『 第27回 台湾撮影旅行記 』

2025年 6月16日〜7月3日
・・・ 台湾の秘境で10種類の珍蝶を探す・・・
       杉 坂 美 典..........
● プロローグ
 今回は、昨年までの24回の訪台で、1頭、もしくは僅かしか撮影できなかった10種類の珍蝶を再探索するのが目的である。台湾北中部の上巴陵のララサンミスジホシミスジオオムラサキ、思源のタケウチセセリ、台湾北東部のカルミモンシロチョウカメヤマウラナミジャノメ、台湾北部の台北のオジロイナズマ、烏来の極秘の秘境のゴイシツバメシジミツシマウラボシシジミ、烏来の福山村のキスジチャバネセセリの10種である。このため訪台期間18日間は、拠点を上巴陵、羅東、台北の3か所に置き、時期を少し早めてなるべくこれらの蝶の盛期に探索する計画を立てた。さて、この10種の中で何種の蝶が再び現れてくれるであろうか…。昨年は、熱中症になって苦労したので、今回は対策をしっかりと行い、あの苦しみは再現したくないものである。今回も、いろいろな出来事が待ち受けていると思われ,楽しみである。さて,どのような珍蝶が微笑んでくれるのだろう。

●6月16日  晴れ  セントレア→桃園空港→上巴陵
 セントレア空港では、飛行機に乗ってから、機長からのアナウンスがあり、台湾の桃園国際空港が混んでいるため予定の出発時間よりも30分間遅く出発するという話であった。実際は15分間遅れて出発できたが、これまで50回以上飛行機に乗っているが初めての経験である。しかし、気流の関係か、桃園国際には、11:55の予定時刻通り到着できた。その後、桃園国際空港の台湾銀行で両替をした。セントレア空港で両替をするより利率はとてもよく、小銭分まで支払ってくれる。ちなみにセントレア空港では、100元以下は切り捨てられてしまうので要注意である。事前に台湾への入国申請はネットで行っていたので、すんなりと入国できた。近々、台湾への入国申請は全てオンラインになるようである。運よく荷物も早く受け取ることができて、空港のSIM販売店で台湾SIMを購入して,スマフォを使えるようにし、タクシーに乗った。そして移動しながらグーグルマップで道順を確認しながら、順調に目的地の上巴陵に午後3時に着くことができた。タクシー代は、2780元。事前に調べた価格とほぼ同じであった。2800元分のお札を渡して、小銭のお釣りは貰わないことにしている。「プーヨン、チャウラ(お釣りは要らない)」と言ったら喜んでくれた。
 昨年、上巴陵の撮影が終わって宿を出る時、宿の主人から売り物の桃を一箱もらってしまった。とても美味しくて、台北の友人に分けてあげることができたので、今年は、日本からお土産(岡崎の銘菓・手風琴)を一箱持って行って渡した。とても喜んでくれ、また、桃を一箱もらってしまった。ありがたいことである。
 夕暮れまで時間があるので、2時間ほど上巴陵の西の山に撮影に行くことにした。
 上巴陵では、6日間、ララサンミスジホシミスジオオムラサキを狙う。
 昨年の熱中症の苦い経験を活かし、まず上巴陵唯一のセブンイレブンでポカリスエット500mlを2本購入し山に向かった。昨年は、ここで水なしで撮影を続けたために熱中症になったからである。
 最初に現れたのは、ヤマトシジミで沖縄の亜種と同じ亜種である。そして夕方や暗い場所を好むアトムモンセセリが撮れた。オナシモンキアゲハクラルシジミナガサキアゲハの雌の有尾型、ヒメイチモンジセセリが姿を現した。山を登って20分後、オオムラサキのポイントに着いた。

 しかし全くいない。最近、激減していると聞いたが確かにそうかもしれない。仕方がないので、辺りの木を見ていると、ヒカゲチョウの仲間が止まった。シャッタースピード優先になっていたカメラを急いでストロボのプログラムに切り替え、薄暗い樹幹に止まった蝶を撮ってみると、タイワンキマダラヒカゲであった。上巴陵では時々見られるが珍蝶である。さらにワモンチョウホソバオオウラナミジャノメアマミウラナミシジミホソバセセリホリシャルリシジミルリタテハを撮影することができた。そこで、鉄塔がある山の頂上に向かい、台湾では少ないアカタテハを撮影することができた。昨年、樹液が出ていた木には、たくさんの蝶が集まっていたが、今年は樹液が出ていないようなので何もいない。そこで、林道を離れ、以前、オオムラサキが多産したタイワンエノキの林に行ってみた。メスチャヒカゲワイルマンクロヒカゲタイワンキミスジを撮影できたが、やはりオオムラサキはいなかった。すると、足元に変な虫が動いている。オサムシかな?と撮影すると、何とタイワンサソリモドキであった! カニのようなハサミを持っている。不思議な生き物であった。

 宿に戻ったら予定通りの午後5時であった。たった2時間の探索であったが、たくさんの蝶が現れ、再度、台湾の自然の凄さを実感した。

 明日は、西の山の北斜面を探索する予定である。
(歩いた距離 5.5km/5.5km)(撮影枚数 2,697枚/2,697枚)

●6月17日  晴れ 11時から豪雨  上巴陵
 この上巴陵の狙いは、ララサンミスジホシミスジオオムラサキである。
 7時に宿を出て、西の山に向かった。気温が低いためか、蝶はほどんどいない。それでも、オオムラサキのポイントに着く頃には、昨日、見られなかったオオシロオビクロヒカゲクロコノマチョウダイミョウセセリを撮ることができた。昨夜、パイナップルを原料にしたお酒を買うことができたので、オオムラサキのポイントにスプレーをした。そして、奥のポイントに行った。今日は、ホソバセセリが数頭いた。トラップをかけた場所に戻ると、何かタテハチョウがいる! そっと近寄ってみるとシータテハであった。きれいな個体であった。次に山頂に向かった。やはり蝶はいないなあと思っていると、センダングサの群落にアオバセセリ類が一瞬飛来し、カメラを向ける間もなく飛び去っていった。周辺のセンダングサを探したが見つからなかった。仕方なしにトラップの場所に戻ったが何もいなかったが、近くの空き地には、タイワンコムラサキウラナミシジミがいた。次に向かったのは定番のタイワンエノキの林である。アサギマダラワモンチョウシロオビクロヒカゲシロシタセセリオオウラナミジャノメタイワンルリシジミを撮影することができた。そこで、いよいよララサンミスジのポイントに向かうことにした。途中、カノウラナミジャノメを見つけたが、草むらから出てこないため、何とか同定できる程度の写真しか撮れなかった。
 巴陵道路沿いにある白い花の群落では、クロアゲハカラスアゲハミカドアゲハを撮影することができた。すると高い木の上で大型のミスジチョウ類が優雅に飛んでいる! でも降りてくる気配は全くない。ララサンミスジかもしないと、しばらく粘ったが、樹間に消えていった。
 ポイントの西の斜面には2本の林道があり、昨年、ホシミスジを撮影した場所は、周りの木々が切られ、何もいない普通の畑になっていた。そこで本命の林道に進んだ。最初に現れたのは、タイワンキマダラヒカゲであった。リュウキュウミスジツマグロヒョウモンを撮影できた。そこで奥の林道に向かうと、その入口で、ヒメフタオチョウが現れた! しかし全く止まらないので、飛翔写真を撮ったが映っていなかった。残念!
 奥の林道の行き止まりの場所までいったが、暗すぎて何もおらず、戻ることにした。林道の入口付近まで来ると、やや大型のウラナミジャノメ類が現れた。カノウラナミジャノメだ!しかも2頭! でも全く止まらず、草陰に消えていった。2頭いたということは、発生地になっているかもしれない。仕方なしに林道を戻ることにした。すると冷たい風が吹いてきた。これは雨になるぞと思ったら直ぐに周りの木々がバタバタと音を立て始めた。雨だ! 急いでカメラを防水袋に入れ、リュックに仕舞い、リュックに防水カバーをかけた。これで安心である。自分はかなり濡れたが傘をさして帰路に就いた。
 12時に宿に着いたが、午後3時までは、どしゃ降りの雨であった。明日も同じような予報が出ているので、午前中が勝負である。
 21日には、この上巴陵から標高2000mの山越えをして台湾の東北部にある羅東にタクシーで移動するのであるが、今回は、タクシーを呼べるアプリを使ってみた。行程2時間半、料金は3199元と少々高いが、この山奥に迎えに来てくれるのであるからありがたい!
 (歩いた距離 7.3km/12.8km) (撮影枚数 664枚/3,361枚)

●6月18日  晴れ 午後2時から雷雨   上巴陵
 昨日の経験から、8時に宿を出て、西の山に向かった。途中、いろいろな蝶が姿を見せてくれた。この時間がちょうど良さそうである。センダングサには、ウラナミシジミタイワンタイマイアオスジアゲハが訪れていた。オオムラサキのポイントに着いたが、やはりいない。仕方がないので、奥の林道に進んだ。オオシロオビクロヒカゲワイルマンクロヒカゲホソバセセリを撮影し、墓場の近くのポイントに行くと、タイワンビロウドセセリホソバオオウラナミジャノメクロコノマチョウがいた。そしてオオムラサキのポイントに戻るとタイワンキマダラヒカゲが樹液を探していたので様子を見ていたが、小さな虫こぶで吸蜜していたものの、やはり今年は樹液が出ている場所は少ないようである。そこで山の頂上の鉄塔に行くことにした。
 頂上では、アカタテハタイワンコムラサキが占有行動をしており、シロシタセセリホリシャミスジリュウキュウムラサキを撮影することができた。センダングサが密生しているポイントでは、珍蝶のキマダラコチャバネセセリの雄が占有行動をしており、そこに雌が現れたので、交尾拒否行動を撮影することができた。やったー! と喜んでいると、そこにカノウラナミジャノメが現れた! 止まってくれと願ったが、草むらに消えていった。すると大型のイチモンジチョウ類が眼下の葉上に止まった! もしやララサン! 急いで撮影すると、上巴陵では初めてのタイワンホシミスジであった。この場所でララサンミスジホシミスジを狙うのが最もチャンスがあるのでは? と考え、明日は、ここでしばらく粘ってみようと思った。山頂をもう一周回ってみると、ホリシャアカセセリホソバキボシセセリタイワンイチモンジを撮影することができた。
 鉄塔の下の駐車場には、テングチョウがいた。オオムラサキのポイントでは、ヒメアサギマダラがいた。次はタイワンエノキの林に向かった。ワイルマンクロヒカゲメスチャヒカゲアトムモンセセリを撮影でき、さらに奥に進むと、コジャノメが交尾している写真を撮ることができた。するとそこにカノウラナミジャノメが現れた! 止まってくれ! すると本当にセンダングサで吸蜜をし始めたではないか! 1カットであるがGIF動画にできそうな写真が撮れた! そして草陰に消えていった。一瞬の出来事であった! その後は、シロシタセセリが産卵する様子を撮影できた。下山する途中では、ミカドアゲハホリシャルリシジミを撮影でき、次の撮影ポイントである西の斜面に向かった。
 途中の巴陵道路沿いでは、タイワンモンシロチョウアオスジアゲハイシガケチョウテングチョウアオタテハモドキユウマダラセセリを撮影した。
 西の斜面の林道では、タイワンミスジクロアゲハタイワンアサギマダラオオウラナミジャノメを撮影でき、2頭のフンコロガシがダンゴを押している光景を見ることができた。

その後は、ムラサキシジミタイワンキマダラヒカゲワモンチョウクロコノマチョウを撮影できた。奥の休館しているホテルがある分岐点では、トガリチャバネセセリタイワンビロウドセセリクロボシセセリオナシモンキアゲハアオタテハモドキダイミョウセセリコモンアサギマダラタイワンヤマキチョウユウマダラセセリを撮影し、12時になったので昼飯にした。
 ホテルの階段はずーと日陰になっているので最高の休憩場所である。昼飯のアンパンを食べていると、いろいろな蝶が風に乗って飛び去って行く。すると、珍蝶のスミナガシが足元をゆっくりと飛び去って行った! 昨年、6年ぶりに1頭を撮影できたが、今年もチャンスがあるかもしれないな、と思いながら昼食を終えた。
 午後からは雨が降る予報なので帰路に就いた。途中、今回初めてタカサゴイチモンジが現れ、きれいな姿を撮ることができた。林道の入口では、タイワンシロチョウキミスジを撮影でき、帰路の巴陵道路沿いでは、タイワンタイマイリュウキュウミスジを撮影できた。さらに、上空をオオムラサキが悠々と滑空していくのを眺めることができた。非常に少なくなったけれど、絶滅していないことの確認ができた。そして、くたくたになって宿に着いた。シャワーを浴びて休憩していると雨音がし始め、あっという間に豪雨になった。ラッキーであった。
 明日は、西の山の鉄塔で粘るつもりである。
(歩いた距離 6.6km/19.4km) (撮影枚数 1,551枚/4,912枚)

●6月19日  晴れ 午後2時から雨     上巴陵
 7時45分に宿を出て西の山に向かった。オオムラサキのポイントに着くと、センダングサには、ダイミョウセセリスズキミスジがいた。林道には、シロオビクロヒカゲタイワンキマダラヒカゲがいたので、今日は幸先がいいなと思っていると、黒い蝶がスーッとやってきて、昨日、タイワンキマダラヒカゲがいた近くの木の虫こぶにとまった。スミナガシだ! 急いでシャッターを切ったが木陰で暗く、逆光になっている! ストロボ撮影に切り替え、数枚撮って確認してみると、とてもきれいに撮れていた! やったー! しかも全く逃げる様子はない。たくさんの写真を撮ることができた。他にはいないかなと辺りの木を探すと、少し奥の小枝に動くものがいる! 急いでカメラでのぞくと、何と、オオムラサキ! 数枚撮れた! と思った次の瞬間、ルリタテハに追われて、パッと飛び立ち、近くの木の葉の上に止まった! 何とかきれいな写真を撮ることができ、GIF動画にもできそうである。そして、樹上高く飛び去っていった。今回の目標にしている蝶の第1号を撮影できた! やったー! と叫びたくなった! スミナガシは、吸蜜中で、飛び去る気配はない。さらに写真を追加することができた。
 林道を進むと、奥の方で、大型の白い蝶がスーッと飛んだのが見えた。急いで近寄と、タイワンオオシロシタセセリであった! この上巴陵でしか撮影したことがなく、しかも7年ぶり! とてもきれいな個体で、センダングサに夢中で吸蜜しており、20カット近くの撮影ができた! 今日は、朝から、3連発! 最高である! 今日は、山の頂上が目的だったことを思い出し、常連の蝶たちを撮りながら山頂に向かった。
 鉄塔の北側ポイントは、タイワンコムラサキの数頭が占有行動をしており、そこへタイワンイチモンジがやって来ると、他の蝶を全て追い払って、一番良い場所で占有行動をすることが分かった。30分間近く、ララサンミスジホシミスジがやって来ないかと辺りを探索したが、タイワンイチモンジタイワンコムラサキが他の蝶を直ぐに追い払ってしまうので、ここではララサンミスジホシミスジが来ても撮影できないことが分かった。ホリシャミスジキマダラコチャバネセセリカラスアゲハシロシタセセリが撮影でき、鉄塔の南側のポイントでは、ホソバキボシセセリを撮影できたので下山することにした。
 林道を下っていくと、大型のタテハチョウが葉上に止まった。撮影してみると、スギタニイチモンジである! 上巴陵では7年ぶりである。オオムラサキのポイントではスミナガシがまだ吸蜜していた。その後は、昨日、カノウラナミジャノメがいた林道の奥の場所に行ったが、やはりいなかった。ヒメイチモンジセセリクロセセリアオタテハモドキを撮影できた。
 巴陵道路を歩いていくと、いつのも常連の他にタイワンキマダラを撮影できた。
 ララサンミスジホシミスジがいた林道に入った。すると昨日はなかった大量の獣糞があり、ワモンチョウウラキマダラヒカゲが集まっていた。
休業中のホテル付近では、テングチョウアオタテハモドキがいた。そして、昨日、カノウラナミジャノメを見つけた林道に行くことにした。
 林道の入口の半日蔭になっている斜面には、ススキの群落があり、その下にはセンダングサの群落がある。カノウラナミジャノメは、この狭い範囲の環境の中で生息しているのであろう。
 林道に入ったとたん、カノウラナミジャノメが飛んできた。やはり全く止まらず、ススキの群落の中に消えた。そこでセンダングサの群落にそっと近寄ると、もう1頭、カノウラナミジャノメがいるではないか! カメラを向けたとたん飛び上がり、やはりススキの群落の中に消えた。やはり撮影はできなかったが、これは、時間が経てば必ず戻って来ると思い、休業中のホテルに戻って昼飯を食べてから再挑戦することにした。
 昨日、カノウラナミジャノメは1カットであるが良い写真が撮影できているので、余裕で昼飯を食べることができた。そして、林道に向かった。
 センダングサの群落から少し離れた場所からでも、やや大型の蝶が吸蜜していることが分かった。そっと近寄ると、カノウラナミジャノメだ! やはり戻ってきていた! 今度は逃げ出さず、十数カット、撮影することができた。そして、ススキの群落の中に消えた。そこで林道を奥に進んでみたが、何もおらず、センダングサの群落に戻ってみると、再びカノウラナミジャノメが吸蜜に来ていた! 数カット撮影することができたので、雨の心配もあり、宿に戻ることにした。
 木々の高い梢には、ララサンミスジらしきものは飛んでいない。スズキミスジタイワンフタオツバメを撮影でき、獣糞には、ワモンチョウが乱舞していた。
 巴陵道路では、ウスキシロチョウルリタテハシータテハを撮影することができた。
 宿に着いたのは、午後1時30分。午後2時には雨になった。
(歩いた距離 6.5km/25.9km) (撮影枚数 1,145枚/6,057枚)

●6月20日  晴れ 午後4時から小雨   上巴陵
 晴天無風、7時30分に宿を出て西の山に向かった。オオムラサキのポイントまでは坂道なので、なかなかきつい。するとポイントの手前にあるセンダングサの群落にやや大型のミスジチョウ類が吸蜜に来ているのが見えた。必死でダッシュ! ホシミスジだ! 数カット撮影することができた! ほっとした瞬間、ホシミスジは、樹上高く飛び去っていった。やったー! これで、目標種の2種目達成! 幸先が良すぎだと思っていると、ララサンミスジらしき大型のタテハチョウが近くの葉上に止まった! まさか! 連続の出現であったが慌てずシャッター切った。翅に白いストライプがある! が、よく見ると切れ目があった。近縁種のタイワンホシミスジであった。少ない種であるが少々がっくり。その後、オオムラサキのポイントに着いたが何もいない。そこで樹液が出ている虫こぶに持参したパイナップル酒に黒砂糖を溶かした液をスプレーし、奥の林道に向かった。林道では、タイワンコヒトツメジャノメを撮影でき、その後、西の山の頂上に向かった。
 鉄塔の北側のポイントでは、いつもの蝶たちが縄張り争いをしていた。ここでは、他の蝶は撮影できないので、鉄塔の南側の林を見ることにした。センダングサの群落には何もいない。そこでオオムラサキのポイントに行こうとしたとき、樹間からやや大型のミスジチョウ類が現れた! ホシミスジだ! 止まってくれと願った! すると本当に止まってくれ、1カットであるが撮影することができた。

 そして、樹上へ消えていった。撮った写真を確認すると、右の翅の一部が欠けていて、朝とった個体と同じ個体であった。こんなことがあるんだと本当に驚いた。
 オオムラサキのポイントには、ウラキマダラヒカゲが吸蜜に来ていた。そこで奥の林道に進むと、葉上に小さなシジミチョウが止まった。クヤニヤシジミである。上巴陵では8年ぶりである。数カット撮影することができた。さらに、珍蝶のキコモンセセリ類が現れた! 葉の裏側にしか止まらないので、なかなかアングルが決まらない。ようやくシダの裏側に止まったので、葉の隙間に見える斑紋からエキサキコモンセセリということが分かった。これも7年ぶりの珍蝶である。そして、林道の行き止まりまで行って、再度、オオムラサキのポイントに戻ったところ、トラップの効果なのか、オスアカミスジ、ムラサキイチモンジがいて、数カット、撮影することができた。
 次に先日、カノウラナミジャノメがいた林道に入った。すると、珍蝶のタイワンクロヒカゲモドキが現れ、きれいな写真を撮ることができた。しかし、カノウラナミジャノメはいなかった。そこで、ララサンミスジの林道に向かうことにした。
 巴陵道路では、ヒョウマダラ、キゴマダラ、タイワンカラスアゲハを撮影でき、ララサンミスジの林道に入った。
昨日の獣糞には、タイワンキマダラヒカゲ、ワモンチョウ、メスチャヒカゲが来ていた。休館中のホテル前では、タイワンヤマキチョウの雌、アオタテハモドキがいた。しかし、奥のススキの群落では、カノウラナミジャノメは見つからず、昼飯後も行ったが、今日はいなかったので戻ることにした。
 帰りの林道では、スズキミスジ、タイワンアサギマダラ、オオシロオビクロヒカゲを撮影することができた。
 巴陵道路では、珍しい黄斑型のミカドアゲハ、タイワンタイマイがいて、たくさんの写真を撮ることができた。そして、宿に着く手前にあるセンダングサの群落についた。すると小さなシジミチョウが目に入った。えっ! 珍蝶のヒメフタオツバメだ! 11年前に中部山岳の南山渓で撮影して以来である。ヒメフタオツバメは吸蜜に夢中で、トントン棒でセンダングサを触っても少し飛ぶだけなので、数十カット、撮影することができた。
 そして、くたくたになって宿の前まで来た。明日は上巴陵を離れ羅東に行くので、二度とこの時刻に西の山に登ることはない。そこで頑張って、再度、オオムラサキのポイントに行ってみることにした。西の山の登りがこれほどきつく感じたことはない。時間をかけて、ようやくポイントに着いた。
 トラップには、オスアカミスジが来ていた。スミナガシもいる。すると、虫こぶにオオムラサキがいるではないか! しかも2頭! さらに1頭飛んできて、3頭がポーズをとってくれる。またまた2頭がやってきて、計5頭のオオムラサキが吸蜜を始めた! 

 こんなことは、上巴陵に何度も来ているけれど、経験したことはない。スミナガシも3頭現れ、酒場状態である。すると足元にやや大型のウラナミジャノメ類が飛んできた。何とカノウラナミジャノメ! しかも止まってくれ、数カット、撮影できた。ちょっと確認して下山する予定が、1時間以上、私を楽しませてくれた。苦労して登ってきた甲斐があった。午後3時を過ぎ、雨が降りそうな気配を感じたので下山することにした。上巴陵は、本当に素晴らしい秘境であることを実感できた。
 夜8時、ネットで予約したタクシーから時間通りにメールが届いた。午前11時の迎えで、タンクシーの車種、色、ナンバーが書かれており、これで安心して台湾の北東部の羅東に向かうことができる。
 明日は、タクシーが来るまで時間があるので、2時間ほど西の山を探索する予定である。
(歩いた距離 7.5km/33.4km) (撮影枚数 1,489枚/7,546枚)

●6月21日  晴れ    上巴陵→羅東
 今日は、羅東に移動の日なので、午前中のみの撮影である。7時30分に宿を出て西の山に向かった。オオムラサキのポイントで、やや大型のイチモンジチョウ類が現れた。急いで撮影すると、ヤエヤマイチモンジの雌であった。がっくり。オオムラサキはいなかった。タイワンコヒトツメジャノメ、ホソバセセリ、オオシロオビクロヒカゲを撮影でき、頂上に向かうことにした。北側のポイントでは、常連たちが追いかけっこをしている。そこで、南側のポイントに行った。えっ! ホシミスジがいるではないか! 2カット撮影できた。そして樹間に消えた。見送りに来てくれたのかもしれない。北側のポイントに戻ると、一番高い木の上で、ヒメフタオチョウが4頭、占有行動をしている。数カット、撮影できた。さらに、激戦地帯の裏側に白い斑紋の目立つ蝶が現れた。珍蝶のメスアカムラサキの雄で、上巴陵での初記録である。占有行動をし、けっこう気が強いことが分かった。キマダラコチャバネセセリ、タイワンカラスアゲハ、アカネシロチョウ、ホリシャミスジ、シロシタセセリを撮影し、オオムラサキのポイントに向かった。
 オオムラサキはいなかった。昨日の乱舞が夢のようである。これが最後の上巴陵の光景だなと感傷にふけっていると、足元にカノウラナミジャノメが現れた。1カット、撮影できた。珍蝶たちが見送りに来てくれたが、ついにララサンミスジに出会うことはできなかった。
 ネットで予約したタクシーは、11時少し前には迎えに来てくれ、無事、羅東に移動することができた。
 明日からは、バスで移動なので、そのバスの発車駅を下見に行った。まず、ネットで予約した27日の羅東駅から台北駅への列車の切符の予約券を切符に交換した。次は、バスセンターの下見である。バスセンターは鉄道の北側にあるので便利である。駅の階段を下りた。ところがバスセンターがない! 駐車場になっている! Google mapで調べると、400mほど東側に移動して新築のバスセンターになっていた。
 
 かなり歩かなければならない。明日のバスの始発は7:00で、これは昨年と同じであった。下見をしてよかった!
(歩いた距離 6.1km/32.0km) (撮影枚数 518枚/6,575枚)

●6月22日  晴れ 午後2時から4時まで雨 のち晴れ   羅東→鳩之澤→羅東
 今日の狙いは、鳩之澤のホシチャバネセセリである。
 深夜に友人からメールがあり、少し前の話だが、鳩之澤でフトオアゲハとモクセイアゲハが撮影され、その動画がUPされているという情報だった。明日は、鳩之澤にホシチャバネセセリの探索に行く予定であったが、急遽、今日、行くことにした。ネットで調べると、鳩之澤に行くバスは、8:00に出発することが分かった。そこで、7:20に宿を出た。
 バスセンターには7時40分には着いた。そこで切符売り場の人に鳩之澤行きのバスのことを聞くと、バスは全席指定席制で、もう往復の指定席券はないとのことであった! 今日が日曜日ということを忘れていた! そこで詳しく話を聞くと、往復切符はないが、片道だけの切符ならあるとのことであった。仕方がないので、片道の 指定券を買い、帰りは1時間半、立つことになるかもしれないけれど、非常口の所に座れば何とかなると考え、鳩之澤に向かうことにした。
途中、太平山国家森林遊楽区への入場料を払う必要があり、係員がバスに乗ってきて徴収してきた。年を聞かれ、73歳と答えると10元(50円)(65歳以上)を徴収された。ネットで調べると、一般人は、土日は200元(1000円)、平日は150元(750円)で、バス代が片道215元に比べると結構高い。
 鳩之澤温泉に着いた。9年前にフトオアゲハを撮影した時と変わっていない。奥地のホシチャバネセセリのポイントに行く前に温泉下にあるフトオアゲハのポイントに行ってみることにした。ちなみにフトオアゲハは4月から5月に見られ、モクセイアゲハは、3月から5月に見られ、さすがに6月下旬では無理である。
 河原に降りる通路も全く変わっていなかった。温泉のミネラルが流れている場所では、イシガケチョウ、ミカドアゲハ、アオスジアゲハ、タイワンタイマイが乱舞していた。懐かしい風景であった。

 しばらく探索して上の道に出た。そして上流のホシチャバネセセリのポイントに向かった。ルリモンジャノメ、コモンマダラ、アカタテハ、ホリシャミスジ、ホリシャルリシジミ、スズキミスジが現れ、タイワンホシミスジも撮影することができた。そこで、さらに奥に進むと、ホシチャバネセセリのポイントのススキの群落がない。大型のシャベルカーと数台の大型ダンプカーで道路を作っていた。川の土砂を掘り出して、大型ダンプカーでさらに奥へと運んでいた。大工事である。これより先に進むことはできそうもないので、引き返すことにした。

 川にかかる吊り橋を渡って、対岸の遊歩道を探索することにした。きれいなコノハチョウが占有行動をしていたので、GIF動画にできそうな写真が撮れた。しかし他は同じような種類ばかりであった。道を戻っているとき、茂みから小型の動物が姿を現した。シカの仲間のキョンであった。70pないほどの小さなシカである。以前、台湾の中部山岳にある青青草原の林で見つけたが写真が撮れたのは初めてである。

 その後は、再度、河原に降りて、フトオアゲハが最近撮影された先ほどとは別の場所を見てから、バス停に戻った。
 午後2時になると雷雨になり、午後4時には止んだ。バスは、予定通りの午後4時10分に鳩之澤を出発し、1時間半後、羅東に戻った。
 明日は、思源で、タケウチセセリを探す予定である。
(歩いた距離 6.5km/38.5km) (撮影枚数 464枚/7,039枚)

●6月23日  晴れ 午後4時から雨   羅東→思源派出所→羅東
 今日の狙いは、思源派出所の横を流れる渓流に来るタケウチセセリである。
 昨年は、1回、数カットしか撮れなかったので、今年は何とか撮りたいものである。
 6時30分にホテルを出てバスセンターに向かった。梨山行のバスは定刻に到着した。思源派出所までは、片道2時間かかる。途中でトイレ休憩も30分間あり、そういう点では、台湾のバスの旅は親切である。順調に進んでいたが、山道に入ってからがけ崩れの工事があり、一時通行止めになった。しかし、約1時間で閉鎖が解除され、結局10時30分には思源派出所に着くことができた。
 バスを降りたらすぐに、バッグからカメラを取り出し、準備を整えた。すると、目の前の花に小さなセセリが止まった。ひょっとして! と思ったが、カメラで焦点を合わせると、ホソバキボシセセリであった。さらに湿った地面に降りて吸水をし始めた。いろいろとポーズをとってくれる。すると、そこに雄のホソバキボシセセリが3頭現れ、十分撮れたので、いよいよ本命のタケウチセセリのポイントに向かった。林道の奥の川に降りられる場所である。途中、シータテハ、ウラナミシジミがいた。
 川と接する湿った砂地のある場所に着いた。明るい褐色の小さなセセリチョウがいる! タケウチセセリの雄が5頭、パティーをしていた! やったー! 十数カット、撮影することができた。これで台湾の目標種の3種類目の達成である! 

 他にイシガケチョウ、アリサンルリシジミもいた。しばらく撮影した後、林道から右の林道に 進んだ先に思源派出所があるので、その建物の周りの探索に行ったが何もおらず、また元の林道に戻って奥の花畑に向かった。
 花畑には花が咲いていない! つぼみの状態であった。同じ時期に3度、ここを訪れているが、今年は開花が遅れている。全く蝶はいなかった。こんなことは初めてである。そこでさらに奥に進むと、川を渡るための橋が完全に流されていた。

 相当の豪雨があったのだろう。川を渡れる場所はないかと探していたら、浅瀬で底が岩と砂地になった場所を見つけられた。落ちていた木の枝を杖にし、ロングのピンスパイクを履いているので全く滑らず、安全に対岸に渡ることができた。
 暗い林道を進むと、次の橋に着いた。この橋は残っていた。でも、破損していて落下するかもしれないので注意深く渡った。対岸の花の咲く場所も花がなく、蝶はいなかった。そこで戻ることにした。
 先ほどのタケウチセセリがいた場所では、3頭の雄がまだ吸水していた。他の蝶はいないので、国道を歩いて400mほど進んだ思源菜園というバス停がある場所に行くことにした。
 思源菜園でもやはり花は少なかった。豪雨の影響で、道が大きく変わっていた。蝶の数は少ないものの、ムラサキイチモンジ、ヤマナカウラナミジャノメ、タカムクウラナミジャノメ、アトムモンセセリ、シータテハを撮影することができた。そこでまだ時間があったので、再度、思源派出所に戻ってみることにした。
 タケウチセセリのポイントには、1頭がまだいたが、空が曇ってきたらあっという間に姿を消した。標高の高い場所に生息する蝶の特徴である。そこで林道の奥の場所にも行ったが何もいなかった。仕方がないので思源派出所のバス停に行ってバスを待つことにした。
 昨年は、このバス停で立ってバスを待っているのがとても辛かったので、今年は、日本から折り畳み式の椅子を持参した。座って待てるので本当に楽である。小さくしてリュックに入れられるので、バスが来てからでも十分対応ができる。霧が出てきたので涼しくて快適であった。
 バスが来るまで時間があったのでスマフォで明日の計画を立てていると、霧が出てきた。すると国道を台湾バイクで走ってきた50代の女性がそのまま通り過ぎると思ったら私に近寄ってきた。何やら派出所がどうのこうの話してきた。スマフォの翻訳機で話してもらうと、「霧で見えないが、思源派出所を見学したいので、ルートはどこにあるか?」ということだった。私は、先ほど行ってきたばかりなので、細かくルートを教えてあげることができた。しばらくして、女性が戻ってきてお礼を言われ嬉しかった。何をしているのかと聞かれ、蝶の撮影をしていて、今、帰りのバスを待っていると答えると、良い写真が撮れるといいですねと言われた。ありがたかった。
 バスは、10分遅れの午後2時15分にやってきた。しかし、途中に道路工事の通行止めが30分、2回もあり、結局約4時間かかって午後18時ちょうどに羅東バスセンターに戻ってきた。でも、無事戻れてよかった。目標種がこれで3種撮影でき、今夜は祝杯である。
 明日は、思源の奥の勝光というまだ行ったことのない場所に行く予定である。
(歩いた距離 6.4km/44.9km) (撮影枚数 1,119枚/8,158枚)

●6月24日  晴れ 午後4時から小雨のち晴れ   羅東→勝光→羅東
 今日の狙いは、勝光の高山蝶類である。
 始めていく思源の先にある勝光は、勝光山への登山口になっている。勝光のバス停からは、200mほどで登山口に着いた。湿気のある場所があり、アリサンルリシジミ、ホリシャルリシジミを撮影することができた。左は山に登る林道で、右の道は川沿いなので、まず、右の川沿いの道を進んだ。しかし、すぐに行き止まりになってしまい、戻って左の林道を進むことにした。
 最初に現れたのは、スズキミスジで、その後は、シータテハ、ホソバキボシセセリ、アトムモンセセリが現れたが、山の斜面が開発されていて、蝶の数は少なかった。さらに上ると本格的な森林の中の登山道となり、薄暗い森林の中を上り下りする道になったため、諦めて下山することにした。下山中、ルリウラナミシジミ、アカタテハ、ニイタカキマダラセセリ、タイワンシロチョウ、アオタテハモドキ、シロオビクロヒカゲを撮影することができた。
 勝光のバス停の近くでは、ワタナベアゲハが白い花に吸蜜に来ていた。
 帰りのバスは、予定時間より5分ほど遅れて来た が、途中の工事での通行止めは1回しかなかったので、17時30には、羅東のバスセンターに着くことができた。
 明日は、太平山に行くので、往復の座席指定の切符を購入し、無事、ホテルに着くことができた。
 写真を整理し、紀行文を書き終えて立ち上がろうとすると、突然、右腰の辺りに激痛が走った! ぎっくり腰だ! 姿勢が悪かったからかもしれない。日本にいるときから、半年に1回くらいやってしまう。まさかここではなってほしくなかった。腰枕をバスタオルで作ってベッドに置き、明日の朝、治っていることを願って寝ることにした。
 太平山は観光地なので、あまり期待はできないが、標高が高いので何がいるか楽しみである。
(歩いた距離 7.2km/52.1km) (撮影枚数 488枚/8,646枚)

●6月25日  曇り時々晴れ    羅東→太平山→羅東
 今日の狙いは、太平山の高山蝶類である。
 朝、6時に起きると、腰は普通の状態に戻っていた。安心した。そこで予定通り、太平山に向かうことにした。
 バスは予定通り8時に出発し、途中、太平山国家森林遊楽区への入場料を10元払い、10時30分には太平山のバス駐車場に着いた。そこからは、原生林まで歩きである。しかし、観光客と一緒に行ってもしょうがないので、ポイントになりそうな場所を探した。太陽が雲間から顔を出すと、いろいろな蝶が飛んでいる。花が咲いている場所を見つければ、面白い撮影ができそうな気がした。
 そこで観光客が上がっていく道ではなく、下に降りる道を見つけた。そこには使われていない建物があったので、早速、その道を降りてみた。すると斜面になっている場所に小さな花がたくさん咲いていて、ニイタカキマダラセセリが吸蜜に来ていた。しかも10頭近くがいる! 雄も雌もいて、昨年の思源派出所の奥地のような光景であった。タカムクウラナミジャノメ、ホソバオオウラナミジャノメ、タイワンアサギマダラも現れた。するとそこにミドリヒョウモンが現れた! 台湾では珍蝶で、私にとって3か所目の記録である。その後、アカタテハ、ホソバキボシセセリ、タカムクシロチョウを撮影できた。するとニイタカキマダラセセリに交じって、シルビアキマダラセセリも現れた。なかなか撮影できない珍蝶である。他にホリシャルリシジミ、タイワンルリシジミも見られた。いろいろ撮影ができたので、場所を変えることにした。観光客とは別に山に登る道があったので行ってみたが、あまり花がないので、タカムクシロチョウとニイタカキマダラセセリがいただけであった。そこで最初のポイントに戻ることにした。
 小さな花の群落には、いろいろな蝶が集まっていたが、先ほどとはあまり変わりがなかった。そこで、林の奥に何とか人が通れそうな通路を見つけた。バスが発車するまでまだ1時間あるので、バッグは草むらに置いておいて、カメラととんとん棒だけ持って行ってみることにした。かなりキツイ登りで、帰りにここを降りなければいけないと思うと、どうしようかと考えたが登ることにした。何とか上に出た。するとそこは、建築中の家の裏側であった。さらに先に進むと、観光客が歩いている道路があった。しかし、道路は私がいる場所よりも3mほどは低い場所にあり、壁はコンクリートになっているので、そのままでは降りられない。そこで辺りを見回すと、壁は2段になっており、板で作った階段のようなものがある。2mほどは降りると、狭いが平らな場所に降りられることが分かった。先ほど来た道を戻るのは大変なことなので、ここを降りることにした。まず、カメラを足元の地面に置いた。そして板の階段を途中まで降り、手を伸ばしてカメラを取って、無事に2m下の段まで降りることができた。後は1m、飛び降りればよい。カメラを左手で持って体制を整えて体操選手のように飛び降りた! 見事着地! 10点! と思った瞬間、ぎっくり腰の再発! 右の背中側が痛くて歩くことができない。立ったまま、ゆっくりと背筋を伸ばして、右手で痛い腰の部分を押すと、何とか足を前に出せることが分かった。ゆっくりと慎重に歩いた。バスが発車するまでの時間は十分あるので、落ち着いて、まず、バッグがある場所まで戻り、そしてゆっくりとバスに向かった。あーあ、またやってしまった! 昨年は熱中症で、今年は、ぎっくり腰か…と思いながら、バスの姿が見えて安心した。バスの横に座るには丁度良いブロックがあり、座って右手で痛い部分を押しながら発車時間を待った。そしてバスに乗り、痛い腰の部分にペットボトルを当てて座ると痛みが消えることが分かった。この体制で、バスが動き出すと、バスの振動が痛みを増すのではないかと心配したが、逆に振動が気持ちよい感じで、3時間かかって羅東のバスセンターに着くことができた。恐る恐るペットボトルを外して立ち上がってみると、普通に立つことができた。そしてバスを降り、若干は違和感があるものの普通に歩け、コンビニに寄って晩飯を買い、ホテルに無事帰ることができた。年相応の行動をしないといけない。反省である。ホテルで撮影枚数を確認すると3,768枚もあった。やはり条件が良いと台湾はすごい場所だなあと感じた。
 明日は、体調が良ければ、列車で亀山駅に行き、カメヤマウラナミジャノメを探そうと思う。
(歩いた距離 5.9km/58.0km) (撮影枚数 3,768枚/12,414枚)

●6月26日  晴れ    羅東→亀山→羅東
 今日の狙いは、亀山駅の近くにある海岸の岩場のカメヤマウラナミジャノメである。
 体調は普通に戻った。しかし、台北に移動してからの烏来のゴイシツバメシジミのポイントは、約1時間の登りがあるので、なるべく後の方の日にし、体調が完璧になった場合のみ、出かけることにする。なので、明後日からは、比較的安全な場所に行くよう予定を変更した。
 今日は、羅東の最後の日なので、亀山駅の北側にカメヤマウラナミジャノメが生息していそうな断崖を見つけたので、列車を使っていくことにした。
 亀山駅を出ると海岸沿いに草地が所々にあった。すると明褐色の蝶が現れた。タテハモドキだ! 久しぶりである。すぐに止まってくれるので、数カット、撮影することができた。ヤマトシジミも現れ、ブッシュの中ではクロアゲハもいた。すると大型の白いタテハチョウ蝶が低い木の周りを飛び回っている! フタオチョウの雌だ! こんな海岸線のような場所にも分布していることに驚いた! 十数カット撮影することができた。カメヤマウラナミジャノメがいそうな断崖には、笹の仲間も生えていたが、見つけることはできなかった。カメヤマウラナミジャノメを撮影するには、台湾北東部の南雅にいくしかないなと思った。その後、ヒメアサギマダラも飛んできたが、止まりそうで止まらないので、飛翔写真を数枚、撮ることができた。シロウラナミシジミ、タイワンルリシジミ、タイワンイチモンジも撮影することができた。
 国道に出ると北関というバス停があり、そこから頭城火車駅まで行き、羅東火車駅に戻り、ホテルに着くことができた。
 明日は台北に移動である。ホテルのチェックインまでは時間があるので、荷物をフロントに預け、剣南蝶園に行く予定である。目的は、昨年撮影できなかったオジロイナズマの雌を撮ることである。昨年は、3回も見かけたのに止まらなかったので、指を加えて見ているだけであった。そこで今年は、バタフライトラップ用の大型スプレーを準備している。セブンイレブンに行ってパイナップル酒を探すと、ない! 店の人に聞いてもおいてないとのことであった。田舎の上巴陵にはあったのに不思議である。近くの大型スーパーに行ってもおいてなかった。しかし、パイナップルビールはあったので、1缶購入した。部屋に戻って大型ペットボトルに黒砂糖と一緒に入れて混ぜ、良く振って炭酸を抜き、大型スプレーに入れた。これで準備万端である。明日の剣南蝶園が楽しみである。
(歩いた距離 6.5km/64.5km) (撮影枚数 1,453枚/13,867枚)

●6月27日  晴れ 午後4時から雨のち晴れ  台北 剣南蝶園
 今日の狙いは、剣南蝶園のオジロイナズマである。
 ぎっくり腰は、9割治った感じである。
 8時45分にホテルをチェックアウトし、羅東駅を9時19分の列車で台北に向かった。
 台北は暑かった。ホテルに荷物を預け、撮影の体制を整えて、さっそく剣南蝶園に向かった。
 MRTに乗り、剣南路駅で降り、剣南蝶園への坂道を上った。看板がある場所でカメラを取り出して体制を整えていると、上空をオジロイナズマの雌が滑空していくではないか! これはいるぞ! ワクワクしてきた!
 剣南蝶園に行くには、最初に階段が100段ほどあるが、普通に上がることができた。ぎっくり腰の心配はなし! これなら烏来の奥地も行けそうである。ヒメウラボシシジミが数頭、飛んでいるが止まらないので、撮影は後回しにし、早くオジロイナズマのポイントに行くことにした。
 階段を登り切った場所の横にある大きな空き地がオジロイナズマのポイントである。以前、雄がいた場所をじっくと観察したが、飛んでいる様子はない。うーん、厳しいかなと思った瞬間、足元にオジロイナズマの雌が飛んできた! 止まってくれー! 止まった! 昨年はそのまま行ってしまったが、今年は、本当に止まってくれた! 数カット、撮影することができた。大型のきれいな個体であった! ヤッター! これで目標種4種目の達成である。

 そこで、このイナズマチョウ属の雌が好む半日蔭の場所を探した。階段を下りて木の根元が良い感じであった。リュックからスプレーを取り出し、低木の葉にかけた。辺りにパイナップルと黒砂糖の甘い匂いが漂っている。さあ、剣南蝶園に気楽な気持ちで向かうことができた。
 舗装された道を進むと、今年は、たくさんの蝶が飛び回っている。タイワンミスジ、シロウラナミシジミ、ミナミキチョウを撮影した。道沿いにあるバナナの木の葉は、例年は食べられていないが、今年は葉が丸まっている箇所がいくつかあった。そこで1つを開いてみると、やはりバナナセセリの4齢の幼虫がいた。写真を撮ってから、元の状態に戻しておいた。
 剣南蝶園に着くと、フタオチョウの雄が占有行動をしていた。数カット撮影することができた。なかなか撮影できない蝶なのに、2日続けて撮影できるとは驚きである。ムラサキシジミ、オオルリモンアゲハ、オオクロボシセセリ、タイワンシロチョウ、ヤエヤマイチモンジ、ツマムラサキマダラ、タイワンキミスジ、ルリモンジャノメなどが乱舞している。そんな中で、やや大型のタテハチョウが現れた。ナカグロミスジであった。これまでは、もっと山奥でしか見たことがなかったので驚いた。さらにベニモンアゲハが飛び回っているのを見つけたが、止まってくれないので飛翔写真を撮った。何とか、数カット撮影できた。蝶園の奥には、バナナセセリがよく集まるバナナの木があるので行ってみた。しかし、とんとん棒でたたいても現れなかった。そこで、オジロイナズマのポイントに戻ることにした。
トラップをかけた場所にそっと近寄ってみた。すると、本当にオジロイナズマの雌がいるではないか! 先ほどよりはかなり小型の雌である。数カット撮影することができた。そこでとんとん棒で木を揺すると、パッと飛んで、樹上に消えていった。
 時間があるので、再度、剣南蝶園に行ってみることにした。途中、クチナシの木に止まっているシジミチョウを見つけた。イワカワシジミの雌であった。剣南蝶園では、オオルリモンアゲハは数頭いるものの、他の蝶はかなり少なくなっている。タイワンイチモンジ、ミカドアゲハを撮影し、再度、オジロイナズマのポイントに寄ってからホテルに帰ることにした。
 ポイントの手前で、葉上に小型のオジロイナズマの雌が止まっているのに気付いた。数カット撮影することができた。トラップには、コジャノメが来ていた。もう十分なので、ホテルに戻ることにした。山の階段を降りるとき、日中は飛び回っていたヒメウラボシシジミがようやく止まるようになり、フラッシュをたいて撮影することができた。
 昨年は、オジロイナズマの雌が撮れるチャンスはあったのに撮影できず、悔しい思いをしたのがウソのような1日であった。
 明日は、割合と平坦で珍蝶の宝庫である烏来の桶後林道に行くことにした。
(歩いた距離 7.6km/72.1km) (撮影枚数 3,624枚/17,491枚)

●6月28日  晴れ  台北→烏来・桶後林道→台北
 今日の狙いは、烏来の桶後林道のアリサンクロセセリとツシマウラボシシジミである。
 ぎっくり腰は治った感じである。
 朝4時半に起きて、MRTの始発6時に乗って、台北駅から西門駅に行った。そして、反対側のホームに行けば、そのまま終点の新店駅に行けるので便利である。
 新店駅に着いて、烏来行のバス停に直行したら、既に4人、並んでいた。土曜日なので、もっと並んでいると思った。すると直ぐにバスがやってきて、これまでの最速、7時20分には、烏来のバス停に降りることができた。タクシーがたくさん並んでいるので、先頭まで行き、運転手に行き先の地図を見せるとOKが出た。片道1200元と言われ、以前よりは高くなっていたが仕方がない。そして、8時には、桶後林道の入口に立つことができた。

 林道は、かなり整備されていた。歩きやすいが、蝶の種類はあまり多くない。ヤエヤマイチモンジ、タイワンイチモンジが多い。どんどん進むと、ついに登りのキツイ山道になった。するとクロセセリ類が現れたが止まらないので、アリサンクロセセリかどうかも分からない。あっという間に樹林の奥に消えていった。がっくり…。
 山道は、うっそうとした森林に囲まれ、ツシマウラボシシジミが出そうな環境になってきた。そこでとんとん棒で周りの草をたたきながら進んだ。しかし全く現れない。さらに道は厳しくなり、設置されているロープを持って進まないと登れない程の傾斜になった。でもしばらく進んだが、道が完全に渓谷から離れるようになったので、断念して引き返すことにした。もう2時間たっていた。
 林道の入口付近でコジャノメが現れたが、クロセセリ類は現れなかった。
 その後、登山口まで戻ると、まだタクシーが来るまで2時間はあった。タクシーの運転手に帰りに時間があったら、歩いて道を戻っていくので、途中で見つけて乗せてくださいと話しておいたので、安心して林道を進んだ。
 少し進んだ所で、フワフワと飛んできた日本のスジグロシロチョウよりも少し大型のシロチョウが日陰になっている葉に止まったことが分かった。絶対に怪しい! そっと近づいて写真を撮ると、何とカルミモンシロチョウ! 9年ぶりの台湾3頭目! 飛ぶ気配がない。そこでとんとん棒で葉を揺すると少し飛んで直ぐに止まる。最高である! これを何度も繰り返し、飛翔写真も撮れ、十数カットを撮影することができた!

 その後、タイワンカラスアゲハ、ヤエヤマイチモンジ、ホリシャミスジなどいろいろな蝶が現れ、タクシーもやってきて、無事、台北駅まで到着できた。
 今日撮影できたカルミモンシロチョウは、明日、朝一で基隆の山に行って狙う予定であったが、後回しにし、先にカメヤマウラナミジャノメのポイントである南雅に行ってから行くことにした。
 そこで、台北駅に着くと切符売り場に直行した。明日の南雅への経由地の瑞芳駅へ行くための列車は全席座席指定なので買えるか心配したが空席があり良かった。そしてホテルに帰ることができた。
 今日は、たくさん歩き、たくさんの写真が撮れた1日であった。
(歩いた距離 12.6km/84.7km) (撮影枚数 4,190枚/21,681枚)

●6月29日  晴れ  台北→南雅→台北
 今日の狙いは、台湾北東部の南雅のカメヤマウラナミジャノメ、基隆のカルミモンシロチョウである。
 台北駅から瑞芳駅への8時52分発の自強号は満席であった。そして9時30分には瑞芳駅に着くことができた。ここからはバスで南雅に向かった。10時半には、懐かしの南雅に着いた。これで4回目である。これまでに1頭しかカメヤマウラナミジャノメは撮影できていない。この種は、断崖絶壁に生える笹類を食草としているので、発生地が限られている。南雅は、生息地としては絶好の地であるのだが、これまでは発生期に遭遇できていない。
 南雅は海岸が景勝地であるので観光客が多い。しかし、山に行く人はいないので気楽である。
 案の定、南雅の駐車場は車でいっぱいであった。その脇を通り過ぎて、山に向かう林道に入った。巨岩がゴロゴロする場所に着くと、ウラナミジャノメ類が笹類の中を出たり入ったりしている。そして止まった! カメヤマウラナミジャノメの雄であった! ラッキー! さらにもう2頭、飛び出してきた! 十数カット、撮影することができた。

 発生期の盛期をやや過ぎた感じで、翅が少し傷んでいる個体が多い。林道の奥に進むと、カメヤマウラナミジャノメに交じって、近似種のタイワンウラナミジャノメも現れた。タイワンウラナミジャノメは新鮮な個体が多い。この場所では、カメヤマウラナミジャノメの方が発生期は早いことが分かった。数十カットの撮影ができたので、さらに林道を奥に進むことにした。別れ道があり、右の道は直ぐに行き止まりになるが暗い場所なので、ヒカゲチョウ類がこれまではいた。そこで入ってみると、今年は、ヤエヤマイチモンジ、ホソバキボシセセリ、ヒメイチモンジセセリを撮影できた。そこで、今度は左の道を進んでみた。すると、何と、カルミモンシロチョウが現れた。そして止まってくれたので、昨日に続いて撮影することができた! 林道を少し進むと川を渡る橋がある。そこで河原を見てみると、シロチョウ類が集団吸水をしていた。おや、何か変だぞ! カメラで覗くと、何とカルミモンシロチョウが集団吸水している! 急いで橋を戻り、集団吸水が撮れる最も近い場所を探すと、何とか草間から撮影できる場所があった! 10頭のカルミモンシロチョウが吸水し、その周りをタイワンシロチョウ、ツマベニチョウなどが飛ぶので、カルミモンシロチョウが時々翅を開いてくれる! 最高のショットが撮れた! 十数カット撮れた。さらによく見ると、カワカミシロチョウが1頭いる! 私にとっては、台湾の北東部での初記録である! 十分に執れたので、先ほどのカメヤマウラナミジャノメのポイントに戻ることにした。数頭の雄が雌を探して飛び回っている。なかなか止まらないが、たまには止まってくれるので、何とか撮影できた。そして再びカルミモンシロチョウのポイントに戻り、撮影をした。これを数回繰り返していると、2時間も撮影し12時30になっていた。もう本当に十分なので、基隆の山に行ってカルミモンシロチョウを探すのはやめて台北に戻ることにした。
 南雅のバス停から瑞芳駅に行き、台北駅に着いた。そこで明日は陽明山に行くので、台北駅の北側の陽明山行きのバス停の下見に行った。ところが駅の北側は全く違っていて綺麗に整備されていた。スマフォで調べると、かなり離れた場所にバス停が移動していた。10分間近く歩いてバス停に着いて、陽明山への路線を確認し、ホテルに戻った。今日も驚きの撮影がたくさんできた1日になった。
(歩いた距離 7.9km/92.6km) (撮影枚数 4,964枚/26,645枚)

●6月30日  晴れ  台北→陽明山→台北
 今日の狙いは、台湾北部の陽明山のトガリオオチャバネセセリである。
 陽明山に行くためのバスは、8時過ぎに来た。小さなバスで、しかも満席と表示がしてあり、窓を開けたオバチャンが「座れないよ!」と言ってきたが、運転手がドアを開けてくれたので乗ることができた。運転手から何処へ行く?と聞かれ、「陽明山」と答えたが、乗客から「陽明山は大きいから、それでは分からないよ。」と言われた。そこで、スマフォで行き先のバス停を見せると、OK!と言ってくれた。本当に満員で立っていても体を支えるために持つ所が1ヶ所しかないので不安定で危なかった。そして、約1時間、立って過ごしたが、降りる陽明山総停が近づくと、乗客が「ここだよ!」と親切に教えてくれた。お礼を言って降り、バスが発車するのを手を振って見送った。台北駅から陽明山総停に行くには、やはりMRTの剣澤駅まで行き、そこから大型のバスで陽明山総停に行った方が良いことが分かった。
 陽明山総停から目的地の二子坪停までは、小型のバスで、やはり満席で立って行くことになった。約30分間である。そしてようやく二子坪に着き、そこから大屯自然公園までは歩きである。
 約20分間、ゆっくりと下りの道を進み、大屯自然公園に着いた。すぐにトガリオオチャバネセセリのポイントに向かった。ところが工事をしていて遊歩道は通行止めになっていた。仕方がないので、さらに先に進んで大回りをしてポイントに着いた。しかし、公園の整備がされすぎていて、センダングサの群落がほとんどなくなっていた。カラスアゲハ、クロアゲハがいただけあった。そこで、大屯自然公園の奥に行ってみることにした。
 林道を進むと、コノハチョウ、ヤエヤマイチモンジが姿を現した。エサキウラナミジャノメ、タイワンウラナミジャノメもいて、エサキは暗い場所から離れないが、タイワンは時々明るい場所まで飛んで出ることが分かった。その他、タイワンホシミスジ、ナカグロミスジが撮れたが、トガリオオチャバネセセリは発生時期が違うのか全くいない。明日は、烏来の極秘の秘境に行くので、体力を温存のため台北に戻ることにした。
 帰りはすんなりと大型バスで台北に戻ることができた。
 明日は、4時30分起きで、いよいよ烏来の極秘の秘境の探索である。
(歩いた距離 6.5km/99.1km) (撮影枚数 1,975枚/28,620枚)

●7月1日  晴れ   台北→烏来・秘境→台北
 今日の狙いは、烏来の極秘の秘境のゴイシツバメシジミ、ツシマウラボシシジミである。
 朝6時00分の始発のMRTで西門に行き、新店駅まで行くことができた。急いで烏来行きのバス停に行くとバスが来ているでないか! バスに手を振って近づくと、運転手はドアを開けて待っていてくれ、空席があり座ることができた。
 目的地でバスを降り、いよいよ秘境への探索開始である。渓谷の入口には、奥地が土砂崩れで道が崩壊しているので気を付けるようにと表示がしてあったが登ることはできそうである。

 約40cmの幅の道の右下は、100m以上の谷底である。暗くジメジメした土の道で滑落すれば命はないので、足元に気を付けながら慎重に進んだ。そして、2時間後、ようやく昨年、ゴイシツバメシジミがいたポイントに着いた。しかし、いない…。そうだろうとは思ったが、少々がっくりした。でも時間があるので、じっくりと待つことにした。この場所だけが明るく、渓流の水が岩にかかるので、チョウ類の絶好の吸水ポイントになっている。ホリシャミスジ、タイワンイチモンジ、ヤエヤマイチモンジなどが多く、ナカグロミスジも現れた。ホリシャミスジ、イシガケチョウもいるが、なかなか本命は現れない。2時間待ったが変化がないので、昨年は行かなかった渓流にかかる橋を渡った奥地に行ってみることにした。
 日陰になった道を進むと、さらに暗くなった場所に着いた。するとツシマウラボシシジミの雄が現れた! 雌を探しているので、なかなか止まらない! 止まってくれ! と願った! 止まった!! ついに撮影することができた。しかも新鮮な個体である。昨年の個体は、やや痛んでいたので探索時期を早めて大正解であった。すると雌が現れた。産卵場所を探しているのか、地上や草上を低空飛行して、すぐに止まってくれる。さらにもう1頭の雌が現れた。数十カットの撮影ができた。とてもきれいな個体であった。やった!

 大満足である。ツシマウラボシシジミがいた範囲は、たった10mくらいの範囲で、飛び回っていてもそこから出ようとしない。不思議な習性である。しばらく観察していたが、さらに奥に進むことにした。10分ほど進むと、道が急角度で上りだし、何もいないので、先ほどのポイントに戻ることにした。すると、たった20分間の間に日差しの具合が変わって少し明るくなっており、あの場所にはツシマウラボシシジミは全くいない! 光の具合に敏感な蝶であることが分かった。仕方がないので、ゴイシツバメシジミのポイントに戻ることにした。
 ポイントに着くと、先ほどまでいた蝶たちがほとんどいない。やはり明るくなっていて様子が変わっている。すると、上流から、表面が黒く裏面が白い小さな蝶がチラチラと輝きながら飛んできた! ゴイシツバメシジミだ! 間違えない! 止まってくれ! 水しぶきがかかる場所で大きくクルッと回って、昨年と同様に止まってくれるかと思いきや、そのまま下流に飛び去っていった! がっくりである! さらに2時間待ったが、再びやって来ることはなかった。その間、フタオチョウが吸水に来て、数カット撮影することができた。
 時間もかなり過ぎたので下山することにした。下りも足が疲れるので、不注意で滑落しないように慎重に進んだ。そして、やや平坦な場所に出たとき、ツシマウラボシシジミの雄が現れ、止まってくれた。さらに雌も現れ、たくさんの写真を撮ることができた。
 バス通りまでは上りの道になるので、日陰の場所を歩くようにしたが、本当に厳しい歩きになった。そしてバスがやってきて、無事、ホテルにたどり着くことができた。この16日間の撮影の中では、今日は上り下りが激しいので体はクタクタで最高に厳しかったが、成果も大きい探索になり、悔いは残らない秘境への1日となった。
 明日は、烏来の福山村に行く予定である。
(歩いた距離 8.7km/107.8km) (撮影枚数 5,021枚/33,641枚)

●7月2日  晴れ  台北→烏来・福山村→台北
 今日の狙いは、福山村のキスジチャバネセセリである。
 6時のMRTで西門に行き、新店駅に着いたら、やはり烏来行のバスが待っていた。烏来のバス停には、先日よりはタクシーが少なく4台しかいなかったが、先頭のタクシーの運転手に声をかけると、「オー、久しぶり!」と言ってきた。顔を見ると8年前にモクセイアゲハの探索で何度も使ったタクシーの運転手だった! 本当に偶然とは不思議なものである。30分後、渓谷のポイント近くの道に着いた。しかし、川は整備されていて、以前はカメラを防水袋に入れて、股下まで水につかって川渡りをしたポイントへは、新しく作られた橋を渡って簡単に行くことができた。蝶類は多かったが普通種ばかりで、砂地がほとんどなく、蝶たちが吸水に来られる環境ではなくなっていた。
 そこで林道を進むことにした。しばらく進むとダイミョウキゴマダラが獣糞に来ていた。たくさんの写真が撮れたので、最初のポイントに戻って待つことにした。やはりそこにも獣糞があり、フタオチョウ、スミナガシがやってきた。フタオチョウは何度も飛来したので、数十カット、撮影することができた。しかし、キスジチャバネセセリは全く現れなかった。4時間の探索であったが諦めて台北に戻ることにした。
 明日は帰国する日であるが、午前中が空いているので、剣南蝶園に行ってみる。
(歩いた距離 5.3km/113.1km) (撮影枚数 3,826枚/37,467枚)

●7月3日  晴れ  台北→剣南蝶園→台北→日本
 今日の狙いは、剣南蝶園のオジロイナズマである。
 7時半には、剣南蝶園の入口に着くことができた。階段を上がっていくと、バナナセセリの木に着いた。筒状になっている中を覗くと、かなり大きな幼虫がいた。そして、階段を下りてオジロイナズマのポイントに行くと、やはり、いた! 雌だ! しかし、パッと飛び立つとそのまま樹間に消えていった。足元には、ヒメウラボシシジミが飛んできた。運よく止まったので撮影することができた。タイワンキチョウ、シロウラナミシジミ、ルリモンジャノメ、タイワンイチモンジを撮影できたので先に進むことにした。
 剣南蝶園に着いたが、あまり蝶はいない。時間が早いからであろう。そして階段を上って、日が当たっているたくさんの花が咲いている場所に着いた。最初に撮影できたのは、クラルシジミで、たくさんの個体が吸蜜に来ていた。その中に紛れて、イワカワシジミがいるではないか! 数カット撮影することができた。木の裏側に回ると、3頭のイワカワシジミが吸蜜していた。ちょうど発生期になったと思える。十数カット撮影ができた。するとそこにトビイロセセリが飛来した。逃げる様子は全くない。ありがたいことである。さらにオオクロボシセセリ、黄斑型のミカドアゲハがやっていた。その横には赤い花が咲いている木があり、きれいなオオルリモンアゲハが飛来した。数カット撮影することができた。そこでバナナセセリのポイントに行って、とんとん棒でバナナの木の日陰になっている場所をたたいてみたが、やはり飛び出して来なかった。幼虫の状態からして、後2週間くらいすると成虫が見られると思う。この剣南蝶園では、十分過ぎるくらいの撮影ができたので、オジロイナズマのポイントに戻ることにした。
 途中、先ほどは日陰になっていて蝶はいなかった花が、今度は日当たりが良くなっていて蝶であふれていた。ミカドアゲハ、アオスジアゲハ、タイワンシロチョウ、クラルシジミが吸蜜をしていて、イワカワシジミも3頭いた。すると、突然、オジロイナズマの雌が現れた! 木陰に止まった! ようやく撮影することができた。しかし、あっという間に飛び去って行った。次に現れたのは、タイワンジャコウアゲハで、とても新鮮な個体である。すぐ近くの葉に止まってくれたので、久しぶりにきれいな写真を撮ることができた。
 そして、オジロイナズマのポイントに着いた。そっと近寄っていくと、やはり、いた! しかし逆光になっていて、止まっている場所も高く、証拠写真程度の撮影になった。それでも満足である。そして、もう十分、撮影したので、ホテルに帰ることにした。
 チェックアウトまで1時間あったので、今日の写真をパソコンに保存してみると、この撮影旅行で最多の6000枚を超える数になっていった。剣南蝶園は、やはり面白い場所だった。
 空港に着くと搭乗手続きの開始まで時間があったので、ベンチに座って、紀行文を書くことにした。そして搭乗手続きが始まる時間になったので受付に行ってみると、オンラインチェックイン済みの列には誰もおらず、未登録の列にはすでに50人ほどが並んでいた。必要なのはパスポートだけで、あっという間に荷物を預けることができた。
 搭乗口には、リクライニングの椅子が4つだけあるだけなので、毎回、早く行って座って仕事をすることにしている。18日間、長いようで、あっという間であった。
(歩いた距離 5.6km/118.7km) (撮影枚数 6,151枚/43,618枚)

●エピローグ
 100kmを超える山道をスパイクブーツで安全に歩くことができたのは、私の足にピッタリのブーツを見つけることができたおかげである。足の指も全く痛くはならず、最高の必需品となった。10日後には、10日間の北海道遠征が始まるので、再びお世話になるが、若干、靴底のピンがすり減ってきたので注意したい。
 トントン棒は、今回3本持ってきたが、1本は途中で穂先が仕舞えなくなり廃棄となった。ネットで調べたら、仕舞い寸法がさらに短い46cm3.6mが販売されていたので、北海道にはそれを購入して持っていこうと思う。
 これまでと同様に、撮った写真は持参したノートパソコンと外付けのハードディスクに保存した。カメラバッグにカメラ2台、70mm‐300mm望遠レンズ、100mmマクロレンズを入れ、ノートパソコンと付属品を入れて、ちょうど7sの重量をクリアである。最新型のノートパソコンは、バッテリーの消費が少ないので、空港などの待ち時間で作業ができるのでありがたい。
 今回の撮影旅行は、18日間と私にとっては短めの遠征であったが、数多くの撮影ができ、10種類の目標種の内、7種類を撮影できたのは幸運であったと思う。ただ、ゴイシツバメシジミだけは、目前で確認ができ、チラチラと飛び去って行った姿は、一生忘れられない光景となった。これでよかったのかもしれないが…。
 今回は、熱中症には細心の注意を払い、飲み物も水ではなく、スポーツドリンクを毎回、2リットルは欠かさないように持参した。しかし、ぎっくり腰になるとは本当に驚いたし、カメラや荷物を背負ったまま、ジャンプする行動は、自分が年老いていることを認識していない証拠であった。深く反省している。次回の北海道遠征では、十分に気を付けたいものである。
 今回もたくさんの台湾の方々にお世話になった。特に上巴陵の宿の主人と奥さんには、日本から手土産を持って行ったら、さらに桃を14個もいただいてしまった。その桃の美味しいこと、夕食後のデザートとして、本当にありがたかった。
 次に台湾に来られるのは、まだ決まっていないが、珍蝶を訪ね、感動を味わえた今回の遠征旅行は、いつまでも心に残る思い出となったことだけは確かである。
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