『 第26回 台湾撮影旅行記 』
2024年 6月17日〜7月16日
・・・ 台湾の秘境で珍蝶を探す・・・
杉 坂 美 典..........
● プロローグ
今回は,昨年,見つけることができなかった幻の蝶・エサキカラスシジミをはじめ,いくつかの秘境を探索して,珍蝶の姿をカメラに収めたいと考えている。30日間にわたる長旅なので,いろいろな出来事が待ち受けていると思われ,楽しみである。さて,どのような蝶が微笑んでくれるであろうか。
●6月17日 晴れ セントレア→桃園空港→台北→台東・池上
セントレア空港
桃園国際空港で両替をし,SIMを購入して,順調に新幹線の桃園駅まで着いた。台北から台東の池上駅までの切符は,ネットで購入しておいたので,引換券を切符に交換してもらうだけであった。予想通り,列車は満席であった。ただ,大型の荷物を置く場所が少ししかなく,早い者勝ちで,私がぎりぎりの最後であった。危なかった!しかも,私の奥にある荷物を乗客が出す際に,私の荷物を通路に置いたままにされるので,大変であった。最終的には,一番奥に入れ替えて置けたので安心した。
池上のホテルは昨年と同じにしたので勝手が分かっており,偶然,部屋も同じであった。フロントで明日の朝のタクシーを依頼し,朝7:00に南横公路のエサキカラスシジミのポイントと向陽国家森林遊楽区に行く予定である。
さっそく林さんに電話し,明後日の打ち合わせもできた。数日前に林さんの友人がエサキカラスシジミを1頭,撮影できたことを教えてくれた。明日は,午後は天気が良くなさそうなので,早めに下山しようと考えている。
(歩いた距離 5.6km/5.6km)
●6月18日 晴れ 午後曇り 池上→南横公路→向陽遊楽区→池上
タクシーは,予約通り7時に来てくれた。南横公路のポイントと向陽国家森林遊楽区への予定時間を書いた地図を渡し,エサキポイントに寄ってから向陽に向かうことを説明した。
約1時間でエサキポイントに着いた。風もなく快晴で最高の条件である。タクシーを降りて,カメラを構えると,ポイントの花の周りを飛んでいる小さなシジミが数頭いる。ワクワクしながらファインダーをのぞくと,残念ながらウラフチベニシジミであった。そこで,トントン棒でポイントの木々をたたいてみたが,ウラナミシジミ類はいたものの,本命のエサキカラスシジミは現れなかった。そこで,ポイントの周辺の道路沿いのブッシュをたたいてみると,ミヤマシロオビヒカゲ,タイワンキマダラヒカゲを撮影することができた。そしてエサキポイントに戻って探したが,やはりいないので,向陽国家森林遊楽区へ行くことにした。
向陽国家森林遊楽区の入口で入境届を記入し,道を進んでいった。すると,行こうとしていた右側の道は,工事のため通行止めになっていた。仕方がないので,登山道を進むことにした。
道は,最初は階段で,かなり厳しかったが,しばらくすると緩やかな道になった。しかし,森林が高く,光が届かないため,植物相が貧弱であった。蝶も全くいない。仕方がないので,ひたすら進むと,ようやく明るい場所に出た。そこには,いろいろな花が咲いていた。タカムクシロチョウ,タイワンコヤマキチョウ,タカムクウラナミジャノメなどの高山地帯に棲む蝶を撮影することができた。さらに探すと小さなセセリチョウが飛んでいるのを見つけた。バンダイホシチャバネセセリであった。狭い範囲に数頭が群れており,数多くの写真を撮ることができた。その後は,現れる種が同じなので,さらに山を登っていくことにした。
30分ほどは登ったが,花が全くなく,森林が深まるばかりなので,先ほどのポイントに戻ることにした。
下山していると,天候が曇りだし,ガスが出てきた。そしてポイントに着いたが,蝶の姿は全くなかった。仕方がないので,タクシーに伝えた下山の時間とは1時間ほど早いが山を下ることにした。
タクシーにエサキポイントに行くように伝え,早速向かった。すると天候が晴れてきた。
エサキポイントには,たくさんの蝶が飛んでいたが,まず,エサキカラスシジミを探した。しかし,やはりいなかった。でも,1時間半,探索する時間があるので,じっくりと現れるのを待つことにした。
そのポイントには,朝にはいなかった珍蝶のミドリヒョウモンが3頭いて,どれも新鮮な個体であった。ウスアオゴマダラシジミ,スギタニイチモンジ,ニイタカキマダラセセリ,アリサンシジミタテハなどを撮影することができた。しかし,エサキカラスシジミは最後まで現れなかった。
明日は,林さんは南横公路を西からやってきて,私は東からで,このエサキポイントで待ち合わせなので楽しみである。
ホテルに戻ってシャワーを浴びて爆睡した。
(歩いた距離 7.5km/13.1km) (撮影枚数 2,199枚/2,199枚)
●6月19日 晴れ 夕方から曇 池上→南横公路→池上
時間通り7時にタクシーは来てくれた。そして,予定通りにエサキカラスシジミのポイントに着いた。
急いで支度をして,トントン棒を片手に木々を探った。しかし,ウラフチベニシジミはいるもののエサキは姿を現さなかった。周りを探すと,ミドリヒョウモン,タイワンヤマキチョウ,タイワンコヤマキチョウを撮影することができた。
9時少し前には,林さんが奥さんと一緒に台南から車で到着した。1年ぶりの再会である。手土産に奥さんへの登山用シャツを持ってきたので渡すことができてよかった。そして,エサキカラスシジミは見つかっていないことを話した。すると,林さんの友人が先日に見つけたときは10時過ぎだそうなので,それまで,ミドリシジミ類を探しに行こうということになった。
400m程公路を戻った場所に行くと,3年前はここにもエサキカラスシジミが出たそうであったが,やはりいなかった。ミドリシジミ類は上空で乱舞していたが,撮影はできなかった。仕方がないので,戻ることにした。
エサキポイントに戻ると,もう1台,車が来ていて,若い青年が2人,カメラを持っていた。やはりエサキカラスシジミを撮影に来たそうである。やはり,まだ出ていなかった。そこで,林さんと若い青年1人と私で,公路を500m程登ったミドリシジミ類のポイントに行くことになった。
着いてみると,ミドリシジミ類が低い場所で乱舞している。そして近くに止まった。撮影してみると,エサキミドリシジミで,きれいな写真を撮ることができた。アサクラアゲハ,タカムシクロチョウ,ヤマナカウラナミジャノメなどを撮影することができたので,エサキポイントに戻ることにした。
エサキポイントでは,やはりエサキカラスシジミは出ていなかった。しかし,気温が上がったのか,いろいろな種類の蝶が訪花していた。ウラキマダラミスジ,ワタナベアゲハ,スズキミスジ,タイワンタイマイなどを撮影することができた。すると小型のウラナミジャノメが現れた。急いで撮影すると,珍蝶のミヤマウラナミジャノメであった。6年ぶりの撮影である。林さんも「よかったね。」と言ってくれた。
11時近くなったが,エサキカラスシジミは現れない。もうダメかなと思った時,林さんの奥さんが,「エサキカラスシジミ!」と叫んだ!小さな蝶が地面に止まっている。みんな一斉にシャッターを切った。手ごたえはあった!そして,次の瞬間,エサキカラスシジミは上空へと飛び立っていった。みんな,自分のカメラをのぞき込んでいる。私のカメラのモニターには,完璧な姿のエサキカラスシジミが映っていた。「ヤッター!」大声で叫んでしまった。みんなもとても喜んでいる。足かけ2年間の成果であった。林さんは,また来る可能性もあると話していた。林さんがこのポイントを教えてくれて本当にありがたいと感じた。
その後,クヤニヤシジミ,アリサンシジミタテハを撮影していると,今度は林さんが「エサキカラスシジミ!」と叫んだ!カードレールの向こう側の背丈の低い草に止まっている。たくさんの写真を撮影るすることができた。後翅を動かしているGIF動画にできる写真も撮ることができた。みんな大満足である。
エサキカラスシジミ ♂
そろそろ昼飯を食べる時間になり,リュックを取りに行くと,林さんの奥さんが焼肉まんや果物をたくさん持ってきてくれており,遠慮なくもらうことにした。学生たちもカステラをくれた。すると学生の一人がスマフォでギフチョウの写真を私に見せて,いつか日本に行ったらギフチョウを撮りたいと話した。何とそのページは,私のホームページであった。驚きである。そして,ギフチョウについていろいろ話をした。
昼食後,そろそろ下山しなくてはならない時間になったので,全員で記念撮影をすることになり,タクシーの運転手に頼んで,写真を撮ってもらった。良い思い出になった。
エサキポイントで記念撮影
明日は,池上の大池の周辺を探索する予定である。
(歩いた距離 4.5km/17.6km) (撮影枚数 1,064枚/3,263枚)
●6月20日 晴れ 池上大坡池を1周
朝食を済ませたら,さっそく池上大坡池の探索に出かけた。右回りの方には自然林があるので,発生している種類数は多い。
最初に現れたのは,エサキキチョウであったが,なかなか止まらないので撮るまでに時間がかかった。次は,ヤマトシジミで,この蝶も止まらないので撮影に苦労した。昨年,台湾南部の大崗山で,ヤマトシジミと思い込んで1カットしか撮らなかったのが,後で見直すと珍蝶のハマヤマトシジミ!ということがあったので,やはり油断は大敵である。でも,間違えなくヤマトシジミであった。
田畑の横にある雑木林の周辺を探すと,タテハモドキが交尾していた。新鮮な個体同士できれいであった。その他,ウラベニヒョウモン,タイワンキマダラ,トガリチャバネセセリ,ウスキシロチョウなどを撮影することができた。そして,カバタテハのポイントについた。しかし,マンゴーの木に実がなっておらず,カバタテハの気配もない。
仕方がないので,池の西側を通ってホテルの方向に向かった。昨年は,赤い木の実がたくさん落ちていて,ウスイロコノマチョウが数頭いたけれど,今年は木の実が全くなく,リュウキュウムラサキが数頭,縄張りを張っていただけであった。きれいな個体が多く,それだけはありがたかった。
明日は移動日なので,午前中は,大池の東側を探索し,その後,チェックアウトとして,列車で羅東に向かう。
(歩いた距離 7.4km/25.4km) (撮影枚数 194枚/3,457枚)
●6月21日 晴れ 池上大坡池の東の丘陵地→羅東
7時にホテルを出て,東の丘陵地を目指した。時間が早いせいか,蝶はほとんど飛んでいない。池の東側の道を進み,30分間ほどで丘陵地の入口に着いた。
最初の登りはかなりきつかった。しかし,しばらく進むと舗装されていない脇道を見つけた。何かいそうな雰囲気のある道であった。最初に飛んできたのは,トガリチャバネセセリの♀であった。ウスアオオナガウラナミシジミは,たくさんの個体が乱舞していた。きれいな写真を数多く撮ることができた。するとツル性の植物の花に大型のタテハチョウが止まっている。よく見るとアカボシゴマダラの♂であった。葉陰から出てくるのを待って,数カットを撮影することができた。さらに道を進むと,タイワンウラナミジャノメ,オナシアゲハ,タイワンルリモンアゲハを撮影することができた。そして,行き止まりの空き地に出た。するとアカセセリ類が現れた。セセリ類はすぐに飛んで行ってしまうので急いでシャッターを切った。3カット,撮影することができた。どんな種類かを確認すると,何と,ネッタイアカセセリであった。これまでに2か所でしか撮影したことがない珍種である。
引き返す予定の時間になったので,来た道を戻った。するとアカボシゴマダラがいた花には,リュウキュウミスジが飛来していた。
ホテルに戻って休憩した後,チェックアウトし,列車で羅東に移動した。
羅東のホテルに着くと,林さんから電話があった。「無事ですか?」という意外な言葉なので,理由を聞いてみると,私の乗った1本後の列車が,花蓮のトンネルで落石事故に遭遇したそうである。ネットを検索すると,6人が骨折を含む怪我をし,鉄道が不通になり,乗客は線路を歩いて移動した人もいたことがニュースで流れていた!私は荷物がカメラバックを合わせると35kgもあり,線路上を移動するなんてありえないことである。本当に幸運であった!
花蓮のトンネルの大事故
明日は,高標高の思源に行くので,羅東のバス総停から梨山行きのバスは7時00分に出ることを確認した。
(歩いた距離 7.7km/33.1km) (撮影枚数 850枚/4,307枚)
●6月22日 晴れ 羅東→思源→羅東
羅東のバス総停から7時ちょうどにバスは出発した。土曜日だけれど乗客は7人である。途中,トイレ休憩があり,思源駐在所のバス停に到着したのは,9時20分であった。
梨山行きのバス
タケウチセセリ ♂
昨年,林さんの友人の毛さんとこの思源で再開した時,私は毛さんに,「台南からわざわざ思源に何を撮影に来られているのですか?」と聞いたことを思い出した。毛さんは,「ここにタケウチセセリがいるので探しに来ました。」と言われた。その時は,タケウチセセリは全く見られなかったので,「こんな場所にいるのかなあ?」と思ったが,本当にいたのである。
そしてさらに先に進むと,日当たりの良い場所では,珍蝶のホリシャキコモンセセリを撮影できた。この53年間で4頭目である。そして,バンダイホシチャバネセセリ,アトムモンセセリを撮影することができた。その後は,大したものが現れないので来た道を戻ることにした。先ほどいたタケウチセセリは,どういうわけか全くいなくなっていた。そして最初の花畑まで戻り,その後は,思源菜園まで国道を歩いて行って,谷を変えて撮影することにした。
思源菜園では,撮影者が7人いた。ミヤマシロオビヒカゲ,ヤマナカウラナミジャノメ,タカムクウラナミジャノメ,ウスアオゴマダラシジミ,オジロクロヒカゲ,シルビアキマダラセセリ,ムラサキイチモンジなどを撮影することができた。帰りのバスの時間を計算すると引き返す時間になったので,明日,再度,この谷を探索することにし,来た道を帰った。途中,キコモンセセリ類が現れたが,撮影できなかった。明日の課題である。川を渡ろうとした時,中型のセセリチョウが吸水に現れた。タケウチセセリであった。他にいないかと探したが見つからなかった。仕方なく下山した。
思源菜園には,梨山を13時に出たバスが来るので,到着時間は,14時10分ごろである。これを乗り過ごすと羅東行きのバスはなく,30分後に来る宜蘭行きしかなくなるので,絶対に乗り過ごしはできない。見落とさないように気を付けていると,バスは14時20分に来た。ほとんど行きと同じメンバーだった。羅東に着いたのは,16時40分であった。長い1日であった。
明日は,思源菜園で,キコモンセセリ類,ゼフィルス類,タケウチセセリ,シルビアキマダラセセリを探索しようと思う。
(歩いた距離 7.9km/41.0km) (撮影枚数 1,072枚/5,379枚)
(歩いた距離 5.1km/46.1km) (撮影枚数 818枚/6,197枚)
●6月24日 晴れのち雨 羅東→上巴陵→東斜面・西の山
朝5時半に起きて,体温を計ると平熱! 体も自由に動く! そこで,昨日できなかった洗濯をコインランドリーで行い,タクシーの迎えの8時に間に合わせることにした。というのは,上巴陵には,コインランドリーがなく,7泊8日になるかもしれないので,どうしても洗濯をしておきたかった。最初の計画では,上巴陵は3泊4日で,次の尖石の前半を4泊5日で計画していたが,後半(7月4日〜)の尖石の4泊5日は取れたものの,前半は2か月前から満室で取れなかった。しかも,上巴陵に追加の宿泊をネットで依頼したが,当日,現地に行かないと分からないという返事であった。まあ,運を天に任せるしかない。
タクシーは,8時少し前に来た。感じの良い運転手である。2時間半のドライブである。
タクシーに乗って山岳道路に入り,30分ほどしたところで,工事のため,通行時間規制が行われており,約1時間の足止めをされることになった。私にとっては好都合である。運転手は,10時には通行が再開されるので,それまでに戻ってきてくださいと教えてくれて,早速,カメラを持って探索を始めた。
高地にしかいないタカムクウラナミジャノメ,ニイタカキマダラセセリで,たくさんの写真を撮ることができた。エサキウラナミジャノメ,ホソチョウ,タイワンコムラサキなどを撮影することができた。
11時半,上巴陵に到着した。さっそく,7泊8日にできるかを聞いたところ,OKであった。よかった!午後1時にチェックインだそうで,それまでは,東の斜面を探索することにした。
上巴陵から見た山々
(歩いた距離 9.2km/55.3km) (撮影枚数 1,324枚/7,521枚)
ララサンミスジ ♀
私にとっては初記録種である!他にもいないかとその周辺を探したが,1頭いただけであった。そして,にわかに曇ってきて,雷が鳴りだしたので,宿に帰ることにした。
明日からは,ララサンミスジの撮影1本に絞り,探索を行う予定である。
(歩いた距離 7.3km/62.6km) (撮影枚数 1,900枚/9,421枚)
●6月26日 雨 雷雨 時々曇 上巴陵
今日は雨なので,休日となった。
(歩いた距離 0.3km/62.9km)
ホリシャイチモンジ ♀
毎日,感動できる上巴陵は,本当にすごい場所である。昼近くになったので,宿に戻ることにした。
明日は,西の山に最初に行き,その後,西の斜面を散策しようと思う。
(歩いた距離 5.2km/68.1km) (撮影枚数 1,247枚/10,668枚)
●6月28日 晴れ 午後2時から雷雨 上巴陵の西の山と斜面
9時に宿を出て,西の山に向かった。センダングサが生える荒地には,アオタテハモドキ,アカネシロチョウがいた。ランタナの植え込みには,シロオビアゲハ,オナシモンキアゲハがいた。そして,林道の入口に着いた。ヒカゲチョウ類が飛び回っている。その中に1頭,飛び方が違うやや大型のヒカゲがいた。追ってみると,タイワンキマダラヒカゲであった。すぐに飛び去ってしまったが,何とか1カット,撮影できた。スズキミスジ,ユウレイセセリを撮影し,鉄塔のポイントに向かった。途中の樹液が出ている場所に何がいるかが楽しみである。そして着いたので,そっと近寄ってみると,ワモンチョウの♀がいて,ホリシャイチモンジの♂も来ていた。ホリシャイチモンジは,気配に気づいてすぐに飛び立ったが,周辺を飛びまわり,時々止まってくれるので,数カット撮影することができた。鉄塔の周りでは,タイワンコムラサキ,タイワンイチモンジ,ホリシャミスジなどを撮影することができた。ララサンミスジはやはりいない。仕方がないので,先の林道に戻ることにした。奥まで行ったが,先ほどとあまりかわりがない。そこで,1本下の道に行ってみようと林道を出ようとしたとき,樹上の木の陰で大型の蝶がゴソッと動いた。カメラで確認すると,オオムラサキである。しかも2頭いる!樹液に来ているのであるが,場所が高くて暗くて,なかなかシャッターが押せない。さらにもう1頭いることがわかった。しかし,この1頭は,しばらくすると飛び去っていった。後の2頭は,この場から離れる気配がない。1頭はかなりきれいだが,もう1頭はそこそこ傷んでいることが分かった。そこで,きれいな方の個体がよいアングルに来るまで粘ることにした。約1時間,オオムラサキとの我慢比べをし,数カットの撮影をすることができた。
オオムラサキ ♂
昼近くになってしまったので,一度,宿へ戻り,休憩をしながら昼食をとり,午後,西の斜面を探索することにした。
西の斜面に入る林道では,タッパンチャバネセセリを撮影できた。そして,ララサンミスジがいた場所を探索したが,やはりいない。仕方がないので,奥の右の林道に入った。すると,先回入ったときは気づかなかったが,カエデの大木から樹液が出ていて,ワモンチョウ,タイワンコムラサキの♂と♀,ホリシャイチモンジ,ウラキマダラヒカゲが集まっていた。この場所は,明日からも楽しみである。
その後,奥の左の林道に行ってみたが,大したものはおらず引き返すことにした。
途中,国道から右下の谷に続く林道があり,先回も入って大したものはいなかったが,行ってみることにした。最初に現れたのは,イシガケチョウであった。しかし,他にはお馴染みのチョウばかりである。天候も怪しくなってきたので,国道に戻ることにした。すると,オレンジ色の中型のタテハチョウがスーッと飛んで行って葉上に止まった。オスアカミスジの♂である。数カット,撮影することができた。
国道沿いでは,タイワンウラナミジャノメが遊んでくれた。そして,雷鳴が響き渡るようになり,宿に着いたとたん,土砂降りの雨になった。幸運であった!
明日は,先に西の斜面に行き,樹液に何が来ているかを見て,その後,下巴陵まで林道を歩いて行く予定である。
(歩いた距離 7.5km/75.6km) (撮影枚数 1,051枚/11,719枚)
ホシミスジ ♀
そこで林道をどんどん進むことにした。この林道は周辺に竹林が多く,植物相が貧弱なので,ほとんど蝶がいないことが分かった。仕方がないので,どんどん山を下った。しばらく進むと,少し明るくなった場所で,地面でかなりの数の蝶たちが飛び回っている場所に着いた。そっと近寄ってみると,梅の腐果に3頭のホリシャイチモンジ,たくさんのウラキマダラヒカゲがいた。この時期は,珍蝶のホリシャイチモンジの盛期に当たっていることを実感した。すると,草むらに中型のウラナミジャノメ類が飛んでいる。もしかしてと思いカメラでのぞくと,やはり珍蝶のカノウラナミジャノメであった。しかもこの辺りをテリトリーとしているのか,飛び去ってもすぐに戻ってくる。これだけ数多くの写真を撮ることができたのは初めてある。そして,たっぷりと遊んでくれたので,さらに下山することにした。
予定の時間どおり国道に着いた。後はバス停まで約40分間,歩けばよい。途中,9年前に崩落した林道に少し入ってみることにした。クロアゲハ,タイワンモンキアゲハなどがいた。すると葉上にシジミチョウが止まった。アサギシジミである。これまのにこの下巴陵で2回,計6枚しか撮ったことしかない珍蝶である。慎重に撮影した。きれいな個体であった。そしてその林道を少し進むと,何とアサギシジミの発生地であることが分かった。たくさんの個体の撮影ができた。青く輝く翅を開くGIF動画にできる写真も撮影できた。
アサギシジミ ♀
この林道の先は崩落しており,ある程度近寄って確認したところ,崩落場所はそのままになっており危険なので引き返すことにした。国道に出ると,バスの時間が近づいていたのでスマフォを見ると,20分遅れと出ていた。便利な時代である。そしてバスがやってきて,小雨が降りだしたが,濡れずに宿へ着くことができた。
明日は上巴陵の最終日なので,朝は西の山に行き,その後,ララサンミスジの林道とホシミスジがいた林道の入口に行って帰る予定である。
(歩いた距離 8.2km/83.8km) (撮影枚数 906枚/12,625枚)
●6月30日 晴れ 午後2時前から雨 上巴陵の西の山と斜面
上巴陵の最後の撮影日である。まず,宿の主人に明日の台北行きのタクシーを依頼し,OKが取れたので,予定通り西の山に向かった。
いつもの常連たちが姿を現す中,オオムラサキのポイントに行ったが,今日は全くいなかった。そこで林道の奥に進むと,黒いタテハチョウがコンクリートの上で吸水しているのを見つけた。そっと近寄ると,珍蝶のスミナガシである!逃げようとしないので,十数カット,撮影することができた。
スミナガシ
(歩いた距離 5.7km/89.5km) (撮影枚数 1,023枚/13,648枚)
●7月1日 晴れ 午後2時前から雨 上巴陵→台北
10時にタクシーは来てくれ,2時間半後,無事,台北に着くことができた。ホテルのチェックインは,午後3時なので,それまで洗濯をしてよいかと聞いたところ,かまわないとのことで,洗濯室まで連れて行ってくれて洗濯機や乾燥機の使い方を教えてくれた。洗濯の間に昼食をとり,午後2時ころからは大雨になり,何とか時間を過ごして,午後3時にチェックインした。
明日は,午後から雨予想なので,オジロイナズマを狙って,近場を探索しようと思う。
(歩いた距離 5.8km/95.3km)
●7月2日 晴れ 午後2時前から雨 台北・剣南蝶園
8時にホテルを出て,MRTに台北駅から乗って,忠孝復興駅で乗り換えて剣南路に着いた。そこからは歩きで剣南蝶園まで20分である。昨年,オジロイナズマがいた広場を最初に探索したがいなかった。そこで,川に橋が架かっている場所に行ったところ,バナナの木の花にクロセセリが止まっていた。数カット,撮影することができた。さらに下草には,ホソバセセリがいた。やはり数カット,撮影することができた。その後は,蝶の食草が植えてある広場に行った。ルリモンジャノメ,オオルリモンアゲハ,オオクロボシセセリ,クラルシジミを撮影することができた。その後,再度,オジロイナズマがいた場所を探索したが見つからなかった。
明日は,内湖の北側の山に行ってみるつもりである。
(歩いた距離 8.8km/104.1km) (撮影枚数 170枚/13,818枚)
●7月3日 晴れ 午後2時前から雨 台北・碧湖歩道
8時30分に宿を出て,台北駅から板南線で南港展覧館まで行き,そこから文湖線で大湖公園まで行った。そこから碧湖歩道に向かった。目的は,ウラマダラシロオビヒカゲである。環境は,やや薄暗い散歩道が続いており,良さそうであった。最初に撮影できたのは,ムラサキシジミであった。ちょうど発生期に当たっているようで,数頭の個体を撮影することができた。その後は,トントン棒で周辺を探りながら探索し,ルリモンジャノメ,ウラキマダラヒカゲ,クロコノマチョウなどを撮影できたが,ウラマダラシロオビヒカゲを見つけることはできなかった。
明日は,埔里への移動日である。
(歩いた距離 15.3km/119.4km) (撮影枚数 153枚/13,971枚)
●7月4日 晴れ 台北→埔里
今日は移動日である。台北から新幹線に乗り,台中で降り,そこからは,バスで埔里に着いた。洗濯をしたり,今後のバス移動の時刻表を移したり,写真の整理をした。
明日は,埔里から廬山行き6:20のバスに乗って終点まで行き,到着は,7:10で,帰りのバスが14:20なので,実際は5時間くらいの探索になると思う。
(歩いた距離 4.2km/123.6km)
●7月5日 晴れ 埔里→廬山→埔里
埔里発6:20の廬山行きのバスに乗って,約1時間半で目的地に着いた。Googleで調べたときは,茶畑の所々に自然林があったので良さそうに見合えたが,植物相が貧弱で普通種しかいなかった。バスが来るまでは,2時間近くあったが,仕方がないのでバス停近くの日陰でバスを待つことにした。
すると,子どもたちが大きな虫かごを持って歩いているのに気づいた。そこで声をかけてその中を見せてもらうと,きれいなモモブトハムシや赤いノコギリクワガタがいた。「すごいね!」と褒めていると,他の友達もクワガタを何頭か持っているという話になり,それぞれの家に帰ってクワガタムシを持ってきてくれた。
盧山の子どもたち
ヒラタクワガタの仲間,オニツヤクワガタの仲間,ノコギリクワガタの仲間,ミヤマクワガタの仲間,コカブトムシの仲間などであった。しばらく虫の話で盛り上がった。
その後,子どもたちと分かれ,バス停の横に移動しバスを待っていると,植え込みの中にクワガタがいるのを見つけた!ミヤマクワガタの仲間である。不思議なことがあるものである。
ミヤマクワガタの仲間 ♂
そこで,先ほどの子供の家がどこにあるか分かっていたので,そのミヤマクワガタの仲間を持っていって,「あそこにいた!」と言ってプレゼントしたら本当に喜んでいた。今日は,蝶の撮影はよくなかったが,楽しいひと時を過ごすことができた。
明日は,翠峰方面へバスで行く予定である。
(歩いた距離 9.8km/129.2km) (撮影枚数 393枚/14,364枚)
ミヤマウラナミジャノメ ♀
(歩いた距離 10.8km/140.0km) (撮影枚数 1,926枚/16,290枚)
●7月7日 晴れ 午後2時から雷雨 埔里→ナールー湾→眉渓→埔里
埔里を7時前の松崗行きのバスに乗って,約1時間でナールー湾に着いた。そしてポイントの林道に入った。昨日よりは時間が早いので,飛んでいる蝶は少ないが,ヤマナカウラナミジャノメ,スギタニイチモンジ,シータテハなどは,元気に飛び回っている。アカタテハも登場した。すると,大型のセセリチョウが葉の裏側に止まった。そっとカメラで覗くと,珍蝶のオオシロシタセセリである。何とか撮影することができた。8年ぶりの撮影である。その後は,大したものは現れないので,青青草原に移動した。
青青草原の入口の花が咲いている場所に着くと,小型のウラナミジャノメ類が飛んでいる。ミヤマウラナミジャノメだ!昨日は,ここにはいなかったのに時間帯が違うのでいるのであろう。数頭が飛び回っている。しかも花に止まってくれるので撮影はしやすい。数カット撮影することができた。そこで,昨日いた上の林道に行ってみることにした。途中,タイワンビロウドセセリ,テングチョウ,タイワンコヒトツメジャノメなどが現れた。昨日,樹液が出ていた木には何も来てない。そしてミヤマウラナミジャノメのポイントに着いたが1頭いただけであった。日差しの関係で,若干,状況が違うからであろう。そこで,最初のポイントに戻ることにした。戻ってみると,先ほどまでいたミヤマウラナミジャノメの姿がない。何ということだ!条件が変わるとこれほどまでに見つからなくなるとは本当に驚いた。花には,ワタナベアゲハの♂と♀が来たので,数カット撮影することができた。仕方がないので,再度,奥の林道に行ってみた。ミヤマウラナミジャノメはおらず,昨日はいなかったタイワンウラナミジャノメが現れ,運よくスギタニイチモンジの羽化したての♀が現れ,きれいな写真を撮ることができた。しばらく待っていても他には飛んでこないので,最初のポイントに戻った。すると1頭,ミヤマウラナミジャノメが現れ,何とか撮影することができた。本当に不思議な蝶である。まだまだ時間があるので,11時過ぎのバスで山を下り,眉渓に行ってみることにした。
眉渓は10年ぶりである。眉渓の奥へ続く大きな道路から橋を渡って左に舗装されていない林道があるので入ってみた。すると,ミカドアゲハ,アオスジアゲハ,ワタナベアゲハ,タイワンモンキアゲハなどが吸水群を作っていた。さらに進むと,本道に戻る手前で,タイワンアオバセセリがセンダングサに吸蜜に来ていた。さらにベニモンシロチョウが現れた。非常にきれいな個体であった。数カット,撮影することができた。そしてしばらく進んだが,大したものはいないので,埔里に戻ることにした。バスは,予定通りにきた。今でもバス停には,バス停ごとの時間がかかれておらず,出発地点の時間しか分からないが,スマフォで検索すると,そのバス停の到着時間が分かるので,便利になったものである。ホテルに着くと,あっという間に雷雨になった。ラッキーである。
明日は,いよいよ秘境・尖石へ移動である。山奥なので,店はない。熱中症対策で大型スポーツドリンクを4本,約7リットル買い込んだので,バッグが30kg以上になった。さあ,どんな珍蝶がいるであろうか。楽しみである。
(歩いた距離 9.9km/149.9km) (撮影枚数 1,778枚/18,068枚)
●7月8日 晴れ 午後2時から雷雨 埔里→新竹→尖石
埔里のホテルを9時に出てバスで台中まで行き,そこからは,新幹線で新竹に行き,早めの昼飯を食べた。新竹の駅前にはタクシーが多数,待機しており,宿の名前と所在地を書いた紙を渡すと,早速,出発することができた。約2時間20分で山荘に着いたが,そのタクシーに帰りの迎えができるかどうか聞いたところ,尖石はあまりに遠いので無理だと断られてしまった。
尖石の山々
そこで山荘にチェックインし,帰りのタクシーの件を依頼すると,たまたまその場にいた泊り客の親切な女性が知人のタクシーに依頼し,新竹駅まで送ってくれることになった。よかった!そして大型バッグは,1階にあり,部屋は山荘の2階なので,これは運ぶのが大変だ!と思っていたら,何と,先ほどの泊り客の旦那さんがバッグを持ち上げて2階まで階段で運んでくれた。本当にありがたいことである。その旦那さんが,晩飯の時,自分たちのグループで餅つきをやるそうで,一緒にやろう!誘ってくれた。晩飯の後は,みんなが代わる代わるに餅つきを行い,大盛り上がりで,楽しいひと時を過ごすことができた。本当に台湾の方々には,感謝に堪えない。
宿泊客で餅つき |
きな粉をまぶしてパクリ |
この山荘はとてもきれいだが,交通の便が悪すぎることと,朝飯と晩飯しかできないことが難点であることが分かった。今回は,一応,昼飯用にフルグラを持ってきていて助かった。明日から3日間,どんな蝶が顔を見せてくれるか楽しみである。
(歩いた距離 3.3km/153.2km)
●7月9日 晴れ 午後4時から曇 尖石
朝飯に大きな蒸しパンが着いたので,それを昼飯にすることにした。8時,尖石の林道に入った。ヤマナカウラナミジャノメ,メスチャヒカゲ,タカムクウラナミジャノメ,シータテハなどがいたが,多くの場所がキャベツ畑になっていて,脇道に入ってもキャベツ畑への林道で,予想以上に厳しい探索になった。4qほど先には川を渡る橋が架かっているので,そこを目指すことにした。途中,キンミスジ,オオシロオビクロヒカゲ,オスアカミスジ,スギタニイチモンジ,ミヤマシロオビヒカゲ,ホソバセセリ,コシロウラナミシジミ,アオタテハモドキなどを撮影し,昼前に橋に着いた。オスアカミスジが占有行動をしているが,あまり蝶はいない。そこで,さらに先に進むことにした。すると,周りの様子が違って,キャベツ畑がなく,自然林が道沿いに続いている。期待ができそうである。最初に現れたのは,ワイルマンシロチョウであった。林道沿いの木々には,各所でオスアカミスジが占有行動をしていた。そして,午後2時になったので,来た道を戻ることにした。しばらく進んで小さな小川が流れている場所まで戻ったとき,大型のミスジチョウが吸水にきた!チョウセンミスジである!撮影は6年ぶりの3頭目である。2カット撮影したところで飛び去っていった。戻る途中,いろいろ探したが,見つからなかった。そして,橋の場所に来た。すると大型のミスジチョウが地面すれすれを飛んでいく。止まる様子がないので,飛翔写真をノールックで撮った。映っているといいが…と思いながらコマを送ると,2コマ映っていた!しかもニトベミスジ!7年前に1頭,拉拉山の麓で撮っただけである。しばらくは,再度,飛来しないかと待ったが,やって来なかった。山荘に近い場所で,オスアカミスジが葉上に止まっていたので撮影すると,その近くに何とさらに6頭が止まって休息をしている。昼間はあれだけ追飛行動をしていたのに不思議な生態である。そして,午後4時,山荘に着いたとたん,小雨が降ってきた。今年は,本当に運が良い。
明日は,ニトベミスジを狙って,ポイントに直行しようと思う。
(歩いた距離 14.9km/168.1km) (撮影枚数 2,225枚/20,293枚)
(歩いた距離 9.8km/177.9km) (撮影枚数 338枚/20,631枚)
●7月11日 晴れ 正午から小雨 尖石
午前中は晴れて,午後からは小雨の天気予報なので,なるべく早くニトベポイントに向かうことにし,7時30分,山荘を出た。最初に現れたのは,シロオビクロヒカゲであった。かなり珍しい蝶である。次には,メスチャヒカゲ,ニイタカキマダラセセリ,アオテハモドキ,イシガケチョウなどを撮りながらポイントに向かった。そしてポイントの橋の手前では,かなり大型のミスジチョウ類がいた。そっと近寄って撮影すると,ホリシャミスジであった。次に現れたのは,ダイミョウキゴマダラで,今回の撮影旅行では初めての登場である。ユウマダラセセリも撮れ,タイワンヤマキチョウなども飛んできたが止まらないので,飛翔写真を撮った。数カット撮影することができた。ホソバオオウラナミジャノメも撮影でき,ようやくポイントの橋に着いた。しかし,ニトベミスジはいなかった。橋の下の岩を見ると,大型のセセリチョウが飛び回っていた。オオシロシタセセリであった。数カット撮影することができた。そして,再度,橋の上に戻ると,大型のミスジチョウ類が道路に止まって翅を動かしている。急いで撮影すると,何と,ニトベミスジである!やった!近づいても逃げようとしない。非常にきれいな個体である。数カット,撮影することができた!そして,上流に飛び去っていった。
ニトベミスジ ♂
朝早く山荘を出来てきた甲斐があった。そこで,一昨日,ニトベミスジを見つけた橋の少し手前の場所に行ってみた。すると,中型のミスジチョウ類が木の高い場所に止まった。撮影してみると,何と,アサクラミスジであった!私の初記録である。しかし1カットしか撮れなかった。その後は,周辺を探索したが,アサクラミスジは現れなかった。そこで,再び,橋に戻った。
橋についてしばらくすると,橋の横のやや高い木の上で,大型のミスジチョウ類が占有行動を始めた。撮影すると,ニトベミスジである!先ほどの個体とは違って,左側の翅が少し欠けている。いろいろな場所で占有行動をしてくれるので,数多くの撮影をすることができた。そして,やはり上流に飛び去っていった。しばらくすると,さらに別のきれいな個体が占有行動を始めた。今日は,これで3頭目である。そこで,橋の手前のアサクラミスジがいた場所に戻って探したが,やはりいなかった。そこで,林道を奥に進んでみることにした。
一昨日,チョウセンミスジがいた場所に着いたが何もいない。しかし,少し進むと,何とに,再び,ニトベミスジが現れた。後翅が少し切れている別個体で,これで4頭目である。その後は,さらに林道を奥へと進んだが,11時半になると予報通り,空が曇りだした。これは,雨が降ると感じ,山荘に戻ることにした。
しばらくしてニトベミスジが3頭いた橋に着いたが,やはり曇ってきたので何もいない。急いで山荘に向かった。12時になったころから,やはり小雨が降り出した。傘をさしてカメラが濡れないようにし帰路に着いた。
尖石は,珍蝶の宝庫で,車で来られる台湾の方々には素晴らしい場所である。しかし,海外からの旅行客にとっては非常に厳しい環境であった。まず,ネットのサイトで山荘を予約することができないため,直接,山荘と交渉する必要があり,山荘の設備が良く,食事も豪華で美味いため人気があって混んでおり,なかなか予約が取れず,経費も非常に高い。そして,尖石までの交通の便が悪く,タクシーで来るのが距離があって大変で,しかも帰りの交通手段がない。さらに山荘からポイントまでの山が険しく距離も長く,人家の傍では犬があちこちで放し飼いにされており,突然吠えられるので注意が必要であった。この尖石は,二度と来られない場所であることを実感した。
明日は,山荘の泊り客の友人に新幹線の新竹駅まで車で送ってもらい,新幹線で台北に行き,最後のベース基地とする。
(歩いた距離 13.4km/191.3km) (撮影枚数 1,064枚/21,695枚)
●7月12日 晴れ 尖石→新竹→台北
約束の10時よりも早く車は来てくれ,とても親切な運転手さんだった。山荘の方にもお礼を言い,尖石を出発した。約2時間で新幹線の新竹駅に着き,午後2時には,ホテルに着くことができた。大量の洗濯をし,今日は休息日となった。
(歩いた距離 4.7km/196.0km)
●7月13日 晴れ 台北→台北市立動物園→剣南蝶園→台北
台北市立動物園は,開園が9時なので,比較的ゆっくりとした朝の時間を過ごすことができた。そして,8時30分にホテルを出発し,MRTで動物園駅に着いた。
台北市立動物園の目的は,オジロイナズマの♀である。虫虫探索谷の入口では,5種類のマダラチョウ類が訪花していた。そして,昆虫館の裏手では,シロスジマダラが占有行動をしていた。さらに林道を進むと,リュウキュウムラサキ,クロタテハモドキなどを撮影することができたが,オジロイナズマはいなかった。そこで,一応,昆虫館にも入ってみると,国が保護をしているタイワンオオクワガタが飼育されており,初めて生きているものを見た。また,タイワンヒラタクワガタ,カブトムシなどを見ることができた。その後は,花壇にホリシャアカセセリが飛来していた。仕方がないので,MRTでそのまま行ける剣南蝶園にやはりオジロイナズマの♀とバナナセセリを探しに行くことにした。
剣南蝶園に着くと,ムラサキシジミが現れた。沿道では,ベニモンアゲハがゆっくりと飛んでいて止まらないで飛翔写真を撮ることにした。数カット,撮影することができた。すると,前翅に白帯のある大型のタテハチョウがすごいスピードで現れ,低木の周りを旋回し始めた。オジロイナズマの♀だ!止まってくれ!と祈った! しかし,そのまま飛び去ってしまった。しばらくは,その近くの場所を探索したが,やはり見つからなかった。仕方がないので,バナナセセリのポイントに移動した。トントン棒でそっとバナナの木を触ってみると,飛び出した!バナナセセリだ!そしてバナナの枯れ葉に止まった。急いで撮影し,撮影し終わったら飛び去っていった。その後は,他のバナナの木を探しても見つからなかった。花畑では,オオルリモンアゲハ,クロアゲハ,クラルシジミ,ルリモンジャノメなどを撮影できた。そして再度,オジロイナズマがいた場所の周辺を探したが見つからず,ホテルに帰ることにした。
明日は,再度,剣南蝶園へ行ってみようと思う。
(歩いた距離 9.2km/205.2km) (撮影枚数 513枚/22,208枚)
●7月14日 晴れ 台北→剣南蝶園→台北
9時半にホテルを出て,10時半には,剣南蝶園に着いた。林道では,ルリモンジャノメが迎えてくれたが,やはりオジロイナズマはいない。仕方がないので,バナナセセリのポイントに行き,トントン棒でそっとバナナの葉を触ると,パッとバナナセセリが飛び出し,葉の裏側に止まった。1カット,撮影できた!しかし,すぐに飛び立ってジャングルの奥に消えてしまった。その後は,コミスジ,クラルシジミなどを撮影し,格物台という遺物がある山道に行ってみた。しかし,蝶はほとんどおらず,尾根のピークでは,フタオチョウの♀が飛んでいたが止まらなかったので撮影できず残念だった。そして,再度,剣南蝶園に戻り,バナナセセリやオジロイナズマを探したが見つからず,最後に,ヒメウラボシシジミを撮影して今日の撮影は終わった。
明日は,最後の撮影日である。平日なので混んでいないことを期待して烏来に行き,珍蝶のツシマウラボシシジミを探索してみようと思う。
(歩いた距離 6.2km/211.4km) (撮影枚数 106枚/22,314枚)
●7月15日 晴れ 台北→烏来→台北
4時半に起き,朝飯,昼飯を買い込んで,5時40分にホテルを出た。MRTは6時が始発なので,烏来に行くには,西門で乗り換え,終点の新店駅で降りればよい。新店駅の出口を出ると近くに烏来行きのバス停がある。バス停に7時ちょうどに着いてみると,20人くらいの列ができていた。これが休日だと何十人もの列になるから大変である。そして5分も経たないうちに烏来行きのバスが来て全員が座れた。
このバスは,通勤に使っている方が多く,途中でかなりの人が降りた。烏来総站に着くころには半分くらいの人になっていた。
これまでに烏来には20回以上来ているが,珍蝶のツシマウラボシシジミのポイントは少ない。やはり原生林が残っているような場所でないと生息できないのであろう。今回は,これまでに行ったことのない場所を選んだ。烏来総站には3台のタクシーが待機していた。行く場所と迎えの時間を相談し,了解が取れたので,早速,出発した。そして,目的の林道の入口に着いたので,再度,迎えの時間を確認し,タクシーと別れた。※烏来区の中の移動については,珍種の保護のため,詳細が記述できないことをお許しください。
本道から細い林道に入ってみるとは,所々蜘蛛の巣が張ってあるので先行者はいないようである。だが,昨日はすごい人出だったようで,林道の入口にあるゴミ捨て場には,生々しいゴミがあふれていた。林道を進むと最初に現れたのは,トガリワモンであった。そしてホソバセセリが数頭いて,腐果には,ルリタテハ,ウラキマダラヒカゲが来ていた。トビイロセセリ,ヤエヤマイチモンジ,ウスイロコノマチョウ,クロコノマチョウがいた。さらに細い林道に入ると,予想した通り,うっそうとしたジャングルになっていた。日陰になっているので蝶は何もいない。「ポイントの選択を間違えたかな。」と思いながら黙々と進んだ。するとようやくクロテンシロチョウが現れた。太陽の光が差す場所では,ホリシャルリマダラがいた。しかし他には何もいない。「うーん,まいったな。」と思いながら,ひたすら先に進んだ。そしてようやく一か所だけ日が差す小川に出た。大きな石がごろごろと重なり,その間を小川が流れている。
小さな滝の水しぶきがかかる場所には,イシガケチョウが吸水に来ており,イチモンジチョウ系のタテハチョウが飛んでいる。撮影すると,ナカグロミスジであった。ヤエヤマイチモンジもいた。するとその場所に小型のシジミチョウが飛んできた。飛び方からして,タイワンクロツバメシジミだろうなと思いながら撮影し続けたが,「裏面が白すぎるなあ,怪しい!」と感じたので,これは撮り続けるしかないと決意し,目を離さないようにして連写した。そして,シジミチョウが枯れ葉の上に止まったままになってくれたので,撮った画像を確認すると,何と,まさか!斑紋が大きい!ゴイシツバメシジミである!日本では国指定の天然記念物になっている珍蝶である!再度,確認したが間違えはない!本物である!ひたすら撮り続けた。次々に止まる場所を変えてくれるのでありがたい。いろいろな角度で撮影することができた。そして,しばらくすると下流へ飛び去っていった。
ゴイシツバメシジミ ♂
そこで再度,画像を確認した。間違えない!大声でカチドキを挙げたい気分である!そして再度やって来ないかと,昼食を取りながら2時間以上待ったが,日差しが高くなり,至る所に日が差すようになったので,諦めて下山することにした。
下山の途中,ようやく登山客と出会った。平日に撮影日を設定して本当によかったと感じた。さらに下山すると,小型の蝶がチラチラと草の上を飛んでいる!ツシマウラボシシジミだ!すぐに止まってくれるので,十数カット,撮影することができた。
ツシマウラボシシジミ ♀
今日は,「本当に素晴らしい日になったなあ。」と思いながら本道に出た。タクシーは時間通りにやってきてくれた。烏来総站に着くと,オジロイナズマの♀が飛んできたが止まらずに去っていった。さらにもう1頭,やってきたが飛び去った。オジロイナズマがこの烏来まで分布を拡大していることを確認することができた。バスは時間通りに出発し,新店駅を経由して台北に戻ることができ,素晴らしい1日になった。
(歩いた距離 8.6km/220.0km) (撮影枚数 2,045枚/24,359枚)
●7月16日 晴れ 台北→桃園国際空港→セントレア空港
11時半にホテルをチェックアウトし,航空機は,2日前にオンラインチェックインをしたので,ゆっくりと桃園国際空港に向かい,無事,帰国することができた。
●エピローグ
この撮影旅行の最大の目的は,エサキカラススジミを撮影し,その生態を観察することであり,早々に達成できたのは,林さんご夫婦のおかげである。また,尖石では,旅人夫婦が親切に対応していただけ,今回も色々な所でたくさんの方々のお世話になり,再度,台湾の方々のやさしさに触れた旅となった。
成果としては,私にとっての新記録種として,エサキカラススジミ,ララサンミスジ,アサクラミスジ,ゴイシツバメシジミの4種類を追加することができ,これまでに自分で撮影できた種は,計321種(現存367種)となった。さらに,タケウチセセリ,ホリシャイチモンジの綺麗な♀,ホシミスジ,スミナガシ,ニトベミスジ,ミヤマウラナミジャノメ,ツシマウラボシシジミなどの感動的な出会いもできた。本当に台湾は珍蝶の宝庫だと感じることができた。
次回は,11月上旬に台湾の南部,来年の6月下旬〜7月上旬に台湾の北部の珍蝶を再度,探索したいと思う。
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