太平山  鳩 之 澤



...<総合評価>     ★ ★
  
● 発生数   
★ ★ ★ (5月中旬)
● 種類数
★ ★ (5月中旬)
● 行程の容易さ★ ★ (河川敷き歩きがきつい)
● 行程の安全性   
(川渡りが危険,川渡りをしなければ安全)
● 目的地までの経費 
(往復タクシー=2500元)
● 人の多さ  
★ ★ (土日は,かなり多い)


  鳩之澤温泉の温泉の排水溝付近は,フトオアゲハが集まる場所として,世界的に知られている。
 しかし,2016年5月は,鳩之澤自然歩道の橋を架ける工事が行われていて,重機が入り,河川
 の両側を掘り返しているため,フトオアゲハが現れる環境にはなっていない。後,数年はかかりそ
 うである。河川の横にある林道を進んだ場所では,1日に1頭であったが飛んでいる姿を見ること
 ができた。さらに,奥地まで行けば,2時間で4頭を確認できたが,激流を膝まで浸かっての川渡
 りを往復10回,行う必要がある。激流に足を取られれば,小さな滝が連続しているため,溺死す
 る危険を侵さなくてはならない。また,対岸の奥には,頻繁にがけ崩れをする場所があり,近づか
 ない方が良い。

...<標   高>   536m (鳩之澤温泉) 〜 862m (ポイントG)

...<採集の可不可>    太平山国家森林遊楽區内
  昆虫採集は,禁止されている。

...<宿泊地までの交通手段>
  台北から列車で,宜蘭,もしくは羅東まで行き,そこを基地とする。
..
...<宿   泊>
  宜蘭,もしくは羅東の駅の周辺には,いくつかのホテルがある。
...
...<目的地までの交通手段>
  タクシーを往復,使うしかない。タクシー代は,羅東から鳩之澤温泉まで,往復で2,500元で,タ
 クシーは,終日,同行してくれた。帰りに,清水溪へ寄ると,3,000元であった。羅東の町から鳩之
 澤温泉まで,約1時間10分かかる。
...
...<昼   食>
  ホテルの近くにあるコンビニで,朝,買っていく。
...
...<ト イ レ>
  駐車場の近くにある。

...<特筆すべき蝶と撮影ポイント>
   フトオアゲハ   ポイントABCDEF
   タイワンビロウドセセリ  ポイントE
   ホシチャバネセセリ  ポイントF
   アオバセセリ  ポイントF

. <撮影ポイントの案内>
  鳩之澤の駐車場から沢に出ようとすると,何と,橋を架ける工事をしていた。温泉の排水が沢に
 出る2ヶ所のぼぼ中央で,どう考えてもこのフトオアゲハのポイントA,B,Cは,絶望であった。そこ
 で,鳩之澤の上流を攻めることにした。温泉から沢は,100mも行かないうちに降りられることが
 できた。しかし,対岸に渡るため,初めから沢渡りである。本流ではないので,水深はかかと程で
 浅いが,しっかりと靴の中は濡れた。沢の石は,全体に小さく,岩を伝って歩くことを覚悟していた
 が,非常に楽な沢登りであった。100mほど進んで,道の工事をしていた場所を過ぎると,絶好の
 ポイントが連続する場所に出た。沢登りは,300mほど行うことができた。しかし,ポイントDから先
 は,本流の激流を渡る必要があり,背後は100m程の断崖で,沢登りを断念した。後で分かった
 のであるが,ここは頻繁にがけ崩れが起こり,非常に危険な場所であった。
  駐車場からの林道をしばらく進むと,センダングサの群落ポイントEがあり,カラスアゲハクロ
 セセリタイワンビロウドセセリクラルシジミなどを撮影することができた。さらに進む急峻な崖
 によって徐々に狭くなっている場所とポイントFがあった。フトオアゲハが蝶道を作るならば,ここを
 通過すると考えた。そして,足元には,吸水できる場所が数か所あり、最高のポイントと感じた。
  背負っていた荷物を置いて,上流を見上げた。すると,上流30mほど先に黒い小さな点が見え
 た! ひょっとして! 小さな点は,だんだんと大きくなってきた。そして,後翅に白い斑紋と赤い尾
 状突起が見えた!! フトオアゲハだ!!! すごいスピードで迫ってくる! 止まる様子は全くな
 い! 崖の岩の前を飛び行く姿を連写した。手応えはあった! さらに目でその姿を追ったが,あ
 っという間に下流へ消えていった。直ぐに後を追った。しばらく渓谷を探索したが,どこにもいなか
 った。一瞬の出来事であった。飛び方は,カラスアゲハに似ていた。大きさは,カラスアゲハより少
 し大きい位であった。そこでカメラを確認した。何とか,フトオアゲハの姿が映っていた! さらに,
 次の瞬間を待つべく,4時間近く,その一帯を探索したが,再び見ることはできなかった。
  地元の人が激流を渡って奥地へ行ったので,その後を追った。最初の沢渡りは,水深は膝まで
 であるが,流れがきつく,水に足を取られそうであった。川の幅は10mくらいである。上流に身体
 を向けながら,膝を少し曲げ,絶対に足を滑られないようにし,少しずつ足を踏みしめながら,一歩
 一歩確実に進んで行った。たった10mを進むのに,とても長い時間がかかった気がした。そして
 何とか,渡り切ることができた。本当に,死なないでよかったと思った。対岸は,げんこつ程の石が
 ゴロゴロしている河原であった。黙々と歩いて,再び,必死の川渡り。川幅が広くて,川底が良さそ
 うな場所を選んで,計5回の川渡りを終え、ようやく本流に小さな渓流が流れ込んでいるポイントG
 に着いた。すると,大きなコンクリートの壁の上に、地元の人が立っている姿が見えた。安心して一
 息ついていると,その人が近寄ってきて,ここが,フトオアゲハの最高のポイントだと教えてくれた。
 そこで、私は、もう少し先が見たかったので,さらに上流へ登ってみたが,100m程歩くと大きなコ
 ンクリートの壁に阻まれた。その壁は,幅が50cmほどあって,足元から斜めにせり上がっていた。
 歩けそうだったので、綱渡りのように両手を左右に広げて登っていくと,だんだん高くなり,最後は,
 左右の眼下にある地面が10m程,真下にある状況になった。高いところは平気な私であるが,何
 も身体を支える物がない状況に気づくと少し不安になり,お腹の辺りがゾクゾクとした。そこでロボ
 ットのようにゆっくりと体を180度回転させ,膝を少し曲げて一歩一歩確かめながら下った。地面に
 着いたとき,本当に無茶をするなあと自分に飽きれた。そして先ほどのポイントまで戻り,大きな岩
 に腰を掛け,フトオアゲハを待った。岩に座って間もなく,地元の人が,「フトオ!」と叫んだ。上流
 から,ついにフトオアゲハがやってきた。しかし,止まらない。夢中で連写した。手応えはあった。そ
 の後も、3頭のフトオアゲハが現れたが,対岸の遠く離れた場所を通過するだけであった。ここは,
 蝶道になっているが通過するだけで,吸水ポイントはやはり下流のポイントであると感じた。
  ポイントFでは,仕掛けておいたトラップに,ホシチャバネセセリアオバセセリホリシャルリ
 シジミが来た。
  羅東での13日間の撮影の前半は,天候が良く,さらに,奇跡的にフトオアゲハを6頭,確認でき,
 60枚を超える写真を撮影出来たことは,本当に運が良かったと思う。鳩之澤では,延べ20人近く
 の撮影者と会ったが,誰も,フトオアゲハを見ていなかったからである。後半の6日間は,天候が
 不順で,梅雨らしいジメジメした日が続いたが,それなりに撮影をすることができた。
<下の写真をクリックすると,大きな画像を見ることができます>

宜蘭駅,羅東駅の周辺の地図


鳩之澤の地図


ポイントB


ポイントC


ポイントDから見た対岸の様子


ポイントE


ポイントF
    



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