日本の蝶 <セセリチョウ科>  アオバセセリ亜科


<写真の下に,データ付きの拡大写真もあり> 


・キバネセセリ    Burara aquilina aquilina (Speyer, 1879)    名義タイプ亜種


写真数: 53枚


出現頻度
★★☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】  大型のセセリチョウで,非常に速く飛び,単独で行動する。各種の花に集まり,湿地などで吸水する姿を見ることもある。
 北海道の生息する個体は,やや小型になり,四国や九州に生息する個体は,大型で地色が濃くなる傾向がある。
【雌  雄】 ♂の翅表は無紋,♀は前翅に灰黄斑があるので,雌雄を区別することができる。
【食  草】 ハリギリ(ウコギ科)
【生  態】 年1回,発生し,暖地では,6月上旬〜9月上旬に見られ,寒冷地では,6月中旬〜8月下旬に見られる。幼虫で越冬する。
【生息地】  北海道から九州まで生息している。
 関東北部,紀伊半島,中国地方,九州では,絶滅危惧T類に指定されており,和歌山県では絶滅した。
 長野県では各所で見られ,全体的には数は少なかったが,2020年7月30日の松本市では,数十頭が吸蜜に飛来していた。北海道では,各所で見られた。
【分 布】  種としては,日本以外では,ミャンマー,中国大陸,ロシア極東,朝鮮半島に分布している。
 中国では,黒竜江省,吉林省,陳西省,山西省,河南省,湖南省,浙江省,福建省に分布している。
 中国の黒竜江省,ロシア極東,朝鮮半島に分布しているものは,日本と同じ亜種で,ミャンマー,中国の南西部に分布しているものは,別亜種 B.aquilina siola である。
【近似種】 なし
................................................
...
・・・文献上の発生期............
...
・・・1〜2頭を記録した期間..........
...
・・・3頭以上を記録した期間
成虫期

1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
暖  地



































寒冷地



































記録
2001.7.21,山梨県増富鉱泉,1
2013.7.16,北海道層雲峡,1
2013.7.19,北海道層雲峡,1
2013.7.20,北海道層雲峡,2♂
2016.6.19,岐阜県飛騨市,1♂,関戸裕靖
2020.7.20,山梨県笛吹市,1♂,浅川久子
2020.7.29,長野県上高地,1♂,松井慶夫
2020.7.30,長野県松本市,多数♂♀
2020.8.10,福島県北塩原村,1♂,大橋豊嗣
2020.8.16,長野県飯田市,2♂♂
2020.8.19,長野県上高地,3♀♀
2021.7.23,長野県松本市沢渡,2♂♂
2022.7.21,岩手県久慈市,1♀,三河和夫
2023.7.14,岩手県久慈市,1♂,三河和夫

・オキナワビロウドセセリ    Hasora chromus inermis Elwes et Edwards, 1897


写真数: 24枚


出現頻度
★★★☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】 大型のセセリチョウで,非常に速く飛び,単独で行動し,各種の花に集まる。
【雌  雄】 ♀は前翅表面に黄白斑があるので雌雄を区別できるが,生態写真では翅を開かないため,雌雄を区別することは難しい。
【食  草】 クロヨナ(マメ科)
【生  態】 年数回,発生し,2月上旬〜11月中旬に見られ,幼虫で越冬する。
【生息地】  奄美大島から八重山諸島まで生息している。
 八重山諸島の西表島で撮影することができた。西表島の各所で探したが,上原の船着き場付近の草原で,この1頭を確認できただけであった。
【分 布】  種としては,日本以外では,インド,インドシナ半島,ボルネオ島,フィリピン,インドネシア,ニューギニア,オーストラリア北部,中国の南西部・南部・東部,台湾に分布している。
 中国では,河南省,浙江省,福建省,江蘇省,湖北省,西川省に分布し,台湾産と同じ名義タイプ亜種 H.chromus chromus が分布している。
【近似種】  迷蝶として八重山諸島に飛来するタイワンビロウドセセリに似ているが,本種は,後翅後角が突出し,前翅の翅形が鋭角になること,雌は前翅表面中室の2つある斑紋の基部側の斑紋はくの字形になること,前翅裏面の暗黒色斑の外側の境界部が直線的になること,後翅裏面の白帯が外縁側に位置することなどで区別できる。

タイワンビロウドセセリ ♀
成虫期
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
南西諸島



































記録
2013.4.18,沖縄県西表島上原,1♀.
2014.10.25,沖縄県名護市,1♀,安中弘行
2014.10.26,沖縄県今帰仁村,3exs.,安中弘行
2015.11.8,沖縄県石垣島,2exs.,安中弘行
2015.11.18,沖縄県石垣島,1♀.松井慶夫
2017.2.9,沖縄県石垣島,1♀,荻野秀一
2017.2.10,沖縄県石垣島,1♀,荻野秀一
2017.2.11,沖縄県石垣島,1♂,荻野秀一
2022.4.10,鹿児島県奄美大島,1♂1♀,高村葉子
2022.10.6,沖縄県渡嘉敷島,1♂,三河和夫
2023.4.17,沖縄県豊見城市,1♂,高村葉子


・テツイロビロウドセセリ    Hasora badra badra (Moore, [1858])    名義タイプ亜種


写真数: 9枚


出現頻度
★★☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】 開長42〜46mm。大型のセセリチョウで,非常に速く飛ぶ。ジャングルの暗い場所を好み,止まる場合は,葉の裏側に静止する習性がある。
【雌  雄】 ♀は前翅の黄白斑が発達するので,雌雄を区別することができる。
【食  草】 デリス(ドクフジ)(マメ科)
【生  態】 年数回,周年発生している。越冬態はなく,継続して発生できない場所では,死滅する。
【生息地】 石垣島,西表島,与那国島に生息している。
【分  布】  種としては,日本以外では,インド,インドシナ半島,ボルネオ島,フィリピン,インドネシア,中国の南西部から南部,台湾に分布している。
 中国では,河南省,浙江省,福建省,江蘇省,湖北省,西川省に分布しており,台湾産,日本産と同じ名義タイプ亜種である。
【近似種】 なし
成虫期
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
八重山



































記録
2016.5.5,沖縄県西表島,1♀,高崎 明
2016.5.6,沖縄県西表島,1♀,高崎 明
2016.11.24,沖縄県西表島,1♀,安中弘行
2021.11.29,沖縄県西表島,1♀,三河和夫

・タイワンビロウドセセリ    Hasora taminatus vairacana Fruhstorfer, 1911    


写真数: 3枚

♀ (参考:台湾産)
出現頻度
☆☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】 開長37〜40mm。大型のセセリチョウで,飛び方が非常に速いが,花によく集まる。♂は地面で吸水することもある。
【雌  雄】 ♀は前翅表面の黄白斑が発達するので,雌雄を区別することができるが,黄白斑が見えない場合は,雌雄を区別することは難しい。
【食  草】 デリス(ドクフジ)(マメ科)
【生  態】  迷蝶として,5月,6月に記録がある。越冬態はなく,継続して発生できない場所では,死滅する。
 2017年6月16日に採集された。
【生息地】 西表島,与那国島で記録がある。
【分  布】  種としては,日本以外では,インド,インドシナ半島,ボルネオ島,フィリピン,インドネシア,中国の南西部から南部,台湾に分布している。
 中国では,西蔵區,四川省,雲南省,貴州省,広西區,湖南省,広東省,海南省,福建省に分布している。
 広西區には,別亜種 H.taminatus bhavara が分布し,海南省周辺には,別亜種 H.taminatus malayana が分布している。台湾産は,日本産と同じ亜種 Hasora taminatus vairacana である。
【近似種】  オキナワビロウドセセリに非常によく似ているが,本種は,後翅後角があまり突出ぜず,色が薄いこと,前翅の翅形が鈍角になること,雌は前翅表面中室の斑紋は本種では台形なる個体が多いこと,前翅裏面の暗黒色斑の外側の境界部がくの字型になること,後翅裏面の白帯が基部側に位置することなどで区別できる。

タイワンビロウドセセリ ♀
成虫期

1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
八重山



































記録
2017.6.16,沖縄県与那国島,1♀,植松昌樹
(参考) 2016.5.22,台湾羅東寒溪,1♀

・タイワンアオバセセリ    Badamia exclamationis (Fabricius, 1775)


写真数: 30枚


出現頻度
★★★☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】  開長50〜56mm。大型のセセリチョウで,飛び方が非常に速いが,花によく集まる。非常に速く飛ぶが,ランタナの花に良く集まる。花に止まって
いる時間は,非常に短く,人の気配を感じると直ぐに飛んでしまうことが多い。
【雌  雄】  ♂は,後脚のつけ根に長毛の束があり,♀は短毛になること,♀の前翅中室の白斑はよく発達するので,雌雄を区別することができる。ただし,痛んだ♂は,後脚の長毛が脱落したり,短くなっている場合もあるので,注意が必要である。


【食  草】 モモタマナ(シクンシ科),コウシュンカズラ・アセロラ(キントラノオ科)
【生  態】 年数回,周年発生しているが,2月・3月,6月〜9月に見られることが多い。越冬態はなく,継続して発生できない場所では,死滅する。
【生息地】 石垣島,西表島,与那国島に生息し,宮古島,沖縄本島,奄美諸島,九州各地,関西地方,小笠原諸島でも記録がある。
【分  布】  種としては,日本以外では,インド,インドシナ半島,ボルネオ島,フィリピン,インドネシア,ニューギニア,オーストラリア北東部,中国の南西部・南部・東部,台湾に分布している。
 中国では,西蔵區,四川省,雲南省,貴州省,広西區,湖南省,広東省,海南省,福建省に分布し,台湾や日本と同じ亜種である。
【近似種】 なし
成虫期
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
八重山



































記録
2012.12.23,沖縄県石垣島,1♂,足立幸子
2013.5.18,沖縄県石垣市,1♀,安中弘行
2015.11.8,沖縄県石垣市,1♂,安中弘行
2015.11.9,沖縄県石垣市,1♂,安中弘行
2015.11.18,沖縄県石垣島,1♂,松井慶夫
2017.11.2,沖縄県石垣市,1♂,安中弘行
2021.2.25,沖縄県石垣市,1♂,荻野秀一
2021.10.27,沖縄県石垣市,1♂,荻野秀一
2023.12.10,沖縄県石垣島,1♂1♀,荻野秀一
2023.12.14,沖縄県石垣島,1♀,荻野秀一

・アオバセセリ    Choaspes benjaminii japonicus (Murray, 1875)


写真数: 25枚 


出現頻度
★★☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】  大型のセセリチョウで,とても速く飛ぶ。数が少ないチョウである。
 八重山諸島に生息する個体は,やや大型で,翅の色調が暗く,紫緑色に輝き,台湾亜種に似ているが,現在では,日本国内は同一亜種となっている。
【雌  雄】 ♂は足の脛節に毛束があり,♀にはないので,足のつけ根を見ることができれば,雌雄を区別ができるが,生態写真で足が見られない場合は,雌雄を区別することは難しい。
【食  草】 アワブキ・ミヤマハハソ・ヤマビワ・サクノキ・ヤンバルアワブキ(アワブキ科)
【生  態】
 暖地では,年数回,発生し,2月中旬から10月にかけて見られ,寒冷地では,年2回,4月下旬から6月中旬,7月から9月上旬にかけて見られる。幼虫で越冬する。
【生息地】  東北地方から南西諸島まで広く分布しているが,個体数は多くない。
 千葉県では,絶滅危惧T類になっており,青森県,大阪府,香川県では,準絶滅危惧種に指定されている。
【分  布】  種としては,日本以外では,インド,朝鮮半島南部,インドシナ半島,スマトラ島,中国,台湾に分布している。
 中国では,西蔵區,四川省,陝西省,河南省,浙江省,湖北省,江西省,福建省,広東省,広西區,香港,雲南省に分布している。
 中国に分布するものは,日本と同じ亜種C. benjaminii japonicus である。台湾産は,別亜種 C.benjaminii formosanus である。
【近似種】 なし
成虫期

1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
暖  地



































寒冷地



































記録
1976.9.11,愛知県岡崎市池金町,1♂,鈴木淳一
1980.8.24,愛知県岡崎市本宿町,1♂,松井直人
1998.8.23,愛知県岡崎市本宿町,1♂,松井直人
2014.10.25,沖縄県名護市,1♂,安中弘行
2017.5.14,東京都八王子市高尾山,1♂,足立幸子
2017.5.16,兵庫県波賀町,1♂,安中弘行
2020.5.12,兵庫県神戸市,2♂♂,安中弘行
2020.8.12,愛知県北設楽郡,1♂,足立幸子
2021.7.23,鹿児島県奄美大島,1♀,足立幸子
2021.9.7,名古屋市千種区,1♂,横地鋭典
2022.6.11,岩手県久慈市,1♀,三河和夫
2022.9.6,長野県飯田市,1♀
2023.4.23,高知県香美市,1♂,高月陽生




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