台湾の蝶 <タテハチョウ科4- ジャノメチョウ亜科2 


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テングチョウ亜科〜カバタテハ亜科は,ここをクリックすると見ることができます

イチモンジチョウ亜科1は,ここをクリックすると見ることができます

イチモンジチョウ亜科2は,ここをクリックすると見ることができます

タテハチョウ亜科は,ここをクリックすると見ることができます

コムラサキ亜科〜クビワチョウ亜科は,ここをクリックすると見ることができます

ジャノメチョウ亜科1は,ここをクリックすると見ることができます。(容量の関係で,別ページにしてあります)

・アリサンキマダラヒカゲ 黄斑蔭眼蝶 (台湾産)   Neope pulaha didia Fruhstorfer, 1911   台湾亜種


写真数: 19枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 中型のヒカゲチョウ類である。飛び方は速いが,すぐに地上に止まる習性がある。
【雌  雄】 ♀は,黄褐色斑が発達し,翅形が丸くなるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 3月下旬〜11月上旬に,年数回発生している。
【生息地】  台湾の中・高標高(1200m〜3000m)の常緑広葉樹林,ササ原で見られる。
 発生地が局部的で,撮影が難しい種の一つである。中部山岳にある梨山の晉元橋(標高1858m),南投縣梅峰で撮影できた。南投縣合歓山(標高3132m)でも見られたが,寸前のところで飛び立ってしまい撮影できなかった。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド北部,ヒマラヤ,インドシナ半島北部,中国の南西部・南部に分布している。
 中国では,西蔵區,雲南省,四川省,貴州省,広西區,湖南省,広東省,海南省,浙江省,福建省に,別亜種 N.pulaha ramosa が分布している。
【近似種】  タイワンキマダラヒカゲに似ているが,本種は,後翅裏面の前縁や中室の斑が白くなることで区別することができる。

・タイワンキマダラヒカゲ 布氏蔭眼蝶 (台湾産)   Neope bremeri taiwana Matsumura, 1919    台湾亜種


写真数: 79枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 やや大型のヒカゲチョウ類である。飛び方は速いが,すぐに地上に止まる習性がある。ワタナベキマダラヒカゲは,本種の春型であった。
【雌  雄】 ♀は,黄褐色斑が発達し,翅形が丸くなるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 2月〜11月に,年数回発生しているが,少ないチョウである。
【生息地】  台湾の低・中・高標高(200m〜3000m)の常緑広葉樹林,竹林で見られる。
 発生地が局部的で,撮影が難しい種の一つである。中部山岳の本部渓拉拉山上巴陵花蓮市碧緑神木桃園市林班口で見られた。南投県仁愛郷屯原,高雄市藤枝でも撮影された。
【分  布】  種としては,台湾以外では,中国全土に分布している。
 中国では,遼寧省,河北省,山東省,河南省,江蘇省,安徽省,湖北省,浙江省,江西省,湖南省,福建省,広東省,広西區,雲南省,四川省,西蔵區に,名義タイプ亜種 N.bremeri bremeri が分布している。
【近似種】  アリサンキマダラヒカゲに似ているが,本種は,前翅裏面中央の白条がジグザグになること,裏面の眼状紋の黒褐色斑が丸くなることで区別することができる。

・シロキマダラヒカゲ 白斑蔭眼蝶 (台湾産)   Neope armandii lacticolora (Fruhstorfer,1908)   台湾亜種


写真数: 22枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 やや大型のヒカゲチョウ類である飛び方は速いが,すぐに地上に止まる習性がある。
【雌  雄】 ♀は,表面の黄白色斑が発達し,翅形が丸くなるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 3月下旬〜11月に,年数回発生している。
【生息地】  台湾の中・高標高(1000m〜3000m)の常緑広葉樹林,ササ原で見られる。
 分布域が狭く,なかなか撮影出来ない種の一つである。中部山岳にある松崗の国民賓館(標高1713m)で見られた。南投県仁愛郷屯原,南投縣ナールー湾でも撮影された。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド北部,インドシナ半島北部,中国の南西部・南部に分布している。
 中国では,西蔵區,雲南省,四川省,貴州省,広西區,湖南省,広東省,浙江省,福建省に分布している。浙江省,福建省に分布しているものは,別亜種 N.armandii fusca で,それ以外は,名義タイプ亜種 N.armandii armandii である。
【近似種】 なし

・ウラキマダラヒカゲ 褐翅蔭眼蝶 (台湾産)   Neope muirheadi nagasawae Matsumura,1919   台湾亜種


写真数: 67枚


出現頻度
★★★★
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 やや大型のヒカゲチョウ類である飛び方は速いが,すぐに地上に止まる習性がある。低温型と高温型があり,高温型は,後翅裏面の黄白帯がよく発達する。
【雌  雄】 生態写真では,顕著な違いはなく,雌雄を区別することは難しい。
【生  態】
 周年,年数回発生している。
 3月上旬から下旬にかけて,台北市立動物園虫虫探索谷では,数多くの個体が見られ,6月下旬には,台湾の各地で多数の個体を見ることができた。
【生息地】  台湾の低・中・高標高(〜2500m)の常緑広葉樹林,ササ原で見られる。
 台湾の北部,中部山岳,南部など各地で見られた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インドシナ半島北部,中国の南西部・南部に分布している。
 中国では,雲南省,四川省,河南省,陳西省,湖南省,湖北省,湖南省,江西省,広東省,海南省,福建省,上海市に分布している。雲南省,四川省に分布しているものは,別亜種 N.muirheadi felderi で,それ以外は,名義タイプ亜種 N.muirheadi muirheadi である。
【近似種】  タイワンキマダラヒカゲに似るが,本種は,前翅裏面中央の黄白帯が,本種は直線的に鮮明に表れること,後翅裏面中室付近の斑紋が不明瞭になることで区別することができる。

・コジャノメ 眉眼蝶 (台湾産)   Mycalesis francisca formosana Fruhstorfer,1908   台湾亜種


写真数: 111枚


出現頻度
★★★☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 日本産は,別亜種perdiccas である。中型のジャノメチョウ類である。飛び方はあまり速くなく,すぐに葉上に止まる習性がある。数は,あまり多くない。
【雌  雄】 ♀は,裏面の眼状紋が発達し,翅形が丸くなるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】  周年,年数回発生している。
 3月中旬・下旬,4月中旬の台北市立動物園虫虫探索谷では,多数の個体を確認できた。
【生息地】  台湾の低・中・高標高(〜2500m)の常緑広葉樹林で見られる。
 台湾の北部,中部山岳,南部など各地で見られた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド北部,ヒマラヤ,インドシナ半島北部,中国の中南部・東北部,朝鮮半島,日本の本州以南に分布している。
 中国では,河北省,山東省,河南省,江蘇省,安徽省,湖北省,浙江省,江西省,湖南省,福建省,広東省,広西區,雲南省,四川省,西蔵區に,名義タイプ亜種 M.francisca francisca が分布している。
【近似種】  コヒトツメジャノメに似ているが,本種は,裏面の亜外縁が薄紫色になること,線状斑が丸みを帯び,前翅前縁で基部側に折れ曲がることで区別ができる。

・ヒメジャノメ 稻眉眼蝶 (台湾産)   Mycalesis gotama nanda Fruhstorfer,1908   台湾亜種

♂  低温期型
写真数: 17枚

♀  高温期型
出現頻度
★★★☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 日本産は,別亜種fulginia である。中型のジャノメチョウ類である。飛び方はあまり速くなく,すぐに葉上に止まる習性がある。少ない種の一つである。
【雌  雄】 ♀は,裏面の眼状紋が発達し,地色が薄くなるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】  周年,年数回発生している。
 3月中旬の台東市知本溪楽山では,4頭を確認できた。
【生息地】  台湾の低〜高標高(〜2000m)の草地,水田周辺,荒地,河川堤防などで見られる。
 台湾の北部,中部山岳,南部など各地で見られた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インドシナ半島北部,中国の南西部・南部・東北部,朝鮮半島,日本に分布している。
 中国では,河北省,山東省,河南省,江蘇省,安徽省,湖北省,浙江省,江西省,湖南省,福建省,広東省,広西區,雲南省,四川省,西蔵區,上海市に,別亜種 M.gotama oculata が分布している。
【近似種】  コヒトツメジャノメに似ているが,本種は,裏面の亜外縁が薄褐色になること,線状斑が薄褐色で滑らかな曲線になることで区別することができる。

・カギコジャノメ 罕眉眼蝶 (台湾産)   Mycalesis kagina Fruhstorfer, 1908   台湾特産種


写真数: 30枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 台湾産の本種は,これまで M. suavolens の台湾亜種 kagina とされていたが,Hsu et al. (2019) によって,遺伝子系統解析,交尾器,斑紋,生態等が比較検討され,独立種となった。
 中型のジャノメチョウ類である。台湾産蝶類の中でも最も少ない種の一つである。本種の撮影のため,発生地を4ヶ所,計6回探索し,ようやく4回目に1頭,6回目に3頭を撮影することができた。パイナップル液のトラップにはよく反応し,その場を飛び回り,固執性が高いことが分かった。人に対する警戒心は,あまり強くなく,すぐに止まるので撮影は容易であった。交尾の様子を撮影できるのは非常に稀で,今だに食草は不明である。
【雌  雄】 生態写真では,顕著な違いはないが,♀は若干,翅形が丸くなるので,雌雄を区別することができる場合がある。
【生  態】 3月〜10月に,年数回発生している。 
【生息地】  台湾の中部の低・中標高(100m〜1300m)の常緑広葉樹林で見られる。
 分布域が狭く,発生地も局部的で,個体数も少なく,撮影が難しい種の一つである。台南市東山區で撮影することができた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インドシナ半島北部に分布している。
 中国には分布していない。
【近似種】  コヒトツメジャノメに似ているが,本種は,翅形が丸く,後翅裏面の中央の斑紋が鮮明であるので区別することができる。

・ヒメヒトツメジャノメ 曲斑眉眼蝶 (台湾産)   Mycalesis perseus blasius (Fabricius,1798)

♂  高温期型
写真数: 19枚

♀  低温期型
出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 中型のジャノメチョウ類である。日本産(迷蝶)の亜種名は未定である。草木の間を低く飛ぶ習性があり,なかなか止まらない。
【雌  雄】 ♂は,前翅後縁部,後翅前縁部が極端に湾曲するので,雌雄を区別することができる。
【生  態】  周年,年数回発生している。
 春から夏にかけては,個体数が少なく,秋から冬にかけては,かなり多くなる種である。
【生息地】  台湾の中部・南部の低・中標高(〜1000m)の常緑広葉樹林,荒地で見られる。
 集落の内部やその周辺の雑木林で発生したり,低山地の林道で見られるようであるが,発生地が局部的で,春から夏は個体数が少ないので,撮影が難しい種の一つである。高雄市田寮區,台南市新化區で撮影された。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド,ヒマラヤ,インドシナ半島(ラオスタイ),フィリピン,ボルネオ島,インドネシア,ニューギニア,オーストラリア北部,中国の南西部・南部・東部に分布し,日本の八重山諸島でも記録がある。
 中国では,西蔵區,雲南省,四川省,貴州省,広西區,湖南省,広東省,浙江省,福建省に,名義タイプ亜種 M. perseus perseus が分布している。
【近似種】  キレバヒトツメジャノメに似ているが,本種は,前翅の翅頂付近の眼状紋の下部に小さな眼状紋が2つ出現することで区別することができる。

・キレバヒトツメジャノメ 切翅眉眼蝶 (台湾産)   Mycalesis mucianus Fruhstorfer,1908


写真数: 129枚


出現頻度
★★★★
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 Monastyrskii(2005)は,従来独立種とされてきた台湾産のキレバヒトツメジャノメ M.zonata は,インドシナを中心に分布する M.mucianus と同種との見解を示し,台湾産キレバヒトツメジャノメを種mucianus の亜種zonata として位置づけた。両個体群の交尾器等の特徴は一致するという(宇野彰,日本鱗翅学会誌YADORIGA aD245)。
 中型のジャノメチョウ類である。草木の間を低く飛ぶ習性があり,なかなか止まらない。
【雌  雄】 生態写真では,顕著な違いはなく,雌雄を区別することは難しい。
【生  態】  周年,年数回発生している。
 3月中旬,高雄市宝来直瀬溪では,多数の個体が発生していた。
【生息地】  台湾の低・中標高(〜1500m)の常緑広葉樹林,竹林で見られる。
 台湾の北部,中部山岳,南部など各地で見られた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インドシナ半島南東部,ボルネオ島,インドネシア,中国の南部に分布している。
 中国では,雲南省,広西區,江西省,広東省,海南省,福建省に分布している。
【近似種】  コヒトツメジャノメに似ているが,本種は,前翅の翅頂の形状が,直線的になることで区別することができる。

・マルバヒトツメジャノメ 小眉眼蝶 (台湾産)   Mycalesis mineus mineus (Linnaeus,1758)    名義タイプ亜種


写真数: 29枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 中型のジャノメチョウ類である。草木の間を低く飛ぶ習性があり,なかなか止まらない。
【雌  雄】 ♀は,眼状紋が発達し,翅形が丸くなるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 周年,年数回発生していると。
【生息地】  台湾の中部・南部の低・中標高(〜1000m)の常緑広葉樹林,竹林,荒地で見られる。
 発生地が局部的で,撮影が難しい種の一つである。台南市新化區,高雄市桃源區籐枝,台南市東山區で見られた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド,インドシナ半島,インドネシア,中国の南西部・南部に分布している。
 中国では,雲南省,四川省,河南省,陳西省,湖南省,湖北省,湖南省,江西省,広東省,海南省,福建省に分布している。海南省に分布しているものは,別亜種 M.mineus nitobei で,それ以外は,台湾と同じ名義タイプ亜種である。
【近似種】  キレバヒトツメジャノメに似ているが,本種は,前翅の翅頂の形状が,本種では前種よりも滑らかな曲線になることで区別することができる。コヒトツメジャノメに似ているが,本種は,後翅後角部が突出するので区別することができる。

・タイワンコヒトツメジャノメ 淺色眉眼蝶  新種 (台湾産)   Telinga mara (Fruhstorfer,1908)   台湾特産種


写真数: 139枚


出現頻度
★★★★
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 本種は,これまでは,Mycalesis sangaica の台湾亜種 mara されていたが,Aduse-Poke et al. (2016) は,遺伝子系統解析と♂交尾器の形状から,mara を種に昇格させた。属名もTelinga に変更された。
 中型のジャノメチョウ類である。木陰を好み,飛び方はあまり速くなく,すぐに葉上に止まる習性がある。
【雌  雄】 ♀は,前翅の翅形が若干丸くなるが,他は顕著な違いはなく,雌雄を区別することは難しい。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】  台湾の低・中標高(〜1500m)の常緑広葉樹林,竹林で見られる。
 台湾の北部,中部山岳,南部など各地で見られた。
【分  布】 台湾以外には分布せず,台湾の特産種である。
【近似種】  キレバヒトツメジャノメやマルバヒトツメジャノメに似ているが,本種は,前翅の翅頂の形状が,本種では丸みを帯びることで区別することができる。

・ナガサワジャノメ 永澤蛇眼蝶 (台湾産)   Minois nagasawae (Matsumura,1906)   台湾特産種


写真数: 41枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 やや大型のジャノメチョウ類である。台湾の蝶類の中で,最も高い場所に生息するチョウである。日本のジャノメチョウと同じ属なので似ているが別種である。日本のジャノメチョウとは,あまり飛翔力がなく,すぐに止まる習性があるが,本種は,飛翔力があり,晴れていると,ずっと飛び続けていて,なかなか止まらないので,撮影することは難しかった。ところが,ガスが登ってきたり,曇ったりすると,飛んでいた個体は,落ちるように地上やニイタカヤダケの上に止まる習性があることが分かった。この習性は,日本の高山蝶にも共通してみられ,厳しい環境の中で生きていく方法の一つなのであろう。
【雌  雄】 ♀は,眼状紋が発達し,翅表の色が薄くなるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 7月〜11月に,年1回発生している。
【生息地】  台湾の高標高(2500m〜3900m)の高山草原,高山ササ原で見られる。
 合歓山の東峰の山頂近く(標高3500m)のニイタカヤダケの草原で見ることができた。ちなみに,合歓山がある明池国家森林遊楽区は,昆虫採集は禁止されている。
【分  布】 台湾以外には分布せず,台湾の特産種である。
【近似種】 なし

・ウスイロコノマチョウ 暮眼蝶 (台湾産)   Melanitis leda leda (Linnaeus, 1758)    名義タイプ亜種


写真数: 55枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 日本産と同じ亜種である。やや大型のジャノメチョウ類である。草木の間を低く飛ぶ習性がある。
【雌  雄】 生態写真では,顕著な違いはなく,雌雄を区別することは難しい。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】  台湾の低・中標高(〜1600m)の常緑広葉樹林,竹林,荒地で見られる。
 発生地が局部的で,撮影が難しい種の一つである。台東市の知本渓新北市五堵,台東縣達仁區,台南市新化區,台南市東山區で見られた。クロコノマチョウは各地で見られたが,本種は非常に少なかった。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド,ヒマラヤ,インドシナ半島,フィリピン,ボルネオ島,インドネシア,ニューギニア,オーストラリア北部・東部,中国の南西部・南部,日本の九州南部以南に分布している。
 中国では,河北省,山東省,河南省,江蘇省,安徽省,湖北省,浙江省,江西省,湖南省,福建省,広東省,海南省,広西區,雲南省,四川省,西蔵區,上海市に分布している。海南省に分布しているものは,別亜種 M.leda ismene で,それ以外は,台湾や日本と同じ名義タイプ亜種である。
【近似種】  クロコノマチョウに似ているが,本種は,翅形がやや細長く,前翅表面翅頂の白斑の傾きや裏面の斑紋が無紋になったり,細かい波紋が出ること,前翅表面翅頂の2つの白斑の傾きが外縁と平行になることで区別することができる。
 

・クロコノマチョウ 森林暮眼蝶 (台湾産)   Melanitis phedima polishana Fruhstorfer, 1908    台湾亜種


写真数: 60枚


出現頻度
★★★☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】  日本産は,別亜種oitensis である。やや大型のジャノメチョウ類である。明るい場所に出てくることはほとんどなく,竹林や樹林の下草に止まることが多い。
 日本産と同じように,前翅や後翅の一部が発達する高温期型,翅形が丸い印象を与える低温期型がある。
【雌  雄】 生態写真では,顕著な違いはなく,雌雄を区別することは難しい。
【生  態】  周年,年数回発生している。
 3月中旬に宝来・直瀬溪では,たくさんの個体が発生していた。
【生息地】  台湾の低・中標高(〜2000m)の常緑広葉樹林で見られる。
 台湾の北部,中部山岳,南部など各地で見られた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド,ヒマラヤ,インドシナ半島,フィリピン,インドネシア,中国の南西部・南部,日本の本州以南に分布している。
 中国では,河北省,山東省,河南省,江蘇省,安徽省,湖北省,浙江省,江西省,湖南省,福建省,広東省,海南省,広西區,雲南省,四川省,西蔵區に,別亜種 M.phedima bela が分布している。
【近似種】  ウスイロコノマチョウに似ているが,本種は,前翅表面翅頂の2つ白斑の傾きが外縁と平行にならないこと,裏面の斑紋が無紋になることはなく,細かい波紋が出ることがないことで区別することができる。

・シロスジマダラ 臺灣斑眼蝶 (台湾産)   Penthema formosanum (Rothschild,1898)   台湾特産種


写真数: 71枚


出現頻度
★★☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 開長75〜90mm。大型のジャノメチョウ類である。飛び方やゆっくりとし,木陰を好む。
【雌  雄】 生態写真では,顕著な違いはなく,個体変異が大きいため,雌雄を区別することは難しい。
【生  態】 2月〜12月に,年数回発生している。
【生息地】  台湾の低・中標高(〜2500m)の常緑広葉樹林,竹林で見られる。
 台湾の北部,中部山岳,南部など各地で見られた。拉拉山の巴陵や下巴陵では,落ちた木の実に多数の個体が集まっていた。
【分  布】 台湾以外には分布せず,台湾の特産種である。
【近似種】 なし

・ルリモンジャノメ 藍紋鋸眼蝶 (台湾産)   Elymnias hypermnestra hainana Moore,1878


写真数: 70枚


出現頻度
★★★☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】 開長60〜68mm。中型のジャノメチョウである。飛び方はルリマダラに似ていてゆっくりである。長く飛び続けることが少なく,直ぐに止まる習性があるが,人の気配には敏感ですぐに飛び去ってしまう。単独で生活していることが多いが,6月上旬,高雄市宝来では,8頭の個体が橋の横の空き地で集まっていた。
【雌  雄】 生態写真では,裏面だけでは,顕著な違いはなく,個体変異が大きいため,雌雄を区別することは難しいが,表面が見える場合は,♀は前後翅の亜外縁に青白斑が発達し,翅形が尖るので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】  台湾の低・中標高(〜1500m)の常緑広葉樹林,都市緑地で見られる。
 台湾の北部,中部山岳,南部など各地で見られた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド,ヒマラヤ,インドシナ半島(シンガポールタイ),フィリピン,ボルネオ島,インドネシア,中国の南西部・南部に分布し,日本の八重山諸島でも記録がある。
 中国では,福建省,広東省,海南省,広西區,雲南省に,台湾と同じ亜種が分布している。
【近似種】 なし

・ワモンチョウ 箭環蝶 (台湾産)   Stichophthalma howqua formosana Fruhstorfer, 1908   台湾亜種


写真数: 57枚


出現頻度
★★★☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 開長90〜105mm。大型のジャノメチョウ類である。竹林の周辺で見ることができるが,なかなか止まらない習性がある。
【雌  雄】 標本では,♂は,後翅表面基部に性標があり,雌雄を区別できる。生態写真では,♀は裏面に白帯が発達するが,個体変異が大きく,雌雄を区別することは難しい。
【生  態】  4月下旬〜10月に,年1回発生している。
 6月上旬から7月中旬は,本種の最盛期で,各所で見ることができた。
【生息地】
 台湾の低・中・高標高(50m〜2000m)の常緑広葉樹林,竹林で見られる。
 台湾の北部,中部山岳,南部など各地で見られた。南部の宝来で1頭,確認できたが撮影はできなかった。拉拉山上巴陵は,個体数が非常に多かった。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インドシナ半島,中国の南西部・南部に分布している。
 中国では,陳西省,湖北省,浙江省,江西省,湖南省,福建省,広東省,海南省,広西區,雲南省,四川省,上海市に分布している。海南省に分布しているものは,別亜種 S.howqua bouringgi で,雲南省,四川省に分布しているものは,別亜種 S.howqua suffusa で,それ以外は,名義タイプ亜種 S.howqua howqua である。
【近似種】 なし

・シラホシヒメワモン 串珠環蝶 (台湾産)   Faunis eumeus eumeus (Drury,1773)    名義タイプ亜種


写真数: 41枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 やや大型のジャノメチョウ類である。近年になって台湾へやってきた外来種で,台湾の北部に定着した。人を怖がることはなく,直ぐに地面に止まる習性がある。
【雌  雄】 ♀は,前翅表面に黄褐色斑が発達し,後翅裏面の白点も発達するので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 4月〜11月に,年数回発生している。
【生息地】  台湾の北部の低標高(〜600m)の常緑広葉樹林で見られる。
 分布域が狭く,発生地も局部的である。新北市の五堵の北側にある山の麓で見られた。基隆市中正區,新北市新店區でも撮影され,分布を拡大している。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インドシナ半島,中国の南西部・南部に分布している。
 中国では,雲南省,四川省,貴州省,広西區,湖南省,海南省,広東省,福建省に,台湾と同じ名義タイプ亜種が分布している。
【近似種】 なし

・トガリワモン 方環蝶 (台湾産)   Discophora sondaica tulliana Stichel, 1905


写真数: 47枚


出現頻度
★★☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 1998年,台湾で初めて記録された外来種である。最初に台湾の北部で見つかったが,十数年の内には,台湾の高山地帯を除くほぼ全土に分布を広げ,定着した。大型のジャノメチョウ類である。人の気配に非常に敏感な習性がある。
【雌  雄】 ♀は,裏面が灰白色になり,前翅の翅形が丸みを帯びるとともに,後翅の外縁の後角付近がに波状になるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】  台湾の低標高(〜1500m)の常緑広葉樹林,竹林で見られ,近年,南部にまで分布を広げている。
 中部山岳の本部渓台北市立動物園虫虫探索谷陽明山横峰古道苗栗縣三義台北市剣南山,南投縣観音瀑布,陽明山大屯自然公園で見られた。高雄市美濃でも撮影された。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド,ヒマラヤ,インドシナ半島,フィリピン,ボルネオ島,インドネシア,中国の南西部・南部に分布している。
 中国では,雲南省,四川省,貴州省,広西區,湖南省,海南省,広東省,福建省に分布している。広東省,福建省に分布しているものは,台湾と同じ亜種で,それ以外は,別亜種 D.sondaica hainanensis である。
【近似種】 なし

詳細な解説があります
 

 


台湾の蝶
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