスアゲハ、アカタテハ、タッパンチャバネセセリ、ヒイロシジミを撮影することができた。
 川沿いの道まで戻ったが、モンキアゲハ類の吸水集団、メスシロキチョウの吸水集団などが見られたが、珍しい蝶はいなかった。私は、これから南山渓へ行くことを告げると、葉さんたちは埔里へ戻るが、私を南山渓まで車で送ってくれると言う。お言葉に甘えて、イナズマチョウのポイントまで送ってもらった。そして、お礼を言って別れた。
 イナズマチョウのポイントには、イナズマチョウはいなかったものの、ヒメフタオチョウがいて、たくさんの写真を撮ることができた。その後は、バス停まで戻り、ホテルに帰った。
 明日は、翠峰へ行き、高山蝶を探索する予定である。

● 8月18日  晴れ 
 予定通り、翠峰には、8時45分には着くことができた。標高2289mのバス停は、さわやかな空気が流れていた。しかし、蝶は全くないない状態であった。そこで、予定通り、東の谷を探索することにした。
 しばらく行くと、ようやく蝶の姿が見えた。アケボノアゲハの♂である。しかし、止まらない。数頭いるが、止まる様子もない。連写をしたが、あまりうまく撮れなかった。仕方なしに先に進むと、次から次へとアケボノアゲハが現れる。調度、盛期なのかもしれない。しかし、全く花がないので、止まる様子もなかった。
 2時間ほど、林道を進み、さらに脇道があったので行ってみたが、アケボノアゲハ以外は、現れなかった。そして、開けた場所に出てしまったので、翠峰のバス停まで戻ることにした。 帰りのバスは、12時50分発であるが、12時少し前に国道まで出ることができた。すると、トイレの裏に花が咲いているミズキの群落があるのを見つけた。そこで、バスが出るまで、ここで粘ってみることにした。すると、アケボノアゲハの♂がミズキの花の周辺を飛んでいるのを見つけた。しばらく観察していると、ついに止まった! 数十枚の写真を撮影することができた。さらに、♀が現れ、吸蜜し始めた。夢中でシャッターを押し続けた。念願であった♀の綺麗な写真を撮ることができた。その後、ホッポアゲハの♂が現れ、数枚、撮影することができた。本当に、この場所を見つけることができて幸運であった。

トイレの裏のミズキの群落
 明日は、台北に向かう日であるが、ホテルを早朝にチェックアウトし、フロントに荷物を預け、標高3200mの合歓山に行って、ナガサワジャノメを狙い、2時間の撮影時間を堪能してこようと思う。

● 8月19日  晴れ 
 埔里の南投客運のバス停から国民賓館まで行き、豊原客運のバスで合歓山まで行くのであるが、多くの客が国民賓館の手前の観光地に行くので、バスも停留所でない場所に止まって客を下すことが多い。案の定、今日も手前で降ろされてしまった。仕方なしに、5分ほど歩いて、国民賓館のバス停まで行った。※ 後で分かったことであるが、実は、ここから少し下ったところが、合歓山行のバスの発車場所であった。
時刻表では、8時30分にバスが来ることになっているが、台湾は、そこのところはいい加減であるので、実際、8時35分にバスが来た。5分遅れは、普通である。※ これも、発車場所から国民賓館のバス停は少し離れているので、5分、かかることが分かった。
 バスに乗ってみると、1つしか席が空いていない。私が一番であったので、座ることができたが、後の10人以上は、合歓山まで立っていくことになった。このバスは、いったいどこから来ているのか、調べる必要がある。※ 大型バスの駐車場から発車するが、バス停などの標識はなく、常連しか乗れないことが、後々分かった。
 順調にバスは進んだ。しかし、標高3000mを超える武陵近くになると、渋滞が始まった。台湾は、今、夏休み期間中で、しかも土曜日である。道が細くて、大型車はすれ違いが広い場所でしかできず、車は、ほとんど動かなくなってしまった。それでも、30分遅れで、3158mの松雪楼のバス停に着くことができた。
 早速、合歓山の東峰の登山路に着いた。しかし、風がかなり強く、これでは、蝶が止まれないので、難しいと感じたが、登ってみることにした。30分ほど登ると、ついにナガサワジャノメを見つけた。日本のジャノメチョウと似ているので、飛び方も似ているだろうと考えていたが、全く違っていた。力強く、ガンガンと飛ぶ感じである。確かに、これでなければ、厳しい高山帯で生きていくことはできないと思った。でも、全く止まる様子はない。その後、東峰の中腹まで登ったが、風が強く、全く何もいないので、無駄だと感じ、下山することにした。

合歓山の東峰の登山口
 登山口まで降りると、大きな窪地があり、風がほとんど吹いていなかった。いろいろな花も咲いている。「ポイントは、ここだな。」と思っていると、中型の蝶がピュッと飛んできて、花に止まった。高山蝶のイワヤマヒカゲであった。阿里山以来である。数枚、撮影することができた。そこで、この辺りを探索することにした。いくつかのルートがあり、面白そうな場所であった。イワヤマヒカゲは、数頭、撮影することができた。しかし、ナガサワジャノメは、時々、飛んでくるが、全く止まる様子がない。仕方なしに、飛んでいるのを連写で撮影した。そして、バスが来る時間が近づいたので、バス停まで戻った。
 バスは、大混雑の中、1時間遅れで到着した。しかも、バスに乗ったものの、ほとんど動く様子がない。歩いている人の方が速いほどである。ついに、武陵で降りるつもりの乗客数名がバスから降りて歩き出した。実際、歩いた人たちの方が速く、渋滞の先の方に姿が消えた。
 30分後、ようやく武陵に着いた。先ほどバスから降りた人たちが、武陵の風景を写真撮影し、武陵のバス停から乗ってきた。本当に、これはいつ帰れるかという感じになってきた。私は、これから台北までいくのである。でも、なるようにしかならないので諦めた。
 その後も、バスは、のろのろ運転であったが、細い道路で対向車とギリギリですれ違いながら、ようやく翠峯までやってきた。このバスは、南投客運のバスのなので、青青草原までしか行かない。なので、通常は、翠峰で乗り換えて埔里の町まで行くのであるが、40分間の行程を1時間40分もかかっているので、当然、翠峰のバスは出発しているのでない。そこで、バスが多い松崗で乗り換えることにした。
 この乗り換えのことを知っている台湾の人は少なく、松崗で降りたのは、私を含めて4人であった。後の20人以上の乗客は、青青草原まで行くつもりか、松崗で降りなかった。
 ところが、松崗まで来るバスが、1時間たってもやってこない。やはり青青草原付近が大渋滞で、上がって来られないことが分かった。このことは、一緒に降りた人が電話でバス会社に問い合わせて分かった。仕方がないので、じっくりと待つことにし、何と、1時間30分遅れで、ようやくバスが着き、座ることができた。さらに、青青草原に向かっていくので、当然、大渋滞である。松崗の次のバス停で、観光客がどっと乗り込み、バスは満車状態になった。そして、青青草原に着いたときには、先ほど合歓山で一緒だった人たちが、バス停で待っていたが、乗ることができず、バス停で大声で騒いでいたが、どうしようもなかった。
 埔里の町に午後2時半に着く予定が、午後6時半になっていた。急いでホテルまで行き、荷物を受け取り、台中を経て台北へと向かうことができた。途中、ナガサワジャノメが撮れているか気になったので、連写の写真を確認すると、4枚、何とか写っていた! 9月には、4回、5時間ごとの撮影のチャンスがあるので、何とか、止まった写真を撮りたいものである。
 明日は、新北市で、カメヤマウラナミジャノメを探してみる。

● 8月20日  晴れ 
 新北市でカメヤマウラナミジャノメが撮影された場所に行ってみた。しかし、撮影された場所では、全く見られなかった。そこで、その近くにある山に登山路を見つけたので登ってみた。
オオゴマダラ、オナシアゲハなどを撮影することができ、ついに山頂近くで、ウラナミジャノメ類を見つけた。数頭いたので、数枚、撮影することができたが、タイワンウラナミジャノメであった。その後、コウラナミジャノメ、ヤエヤマイチモンジを撮影し、ここでの撮影を終えた。
 明日は、ウラマダラシロオビヒカゲが撮影された内湖站の北側の山を散策するつもりである。

● 8月21日  晴れ 時々 スコール
 ウラマダラシロオビヒカゲが記録されている台北市の碧湖歩道へ行くため、MRTを使って内湖站で降りた。站から20分ほどで、碧湖歩道の入り口に着き、歩き出した。道は渓流沿いにあり、なかなかよい感じの場所であったが、蝶はほとんどいなかった。タイワンクロボシシジミの斑紋異常の♂を撮影することができた。奥には、滝があるので、観光客がかなりいた。これでは、蝶を探すのは難しいと感じたので、ここは諦め、近くにある剣南路站に行き、剣南蝶園へ行くことにした。
 剣南蝶園は、3回目である。ポイントは、入り口付近、奥の竹林付近、渓谷に架かる橋の付近、山の中腹の広場付近である。入り口付近では、ヒメウラボシシジミがいたが、止まらなかったので、撮影はできなかった。奥の竹林付近では、トガリワモンがいるのであるが見つからず、ルリモンジャノメが発生していた。渓谷に架かる橋の所では、センダングサがあまり咲いておらず、オナシアゲハが飛んでいるくらいであった。そこで、橋の横にあったバナナの木をよく見ると、葉の一部が筒状に巻いてあった。ここのバナナは、栽培しているわけではないので、農薬は使っていない。もしかすると、バナナセセリの幼虫がいるのではないかと思い、手の届く場所の筒状になっている葉をちぎって中を見てみた。しかし、いくつ剥いても中は空であった。最後に、一番奥にあった筒状の葉を手元に引き寄せたところ、大きな糞の塊が出てきた。これはいるぞ!とそっと葉を解いていくと、真っ白な大きな終齢幼虫が姿を現した。間違えなく、バナナセセリの幼虫であった。数枚、写真を撮影し、幼虫を葉に戻した。幼虫は、すぐに這い出し、葉を丸める作業に取り掛かっていた。
 最後に、山の中腹の広場付近を探索した。ミズキの花には、タイワンシロチョウが吸蜜に来ていた。その奥には、バナナの木が数本、並んでいた。そこで、再度、大きく丸まっている葉を剥いてみると、やはり、バナナセセリの終齢幼虫がいた。これならば、成虫がいるのではないかと、落ちていたシュロの葉を使って、バナナの木の周辺をそっとたたいてみた。すると、大きな茶色の蝶が飛び出した。そして、暗い場所にある木の枝に止まった。「バナナセセリだ!」 かなり痛んでいたが、数枚、撮影することができた。さらに、撮影しようとシュロの葉で追うと、アッという間に、ジャングルの奥へ消えていった。ところが、隣の木から別の蝶が飛び出し、バナナの木に止まった。新鮮なバナナセセリであった。この個体は、余り遠くへ飛ばず、たくさんの写真を撮らせてくれた。バナナセセリは、暗い場所を好み、一度止まってからでも、さらに暗い場所へ体を寄せて、身を隠す習性があることが分かった。

剣南蝶園への入口
 その後は、ミズキの花の場所へ行った。するとタイワンフタオツバメの1♂、2♀♀が目の高さの花に吸蜜に来ており、たくさんの写真を撮ることができた。
 今日は、新記録種のバナナセセリの綺麗な写真が撮れ、大満足の1日であった。
 明日は、シジミタテハがいた陽明山の大屯自然公園へ行こうと思う。

● 8月22日  曇り 時々 晴れ
 陽明山総站に着いてみると、二子坪や大屯自然公園への道は、8月16日から9月6日まで、工事中で、全面通行止めだということが分かった。仕方がないので、周遊バスで絹糸瀑布の下流側の入口にあるバス停まで行った。ところが、台風の影響で、強風が当たっていた。これでは、蝶がいるわけがないので、陽明山総站まで歩いて30分であったので、ゆっくり撮影しながら戻ることにした。途中、ナガグロミスジやヒイロシジミを撮影することができた。
 陽明山総站に着いたので、横嶺古道へ行ってみることにした。しかし、ここも何もいない状態であった。そこで、昨日、バナナセセリがいた剣南蝶園へ行ってみることにした。
 陽明山総站から、MRTの士林站へ行き、MRTの中山站で乗り換え、南京復興站を経て剣南路站で降りた。早速、バナナセセリのポイントへ行ってみると、やはりいた。しかも3頭を見つけることができた。しかし、強風が吹き荒れ、人の気配に敏感な蝶なので、十数枚撮影できたが、風に乗って、ジャングルへ消えていった。
 そこで、タイワンフタオツバメのポイントへ行ってみると、やはり吸蜜に来ていた。さらに、近くにあったクチナシの木に、イワカワシジミの新鮮な♀が止まっているのを見つけた。20カット以上、撮影することができた。また、その奥のやや暗い場所で、イワカワシジミの♂が、占有行動をしているのを見つけ、撮影することができた。
 この剣南蝶園は、なかなか良いポイントであることを実感した。
 明日は、剣南山を探索してみようと思う。

● 8月23日  曇り 時々 晴れ
 まず、剣南蝶園へ行ってみた。ミズキの花には、タイワンフタオツバメはいたが、クチナシの木には、イワカワシジミは来ていなかった。さらに、バナナセセリのポイントでは、綺麗な個体がいたものの、風がないので、わずかな音にも非常に敏感で、あっという間にジャングルへ飛んで行ってしまった。
 仕方がないので、剣南山に向かった。しかし、ほとんどないもいない状態で、わき道に入っていろいろ探したが、ホリシャアカセセリがいたくらいであった。その後、再び、剣南蝶園へ戻って探索したが、ベニモンアゲハがいただけであった。
 明日からは台南で、1週間、林さんと行動を共にするので、大変楽しみである。

● 8月24日  曇り 時々 晴れ
 8時には、ホテルをチェックアウトし、新幹線で左営へ向かった。タイワンヒメシジミを撮影するためである。10時には、左営に着くことができた。そこで、荷物を預けるため、コインロッカーを探すと、運よく、大型が1個だけ空いていた。さっそく荷物を預け、300mmの望遠、100mmのマクロを持って、タイワンヒメシジミの発生地へ出かけた。
 発生地は、非常に狭いが、食草のマメ科の植物がある範囲では、たくさんの個体が飛んでいた。タイワンヒメシジミの大きさは、ホリイコシジミよりは大きく、ハマヤマトシジミよりは小さい感じであった。飛び方は、あまり速くなく、目で追える速さであった。しかし、なかなか止まらないので、撮影は本当に大変であったが、たくさんの写真を撮影することができた。
 夕方には、台南のホテルに着き、林さんと連絡を取って、明日は、6時から撮影に出かけることになった。本当に楽しみである。

● 8月25日  快晴 のち 曇り 夕方から雨
 6時には、ホテルを出発した。いよいよ珍蝶探しのスタートである。
 最初に向かったのは、高雄市美濃区で、珍蝶のクロウラナミシジミを探しに行った。車は、山々を抜けている薄暗い林道を通り、川沿いの場所に着いた。そして、少し広くなった場所に車を止めた。そこからは、少し歩くとクロウラナミシジミのポイントだそうで、見つかるのは、数十メートルの範囲だけだそうである。地面に吸水に来ているそうなので、慎重に探していると、1頭のウラナミシジミ類が現れた。急いでシャッターを押し、確認すると、間違えなくクロウラナミシジミであった。ちょっと吸水しては飛び、また吸水しては飛ぶという行動を繰り返すので、たくさんの写真を撮ることができた。しばらく撮影していたら、ジャングルへ飛び去った。すると、別の個体が現れ、さらに別の個体が現れたが、この個体は、なかなか止まらないで、渓流の方へ飛び去っていった。
 そこで、ここは切り上げ、珍蝶のホリシャムラサキシジミを探しに行った。車はさらに1時間ほど走り、薄暗いジャングルの中へ続く林道で止まった。この場所は、足場が悪く、湿った斜面を上り下りするような場所であった。ホリシャムラサキシジミは、斜面に生えている下草に止まっているという。私は林さんに続いて斜面を登ったが見つからない。そこで、2手に分かれて、私はさらに上の斜面を探索したが、テツイロビロウドセセリがいただけであった。そこで、斜面を右側に進み、林道に戻り、渓流沿いに上流へと進んだ。すると、目の前を小さなシジミチョウが横切り、右側の葉上に待った。翅形からホリシャムラサキシジミと分かったが、急いで撮影して確認すると、確実にホリシャムラサキシジミであった。急いで、林さんを呼びに林道を下り、上にいたことを告げ、再び戻ると、やはり止まっていた。数枚、撮影したが、止まっている角度が悪いので、落ちていた小枝でそっと葉を揺らすと、少し飛んでよい角度で止まった。その後は、これを繰り返し、たくさんの写真を撮ることができた。さらに、別の個体を見つけ、撮影することができ、さらに別の個体を撮影でき、計3頭を確認することができた。
 次は、台南市新化区にニセキマダラセセリを探しに行った。このチョウは、数が少ないので、見つからないかもしれないとのことであった。車は1時間ほど走り、池がある場所に着いた。車を止めて、池の周りの草むらを見て回ったが、見つからない。そこで、車がある方向へ帰ろうと、少し歩いたところで、林さんが、「いた!」と叫んだ。確かに、葉上にニセキマダラセセリが止まっていた。しかも、全く飛ぼうとしない。小枝で葉を揺らすと、少し飛んでは、すぐに止まるという行動を繰り返した。たくさんの写真を撮影することができた。しかし、この1頭しか現れなかった。
 次に向かったのは、台南市の山上區で、スジグロトガリシロチョウとネッタイアカセセリがいる場所であった。さらに1時間ほど走り、町はずれの草むらに着いた。車から降りる前に、センダングサの周りを数頭のスジグロトガリシロチョウが飛んでいるのが分かった。すぐに車から降りて撮影しようとしたが、この蝶は、なかなか止まらないことは分かっていたので、止まりそうな場所で待ち受けることにした。すると、ようやく1頭の♂が止まった。しかし、あっという間に飛び去ってしまう。1度に1カットしか取れないが、これを繰り返して、たくさんの写真を撮ることができた。♀も現れ、こちらはゆっくりと飛び、花から花へ移るので、撮影は容易であった。同じ場所の木陰になっている所には、ネッタイアカセセリが来るという。そこで、いろいろ探していると、ついに現れた。新鮮な♂であった。2頭いたが、すぐに飛んでしまうので、撮影は難しかった。同じ場所に、ウスグロヒメウラナミシジミが数頭いて、撮影することができた。
 次に向かったのは、珍蝶のカギコジャノメの発生地であった。ここは、先回、台南に来た時も訪れた場所である。約1時間後、大きな斜面の途中のポイントに着いた。パイナップル液のトラップをかけて、しばらく待ったが現れない。そこで、私は崖の上部に続く階段を探索したが、やはり見つからなかった。途中、久しぶりにアゲハチョウを撮影することができた。林さんは、先日、ここで3頭のカギコジャノメを撮影したそうであるが、今日は、何かの条件が違うようで、ついに現れなかった。
 さらに次は、リュウキュウウラボシシジミのポイントへ向かった。ポイントに着いた時には、時刻は、午後3時近くになっていた。鬱蒼としたジャングルの中を車で進み、普通は車では通れないような場所でも、どんどん進んでいった。この場所は、台湾の人でも、数人しか知らないそうで、日本人がここに来たことはないそうで、とんでもない秘境であった。そして、ようやくポイントに着いた。周りは、すごい湿気で、車から降りると、メガネが真っ白に曇ってしまった。そこからは歩きで、ジャングルの中を進んでいった。小川を終え、水郷を降り、なかなか厳しい探索であった。しかし、リュウキュウウラボシシジミは現れなかった。しかし、ニセキマダラセセリの♂♀が1頭ずつ現れ、撮影することができた。車を止めた先にもポイントがあるそうで、車まで戻ることにした。すると、雷が聞こえ、車まで戻った直後、大粒の雨が降り出した。急いで車に戻り、ジャングルの道が濡れると、車が滑って帰れなくなってしまうとのことで、大急ぎで車を走らせ、大きな道に出たときは、本当に安心した。
 もう夕方になっていたので、今日の撮影は、これで終了し、明日は、朝6時に出発し、珍蝶のツバメシジミを探しに行くことになった。本当に充実した1日であった。

● 8月26日  曇り 時々 晴れ
 6時にホテルを出発し、ツバメシジミの発生地へと出かけた。林さんも1年ぶりとのことであった。発生地は、台南市からかなり遠くに離れた山奥の谷間であった。そして、食草を探しながら林道を進んだ。しかし、下草が刈られていて、ツバメシジミを見つけることはできなかった。そこで、その周辺の同じような場所を探したが、食草はあっても、やはりいなかった。仕方がないので、カギコジャノメの発生地へと向かった。
 昨日行った場所と同じような鬱蒼としたジャングルで発生しているそうであった。発生地の近くに着いたので車を止め、歩いて山に入るため、舗装された広い道路を歩いていると、足元から、1頭のジャノメチョウ類が飛び出した。そして、止まった。「カギコだ!」私は、思わず叫んでしまった。そして、写真を撮ってみると、間違えなくカギコジャノメであった。数カット、撮影することができた。こんな開けた場所にいるとは、林さんも驚いていた。そこで、期待を膨らませて、発生地へと向かった。ところが、ジャングルのポイントでトラップをかけても、全く出てこなかった。しばらくその周辺を探索したが、やはりいなかった。何と不思議なことである。結局、最初の1頭がいただけであった。最初にいた場所を確認してみると、発生地の大きな谷の下流にその道路があり、たまたま飛んできた個体を見つけることができたことが分かった。本当に運がよかったのである。
 次に、ギンスジミツオシジミの発生地に向かった。ギンスジミツオシジミは、アリと共生している珍蝶である。このポイントは、極秘の場所で、台湾の研究家でも10人程度しか知らない場所だそうで、日本人では最初だと言われた。早速、探してみた。林さんが釣り竿で発生地の木の枝を軽くたたいていると、隣の木から小さな蝶が飛び出した。すぐに撮影してみると、ギンスジミツオシジミであった。すぐに林さんを呼んだが、次の瞬間、パッと飛んで、姿が見えなくなった。そして、2人で1時間近く、その周辺を探したが、見つからない。そこで、林さんが友人に電話し、かなり遠くからその友人がここまでやってきてくれた。その友人は、この場所のギンスジミツオシジミを調べている人で、今朝も3頭、見つけたそうである。私のホームページを見ていてくれるそうで、写真よりも若いと言われて恥ずかしかった。その友人は、私たちのために冷たいお茶まで持ってきてくれており、本当に感謝の気持ちで一杯である。そして、すぐに3人で探索が始まった。すると、その友人が「いた!」と叫んだ。私たちが探索していた場所とは少し離れた場所であった。その場所に行ってみると、枝先に新鮮な個体が止まっていた。数カット撮影すると、すぐに飛び立ってしまい、見失わないように目で追うのが精一杯の小ささと速さであった。その後、さらに数カット、撮影することができたが、アッという間にジャングルへ消えていった。その後も探索したが、見つからなかった。そして、その友人にお礼を言い、ホテルへ帰ることになった。本当に、いろいろな方々にお世話になる旅である。
 明日は、天気次第であるが、高山性のタカオウラナミジャノメ、ミヤマウラナミジャノメを探しに行くか、ウスイロタテハモドキを探しに行くことになった。どちらも、見つかる可能性は、相当低いそうであるが、出かけてみることになった。

● 8月27日  曇り 時々 雨
 今日は、最初に、ウスイロタテハモドキを探しに台湾南部の屏東縣行くことになり、6時30分にホテルを出たときは、うす曇りで、晴れ間も見えていた。しかし、高速道路を走っていると、突然、雨が降り出し、前が見えないくらいの豪雨になった。しかし、1時間走っていると、曇りになった。ところが、さらに1時間走って、ウスイロタテハモドキのポイントに着いた頃には、再び雨になり、傘を差しながらの探索になった。ところが、雨の中でも、たくさんの蝶が飛んでおり、日本とは随分違うと感じた。しかし、ウスイロタテハモドキは、先月と同様に見つからなかった。そこで、他の場所も探したが、やはり見つからなかった。もう、この近くの場所には、いないかもしれないと林さんも言っていた。
 そこで、屏東縣牡丹郷東源へ行くことになった。そこは、広大な湿原であった。しかし、ウスイロタテハモドキはいなかったものの、ニセキマダラセセリが10頭以上いて、たくさんの写真を撮ることができた。
 次に向かったのは、ムモンセセリとタイワンオオチャバネセセリのポイントであった。天気も良くなり、2時間近く走り、ポイントに着いた時には、うす曇りの状態であった。早速、薄暗いジャングルの中の小道を進んだ。しかし、花が少なく、両種の食草はあるものの、全く見つからない状態が続いた。そして、かなりの奥地まで行ったところで雨が降りだし、元の道を帰ることになった。今日は、ニセキマダラセセリが撮れてよかったと思いながら歩いていると、行きには、ほとんど何もいなかった木の花の所に、数頭のセセリチョウが飛び回っていた。すぐに写真を撮って確認すると、何と、ムモンセセリであった。しかも3頭が雨の中を吸蜜に来ていた。でも、なかなか止まらないので、かなり苦労したが、10カット前後、撮影することができた。そして、しばらく待っていると、さらに別の中型のセセリチョウが現れ、目の前の花に止まった。「タイワンオオチャバネセセリ!」と林さんを呼んだ。1カット、撮影することができた。林さんは、「待っていれば、また戻ってくるよ。」と教えてくれ、傘を差しながら待っていた。すると、ムモンセセリが現れ、タイワンオオチャバネセセリもやってきて、たくさんの写真を撮ることができた。そのうち、雨がかなり強く振り出し、今日の撮影を終えることにした。林さんは、11時間も一緒に行動してくれ、本当にありがたいことである。
 明日は、天候が良ければ、朝は、ネッタイアカセセリ、ウスグロヒメウラナミシジミ、ヤエヤマシロチョウのポイントに行き、その後、タカオウラナミジャノメ、ミヤマウラナミジャノメを探しに行くことになった。

● 8月28日  曇り 時々 雨
 今日は、高雄市の山岳地帯の天候が悪いので、台南市周辺での探索となった。
 最初は、ネッタイアカセセリ、ウスグロヒメウラナミシジミ、ヤエヤマシロチョウのポイントに行った。ネッタイアカセセリは、綺麗に翅を広げてくれ、ウスグロヒメウラナミシジミは、たくさんの写真を撮られてくれた。ヤエヤマシロチョウは、綺麗な♀が吸蜜に来ていて、モデルになってくれた。
 次は、ヒメヒトツメジャノメのポイントへ行った。3か所回ったが、残念ながら発生期ではないようで、見つけることはできなかった。しかし、オジロシジミ、ヒメシルビアシジミ、ウスイロコノマチョウ、ヒメミツオシジミ、マルバヒトツメジャノメを撮影することができた。
 明日は、いよいよタカオウラナミジャノメ、ミヤマウラナミジャノメの探索に出かけることになった。

● 8月29日  晴れ
 今日は、片道2時間をかけて、六亀の奥にある藤枝へタカオウラナミジャノメ、ミヤマウラナミジャノメを探しに行き、9時から午後2時半まで数か所を探索したが見つからなかった。しかし、スミナガシの♀を撮影することができた。
 林さんでも、タカオウラナミジャノメは、10回来て1頭、見つかればよいぐらいの確率だそうで、本当に撮影は難しいことが分かった。
 明日は、珍蝶のツバメシジミを探索に出かけることになった。

● 8月30日  晴れ 午後 雨
 ホテルを6時30分に出発して、珍蝶ツバメシジミのポイントに着いた時には、9時になっていた。本当に遠くまで来たものである。日本の生息地とは全く異なり、山深い奥地であった。
車を止めると、5mほど先がポイントで、センダングサが生い茂っていた。すると、足元から地小さな青い蝶が飛び出した。その色で、ツバメシジミとすぐに分かった。新鮮な♂であった。その♂は、あまり遠くへ飛ばないので、たくさんの写真を撮ることができた。そして、しばらくその場所にいたが、やがて谷の奥の草むらへ消えていった。
そこで、その場所の奥へ進んでいった。すると、褐色の小さなシジミチョウが飛んでいた。ツバメシジミの♀であった。羽化したての新鮮な個体で、たくさんの写真を撮影することができた。その後、この♀も谷の奥の草むらへ消えていった。
 その後、その周辺の草原を探索したが、 ツバメシジミの♂が1頭、飛び去っていっただけで、撮影はできなかった。結局、2♂♂1♀を確認できただけであった。台湾のツバメシジミは、発生している場所も数か所で、発生している個体数も少ないことを実感することができた。
 この場所の近くは、大したものがいないので、帰ることにした。ホテルには、12時に着くことができた。午後は、豪雨になり、早く帰ってきて正解であった。
明日は、天気が良かったら、再度、カギコジャノメに挑戦することになった。

● 8月31日  晴れ 午後 雨
 ホテルを6時30分に出発して、まず、ヒメヒトツメジャノメのポイントに向かった。7時には着いて、数か所を探したが、ウスイロコノマチョウの撮影はできたが、ヒメヒトツメジャノメは見つからなかった。そこで、珍蝶カギコジャノメのポイントに向かった。9時には着いて、林さんと2手に分かれて探すことにした。私は、山の道に入り、4ヶ所にトラップをかけたが、カギコジャノメはやって来なかった。林さんの場所にもやって来なかった。そこで、次の場所に移動した。
 山道を進むと、中型のジャノメチョウが現れた。見た途端、カギコジャノメと分かった。数カット、撮影することができた。カギコジャノメは、やがて、谷の奥へ消えていった。そこで、さらに道を進んだ。すると、交尾したカギコジャノメがいた。林さんも初めてで、とても喜んでおられたが、林道から離れた場所に止まったので1カットしか取れなかった。その後、ジャングルの奥に飛んで行った。そこで、林道を戻ることにした。すると、先ほどの場所にカギコジャノメが戻ってきていたので、数カット、撮影することができた。そして、再度、ジャングルに飛び去ると戻ってこなかった。天候が悪化し、雨が降り出したので、ホテルに戻ることにした。本当に感謝の念に堪えない。
 明日は、埔里に移動する。天候があまりよくない予報が多いが、高山蝶の撮影に邁進したい。

● 9月1日  終日 雨
 台南のホテルを8時30分にチェックアウトし、埔里の天候が良ければ、南山渓のイナズマチョウのポイントへ行こうと考えた。
すると、台南站から新幹線の台南站までの列車にすぐに乗ることができ、新幹線も待ち時間がほとんどなくて乗れ、台中から埔里へのバスもすぐに乗ることができたため、11時には、埔里のホテルに着いてしまった。さらに、チェックインもでき、順調であったが、雨が降り出し、南山渓へ行くことは断念した。
 そこで、洗濯、買い物をし、明日からの撮影に備えた。
 明日は、標高3200mの合歓山へ行く予定である。

● 9月2日  曇り 後 雨
 埔里総站を6時45分に清境農場行きのバスに乗り、国民賓館站で下りた。合歓山行きのバスに乗るためである。バスは、8時35分に着き、先回みたいな道路の混雑もなく、9時20分には、合歓山站に着くことができた。天候は、雲っていて、ガスが時々。流れてく状況であった。
 早速、先回、ナガサワジャノメを撮影した場所に出かけた。すると、イワヤマヒカゲが飛び出した。数枚の撮影ができた。その後、晴れ間が見えるようになり、数頭のイワヤマヒカゲが花で吸蜜するようになり、たくさんの写真を撮影することができた。しかし、肝心のナガサワジャノメは、2頭、現れたものの、花には止まらず、飛んで行ってしまった。その後、小雨が降るようになったので、撮影は諦め、12時15分のバスで下山することにし、南山渓に行くことにした。
 翠峰を通る頃は、かなり雨が降るようになり、南山渓へ行けるか心配していたが、南山渓に着いた時は、曇っていた。そこで、イナズマチョウのポイントへ行った。しかし、何もいなかった。そこで、トラップをかけ、南山渓の奥へ行こうとすると、雨がかなり強く降るようになった。仕方なしにバス停へ戻り、埔里へ帰った。
 明日もナガサワジャノメを探索に合歓山へ行く予定である。

● 9月3日  曇り 後 うす曇り 後 雨
 埔里総站に7時35分に着いたが、40分発の清境農場行きのバスがやって来ない。その後、7時20分になって、翠峰行きのバスに乗り、国民賓館站でおりた。そして、合歓山のバスに乗り、9時20分には着くことができた。
天候は、昨日より悪く、ガスが多く、日差しはほとんどない状態であった。しかし、10時を過ぎるころから、薄日が差すと気温が上がり始め、イワヤマヒカゲが飛ぶようになった。花に止まってくれたので、数十枚、撮影することができた。けれど、ナガサワジャノメは現れなかった。そこで、東峰の頂上を目指して登ることにした。ところが、30分ほど登ったところで雨が降り出し、断念せざるを得なくなった。風がなかったので、傘を差し、バス停の横にある大きな建物に向かった。そして、その中でしばらく待機していると、雨が止み、日が射すようになった。そこで、花が咲いているポイントに向かうと、ナガサワジャノメが1頭、飛んでいくのが見えたが、止まらなかったので撮影することはできなかった。その後は、イワヤマヒカゲを数頭、撮影することができたが、ナガサワジャノメは現れなかった。今週の土日に再度、挑戦するので、その際は、東峰の頂上を探索したいと思う。
 明日は、天候次第であるが、南山渓と本部渓に行こうと思う、

● 9月4日  晴れ 後 うす曇り
 久しぶりに良い天気となり、8時20分のバスで、まず、南山渓に向かった。9時少し前には、着くことができ、イナズマチョウのポイントに向かった。しかし、日陰になっており、これまでの雨の影響か、何もいなかった。そこで、本部渓に向かった。バス停に着くと、バスがすぐにやってきたので、10分後には、本部渓に着くことができた。
 渓流沿いの林道をしばらく進むと、先行する人の足跡があることが分かった。渓流沿いでは、大したものはいなかった。山道に入ると、最初のポイントで、シロタテハがいるのを見つけた。しかし、あまりに高い場所を飛んでいるので、撮影はできなかった。その後、2つ目のポイントでもシロタテハがおり、葉に隠れていたが、撮影することができた。そして、林道を登っていくと、3人の日本人に会うことができた。東京の大学生であった。45年前の私を見ているようであった。私のホームページを見ていてくれ、台湾の蝶に大分詳しいことが分かった。その後はしばらく一緒に行動し、明日、行ってみるとよい場所を教え、峠の所で別れた。成果を期待したい。
その後は、本部渓を下り、バス停で待っていると、すぐにバスが来た。そこで、南山渓に向かった。
 南山渓には、朝、トラップをかけておいたので、早速、見に行った。しかし、何も来ていなかった。時期が違うのかもしれないと思った。その後は、バスで埔里まで戻って今日の撮影を終わった。
明日は、天気が良ければ、梅峰へ行ってみようと思う。

● 9月5日  晴れ 後 うす曇り
 梅峰へ行き、林道に入った。目的は、ミヤマウラナミジャノメである。これで6回目の挑戦である。20分ほど林道を下ると、アケボノアゲハの新鮮な♂が数頭、薄暗い林の中を飛び回っていた。しかし、花には止まらないので撮影はできなかった。オオベニモンアゲハは、数頭いて、ミズキの花に飛来するので、撮影することができた。アケボノアゲハは、やや薄暗い場所が好きで、明るい場所には、なかなか出てこないことが分かった。
 ふと、ジャングルの方向をみると、大型のカブトムシのようなものが飛んでいた。よく見ると、テナガコガネの♂であった。しばらく木の周りを飛んでいて、止まった。さっそく、撮影したが、木の葉に隠れているので、なかなかうまく撮影できなかったが、感動した。


 その後、さらに10分ほど道を下って、7月にミヤマウラナミジャノメを撮影できた場所に着いた。しかし、いなかった。そこで、アケボノアゲハやホッポアゲハの撮影のチャンスがあるミズキの群落がある場所に行くことにした。
 ポイントに着いてみると、オオベニモンアゲハが数頭、飛んでおり、近くの森林の日陰の場所には、アケボノアゲハの♂が飛んでいた。そこで、オオベニモンアゲハ撮影していると、日陰に咲いているミズキの花にアケボノアゲハが止まった。急いで撮影し、数カット、撮影することができた。さらに、ホッポアゲハの♂が現れ、数カット、撮影することができた。しかし、それ以降は、両種とも花に止まることはなかった。そこで、7月にミヤマウラナミジャノメを撮影できた場所の上に位置する小さな林道に入ってみた。そして、行き止まりになっている場所まで行ったが、やはりいなかった。そこで、元の林道に戻ろうと、しばらく行くと、小さなジャノメチョウの仲間が飛んでいるのを見つけた。「ミヤマウラナミジャノメだ!」飛び方で分かった。しかし、なかなか止まらない。しばらく追っていくと、ようやく止まった。♂であった。数カット、撮影することができた。その後、ジャングルの奥へ飛び去った。そこで、その場所の周辺を探索することにした。しかし、何もいない。ところが、30分ほどすると、先ほどの♂が再び林道に戻ってきた。どうやら、この辺りをテリトリーとしているようであった。数枚、撮影することができた。さらに30分ほど待つと再び現れて、数枚、撮影することができた。
 その後は、現れることなく、バスに乗るための時間になったので、林道を戻ることにした。
 明日は、シロタテハを狙って、南山渓を探索したいと思う。

● 9月6日  晴れ
 予定通り、南山渓を探索した。南山渓も本部渓と同じく、入り口付近は、南北に林道が位置しているため、太陽の日差しが入らないので、8時30分の遅めのバスで埔里を出発した。
 9時少し過ぎに南山渓に着くことができた。そこで、イナズマチョウのポイントへ行ってみたが、いなかった。仕方なしに、南山渓の奥に行くことにした。
 夢谷瀑布に着くと、今日は、滝の下の川沿いを探索してみることにした。そこで、川へ降りる道を進んで行くと、テングチョウやヒメフタオチョウが飛んでいた。他には大したものがいないので、戻ることにした。元の林道まで戻ると、何か黒いタテハチョウが飛びながら近づいてきた。「イナズマチョウだ!」急いで後を追おうと、10mほど先で止まった。そっと近寄って、撮影することができた。すると、パッと飛び立って、水たまりがある場所へ飛んで行った。止まってくれと願っていると、本当に止まった。数カット、撮影することができた。その後は、止まることなく、ジャングルの奥へと消えていった。7月の谷関以来の2頭目であった。運がよかったと思う。
 その後は、急な坂道の連続で、1時間後、ようやく森林の入り口に着いた。
 シロタテハがいそうなポイントがいくつかあるので、そこを通るたびにトラップを仕掛け、先に進んだ、そして、1時間後、川を渡るポイントに着いた。トラップを仕掛け、昼食を取っていると、ヒメフタオチョウがトラップに現れ、数カット、撮影することができた。しかし、これ以上待っても変化がなさそうなので戻ることにした。
 林道を進み、最後にトラップをかけた場所に着いた。そっと近寄ると、大型のタテハチョウがいるではないか。よく見ると、何と、オスアカミスジの♀であった。年1回の発生で、7月の中旬に上巴陵で撮影したのに、9月の上旬に標高の低い南山渓で撮影できるなんで、不思議であった。さらに、次のポイントでもオスアカミスジの♀がいて、またまた次のポイントでもオスアカミスジの♀がいた。9月上旬が、♀の発生のピークであるように思えた。
しばらく進むと、褐色のタテハチョウが現れた。何と、探していたカバタテハであった。本部渓で撮影した後、5回も探したのに見つからず、南山渓で見つけるとは驚きであった。数カット、撮影することができた。
 その後は、アオバセセリ、ムラサキツバメ、ムラサキシジミを撮影でき、今日の撮影を終えた。
 明日は、ミヤマウラナミジャノメを探して、梅峰へ行く予定である。

● 9月7日  晴れ
 予定通り、梅峰へ行き、ミヤマウラナミジャノメのポイントへ行ってみたが、見つけることができなかった。そこで、アケボノアゲハのポイントへ移動し、数枚、撮影することができた。これ3回繰り返したが、ミヤマウラナミジャノメは見つけることができなかった。本当に、不思議な蝶である。4回目にアケボノアゲハのポイントへ行ったとき、バイクに乗った若い地元の人がやってきて、蝶の写真を撮っていることが分かった。そこで、撮った写真を見せてもらうと、今日、タカサゴミドリシジミの写真を撮っていた。時期が遅いので、少々痛んではいたが、記録としては面白いと思った。すると、10日前に撮った写真があるというので見せてもらうと、何と、超珍蝶のアリサンチャイロヒカゲであった。指乗りの写真もあり、スマフォの写真を撮らせてもらい、私のホームページに載せてよいという許可ももらった。場所は、梅峰であった。名刺を渡し、後日、よかったら写真を送ってほしいと頼んだ。この青年は、林道の私有地の門のカギを持っていて、その後、林道の奥へ去っていった。 ※ 後日、この青年は、アリサンチャイロヒカゲの写真を4カット、送ってきてくれた。
 アリサンチャイロヒカゲは、ニイタカヤダケを食草としているが、梅峰の普通に入れる林道沿いには、ニイタカヤダケがないので、特別な場所に行かないと撮影は無理だと思った。しかし、ニイタカヤダケを食草としているオジロクロヒカゲは、梅峰の林道沿いにいるので、梅峰のどこかにアリサンチャイロヒカゲがいることが分かった。
 その後、ナールー湾へ行き、タカムクウラナミジャノメ、ホソバオオウラナミジャノメ、タイワンウラナミジャノメの撮影をすることができた。アケボノアゲハも飛んでおり、この辺りまで分布していることが分かった。
 明日は、ニイタカヤダケがある翠峰で、アリサンチャイロヒカゲを探索してみようと思う。

● 9月8日  晴れ
 翠峰には、8時45分には、着くことができた。まず、アケボノアゲハのポイントへ行ってみると、何と、6頭もの♂が吸蜜に来ていた。600枚以上の止まっている写真を撮影することができた。ホッポアゲハの♂もいた。
 翠峰のバス停付近には、アリサンチャイロヒカゲの食草のニイタカヤダケはない。帰りのバスまでの時間は4時間あるので、2時間は、合歓山への道を歩いていくことにした。
 途中、ニイタカヤダケを見つけると、トラップをかけながら道を進んでいった。道は、緩やかな登りで、歩きやすかったが、車が多いので気を付ける必要があった。
 1時間ほどすると、高山性の植物が花をつけているようになり、アリサンルリシジミ、オジロクロヒカゲを撮影することができた。アケボノアゲハは、たくさんの個体が飛び回っているが、止まらないので撮影はできなかった。
 2時間歩くと、バス停から5kmの標識がある場所まで行ったが、これ以上進んでも標高2500mを越していて、アリサンチャイロヒカゲの分布の上限を越しているので戻ることにした。途中、トラップをかけた場所をチェックしたが、何も来ていなかった。
 バスが出発する時間の20分前には、翠峰に着くことができた。そこで、アケボノアゲハのポイントに行ってみると、朝よりは少ないものの、3頭のアケボノアゲハが吸蜜に来ていた。
 明日は、合歓山にナガサワジャノメの探索に行く予定である。

● 9月9日  晴れ
 絶好の行楽日和で、埔里のバス停には、かなり多くの登山客がいた。運よく、少し遅れてやってきた6時40分発の清境農場行きのバスに乗れた。これならば、国民賓館で合歓山行きのバスに乗り換える際、南投客運の国民賓館のバス停ではなく、合歓山行きのバスの始発駅に誰かが行くはずで、その人についていけば、その始発の場所が分かるはずである。
 案の定、国民賓館站にバスが着いた時、登山の格好をした地元の方が、国民賓館站の乗り換えの場所に並ばずに、どんどん道を下っていくではないか。「間違えなし!」 しっかりと後をついていくと、大型バスの停車場がある場所に着いた。そこには、白い大きな風車小屋があり、その前が合歓山行きのバスの始発場所であった。標識も何もないので、地元の人にしか分からない場所であった。私が並んだ順番は、2番目であった。すると、そこへ先ほど埔里のバス停で一緒だった人たちがやってきて、あっという間に、12人の列ができてしまった。さらに、どんどんと観光客が集まり、20人以上が長い列を作った。
そして、合歓山行きのバスがやってきて、私は難なく座ることができたが、もうこの段階で、バスは満席で、既に立っている人がいる状態であった。8時30分、時間通りにバスは出発し、5分後には、南投客運の国民賓館站に着いた。埔里を7時10分の翠峰行きのバスに乗って、合歓山を目射す人たちは、寿司詰めの状態のバスに乗るしかなかった。私も、埔里で6時40分のバスに乗れなかったら、この状態に加わっていたのである。明日の合歓山行きは、6時40分のバスに乗らなくてはいけないことを痛感した。
 バスは、予定通り、9時半には合歓山に着いた。今日は、東峰の頂上まで登り、ナガサワジャノメがいるか、確かめるのが目標である。
 登山道は整備されているが、ほとんどが階段である。バス停で3150mあり、空気が薄く、持っているパンの袋はパンパンに膨れている状態の中で、3400mまで登るのは本当につらい。しかし、行くしかないので、少し歩いては止まって休む状態が続いた。周りはナガサワジャノメの食草であるニイタカヤダケの広大な草原である。しかし、ナガサワジャノメは全く現れない。でも行くしかないので頑張って登った。
 1時間30分ほどかかり、ようやく、壊れたロープウェイの基地まで着いた。昔は、ロープウェイがあったのだと思いながら、先へ進んだ。頂上までは、後、500mほどであろうか。苦しい中、「こんな天気の良い日で、ナガサワジャノメの最盛期のはずで、場所もここで合っているのに、どうしていないんだ。」と思いながら、重い足を進めた。
 すると、大きな岩の手前で、ついに、ナガサワジャノメを見つけた。しかも、止まったではないか! 急いで近づこうとした瞬間、もう一頭のナガサワジャノメが近くを通過したら、止まっていたナガサワジャノメが追いかけて、あっという間に姿が消えてしまった。しかし、「ナガサワジャノメはいる!」と確信した。そこで、その岩を超えて、先に進むと、緩い斜面が現れて、数頭のナガサワジャノメが飛んでいた。ついに発生地まで来たのである! そこで、飛んでいるナガサワジャノメを目で追い、止まるのを待った。しかし、全く止まる様子がない。飛び回っているだけである。ひょっとすると、山頂には、花畑があり、そこにいるのでは。と思い、まず、山頂まで行ってみることにした。10分ほどすると、山頂に着いた。大勢の登山客が集まっている。しかし、花畑はない。仕方がないので、先ほどのポイントに戻ることにした。
 やはり、ナガサワジャノメは、飛び回っている。そのうち、ガスが流れてきて、辺りが薄暗くなった。すると、ナガサワジャノメは、パッとニイタカヤダケの中に隠れるではないか! そっと近寄ると、やはり止まっていた。ついにナガサワジャノメを撮影することができた。そして、ナガサワジャノメは、晴れると飛び回っているが、曇ると落ちるようにして、すぐに止まるという習性があることが分かった。しかし、そのような条件は、なかなかやって来ない。しかも止まった場所を見つけるのは大変で、近寄ると、すぐに飛び立ってしまう。こんな状況であったが、10カット近く、撮影することができた。
 午後1時になり、ナガサワジャノメの数がだいぶ減ったし、帰りの最終バスの時間も気になるので、下山することにした。下山には、1時間かかり、イワヤマヒカゲのポイントに着くことができた。そしてバス停まで戻り、1時間以上、時間が余った。行きのバスに乗っていた登山客の多くは、12時15分のバスで山を下っていたので、この午後3時35分のバスに乗る登山客は10人程度であった。明日は、午後2時の下山でよいと思った。
 明日は、今日、分かったことを生かし、ナガサワジャノメの撮影をしたいと思う。

● 9月10日  晴れ
 埔里のバス停を6時40分発の清境農場行きのバスに乗り、国民賓館站で降りた。そして、合歓山行きのバスが出る白い風車小屋の横まで、移動し、8時30分発のバスに乗ることができた。乗客は、10人で、昨日の半分であった。
 バスは、時間通り、9時30分には、合歓山に着いた。そこで、今日は、東峰のナガサワジャノメのポイントに向かって、ひたすら階段を登った。そして、10時30分には、ポイントに着くことができた。
 快晴の中、ナガサワジャノメは、数頭が飛び回っていた。しかし、なかなか止まらない。今日は、下山開始まで4時間あるので、じっくりと止まるまで待つことにした。
 飛び方の様子を観察すると、30分に1回くらいは、ニイタカヤダケの密生している草原の中にある岩場、小さな空間がある地面、小さな花をつけた高山植物などに止まることが分かった。そこで、それらが一望できる場所で待つことにした。
 止まると、すぐに飛び立つことが多いが、まれに、止まったままでいることがあるので、急いで近寄り、近づいたら、そっと忍び寄ると、撮影するチャンスがあることが分かった。そして、20カット以上、撮影することができた。
 午後になると、飛ぶ数が減り、午後2時には、ほとんどいなくなったので、下山することにした。
 バスは、16時35分に出るので、朝の様子であれば、お客は数人であろうと予想していた。ところがバス停に着いてみると、驚くことに、20人近くの人が待っていて、順番取りのために、荷物がバス停の横にきちんと並べてあった。これまでは、12時15分のバスで帰る客が多いので、朝の2便目にたくさんの人がやってきたのであった。
 16時20分には、バスがやってきて、いつものようにバス停から少し離れた場所にバスを止めた。これまでは、バスは、発車5分前までは、ドアを開けない。ところが、バスがついたときには雨が降ってきたので、バスの運転手がドアを開けたのである。すると、きちんと並んでいた最後尾の人が、ダッシュして、バスに乗り込んでしまった! そうなると、その場はパニックになり、先頭にいた人たちは、怒号の中、無理やり昇降口に突っ込んでいった。恐ろしい状況であった。このような状況は、谷関でもあった。国民性の違いを感じた。私は、再度できた列に並び、運よく座ることができた。
 結局、座れなかったのは、4人であった。乗客の一部の人は、バスの運転手に詰め寄っていた。運転手は、雨が降っていたのでドアを開けたと言い訳をしていたが、いつも、バス停から離れた場所にバスを止める習慣になっているので、このような状況が生まれた可能性があると思った。最初に突っ込んでいった人は、バスの後部座席で知らん顔をして座っていた。
 バスが走り出すと、私の隣にいた乗客が私に話しかけてきた。そこで、私が日本人であると分かると、いろいろと話し始め、近くに座っていた日本語の分かる乗客も加わって、楽しい会話が始まった。蝶の写真を撮っていることを話すと、見せてくれと言うので、ナガサワジャノメの写真を見せると、大喜びしてくれた。バスは、40分間走った後、翠峰に着いたので、私は、埔里行きの大型バスに乗り換えた。多くの乗客も乗り換えをした。そして、午後6時には、埔里に着くことができた。いろいろな意味で、記憶に残る一日であった。明日は、早めに台北へ行き、剣南山へ行こうと思う。

● 9月11日  晴れ
 埔里のバス停を8時発の台中行きのバスに乗り、台中からは新幹線で台北に行った。ホテルに荷物を預け、早速、剣南山に向かった。
 剣南山に着くと、そのままバナナセセリのポイントに向かった。そして、バナナが木の周辺や近くの木々を小枝でたたくと、1頭のバナナセセリが飛び出した。しばらく辺りを飛び回っていたが、バナナの木に止まったので、撮影することができた。その後も、数カット、撮影することができた。
 そこで、その他の蝶を探しに行ったが、大したものがおらず、ベニモンアゲハがいたくらいであった。ホテルのチェックインまでは2時間ほどあったので、台北市立動物園の探索谷に行くことにした。MRTの剣南路站からは乗り換えなしで行けるので楽であった。終点の動物園站で降りると、探索谷に向かった。
 谷に入ると、スジグロカバマダラが2頭、飛んでいた。数カット、撮影することができた。さらに奥へ進むと、オオルリモンアゲハがセンダングサに吸蜜に来ていた。やはり数カット、撮影することができた。しかし、いつもはたくさんいるジャノメチョウ類が全くいなかったことには驚かされた。他には、面白そうなセセリチョウがいたが、撮影することができなかった。そして、時間になったのでホテルに向かった。
 明日は、基隆市の東にある南雅へ行き、ツバメシジミを探してみようと思う。

● 9月12日  晴れ
 台風が接近する状況であったが、快晴であった。予定通り、台北から列車で基隆へ行き、そこからは、バスで目的地の南雅へ行った。
 南雅は、台湾の北西部の海岸沿いの部落で、急峻な崖の下にあった。部落の中には、渓流沿いに登っていく林道があり、面白そうであったので登ってみたが、オオシロモンセセリがいたものの、大したものがいなかった。そこで、南雅の東の谷に向かうことにした。
 林道を国道に向かって進むと、センダングサの草原があり、タテハモドキがいた。それを撮っていると、ヒメアカタテハが現れた。台湾で3頭目である。センダングサで吸蜜していたので、初めて沢山の写真を撮ることができた。
 国道を進むと次の目的地の谷に着くことができた。渓流沿いに道があり、何かいそうな雰囲気があった。道は、崖沿いに200m程進むことができたが、その先は私有地で、行き止まりであった。残念ながら、ツバメシジミを見つけることはできなかったし、食草も全く見らなかった。仕方なしに戻ることにした。100m程進むと、タイワンウラナミジャノメらしき蝶が崖沿いに現れた。ひょっとして、カメヤマウラナミジャノメかもしれないと思い、止まるまで後を追うと、ついに止まった。急いでシャッターを切ってみると、何と、あれほど探していたカメヤマウラナミジャノメであった! しかし、すぐに飛び立ち、なかなか止まらない。それでも数カット、撮影することができた。そして、センダングサの草原の中へ消えていった。その後は、林道を5往復して探したが、見つからなかった。すると、台風の影響なのか、強風が吹き始め、さらに曇ってきたので、仕方がなく、南雅に戻ることにした。

南雅の部落
 その後、南雅の周辺を探索し、オオシロモンセセリ、チャバネセセリ、ミツボシフタオツバメを撮影できたが、ツバメシジミはいなかった。そして、基隆を経て、台北に戻った。
 明日は、台風なので、写真の整理の一日になりそうである。

● 9月13日  終日 雨
 台風18号の影響か、終日、雨となった。
 明日は、日本への帰国日であるが、飛行機が飛ぶか、心配である。

● 9月14日  終日 雨
 台風18号が北へずれたため、定刻通り、桃園国際空港を出発し、無事、日本に帰ることができた。

● エピローグ
 林本初氏にお会いすることができ、いろいろな場所に案内していただくことができた。また、それ以外のことでも大変お世話になり、感謝のしようがない。8月下旬は、7日間も行動を一緒にしていただけることになり、本当に感謝している。
 今回、スマフォを持参したのであるが、ジャングルの中で道案内に役立った。もしなかったら、梅峰のジャングルで完全に迷子になっていた。
台湾に来る前に、私のホームページですぐに同定ができるように、写真を使って分かりやすく解説を加えておいた。セセリチョウ科、シジミチョウ科、タテハチョウ科の酷似しているものは、撮影したその場でスマフォを使って同定することができ、大変役立った。
 この1ヶ月間,ほとんど雨が降らず,台風も上陸せず,撮影を十分にすることができたのは,運がよかったと思う。さらに1日の平均歩数は,15,000歩であり,最高に歩いいた日は27,542歩で,我ながら,よく歩いたものであると感心し,足で稼いだ成果も大きかったと思った。
 今回、撮影の目標としていた蝶は、ほとんど撮影することができた。本当に林さんに助けていただいた撮影旅行となった。心より感謝の意を表し,旅行記を閉じる。




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