【特 徴】 |
大型のタテハチョウである。森林性が強く,樹液,獣糞や腐った果実,各種の花によく集まる。♂は,渓流や樹林内の開けた場所で占有行動をする様子を確認することができた。占有行動では,全ての蝶を追い回し,順位的には最も強かった。♀は,林道上によく止まり,吸水行動をしていた。♂も吸水のために地上に下りることはあったが,非常に敏感で,近づくことは容易ではなかった。しかし,腐果に集まっている場合は,警戒心が薄く,近づいて撮影することができた。
♂には,翅表の黒斑の発達する個体,あまり発達せず橙色の地色が明るくなる個体があり,個体変異がかなりあることが分かった。
黒斑が発達している個体 |
通常の個体 |
橙色の地色が明るい個体 |
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【雌 雄】 | ♂は,翅表が明褐色になり,♀は,裏面が褐色になるので,雌雄を区別することができる。 |
【生 態】 | 5月〜10月に,年1回発生している。拉拉山の上巴陵(標高1200m)では,7月中旬に多数の新鮮な♀が見られ,南投縣南山渓(標高1000m)では,9月上旬に新鮮な雌が3頭見られたが,標高は大差がないのに,発生期が1か月半もずれている。年1回の発生であるならば,羽化する時期が地域によって大きく異なっているのか,もしくは,年2回発生しているのではないかという疑問を抱いてしまう。 |
【生息地】 |
台湾の低・中・高標高(400m〜2000m)の常緑広葉樹林で見られる。
拉拉山の南西部の山腹に位置する上巴陵では,各所で見ることができた。台中市の東北部にある八仙山国家森林遊楽区の八仙山登山口,南投縣南山渓,桃園市林班口,桃園市上巴陵,花蓮市碧緑慈恩で撮影することができた。特に桃園市林班口では,梅の腐果に多数の個体が集まる様子を確認することができた。 |
【分 布】 |
種としては,台湾以外では,ヒマラヤ,インドシナ半島,中国の西部・南部・東部に分布し,台湾産は分布の東限に当たる。
中国では,雲南省,四川省,貴州省,広西區,広東省,福建省に,名義タイプ亜種 A.ganga ganga が分布している。 |
【近似種】 | なし |