台湾の蝶 <タテハチョウ科4- ジャノメチョウ亜科1


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イチモンジチョウ亜科2は,ここをクリックすると見ることができます

タテハチョウ亜科は,ここをクリックすると見ることができます

コムラサキ亜科〜クビワチョウ亜科は,ここをクリックすると見ることができます

・コウラナミジャノメ 小波眼蝶 (台湾産)   Ypthima baldus zodina Fruhstorfer, 1911    台湾亜種

♂  低温期型
写真数: 130枚

♀  低温期型
出現頻度
★★★☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】  小型のウラナミジャノメ類である。日本のヒメウラナミジャノメとよく似ており,草木の間を低く飛ぶ習性があり,なかなか止まらない。
 裏面の眼状紋の数は,通常は5個であるが,7個ある個体などもあり,個体変異が大きい。
 低温期型と高温期型があり,環状紋の大きさが顕著に異なる。 

♂ 低温期型

♂ 高温期型
【雌  雄】 ♀は,前翅表面の眼状紋が発達し,その周辺が灰白色になり,翅形が丸くなるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】  台湾の低・中・高標高(〜2000m)の常緑広葉樹林,海岸林で見られる。
 台湾の北部,中部山岳,南部など各地で見られた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド,ヒマラヤ,インドシナ半島,フィリピン,ボルネオ島,インドネシア,中国の南西部・南部・東部に分布している。
 中国では,黒竜江省,吉林省,遼寧省,河北省,山東省,河南省,江蘇省,安徽省,湖北省,浙江省,江西省,湖南省,福建省,広東省,広西區,雲南省,四川省,西蔵區に分布している。湖南省に分布しているものは,別亜種 Y.baldus marshalli で,それ以外は,名義タイプ亜種 Y.baldus baldus である。
【近似種】  ミヤマウラナミジャノメに似ているが,本種は,後翅の裏面の眼状紋は5つ(まれに4つ,6つ),低温期は無紋で,後翅裏面の褐色条が2列(
稀に0〜1列)になることで区別することができる。

・ミヤマウラナミジャノメ 大蔵波眼蝶 (台湾産)   Ypthima okurai Okano,1962   台湾特産種


写真数: 35枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 小型のウラナミジャノメ類である。薄暗い樹林内を低く飛ぶ習性がある。単独で見られることが多く,個体数は非常に少ない。
 ♂は,テリトリーを形成し,占有行動が強い。
 低温期型と高温期型があり,低温期型は,後翅裏面の眼状紋が小さくなり,前縁部の地色の褐色斑が楕円形になる特徴がある。

♂  低温期型
撮影: 林 本初 氏

♂  高温期型
 本種は,1962年にコウラナミジャノメの別亜種として記載されたが,その後の研究により,台湾特産の新種に格上げされた。
【雌  雄】 ♀は,前翅表面の眼状紋が発達し,その周辺が灰白色になり,翅形が丸くなるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】  2月下旬〜12月上旬に,年数回発生している。
 7月20日に見ることができたが,1頭しかいなかった。少々痛んでいたので,発生期は7月10日前後と思われる。9月5日には,最初に見つけた場所の近くで1♂見つけたが,かなり痛んでいたので,発生期は,8月下旬と思われる。
【生息地】  台湾の中・高標高(1000m〜2500m)の常緑広葉樹林で見られる。
 分布域が狭く,なかなか撮影出来ない種の一つである。高雄市籐枝で撮影された。梅峰(標高2001m)の林道では,2017年7月20日も松林に隣接する草むらで見つけることができた。しかし,その後,1日おきに2回,その場所を探索したが見つけることはできなかった。同年9月5日には,最初に本種を見つけた場所では見つからなかったものの,別の行き止まりの林道で1♂を見つけることができた。しかし,9月7日にも,その一帯を探したが見つからなかった。2018年6月30日は,再度,梅峰の記録地点を探索したが見つからなかった。しかし,その直後,移動したナールー湾で見つけることができた。しかし,翌日,ナールー湾一帯を探したが見つけることはできなかった。
【分  布】 台湾以外には分布せず,台湾の特産種である。
【近似種】  コウラナミジャノメに似ているが,本種は,後翅裏面の褐色条が不鮮明で周辺に白斑が現れること,翅形が丸みを帯びるで区別することができる。

・タッパンウラナミジャノメ 達邦波眼蝶 (台湾産)   Ypthima tappana tappana Matsumura,1909   名義タイプ亜種


写真数: 51枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 中型のウラナミジャノメ類である。ウラナミジャノメ類では,最も数少ない種の一つである。ススキ類の林に生息し,オオウラナミジャノメ,タイワンウラナミジャノメは,長時間飛び続けてなかなか止まらないが,本種は,飛翔力が弱く,すぐに止まる習性があるので,撮影はしやすい。薄暗い場所を好み,オオウラナミジャノメ,タイワンウラナミジャノメ,コウラナミジャノメのように明るい場所には出てこない。
 後翅裏面の眼状紋は,大きなものが4つあるが,小さな眼状紋がさらに現れる個体も多く,その位置は,前縁の眼状紋に接して現れたり,少し離れた場所に現れたりする。
 前翅裏面の前縁部の眼状紋は,通常は1つであるが,さらにその下に小さな眼状紋がさらに現れる個体も多い。
【雌  雄】 ♀は,前翅表面の眼状紋が発達し,その周辺が灰白色になり,翅形が丸くなるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】  台湾の低・中標高(〜1400m)の常緑広葉樹林,海岸林のススキがある場所で見られる。
 発生地が局部的で,撮影が難しい種の一つである。台東市知本渓,知本渓楽山,高雄市高中林道,台東縣達仁區で撮影することができた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,中国の南東部に分布している。
 中国では,河南省,四川省,湖南省,湖北省,湖南省,江西省,広東省,海南省,福建省に,台湾と同じ名義タイプ亜種が分布している。
【近似種】  カノウラナミジャノメに似ているが,本種は,後翅の裏面の眼状紋は4つで,大きさがほぼ同じであるので区別することができる。

・オオウラナミジャノメ 寶島波眼蝶 (台湾産)    Ypthima atra taiwana Lamas, 2010    台湾亜種


写真数: 60枚


出現頻度
★★★☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 台湾産の本種は,これまで台湾特産種Y.taiwana とされていたが,植村(2020)によって,♂交尾器の形態から中国大陸に分布する Y. atra の台湾亜種 Y.atra taiwana となった。
 やや大型のウラナミジャノメ類である。タイワンウラナミジャノメよりは,暗い場所を好み,長時間,飛翔を続ける習性がある。後翅裏面の眼状紋の大きさは,個体変異が大きく,低温型は,眼状紋が小さくなる。
【雌  雄】 ♀は,前翅表面の眼状紋が発達し,その周辺が灰白色になり,翅形が丸くなるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】  台湾の低・中標高(50m〜1500m)の常緑広葉樹林で見られる。
 台湾の北部,中部山岳,南部など各地で見られた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド北部,ヒマラヤ,インドシナ半島,中国の南西部・南部に分布し,台湾産は分布の東限に当たる。
 中国では,西蔵區,陳西省,山西省,河南省,雲南省,四川省,貴州省,広西區,湖南省,広東省,海南省,福建省に分布している。
【近似種】  ホソバオオウラナミジャノメに似ているが,本種は,後翅の裏面の眼状紋は5つで,前翅は横長になること,後翅の亜外縁の連続する3つの眼状紋が直線的に並ぶこと,後翅の亜外縁の連続する2つの眼状紋と連続する3つの眼状紋が,ほぼ平行に位置することで区別することができる。

・ホソバオオウラナミジャノメ 狹翅波眼蝶 (台湾産)   Ypthima angustipennis Takahashi,2000   台湾特産種


写真数: 103枚


出現頻度
★★★☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 やや大型のウラナミジャノメ類である。樹林内を低く飛び,なかなか止まらい。
 後翅裏面の眼状紋の大きさは,個体変異が大きく,低温型は,眼状紋が小さくなる。高標高の場所に生息する個体は,裏面が白化する。
【雌  雄】 ♀は,前翅表面の眼状紋が発達し,その周辺が灰白色になり,翅形が丸くなるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 周年,年数回発生しているる。
【生息地】  台湾の低・中標高(50m〜2000m)の常緑広葉樹林で見られる。
 台湾の北部,中部山岳,南部など各地で見られた。台北市立動物園虫虫探索谷(標高50m)や標高2000mの碧緑でも確認できた。
【分  布】 台湾以外には分布せず,台湾の特産種である。
【近似種】  オオウラナミジャノメに似ているが,本種は,後翅の裏面の眼状紋は5つで,前翅はとがり,前翅後角を頂点として二等辺三角形に近い形になること,後翅の亜外縁の連続する3つの眼状紋が直線的にならないでへの字型に折れ曲がる状態で並ぶことで区別することができる。

・ヤマナカウラナミジャノメ  (台湾産)   Ypthima yamanakai Sonan, 1938    台湾特産種


写真数: 126枚


出現頻度
★★☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 これまで,本種は,Y.conjuncta の台湾亜種yamanakai とされていたが,高橋(2000)によって,Y. yamanakai Sonan,1938 (「台湾産オオウラナミジャノメ種群の再検討」蝶と蛾 1-18January 2000)とされ,植村(2020)は,ウラナミジャノメ属の研究の中でも,本種を独立種として扱った。
 やや大型のウラナミジャノメ類である。非常に敏感で,なかなか止まらない。タイワンウラナミジャノメやタカムクウラナミジャノメより,さらに暗い場所を好み,同じ雑木林の中でも棲み分けをしている。
【雌  雄】 ♀は,前翅表面の眼状紋が発達するので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 4月〜10月上旬に,年数回発生している。
【生息地】  台湾の中・高標高(1000m〜2500m)の常緑広葉樹林で見られる。
 発生地が局部的で,撮影が難しい種の一つである。中部山岳の松崗(標高2100m),南投縣奥萬大梨山晉元橋(標高1858m),南投縣清清草原,南投縣梅峰花蓮市碧緑南投縣仁愛郷ナールー湾で見られた。
【分  布】 台湾以外には分布せず,台湾の特産種である。
【近似種】  ホソバオオウラナミジャノメに似ているが,本種は,後翅の裏面の眼状紋は5つで小さく,翅形はさらに尖ること,後翅の中室から後角部にかけて地色が白化することので区別することができる。また,稀に後翅裏面の5個の眼状紋が発達する個体が発生するが,その眼状紋の大きさはほぼ同じになり,オオウラナミジャノメ類は,眼状紋の大きさが様々になるので区別することができる。

・タイワンウラナミジャノメ 密紋波眼蝶 (ウラナミジャノメ) (台湾産)   Ypthima multistriata multistriata Butler,1883    名義タイプ亜種


No.1  記録時期  2013.4.62016.6.27
写真数: 169枚
出現頻度
★★★★★


No.2  記録時期  2017.3.28
写真数: 134枚
 
 
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 台湾産は,以前は,日本産とは別種とされていたが,最近は,同種として扱われるようになり,台湾産は,名義タイプ亜種で,日本産のウラナミジャノメは,台湾産のタイワンウラナミジャノメの亜種となった。日本産は,2亜種あり,日本本土亜種 Y. multistriata niphonica Murayama, 1969,対馬・大陸亜種 Y. multistriata ganus Fruhstorfer, 1911 がある。現在,台湾産と日本産の違いが分析されており,別種になる可能性もある。
 小型のウラナミジャノメ類である。個体変異が大きく,乾季と雨季,低地と高地で斑紋に差が出る。地上を低く飛び,すぐに止まる習性があり,翅を開いて止まることも多い。
【雌  雄】 ♂は,前翅表面には眼状紋がないかあっても小さく,♀は,前翅表面の眼状紋が発達し,その周辺が灰白色になり,翅形が丸くなるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】  台湾の低・中・高標高(〜2000m)の常緑広葉樹林,海岸林で見られる。
 台湾の北部,中部山岳,南部など各地で見られた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,中国の南部・東部,朝鮮半島,日本の中部地方以西対馬に分布している。
 中国では,河南省,江蘇省,江西省,浙江省,福建省,上海市に分布している。
【近似種】  エサキウラナミジャノメに似ているが,本種は,後翅裏面の眼状紋が3つで,前縁の眼状紋が後角の眼状紋より大きくなること,後翅裏面亜外縁の暗褐色斑は発達しないことで区別することができる。

・エサキウラナミジャノメ 江崎波眼蝶 (台湾産)   Ypthima esakii esakii ,1960   台湾特産種   名義タイプ亜種


写真数: 58枚


出現頻度
★★☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 小型のウラナミジャノメ類である。飛んでいるときは,タイワンウラナミジャノメと同じ習性で,地上を低く飛ぶ。
【雌  雄】 ♂は,前翅表面には眼状紋がないかあっても小さく,♀は,前翅表面の眼状紋が発達し,その周辺が灰白色になり,翅形が丸くなるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】  周年,年数回発生している。
 奥萬大では,7月上旬が最盛期で,近似種のタイワンウラナミジャノメは,最盛期が2週間ほど早いようで,痛んだ個体が多かった。
【生息地】  台湾の低・中・高標高(〜2500m)の崩壊地で見られる。
 台湾の北部,中部山岳,南部など各地で見られた。
【分  布】 台湾以外には分布せず,台湾の特産種である。
【近似種】  タイワンウラナミジャノメに似ているが,本種は,後翅裏面の眼状紋が3つで,後翅裏面の前翅に近い2つの眼状紋の大きさがほぼ同じ大きさか,前縁部の眼状紋がより小さくなること,後翅裏面の中央の眼状紋の外縁まで,褐色の波状紋が発達してくることで区別することができる。

・エサキウラナミジャノメ 江崎波眼蝶  (カメヤマウラナミジャノメ 王氏波眼蝶) (台湾産)   Ypthima esakii wangi Lee,1998    台湾特産種   台湾東北部亜種


写真数: 11枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 高橋・城内(2011)は,カメヤマウラナミジャノメを東北部や亀山島に生息するエサキウラナミジャノメの亜種wangi とした。
 小型のウラナミジャノメ類である。台湾本島の東北部では,崖がある場所に生息している。
【雌  雄】 ♂は,前翅表面には眼状紋がないかあっても小さく,♀は,前翅表面の眼状紋が発達し,その周辺が灰白色になり,翅形が丸くなるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 2月〜12月に,年数回発生している。 
【生息地】  台湾の東北部の低標高(〜900m)の海岸岩場,崩壊地で見られる。
 分布域が狭く,なかなか撮影出来ない種の一つである。なお,亀山島は,入島に1日当たりの人数制限があり,条例で,昆虫採集は禁止されている。
 新北市南雅の崖の下で1頭を撮影することができたが,センダングサの密生する草原に消えてから,崖沿いの林道を5往復して探したが,他に見つけることはできなかった。
【分  布】 台湾以外には分布せず,台湾の特産種である。
【近似種】  タイワンウラナミジャノメ,タカムクウラナミジャノメに似ているが,本種は,後翅裏面の眼状紋と眼状紋の間に,カタカナの「メ」もしくは「ノ」の形の白斑が発達すること,カウ氏裏面の亜外縁部に黒褐色斑が発達すること,後翅裏面の後角部の眼状紋が接触することなどで区別することができる。

・タカムクウラナミジャノメ 白帶波眼蝶 (台湾産)   Ypthima akragas Fruhstorfer,1911   台湾亜種


写真数: 151枚


出現頻度
★★☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 中型のウラナミジャノメ類である。タイワンウラナミジャノメより,一回り大きな個体が多い。明るい草原や荒れ地で見られるが,なかなか止まらなく,人の気配に敏感な習性がある。
【雌  雄】 ♂は,前翅表面には眼状紋がないかあっても小さく,♀は,前翅表面の眼状紋が発達し,その周辺が灰白色になり,翅形が丸くなるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 4月〜10月に,年数回発生している。
【生息地】
 台湾の中・高標高(1000m〜3000m)の崩壊地で見られる。
 発生地が局部的で,撮影が難しい種の一つである。南投縣の松崗(標高約2024m),南投縣翠峰南投縣奥萬大拉拉山上巴陵南投縣松崗,南投縣清清草原,高雄市桃源區籐枝,南投縣鳶峰(標高2764m),花蓮市碧緑神木南投縣仁愛郷ナールー湾などの高地で見られた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,中国の南西部・南部に分布している。
 中国では,雲南省,四川省,貴州省,広西區,湖北省,湖南省,広東省,福建省に,名義タイプ亜種 Y.akragas akragas が分布している。
【近似種】  タイワンウラナミジャノメに似ているが,本種は,後翅裏面の眼状紋が3つで,後翅裏面の眼状紋の周辺に白帯が現れることで区別することができる。

・カノウラナミジャノメ 巨波眼蝶  (台湾産)   Ypthima praenubila kanonis Matsumura, 1929    台湾亜種


写真数: 37枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】  以前は,北部亜種neobilia と中南部亜種kanonis に分かれていたが,大きさ以外の変異は認められず,同じ亜種となり,neobiliakanonis シノニムとなった。
 やや大型のウラナミジャノメ類である。北部に産する個体は,中南部に産するものに比べて大型になる。飛翔力はタッパンウラナミジャノメよりはあるが,すぐに止まる習性がある。ウラナミジャノメ類では,最も暗い場所を好み,樹林内から出ることはほとんどない。人の気配に非常に敏感な習性がある。
【雌  雄】 ♂は,前翅表面には眼状紋がないかあっても小さく,♀は,前翅表面の眼状紋が発達し,その周辺が灰白色になり,翅形が丸くなるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】  5月〜7月に,年1回発生している。
 南投縣奥萬大では,7月上旬が最盛期のようで,3♂♂1♀を確認できた。
【生息地】  台湾の低・中標高(50m〜2000m)の常緑広葉樹林で見られる。
 発生地が局部的で,撮影が難しい種の一つである。拉拉山下巴陵(標高656m),拉拉山上巴陵,台東市の知本渓と中部山岳の本部渓南投縣奥萬大,南投縣清清草原,屏東縣大漢山で見られた。中部や北部では,少ないものの時々見ることができたが,南部では,非常に少なく,知本溪で1♀を見つけただけである。知本渓は,20回近く探索したが,本種は,1頭しか見つけることはできなかった。
【分  布】  種としては,台湾以外では,中国の南西部・南部に分布している。
 中国では,黒竜江省,吉林省,遼寧省,河北省,山東省,河南省,江蘇省,安徽省,湖北省,浙江省,江西省,湖南省,福建省,広東省,広西區,雲南省,四川省,西蔵區,(上海市)に,名義タイプ亜種 Y.praenubila praenubila が分布している。
【近似種】  タッパンウラナミジャノメに似ているが,本種は,後翅裏面の眼状紋が4つで,後翅前縁の眼状紋が特に大きくなることで区別することができる。

・タカオウラナミジャノメ 文龍波眼蝶 (台湾産)   Ypthima wenlungi Takahashi,2007   台湾特産種


写真数: 10枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 小型のウラナミジャノメ類である。飛んでいるときは,タイワンウラナミジャノメと同じ習性で,地上を低く飛ぶ。
【雌  雄】 ♀は,前翅表面の眼状紋が発達し,その周辺が灰白色になり,翅形が丸くなるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 8月中旬〜11月中旬に,年1回発生している。
【生息地】  台湾南部の中・高標高(800m〜2000m)の常緑広葉樹林で見られる。
 分布域が狭く,なかなか撮影出来ない種の一つである。高雄市桃源區藤枝で撮影された。
【分  布】 台湾以外には分布せず,台湾の特産種である。
【近似種】  タイワンウラナミジャノメに似ているが,本種は,より小型で,後翅裏面の前縁の眼状紋が大きく,前翅裏面の眼状紋とほぼ同じ大きさになること,♂の前翅翅表には,眼状紋が鮮明に出ること,♂の前翅翅表には性標がないこと,後翅裏面の亜外縁の暗褐色斑は,ほとんど発達しないこと,後翅裏面の前縁にある眼状紋の大きさと後角部にある眼状紋までの空間の距離が同じになることなどで区別することができる。

・ムモンウラナミジャノメ 罕波眼蝶 (台湾産)   Ypthima norma posticalis Matsumura,1909    台湾亜種


写真数: 1枚
(参考:タイ産)


出現頻度
☆☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 小型のウラナミジャノメ類でる。絶滅した可能性が極めて高い。
【雌  雄】 ♀は,前翅表面の眼状紋が発達し,その周辺が灰白色になり,翅形が丸くなるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 9月〜11月に発生していた。
【生息地】  台湾の北部の低標高(0m〜200m)の常緑広葉樹林で見られた。
 記録としては,台北市北投に記録がある。
【分  布】  種としては,台湾以外では,中国の南西部・南部・東部,インドシナ半島,インドネシア,フィリピン,セレベス分布している。
 中国では,西蔵區,雲南省,広西區,海南省,広東省に分布している。
【近似種】 コウラナミジャノメの冬型に似ているが,本種は,小型で,前翅表面には,鮮明に眼状紋が現れ,後翅表面には,眼状紋がないので,区別することができる。

・ギンジャノメ 古眼蝶 (台湾産)   Palaeonympha opalina macrophthalmia Fruhstorfer, 1911    台湾亜種


写真数: 27枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 中型のジャノメチョウ類である。岩場や荒れ地,その周辺の草地に生息しており,発生数は少ない。
【雌  雄】 ♂は,前翅中室付近に性標が現れ,♀は,翅形が丸くなるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 3月〜7月上旬に,年1回発生している。
【生息地】  台湾の低・中・高標高(300m〜2500m)の常緑広葉樹林の岩場や荒れ地,林道などで見られる。
 発生地が局部的で,撮影が難しい種の一つである。中部山岳の南山渓松崗本部溪花蓮市碧緑神木で見られた。屏東霧台郷,上巴陵でも撮影された。
【分  布】  種としては,台湾以外では,中国の南西部・南部に分布している。
 中国では,河南省,四川省,湖南省,湖北省,湖南省,江西省,広東省,福建省,(上海市)に,名義タイプ亜種 P.opalina opalina が分布している。
【近似種】 なし

・オジロクロヒカゲ 大幽眼蝶 (台湾産)   Zophoessa dura neoclides (Fruhstorfer, 1909)    台湾亜種


写真数: 48枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 やや大型のヒカゲチョウ類である。葉上や路上に静止することが多い。やや暗い場所を好み,♂は,午前中は,占有行動を行う。
【雌  雄】 ♀は,白斑が発達し,翅形が丸くなるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 3月〜11月に,年数回発生している。
【生息地】  台湾の低・中・高標高(700m〜3000m)の常緑広葉樹林,ササ原で見られる。
 発生地が局部的で,撮影が難しい種の一つである。中部山岳の本部渓翠峰(標高2289m),南投縣梅峰,南投縣鳶峰(標高2764m),花蓮市碧緑神木南投縣仁愛郷屯原南投縣仁愛郷ナールー湾で見られた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インドシナ半島北西部,フィリピン,中国の南西部・南部に分布している。
 中国では,雲南省,四川省,貴州省,広西區,湖北省,湖南省,広東省,福建省に分布している。雲南省に分布しているものは,名義タイプ亜種 Z.dura dura で,それ以外は,別亜種 Z.dura moupinensis である。
【近似種】  他のヒカゲチョウ類に似ているが,本種は,後翅の翅形が波状になること,後翅裏面の亜外縁の眼状紋は白くなることで区別することができる。

・カノクロヒカゲ 圓翅幽眼蝶 (台湾産)   Zophoessa siderea kanoi Esaki & Nomura,1937   台湾亜種


写真数: 39枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 中型のヒカゲチョウ類である。竹林に生息し,比較的低い場所を飛び,動物の排泄物に集まる習性がある。非常に珍しい蝶で,6年間探し続けて,ようやく見つけることができた。撮影できた碧緑神木は,尾根になっており,夕方,飛来した個体2頭を撮影することができた。しかし,撮影できたのはこの日だけで,他の8日間は,全く見ることができなかった。撮影は,パイナップルビールに黒砂糖を混ぜた液体に誘引されたので容易であった。
【雌  雄】 標本では,雌雄を区別できるが,生態写真では難しい。
【生  態】 5月下旬〜10月に,年2回発生している。
【生息地】  台湾の中・高標高(1000m〜2500m)の常緑広葉樹林,ササ原で見られる。
 ちなみに,碧緑がある中部貫公路一体は,昆虫採集は禁止されている。
【分  布】  種としては,台湾以外では,ヒマラヤ,インドシナ半島北部,中国の南西部・南部に分布している。
 中国では,四川省,雲南省に,名義タイプ亜種 Z.siderea siderea が分布している。
【近似種】 なし

・イワヤマヒカゲ 玉山幽眼蝶 (台湾産)   Lethe niitakana (Matsumura,1906)   台湾特産種


写真数: 39枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 中型のヒカゲチョウ類である。飛び方は速いが,すぐに地上に止まる習性がある。
【雌  雄】 ♂は,前翅後縁付近に黒褐色の性標が翅脈に沿って2つ現れ,♀は,白斑が発達し,翅形が丸くなるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 3月〜12月に,年数回発生している。
【生息地】  台湾の中・高標高(1500m〜3800m)の常緑広葉樹林,ニイタカヤダケの草原で見られる。
 分布域が狭く,なかなか撮影出来ない種の一つである。中部山岳の阿里山の沼平(標高2274m),合歓山東峰歩道で見られた。合歓山小風口でも撮影された。
【分  布】 台湾以外には分布せず,台湾の特産種である。
【近似種】 なし

・オオシロオビクロヒカゲ 臺灣黛眼蝶 (台湾産)   Lethe mataja Fruhstorfer,1908   台湾特産種


写真数: 48枚


出現頻度
★★☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 やや大型のヒカゲチョウ類である。飛び方は速いが,すぐに地上に止まる習性がある。
【雌  雄】 ♀は,翅形が丸くなり,後翅裏面の亜外縁に眼状紋が6つ現れ,♂では5個になること,♀は,後翅裏面の中央の暗褐色の線が性標がないので直線的になることなどで,雌雄を区別することができる。♀は非常に少ない。
【生  態】 2月下旬〜12月に,年数回発生している。
【生息地】  台湾低・中・高標高(50m〜2000m)の常緑広葉樹林で見られる。
 中部山岳の南山渓本部溪台東市知本渓高雄市玉山南投縣恵孫林場拉拉山上巴陵南投縣霧社屏東縣大漢山花蓮市碧緑神木南投縣仁愛郷屯原で見られた。
【分  布】 台湾以外には分布せず,台湾の特産種である。
【近似種】  シロオビクロヒカゲに似ているが,本種は,前翅裏面の翅頂付近の眼状紋が2つで,後翅裏面の眼状紋は前縁の紋が最大になり,それ以外の紋の大きさは同じであることで区別することができる。

・ミヤマシロオビヒカゲ 深山黛眼蝶 (台湾産)   Lethe hyrania formosana Fruhstorfer, 1908   台湾亜種


写真数: 73枚


出現頻度
★★☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 中型のヒカゲチョウ類である。飛び方は速いが,すぐに地上に止まる習性がある。
【雌  雄】 ♀は,前翅に白斑が発達し,翅形が丸くなるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 3月〜11月に,年数回発生している。
【生息地】  台湾の中・高標高(1300m〜3000m)の常緑広葉樹林,ササ原で見られる。
 中部山岳の阿里山の沼平(標高2274m),南投縣翠峰梨山思源南投縣梅峰花蓮市碧緑南投縣仁愛郷屯原,南欧公路で見られた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド北部,ヒマラヤ,インドシナ半島北部,中国の南西部・南部に分布している。
 中国では,雲南省,四川省,貴州省,広西區,湖北省,湖南省,広東省,福建省に分布している。
【近似種】  ワイルマンクロヒカゲに似ているが,本種は,より小型で,高地帯に生息し,裏面がほぼ一様な茶褐色なること,前翅裏面の亜外縁に眼状紋は3つで,同じ大きさになること,♀は裏面翅頂付近に白斑が出ることで区別することができる。

・ワイルマンクロヒカゲ (オオミヤマシロオビヒカゲ) (台湾産)    Lethe sp.   本種に付けられていた種名bojonia は,ミヤマシロオビヒカゲの種名isana シノニムになるので,今後,新たに学名がつけられる。


写真数: 56枚


出現頻度
★★☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 中型のヒカゲチョウ類である。飛び方は速いが,すぐに地上に止まる習性がある。
【雌  雄】 ♀は,前翅に白斑が発達し,翅形が丸くなるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 3月下旬〜11月に,年数回発生している。
【生息地】  台湾の低・中標高(400m〜1400m)の常緑広葉樹林で見られる。
 中部山岳の本部渓拉拉山上巴陵陽明山二子坪新北市烏来区福山村で見られた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド北部,ヒマラヤ,インドシナ半島北部,中国の南西部・南部に分布している。
 中国では,雲南省,四川省,貴州省,広西區,湖北省,湖南省,広東省,浙江省,福建省に分布している。
【近似種】  ミヤマシロオビヒカゲに似ているが,本種は,裏面の亜外縁の眼状紋の周辺が灰白色になること,前翅裏面の亜外縁に眼状紋は3つで,翅頂に近い眼状紋は,大きくなることで区別することができる。

・シロオビヒカゲ 長紋黛眼蝶 (台湾産)   Lethe europa pavida Fruhstorfer,1908


写真数: 39枚


出現頻度
★★☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 日本産と同じ亜種である。やや大型のヒカゲチョウ類である。飛び方は速いが,すぐに地上に止まる習性がある。
【雌  雄】 ♀は,前翅に白斑が発達し,翅形が丸くなるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】  台湾の低・中標高(〜1500m)の常緑広葉樹林,竹林で見られる。
 台湾の北部,中部山岳,南部など各地で見られた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド,ヒマラヤ,インドシナ半島,フィリピン,インドネシア,中国の南西部・南部,日本の八重山諸島に分布している。
 中国では,西蔵區,雲南省,四川省,貴州省,広西區,湖南省,広東省,海南省,浙江省,福建省,上海市に,いくつかの亜種が分布している。
【近似種】  他のヒカゲチョウ類に似ているが,本種は,前翅裏面の亜外縁に眼状紋は6つで,後翅裏面の眼状紋が非常に大きくなることで区別することができる。

・ウラマダラシロオビヒカゲ 波紋黛眼蝶 (台湾産)   Lethe rohria daemoniaca Fruhstorfer,1908


写真数: 5枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 やや大型のヒカゲチョウ類である。飛び方は速いが,すぐに地上に止まる習性がある。近年,各地の生息地が開発され,本種は激減している。
【雌  雄】 ♀は,前翅に白斑が発達し,翅形が丸くなるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】 台湾の低・中・高標高(〜2000m)の常緑広葉樹林で見られる。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド,ヒマラヤ,インドシナ半島,インドネシア,中国の南西部・南部・東部に分布している。
 中国では,西蔵區,雲南省,四川省,貴州省,広西區,湖南省,広東省,海南省,浙江省,福建省に,別亜種 L.rohria permagnis が分布している。
【近似種】  他のヒカゲチョウ類に似ているが,本種は,前翅裏面の亜外縁に眼状紋は大きさがバラバラで,後翅裏面の眼状紋が非常に大きくなること,後翅裏面の中央に白線が発達することで区別することができる。

・メスチャヒカゲ 曲紋黛眼蝶 (台湾産)   Lethe chandica ratnacri Fruhstorfer,1908   台湾亜種


写真数: 60枚


出現頻度
★★★☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 やや大型のヒカゲチョウ類である。飛び方は速いが,すぐに地上に止まる習性がある。
【雌  雄】 ♀は,前翅に白斑が発達し,翅表や裏面の地色が薄くなるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】  台湾の低・中・高標高(〜2500m)の常緑広葉樹林,竹林で見られる。
 台湾の北部,中部山岳,南部など各地で見られた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インドシナ半島,フィリピン,インドネシア,中国の南西部・南部に分布している。
 中国では,雲南省,四川省,貴州省,広西區,湖南省,広東省,海南省,福建省,上海市に分布している。海南省に分布しているものは,別亜種 L.chandica suvarna で,雲南省に分布しているものは,別亜種 L.chandica flanona で,それ以外は,別亜種 L.chandica coelestis である。
【近似種】  ミヤマシロオビヒカゲ,シロオビヒカゲに似ているが,本種は,前翅裏面の亜外縁の眼状紋は,5〜6つで,同じ大きさでゆるやかな円弧状に並ぶこと,後翅裏面の眼状紋が少し大きくなることで区別することができる。

・ミヤマヒカゲ 柯氏黛眼蝶 (台湾産)   Lethe christophi hanako Fruhstorfer,1908   台湾亜種


写真数: 13枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 やや大型のヒカゲチョウ類である。森林性が強く,樹液,腐った果実,獣糞などに集まる習性がある。人の気配に敏感で,止まっている時間がとても短い。
【雌  雄】 ♀は,裏面外縁の褐色斑が黒褐色になるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 4月下旬〜11月に,年1〜2回発生している。
【生息地】  台湾の中・高標高(1200m〜2800m)の常緑広葉樹林,ササ原で見られる。
 花蓮市碧緑神木で見ることができた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,中国の西部に分布している。
 中国では,湖北省,浙江省,江西省,福建省に,名義タイプ亜種 L.christophi christophi が分布している。
【近似種】  ミヤマシロオビヒカゲに似ているが,本種は,前翅裏面の亜外縁の眼状紋は3つで,中室付近の暗褐色の条は,平行になること,その内側には,直角三角形の斑紋ができること,後翅裏面の眼状紋は小さく,前縁部の1つだけは,やや大きくなることで区別することができる。

・タイワンクロヒカゲモドキ 巴氏黛眼蝶 (台湾産)   Lethe butleri periscelis (Fruhstorfer, 1908)   台湾亜種


写真数: 26枚


出現頻度
★★☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 やや大型のヒカゲチョウ類である。飛び方はあまり速くなく,すぐに葉上に止まる習性がある。
【雌  雄】 ♀は,裏面外縁の黄条が発達し,翅形が丸くなるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 4月〜10月に,年数回発生している。
【生息地】  台湾の低・中・高標高(〜2500m)の常緑広葉樹林で見られる。
 発生地が局部的で,撮影が難しい種の一つである。中部山岳の本部渓奥萬大南投縣南山渓高雄市高中林道拉拉山上巴陵で見られたが,少ない種の一つである。屏東縣春日郷大漢山でも撮影された。
【分  布】  種としては,台湾以外では,中国の中部・東部に分布している。
 中国では,河南省,湖北省,浙江省,江西省,福建省に,名義タイプ亜種 L.butleri butleri が分布している。
【近似種】  ヒトツメジャノメ類に似ているが,本種は,後翅裏面の眼状紋で,前縁の紋が最大になり,後角の2番目に大きい紋との間に,小さい紋が3つあることでで区別することができる。

・シロオビクロヒカゲ 玉帶黛眼蝶 (台湾産)   Lethe verma cintamani Fruhstorfer,1909   台湾亜種


写真数: 43枚


出現頻度
★★☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 中型のヒカゲチョウ類である。人の気配に敏感で,近づくと直ぐに飛んでしまうので,撮影は難しい。林の日陰になっている場所を好み,その場所では複数の個体が生息していることが多かった。
【雌  雄】 ♀は,前翅に白斑が発達して太くなり,翅表や裏面の地色が薄くなるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】  周年,年数回発生している。
 7月中旬の拉拉山上巴陵では,限られた場所に数頭の個体が生息していた。
【生息地】  台湾の低・中・高標高(50m〜2500m)の常緑広葉樹林で見られる。
 発生地が局部的で,撮影が難しい種の一つである。台東市の知本渓,中部山岳の南投縣奥萬大拉拉山の下巴陵新北市烏来区福山村南投縣本部溪拉拉山の上巴陵屏東縣大漢山花蓮市碧緑神木南投縣仁愛郷屯原南投縣仁愛郷ナールー湾で見られた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド北部,ヒマラヤ,インドシナ半島,中国の南西部・南部に分布している。
 中国では,西蔵區,雲南省,四川省,貴州省,広西區,湖南省,広東省,海南省,浙江省,福建省に分布している。海南省に分布しているものは,別亜種 L.verma stenopa で,それ以外は,別亜種 L.verma saturnus である。
【近似種】  オオシロオビクロヒカゲに似ているが,本種は,後翅裏面の後角部から2つ目の眼状紋が大きくなること,前翅表面の白帯の前縁部が少し基部側に曲がること,後翅裏面の中室の帯が紫色になることで区別することができる。

・アリサンチャイロヒカゲ  (台湾産)   Lethe gemina zaitha Fruhstorfer,1914   台湾亜種


写真数: 10枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 中型のヒカゲチョウ類である。森林性が強く,樹林の高い場所を好んで活動する習性があり,獣糞に集まる。写真のように人の汗を吸いに手に止まることもある。
【雌  雄】 ♀の表面は,黄褐色斑が発達するが,生態写真では,翅表を見せることが少ないので,雌雄を区別することは難しい。
【生  態】 5月〜11月に,年2回発生している。 
【生息地】  台湾の中・高標高(1000m〜2500m)の常緑広葉樹林,ササ原で見られる。
 発生地が局部的で,撮影が難しい種の一つである。阿里山(総称)の合望山,南投縣梅峰で撮影された。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド北部,ヒマラヤ,中国の西部・東部に分布している。
 中国では,四川省,浙江省に,名義タイプ亜種 L.gemina gemina が分布している。
【近似種】 なし

 
ジャノメチョウ亜科2は,ここをクリックすると見ることができます。(容量の関係で,別ページにしてあります)




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