臺灣蝴蝶 <アゲハチョウ科1>


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オナシアゲハ 花鳳蝶 (台湾産)   Papilio demoleus demoleus Linnaeus,1758   名義タイプ亜種


写真数: 60枚


出現頻度
★★☆☆☆
分布區域 ,記録點
【特  徴】
 日本産と同じ亜種である。中型のアゲハチョウである。とても速く飛び,花に止まっている時間も短時間であった。特定な場所で発生し,数少ないチョウである。
【雌  雄】 ♀は,後翅後角の藍斑が発達するので,雌雄を区別することができる。
【成虫期】 周年,年数回発生している。
【生息地】  台湾の低・中標高(〜1000m)の常緑広葉樹林,熱帯雨林,海岸林,都市林で見られる。
 墾丁の社頂自然公園羅東新城溪羅東清水溪苗栗縣三義台北市剣南山,新北市万里區,高雄市左営區で撮影することができた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,中東,インド,インドシナ半島部,中国の南西部・南部,インドネシアの南東部,ニューギニア南部,オーストラリア北東部・東部に分布する。
 中国では,雲南省,四川省,貴州省,広西區,湖南省,広東省,海南省,福建省,上海市に分布し,台湾と同じ名義タイプ亜種である。
【近似種】 なし

アゲハチョウ 柑橘鳳蝶 (台湾産)   Papilio xuthus xuthus Linnaeus, 1767    名義タイプ亜種


写真数: 38枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布區域 ,記録點
【特  徴】
 日本産と同じ亜種である。中型のアゲハチョウである。日本では,普通種であるが,台湾では,なかなか出会うことが少ない蝶である。
【雌  雄】 ♀は,前翅表面の黒斑の色が薄くなるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】  台湾の低・中・高標高(0m〜2500m)の常緑広葉樹林,海岸林,都市林で見られる。
 新北市の水南洞苗栗縣三義新北市烏来,台南市東山区で撮影することができた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,中国,フィリピン北部,マリアナ諸島,ロシア南部,朝鮮半島,日本に分布する。
 中国では,北京,吉林省,遼寧省,黒竜江,山東省,河北省,山西省,河南省,湖北省,西蔵區,四川省,雲南省,広西區,福建省,広東省,上海市などに分布している。西蔵區に分布しているものは,別亜種P.xuthus neoxuthus である。
【近似種】 なし

シロオビアゲハ 玉帶鳳蝶 (台湾産)   Papilio polytes polytes Linnaeus, 1758     名義タイプ亜種


写真数: 99枚


出現頻度
★★★★★
分布區域 ,記録點
【特  徴】
 日本産と同じ亜種である。中型のアゲハチョウである。各種の花を好んで飛来するが,止まっている時間は短い。
【雌  雄】  黄白色の帯がある♀は♂と非常によく似ており,腹部の形状を確認しないと雌雄を区別することは難しい。
 ♂は,後翅表面に黄白色の帯がある。♀は,2つの型があり,♂と同じ斑紋の型(白帯型,シロオビ型,T型),黄白色の帯がなく赤い斑紋が出る型(赤斑型,ベニモン型,U型)がある。
 さらに,赤斑型には,白斑が小さく,中室に白斑が出る型と,中室には白斑が出ず,その外側の白斑が発達する型があり,白斑がほとんど出ない個体もある。

白帯型,シロオビ型,T型

赤斑型,ベニモン型,U型

赤斑型,ベニモン型,U型

赤斑型,ベニモン型,U型
 稀に,後翅の赤色斑が異常に発達する個体や尾状突起が短い個体が発生する。

♀(赤色斑異常発達)

♂(尾状突起未発達)
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】  台湾の低・中・高標高(〜2500m)の常緑広葉樹林,海岸林,都市林で見られる。
 各所で普通に見られた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド,ヒマラヤ,インドシナ半島,フィリピン,ボルネオ島,インドネシア(マレーシアシンガポール),中国の南西部・南部,日本の南西諸島に分布している。
 中国では,西蔵區,陳西省,雲南省,四川省,貴州省,広西區,湖南省,湖北省,広東省,海南省,福建省,上海市に分布している。西蔵區に分布しているものは,別亜種 P.polytes thibetanus で,海南省に分布しているものは,別亜種 P.polytes mandaneで,それ以外は,名義タイプ亜種である。
【近似種】  ベニモンアゲハに本種の♀の赤斑型は似ているが,本種は,後翅裏面の亜外縁の赤色斑が半月型になり,発達しないので区別することができる。

オナシシロオビアゲハ 關於無尾玉帶鳳蝶    Papilio alphenor Cramer, [1776]


写真数: 1枚
(参考:フィリピン産)


出現頻度
☆☆☆☆☆
分布區域 ,記録點
【特  徴】
 中型のアゲハチョウである。シロオビアゲハに似るが,尾状突起がない。
 台湾産は,迷蝶である。 
【雌  雄】 ♂は,前翅の後縁近くに性標が出現するので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 1998年4月に記録された。
【生息地】 蘭嶼で記録された。
【分  布】 種としては,台湾以外では,フィリピン,パラオに分布している。
【近似種】 シロオビアゲハに似ているが,本種には尾状突起がないので,区別することができる。

クロアゲハ K鳳蝶 (台湾産)   Papilio protenor protenor Cramer,1755    名義タイプ亜種


写真数: 90枚


出現頻度
★★★★★
分布區域 ,記録點
【特  徴】
 日本産は別亜種で,demetrius(日本本土亜種),liukiuensis(琉球亜種)に分かれている。
 やや大型のアゲハチョウである。台湾産のクロアゲハは,尾状突起がない。
【雌  雄】 ♀は翅形が丸みを帯び,前翅の色が暗灰色になるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】  台湾の低・中標高(〜2500m)の常緑広葉樹林,海岸林,都市林で見られる。
 台湾の高山帯を除く各地で見られた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド北部,ヒマラヤ,インドシナ半島北部,中国の南西部・南部,日本に分布している。
 中国では,河南省,雲南省,四川省,貴州省,広西區,湖南省,広東省,海南省,福建省,江西省,浙江省,江蘇省,湖北省,安徽省,上海市に分布している。雲南省,広西區,海南省に分布しているものは,別亜種 P.protenor euprotenor で,それ以外は,名義タイプ亜種である。
【近似種】  ワタナベアゲハに似ているが,本種は,裏面の橙色斑が発達しないので区別することができる。

ワタナベアゲハ 臺灣鳳蝶 (台湾産)   Papilio thaiwanus Rothschild,1898   台湾特産種


写真数: 62枚


出現頻度
★★☆☆☆
分布區域 ,記録點
【特  徴】
 やや大型のアゲハチョウである。♂は,吸水集団を作ることがあるが,個体数は少ない。
【雌  雄】 ♀は,前翅表面の基部に赤斑があり,後翅表面に白斑が現れ,後翅裏面の白斑も発達するので,雌雄を区別することができる。
【生  態】  1月下旬〜12月上旬にかけて,年数回発生する。
 低温期型と高温期型がある。低温期型の♂には,後翅の裏面に白斑が出現し,赤色斑も良く発達し,♀の後翅には,白斑が非常に良く発達する。高温期型の♂には,白斑がなく,♀の白斑は小さい。

♂ 低温期型

♀ 低温期型

♂ 高温期型

♀ 高温期型
【生息地】  台湾の低・中・高標高(〜2500m)の常緑広葉樹林で見られる。
 台湾の中部山岳の南山渓本部渓梨山の思源(標高2028m),高雄市宝来南投縣恵孫林場新北市烏来区福山村拉拉山上巴陵谷関松鶴,南投縣霧社南投縣梅峰で見られた。南投縣本部渓では,吸水している多数の♂を確認することができた。
【分  布】 台湾以外には分布せず,台湾の特産種である。
【近似種】  クロアゲハに似ているが,本種は,裏面の橙色斑が発達すること,後翅の翅形が波打つようになることで区別することができる。

モンキアゲハ 白紋鳳蝶 (台湾産)   Papilio helenus fortunius Fruhstorfer,1908   台湾亜種


写真数: 26枚


出現頻度
★★☆☆☆
分布區域 ,記録點
【特  徴】
 日本産は,別亜種nicconicolens である。大型のアゲハチョウである。速く飛ぶが,花で吸蜜する以外に♂は地面で吸水する習性がある。
【雌  雄】 ♀は,前翅の色が暗灰色になるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】  周年,年数回発生している。
 タイワンモンキアゲハ,オナシモンキアゲハは,3月上旬の早い時期には見られないが,本種は,少ないながらも発生していた。
【生息地】  台湾の低・中・高標高(〜2000m)の常緑広葉樹林で見られる。
 台湾の各所で見られた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド,ヒマラヤ,インドシナ半島(マレーシアタイ),フィリピン,ボルネオ島,インドネシア,中国の南西部・南部,日本の本州以南に分布している。
 中国では,雲南省,四川省,貴州省,広西區,湖南省,広東省,海南省,福建省,江西省,浙江省,上海市に,名義タイプ亜種 P.helenus helenus が分布している
【近似種】  タイワンモンキアゲハに似ているが,本種は後翅の白斑が表裏とも3斑になることで区別できる。

タイワンモンキアゲハ 大白紋鳳蝶 (台湾産)   Papilio nephelus chaonulus Fruhstorfer,1908


写真数: 56枚


出現頻度
★★★☆☆
分布區域 ,記録點
【特  徴】
 大型のアゲハチョウである。速く飛ぶが,花で吸蜜する以外に♂は地面で吸水する習性がある。
【雌  雄】 ♀は,前翅に白帯が出現することが多く,裏面の白斑も発達するので,雌雄を区別することができる。
【生  態】  1月下旬〜12月上旬にかけて,年数回発生する。
 5月下旬から6月中旬にかけては,モンキアゲハ類3種の中では,最も数多い種である。
【生息地】  台湾の低・中・高標高(〜2000m)の常緑広葉樹林で見られる。
 台湾の各所で見られた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インドシナ半島(マレーシアタイ),ボルネオ島,インドネシア,中国の南西部・南部に分布し,台湾産は分布の東限に当たる。
 中国では,雲南省,貴州省,広西區,湖南省,広東省,海南省,江西省,福建省に分布している。江西省,福建省に分布しているものは,台湾と同じ亜種で,それ以外は,別亜種 P.nephelus chaon である。
【近似種】  モンキアゲハに似ているが,本種は後翅の白斑が表裏とも4〜5斑になることで区別できる。

オナシモンキアゲハ 無尾白紋鳳蝶 (台湾産)   Papilio castor formosanus Rothschild, 1896   台湾亜種


写真数: 46枚


出現頻度
★★★☆☆
分布區域 ,記録點
【特  徴】
  日本産は,亜種が未決定である。大型のアゲハチョウである。速く飛ぶが,花で吸蜜する以外に♂は地面で吸水する習性がある。
【雌  雄】 ♀は,翅表の地色が薄くなり,裏面の亜外縁に大きな白点列が出現するので,雌雄を区別することができる。
【生  態】  周年,年数回発生している。
 3月には少なく,5月下旬から6月上旬にかけては数多く見られた。
【生息地】  台湾の低・中標高(〜1500m)の常緑広葉樹林で見られる。
 台湾の各所で見られた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インドシナ半島,中国の南西部・南部,日本の八重山諸島に分布する。
 中国では,雲南省,四川省,貴州省,広西區,湖南省,広東省,海南省,福建省,江西省,浙江省に分布している海南省に分布しているものは,別亜種 P.castor hamelus で,それ以外は,名義タイプ亜種 P.castor castor である。
【近似種】 なし

ナガサキアゲハ 大鳳蝶 (台湾産)    Papilio memnon heronus Fruhstorfer,1929   台湾亜種


写真数: 75枚


出現頻度
★★★★
分布區域 ,記録點
【特  徴】
 日本産は,別亜種thunbergii である。大型のアゲハチョウである。♂に比べ♀は少ない。♀には,有尾型,無尾型がある。
【雌  雄】 ♀は,後翅に白斑が発達するので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 周年,年数回発生する。
【生息地】  台湾の低・中標高(〜1500m)の常緑広葉樹林,海岸林,都市林で見られる。
 台湾の各所で見られた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インドシナ半島(マレーシアタイ),ボルネオ島,インドネシア,中国の南西部・南部,日本の本州以西に分布している。
 中国では,雲南省,四川省,貴州省,広西區,湖南省,広東省,海南省,福建省,江西省,浙江省,上海市に,別亜種 P.memnon agenor が分布している
【近似種】 なし

カラスアゲハ 翠鳳蝶 (台湾産)    Papilio bianor thrasymedes Fruhstorfer,1909   台湾亜種


写真数: 99枚


出現頻度
★★★☆☆
分布區域 ,記録點
【特  徴】  日本産は別種で,
  Papilio dehaanii dehaanii C. Felder et R. Felder, 1864 (日本本土・朝鮮半島亜種)
  Papilio dehaanii hachijonis Matsumura, 1919 (八丈島亜種)
  Papilio dehaanii tokaraensis Fujioka, 1975 (トカラ亜種)
に分かれている。種名は,上記の通りdehaanii である。以前は,カラスアゲハ Papilio bianor dehaanii であったが,亜種 dehaanii が格上げになり,種名カラスアゲハ dehaanii になった。
 日本の奄美大島と沖縄本島には,オキナワカラスアゲハ
  Papilio ryukyuensis amamiensis (Fujioka, 1981) (奄美亜種)
  Papilio ryukyuensis ryukyuensis Fujioka, 1975 (名義タイプ亜種, 沖縄亜種)
 日本の八重山諸島には,ヤエヤマカラスアゲハ
  Papilio bianor okinawensis Fruhstorfer, 1898
が分布している。
 台湾産は,P.bianor thrasymedes が世界的に定着しており,種名bianor からすれば,ヤエヤマカラスアゲハとしてもよいのであるが,以前は,カラスアゲハの種名が bianor であったことやbianor の八重山亜種が格上げになってヤエヤマカラスアゲハとなり,その和名がbianor の八重山亜種そのものを指すものであるので,宇野彰氏が,日本鱗翅学会誌YADORIGA aD239,2013 の論文の中で,台湾産の和名をカラスアゲハとしていたことも納得でき,ここでは,この論文に従い,台湾産の和名を カラスアゲハ としておく。
 なお,林・蘇(2013)は,緑島産を ssp. kwashotoensis として新亜種記載をしたが,蘭嶼産をはじめとする各個体群の差異を比較したデータが示されていないなど,分類上の扱いに疑問があるため支持されていない。
 やや大型のアゲハチョウである。速く飛ぶが,花で吸蜜する以外に♂は地面で吸水する習性がある。個体変異が大きく,台東市の知本渓谷に発生する個体の中には,紅頭亜種のように,緑色麟が発達する個体がいた。
【雌  雄】 ♂は,前翅の後縁近くに性標が出現するので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】  台湾の低・中・高標高(〜2500m)の常緑広葉樹林,海岸林,都市林で見られる。
 各地で見られたが,数多い種ではなく,単発的に表れる程度である。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インドシナ半島北部,中国,朝鮮半島,ロシア南部,日本の八重山諸島に分布している。
 中国では,北京,吉林省,遼寧省,黒竜江,山東省,河北省,山西省,河南省,湖北省,四川省,雲南省,広西區,福建省,広東省,浙江省,江蘇省などに,名義タイプ亜種 P.bianor bianor が分布している。
【近似種】  タイワンカラスアゲハに似ているが,本種は,尾状突起の表面には,青色鱗が中央部にしかないことで区別することができる。

カラスアゲハ 翠鳳蝶 (コウトウルリオビアゲハ)   (台湾産)   Papilio bianor kotoensis Sonan,1927   紅頭亜種


写真数: 29枚


出現頻度
★★☆☆☆
分布區域 ,記録點
【特  徴】 蘭嶼で見られる大変美しい亜種である。やや大型のアゲハチョウである。数はあまり多くないが,川沿いでよく見られ,ハイビスカスなどの花に集まっていた。♀は非常に少なかった。
【雌  雄】 ♂は,前翅の後縁近くに性標が出現するので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】  蘭嶼の低標高(〜500m)の熱帯雨林,海岸林で見られる。
 島の北西部にある丘陵地の頂上付近と南東部のジャングルの周辺で見られた。
【分  布】 種としては,日本の八重山諸島に生息するヤエヤマカラスアゲハと同種である。この亜種は,台湾以外には分布せず,台湾の特産亜種である。
【近似種】 紅頭亜種は,台湾本土のカラスアゲハとは別亜種で,表面の青色鱗はよく発達し,とても美しいチョウである。

タイワンカラスアゲハ 穹翠鳳蝶 (台湾産)    Papilio dialis tatsuta Murayama, 1970   台湾亜種


写真数: 40枚


出現頻度
★★☆☆☆
分布區域 ,記録點
【特  徴】 やや大型のアゲハチョウである。速く飛ぶが,花で吸蜜する以外に♂は地面で吸水する習性がある。
【雌  雄】 ♂は,前翅の後縁近くに性標が出現するので,雌雄を区別することができる。♀は,♂に比べると数が非常に少ない。
【生  態】  2月下旬〜11月にかけて,年数回発生する。
 本部渓では,カラスアゲハに比べ,発生期が遅く,3月上旬から4月中旬の調査では,見られなかった。
【生息地】  台湾の低・中標高(100m〜2500m)の常緑広葉樹林で見られる。
 台東市の知本渓中部山岳の南山渓本部溪新北市烏来区福山村拉拉山上巴陵,陽明山新園街で見られた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インドシナ半島北部,中国の南西部・南部に分布し,台湾産は分布の東限に当たる。
 中国では,雲南省,四川省,貴州省,広西區,湖南省,広東省,海南省,福建省に分布している。海南省に分布しているものは,名義タイプ亜種 P.dialis dialis で,それ以外は,別亜種 P.dialis cataleucus である。
【近似種】  カラスアゲハに似ているが,本種は,尾状突起の表面全体に青色鱗が発達するので区別することができる。

ホッポアゲハ 雙環翠鳳蝶 (台湾産)   Papilio hopponis Matsumura,1907   台湾特産種


写真数: 80枚


出現頻度
★★☆☆☆
分布區域 ,記録點
【特  徴】 やや大型のアゲハチョウである。早く飛ぶが,花や吸蜜に来る。♂は,占有行動をするが,春に発生するカバシタアゲハやキボシアゲハよりも弱く,追われる姿がしばしば見られた。
【雌  雄】 ♀は,後翅表面の赤色斑が発達するので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 2月下旬〜11月上旬にかけて,年数回発生する。
【生息地】  台湾の低・中・高標高(400m〜3000m)の常緑広葉樹林で見られる。
 南投縣翠峰(標高2289m),梨山晉元橋(標高1858m),南投縣松崗(2024m),南投縣梅峰南投縣仁愛郷ナールー湾で見られた。南投県仁愛郷屯原,花蓮市秀林郷碧緑,高雄市南横公路でも撮影された。
【分  布】 台湾以外には分布せず,台湾の特産種である。
【近似種】  カラスアゲハ類に似ているが,本種は,後翅裏面の赤斑がよく発達するので区別することができる。

タイワンルリモンアゲハ 臺灣琉璃翠鳳蝶 (台湾産)   Papilio hermosanus Rebel,1906   台湾特産種


写真数: 94枚


出現頻度
★★★★
分布區域 ,記録點
【特  徴】
 次種オオルリモンアゲハとの関係は,幼虫の形状の違いや遺伝子解析により,別種であることが明らかになり,台湾に生息する種は,hermosanus 台湾特産種となった。その学名の関係で,従来,本種の和名は,ルリモンアゲハとされてきたが,このルリモンアゲハという和名は,paris につけられたものであるので,次種オオルリモンアゲハに与えられることになった。
 本種の主な食草は,サルカケミカンである。オオルリモンアゲハの主食草がオオバアワダンで,この点からも両種が別種であることが判明した。
 やや大型のアゲハチョウである。速く飛ぶが,花で吸蜜する以外に♂は地面で吸水する習性がある。
【雌  雄】 ♂は,前翅の後縁近くに性標が出現するので,雌雄を区別することができる。
【生  態】  1月下旬〜12月上旬にかけて,年数回発生する。
 3月上旬から4月中旬は少なかったが,5月下旬から6月下旬にかけては,各所で数多く見られた。
【生息地】  台湾の低・中標高(100m〜1500m)の常緑広葉樹林で見られる。
 台湾の各所で見られた。
【分  布】 台湾以外には分布せず,台湾の特産種である。
【近似種】  オオルリモンアゲハに似ているが,本種は,♂の性標が鮮明で,後翅表面の青緑色斑がより小さくなり細長くなること,翅脈の黒条が現れること,青緑色斑の基部側の境界が波状になるので区別することができる。

オオルリモンアゲハ 琉璃翠鳳蝶 (ルリモンアゲハ) (台湾産)   Papilio paris nakaharai ,1960   台湾亜種


写真数: 39枚


出現頻度
★★☆☆☆
分布區域 ,記録點
【特  徴】
 日本産(迷蝶)と同じ亜種である。速く飛ぶが,葉上で休止したり,吸水,吸蜜に来ている場合は,人をあまり怖がらない。
 本種の和名オオルリモンアゲハは,学名 paris nakaharai で,ルリモンアゲハの北部亜種という扱いであった。前種で説明した通り,これまでルリモンアゲハ paris hermosanus が独立種 hermosanus となったため,本種は,ルリモンアゲハと称されるべきであるが,従来のルリモンアゲハとの混乱を避けるために,ここでは,和名をオオルリモンアゲハとした。
 やや大型のアゲハチョウである。タイワンルリモンアゲハより,一回り大きい。
 ♂には,前翅表面の後縁近くに性標があり,その大きさには個体差がある。多くの個体は,性標が良く発達するが,時々,未発達の個体も現れ,稀には無性標の個体も出現する。
【雌  雄】 前翅の後縁近くに性標が出現すれば♂であるが,♀には性標がない。しかし,♂でも性標がない個体もいるので注意が必要で,腹部の形状を確認する必要がある。
【生  態】  1月下旬〜12月上旬にかけて,年数回発生する。
 特に6月中旬,苗栗縣三義の山の各所に咲くミズキの花には,数百頭のオオルリモンアゲハが集まり,桃源郷であった。羅東清水溪では,5月下旬に,十数頭の個体が汚水やセンダングサに集まっていた。
【生息地】  台湾の北部,中西部の低・中標高(〜1000m)の常緑広葉樹林で見られる。
 以前は,台湾の北部のみで発生しているとされたが,中西部の苗栗縣三義付近でも多数の個体が発生していることが分かった。
 台北市立動物園虫虫探索谷羅東新城溪羅東寒溪羅東清水溪苗栗縣三義新北市八連渓谷台北市福州山基隆市七堵台北市剣南山で見ることができた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド,ヒマラヤ,インドシナ半島,インドネシア,中国の南西部・南部に分布し,日本の八重山諸島でも記録された。台湾産,日本産は分布の東限に当たる。
 中国では,雲南省,四川省,陳西省,貴州省,広西區,湖南省,広東省,海南省,福建省,江西省,上海市に分布している。雲南省,広西區,海南省に分布しているものは,名義タイプ亜種 P.paris paris で,それ以外は,別亜種 P.paris chinensis である。
【近似種】  タイワンルリモンアゲハに似ているが,本種は,後翅表面の青緑色斑が大きくなり,基部側の境界が丸みを帯びるので区別することができる。

キアゲハ 黄鳳蝶 (台湾産)    Papilio machaon sylvina Hemming,1933    台湾亜種


写真数: 1枚
(参考:日本産)


出現頻度
☆☆☆☆☆
分布區域 ,記録點
【特  徴】 1970年代以降に絶滅した。中型のアゲハチョウである。日本産亜種に比べて,小型で,尾状突起が短い。夏型でも,亜外縁の黒帯の幅が狭い。
【雌  雄】 雌雄同形で,交尾器や腹部が見えない限りは,生態写真で雌雄を区別することは難しい。
【生  態】 年数回,発生し,1月〜11月に記録があった。
【生息地】 台湾中部から中南部の標高1000m以上の高地帯で多く見られたが,600m前後の低地帯でも記録がかなり出た。
【分  布】  種としては,ヨーロッパから極東アジアにかけての北半球一帯に分布する。
 中国では,全地域に分布し,いくつかの亜種に分けられている。
【近似種】 アゲハチョウに似ているが,本種は,前翅表面の中室の基部側が暗褐色になり,アゲハチョウはその部分に黄白色の条が現れるので,区別することができる。

ミヤマカラスアゲハ 惚謳塩P蝶    Papilio maackii Menetries, 1858


写真数: 1枚
(参考:日本産)


出現頻度
☆☆☆☆☆
分布區域 ,記録點
【特  徴】 大型のアゲハチョウである。迷蝶で,1例の記録があるのみである。
【雌  雄】 ♂は,前翅表面にビロード条の黒斑が現れるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 1935年9月8日に記録された。
【生息地】 新北市新店で記録された。
【分  布】  種としては,ビルマ北部,中国,モンゴル,アムール,サハリン,朝鮮半島,日本に分布している。
 中国では,雲南省,四川省,湖北省,江西省,黒竜江省,吉林省,河北省に分布している。
【近似種】 カラスアゲハに似ているが,本種は,前翅裏面の黄白条が外縁と平行な帯状になるので,区別することができる。

アカネアゲハ 紅斑大鳳蝶    Papilio rumanzovius Eschscholtz, 1821

♀  ♂
写真数: 1枚
(参考:シンガポール産)


出現頻度
☆☆☆☆☆
分布區域 ,記録點
【特  徴】 大型のアゲハチョウである。迷蝶である。樹林の周辺に見られ,各種の花を訪れる。
【雌  雄】 ♂は,後翅表面に青白色斑が発達し,♀は,前後翅の基部に赤色斑が発達するので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 5月中旬〜6月上旬に記録が出ている。
【生息地】 墾丁,台南,蘭嶼で記録されている。
【分  布】 種としては,イインド,マレーシア,シンガポール,インドネシア,オーストラリア,フィリピンに分布している。
【近似種】 なし

キベリアゲハ 斑鳳蝶    Chilasa clytia (Linnaeus,1758)


写真数: 4枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布區域 ,記録點
【特  徴】 中型のアゲハチョウである。偶産蝶であるが,最近は,定着してきている。公園の周辺や山林の周辺見られ,各種の花を訪れ,湿地で吸水することもある。
【雌  雄】 ♂は,前翅表面に白斑が発達し,♀は,褐色斑が大きく,後翅表面の亜外縁に黄色斑が発達するので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 年3〜4回,発生し,4月〜10月に見ることができる。
【生息地】 台湾本島の西にある澎湖諸島で発生している。
【分  布】  種としては,インド,タイ,フィリピン,マレーシアに分布している。
 中国では,海南省,広東省,広西區,福建省に分布している。
【近似種】 なし

プラテニィキシタアゲハ 巴拉望裳鳳蝶    Troides plateni Staudinger,1888


写真数: 1枚
(参考:フィリピン産)


出現頻度
☆☆☆☆☆
分布區域 ,記録點
【特  徴】 大型のアゲハチョウである。迷蝶である。
【雌  雄】 ♀は,後翅表面の中央に黄色斑が発達するので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 不明
【生息地】 台湾本島の南東にある蘭嶼で記録がある。
【分  布】 種としては,フィリピンのパラワン島に分布している。
【近似種】 なし




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