『 第18回 台湾撮影旅行記 』

2018年4月22日〜4月27日

..・・・・・ 春の台湾の珍蝶との出会いを求めて ・・・・・..

       杉 坂 美 典..........
● プロローグ
 今回の遠征の目的は、これまで、なかなか行く機会のなかった4月下旬の台湾の高地で珍蝶を探すことである。さて、どのような珍蝶に出会えるであろうか、楽しみである。

● 4月22日  埔里  晴れ
 今回のセントレアもゴールデンウイーク前であったが、かなり混雑していた。しかし、予定通り、飛行機に乗ることができた。
 桃園国際空港には、午後12時30分には着くことができた。そして、埔里には、バスで行き、午後4時30分には、無事、ホテルに着くことができた。
 明日は、標高2100mの梅峰に行き、高山蝶を探したいと思う。

● 4月23日  梅峰  本部渓  晴れ 夕方から雨
 朝7時10分のバスで梅峰に向かい、埔里から1時間40分で、標高2100mのバス停に着いた。
 梅峰の天候は、快晴であった。しかし、蝶は全く飛んでいない。仕方なしに、予定通り、林道を下って行った。すると、オオベニモンアゲハが現れ、ホッポアゲハも姿を現した。タイワンコヤマキチョウもいた。しかし、他の蝶は現れなかった。そこで、梅峰のバス停まで戻り、翠峰へ行って見ることにした。
 ゆっくりと登り坂を進み,2時間かけて梅峰までで戻った。そこで,翠峰行きのバスを待っていると、バス停の近くに褐色の蝶が現れた。そして止まった。急いで近寄り,カメラを覗くと,何と、アリサンキマダラヒカゲの綺麗な♂であった。何とか撮影することができた。すると,パッと飛び立ち,道路の反対側の木陰に止まった。車に気を付けて道路を渡り,茂みを探すと,小枝に止まっているのを見つけることができた。アングルを変えてきれいな写真を撮ることができた。その後は,道路のコンクリート部分に止まり,次の瞬間には,ジャングルの奥へと飛び去って行った。アリサンキマダラヒカゲに出会えたのは,梨山と合歓山しかなく,自然にガッツポーズが出て,梅峰へ来た甲斐があったと感じた。
 しばらくすると、バスがやってきて、翠峰に着いた。しかし、翠峰も蝶がほとんど飛んでいなかった。そこで、バスの乗り継ぎの関係で、まず本部渓へ行き、その後、南山渓に行くことにした。
 本部渓は、タイワンメスシロキチョウ、ウスムラサキシロチョウ、モンキアゲハ、ルリタテハなどがいたが、大したものはいなかった。そこで、南山渓のイナズマチョウのポイントへ行くことにした。
南山渓に着くと、早速、ポイントに向かった。しかし、雨が降っていないので、道が乾燥していて、何もいなかった。そこで、その隣のポイントへ移った。すると、足元から、黒い蝶が飛び出した。イナズマチョウの♀であった。前の翅の白線列が、美しく輝く白帯となり、イナズマチョウは、高く舞い上がった。そして、林の向こう側へ消えていった。私は,カメラを構えたまま,ボーっとしていた。夢のような出来事であった。そして,しばらくは、舞い戻ってくるのを待った。しかし、2度と戻ってこなかった。イナズマチョウを見たのは,これで3頭目となった。
 明日は、天気が良ければ、南山渓を攻めてみることにした。

● 4月24日  南山渓  曇り時々晴れ 午後 小雨
 朝8時40分のバスで南山渓に向かい、埔里から30分で、南山渓に着いた。
 早速、イナズマチョウのポイントに向かった。しかし、何もいなかった。そこで、パイナップルビールトラップを掛け、奥地に向かった。
 途中、いくつかのポイントに立ち寄った。しかし、端境期なのか、ほとんど蝶がいない状況であった。
 そして、いよいよ本命の原生林に入った。
 最初に現れたのは、タイワンウラナミジャノメであった。キレバヒトツメジャノメ、コミスジなども姿を現した。マダラシロチョウ、タイワンメスシロキチョウも時々現れるようになった。すると、林道の先で、大型の蝶がフワフワと飛んでいる。近寄ってみると、クビワチョウの♀であった。春しかいないチョウで、ここまで近づいて撮影できたのは久しぶりであった。
 次に現れたのは、タイワンクロツバメシジミであった。南山溪で,45年前は、1か所のガレ場でかなりの数の個体が発生していたが、最近はいなくなっていた。ところが、その近くのガレ場で生息していたのである。とても綺麗な個体であった。
 そして、林道沿いの所々に、トラップを掛けながら進み、川を渡るポイントまで着いた。
 川沿いには、マダラシロチョウ、ウスムラサキシロチョウなどが飛び交い、ホリシャミスジも現れた。ふと、川の真ん中にある岩を見ると、何と、十数頭のタッパンルリシジミが吸水に集まっていた。久しぶりの光景であった。しかしホッポアゲハは見ることができなかった。
 昼近くになったので、弁当を食べ、しばらく待っていたら、小雨が降り出した。そこで、長居を諦め、下山することにした。
 途中、数ヶ所にかけたトラップを見て回ったが、何も来ていなかった。そして、最後に、イナズマチョウのポイントに寄ったが、何もいなっかった。
 明日は、天候が悪い予報が出ているが、曇りであれば、本部渓に行ってみようと思う。

● 4月25日  本部渓  曇り時々晴れ 夕方 小雨
 朝8時40分のバスで本部渓に向かい、埔里から20分で、本部渓に着いた。
 橋の下には、マダラシロチョウ、ウスムラサキシロチョウ、メスシロキチョウが数十頭、吸水集団を作り、テングチョウ、ホリシャルリシジミ、タイワンルリシジミも集まっていた。
 さらに林道を進むと、ヒメフタオチョウ、クロテンシロチョウ、タイワンミスジ、タイワンキミスジなどが現れた。そして、30分間ほど進むと、ガレ場から湧き水が流れ出ている場所に着いた。すると、クビワチョウが吸水しているのを見つけた。綺麗な個体で、たくさんの写真を撮ることができた。そして、少し先に進むと、何とシータテハがいるではないか。春先は、このような低山でも発生しているとは驚いた。新鮮な個体で、たくさんの写真を撮ることができた。
 さらに林道を進むと、獣糞に珍蝶のスミナガシが2頭、止まっているのを見つけた。そっと近づいたのであるが、1頭がパッと飛び立ち、川向うに飛んで行った。しかし、もう1頭は、そのまま止まっていた。そこで、まず1カットを撮影して、そっと近寄ったのであるが、パッと飛び立って、川向うへ消えていった。しかし、獣糞に戻ってくる可能性が高いので、獣糞がある場所をしっかりと覚えておき、先に進むことにした。
 その後、山道に差し掛かる場所まで行ったが、大したものがいなかったので、戻ることにした。そして、スミナガシがいたポイントに近づいた。今度は、さらに慎重に近寄ってみると、予想通り、1頭のスミナガシが止まっていた。数枚、撮影することができたが、人の気配に気づいたのか、パッと飛び立ち、すぐ近くの草に止まった。絶好の撮影アングルになった。数カット、撮影することができた。しかし、その後、風にあおられて飛び立つと、対岸へと飛び去っていった。
 その後は、大したものがおらず、弱い雨が降り出したので、埔里に戻ることにした。
 明日は、台北へ行き、近くを探索する予定である。

● 4月26日  台北  曇り時々晴れ,一時小雨
 天候が悪かったが,台北市立動物園の虫虫探索谷に行くことにした。
 谷に入ると,最初に現れたのは,ウラナミシジミであった。そして,タイワンルリシジミの♀,ヤエヤマイチモンジ,クロタテハモドキ,ホソバセセリ,タイワンキマダラ,ナガサキアゲハの♀の有尾型,ムラサキシジミ,コウラナミジャノメ,コミスジ,オオクロボシセセリ,ルリマダラ,タイワンホシミスジ,ウスコモンマダラ,マサキルリマダラ,オオゴマダラ,ヤマトシジミを撮影することができた。
 この谷は,時々,珍しい蝶も発生しているので,毎回,探索しているが,面白い場所である。

● 4月27日  台北  曇り時々晴れ
 予定通り,日本に帰ることができた。

● エピローグ
 今回の遠征では,アリサンキマダラヒカゲ,スミナガシを撮影できたことが,大きな成果であった。そして,4月の高山地帯は,蝶の発生数が少ないことを実感した。
 次回の台湾遠征は,6月下旬から7月中旬で,山ごもりをするので,寝袋やマットなど,準備が大変であるが,最後の台湾遠征となりそうなので,準備をしっかりとしていきたいと思う。




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