台湾の蝶 <シロチョウ科-シロチョウ亜科>


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・アカネシロチョウ 艷粉蝶 (台湾産)   Delias pasithoe curasena Fruhstorfer,1908   台湾亜種


写真数: 69枚

♀  ♂
出現頻度
★★☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】 中型のシロチョウである。訪花しているときは,ほとんど動かない。♂は,早朝に日当たりのよい場所で占有行動をする習性がある。
【雌  雄】 ♀は翅形が丸みを帯び,翅表が褐色になり,後翅裏面の基部の黄斑が発達するので,雌雄を区別することができる。
【生  態】  周年,年数回発生している。
 3月中旬に,台東市の知本渓谷の楽山の尾根道で,訪花するたくさんの個体を確認することができた。
【生息地】  台湾の低・中・高標高(〜2000m)の常緑広葉樹林で見られる。
 墾丁国家公園台東市知本溪南投縣本部溪拉拉山下巴陵台東市知本溪楽山高雄市桃源南投縣恵孫林場拉拉山上巴陵新北市烏来区福山村桃園市林班口で撮影することができた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,ヒマラヤ,インドシナ半島,フィリピン,ボルネオ島,インドネシア(ラオスタイ),中国の南西部・南部に分布し,台湾産は分布の東限に当たる。
 中国では,雲南省,広西區,広東省,海南省,福建省に分布している。雲南省に分布しているものは,別亜種 D.pasithoe thyra で,広西區に分布しているものは,名義タイプ亜種 D.pasithoe pasithoe で,広東省,海南省,福建省に分布しているものは,別亜種 D.pasithoe porsenna である。
【近似種】 なし

・ベニモンシロチョウ 白艷粉蝶 (台湾産)   Delias hyparete luzonensis C. & R.Felder,1862


写真数: 48枚


出現頻度
★★☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】 中型のシロチョウである。春は,背の高い樹木の花に飛来していて,撮影は難しかった。高雄市桃源では,数頭の♂の個体が縄張りを見回っていて,その途中にある花の木の蜜を吸うために集まるが,互いの姿を見つけると,すぐに追飛行動を開始する様子が見られた。夏は,各種の花に集まり,特にランタナの花によく集まる姿がよく見られ,撮影は容易であった。
【雌  雄】 ♀は翅形が丸みを帯び,翅表が褐色になり,後翅裏面の外縁の赤斑が発達するので,雌雄を区別することができる。
【生  態】  周年,年数回発生している。
 春は少ないチョウであるが,夏は各所で見ることができた。
【生息地】  台湾の北部を除く低・中(〜1000m)の常緑広葉樹林で見られる。
 分布域が狭く,発生地も局所的で,なかなか撮影出来ない種の一つである。高雄市宝来直瀬溪高雄市宝来の西の山高雄市桃源,谷関松鶴,南投縣南山溪,台東縣達仁區,高雄市田寮區,雲林縣古坑郷で確認することができた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド,ヒマラヤ,インドシナ半島,フィリピン,ボルネオ島,インドネシア,中国の南西部・南部に分布し,台湾産は分布の東限に当たる。
 中国では,雲南省,広西區,広東省,海南省に分布している。雲南省に分布しているものは,別亜種 D. hyparete indica で,広西區,広東省に分布しているものは,別亜種 D.hyparete hierte で,海南省に分布しているのは,別亜種 D.hyparete ciris である。
【近似種】 なし

・ゴマダラシロチョウ 條斑艷粉蝶 (台湾産)   Delias lativitta formosana Matsumura,1909   台湾亜種


写真数: 26枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 中型のシロチョウである。各種の花に集まり,地上で吸水することもある。
【雌  雄】 ♀は翅形が丸みを帯び,前翅裏面の基部の白斑が発達するので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 4月〜9月に,年1回発生している。
【生息地】
 台湾の低・中・高標高(500m〜3000m)の常緑広葉樹林で見られる。
 阿里山沼平花蓮市碧緑慈恩で見ることができた。南投縣清境でも撮影されている。阿里山沼平では,ミズキの花に,タカムクシロチョウやワイルマンシロチョウが多数,訪花していたが,本種は1頭のみであった。花蓮市碧緑慈恩でも,タカムクシロチョウやワイルマンシロチョウは多数いたが,本種は,1頭のみ,見つけることができた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド北部,ヒマラヤ,中国の南西部・南部に分布し,台湾産は分布の東限に当たる。
 中国では,雲南省,貴州省,広西區,湖南省,江西省,広東省,浙江省,福建省に分布している。雲南省,貴州省,広西區,湖南省に分布しているものは,別亜種 D.lativitta yunnana で,江西省,広東省,浙江省,福建省に分布しているものは,名義タイプ亜種 D.lativitta lativitta である。
【近似種】  ワイルマンシロチョウに似ているが,本種は,後翅裏面の黄斑の大きさが丸くて大きいこと,前翅裏面の中室の白条が本種は連続するので区別することができる。
 

・ワイルマンシロチョウ 黄裙艷粉蝶 (台湾産)    Delias berinda wilemani Jordan, 1925   台湾亜種


写真数: 69枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 中型のシロチョウである。飛び方は,かなり早く,なかなか止まらない習性がある。
【雌  雄】 ♀は翅形が丸みを帯び,翅表が褐色になり,前翅裏面の基部の白斑が発達するので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 4月〜10月に,年1回発生している。
【生息地】
 台湾の中・高標高(1000m〜2800m)の常緑広葉樹林で見られる。
 台湾の中部山岳にある松崗一帯(標高約2100m)は,その多くが農地に開発され,ところどころに残されている原生林が,高山蝶の生息場所となっていた。阿里山の沼平(標高2274m)では,林道の横にある木に花が咲いており,数等の個体が飛来していた。その他,南投縣翠峰梨山晉元橋梨山思源花蓮市碧緑神木で見ることができた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド北部,ヒマラヤ,インドシナ半島北部,中国の南西部に分布し,台湾産は分布の東限に当たる。
 中国では,四川省,雲南省に,別亜種 D.berinda boyleae が分布している。
【近似種】  ゴマダラシロチョウに似ているが,本種は,後翅裏面の黄斑が菱形になり,小さいことで区別することができる。

・タカムクシロチョウ 流星絹粉蝶 (台湾産)   Aporia agathon moltrechti (Oberthur, 1909)   台湾亜種


写真数: 111枚


出現頻度
★★☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 中型のシロチョウである。飛び方は,かなりゆっくりで,各種の花に集まる。
 花蓮市碧緑慈恩では,翅表が黒化し,後翅裏面の黄色斑が白化した斑紋異常の♂を撮影することができた。


後翅裏面の黄色斑が白化した斑紋異常個体
【雌  雄】 ♀は,翅表が褐色になり,前翅裏面の基部の白斑が発達するので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 5月下旬〜9月に,年1回発生している。
【生息地】  台湾の中・高標高(1000m〜2800m)の常緑広葉樹林で見られる。
 阿里山の沼平(標高2274m)では,数頭を確認することができた。中部山岳の翠峰(標高2289m)でも,木々の上を飛翔する姿を見ることができたが,なかなか花に集まる様子を撮影することは難しかった。梨山の思源(標高2028m),花蓮市碧緑神木慈恩では,多数の個体が花に飛来していた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド北部,ヒマラヤ,インドシナ半島北部,中国の南西部に分布し,台湾産は分布の東限に当たる。
 中国では,西蔵區,四川省,雲南省に分布している。西蔵區には,別亜種 A.agathon phryxe が,四川省には,別亜種 A.agathon lemoulti が,雲南省には,別亜種 A.agathon agathon が分布している。
【近似種】  ゴマダラシロチョウやワイルマンシロチョウに似ているが,本種は,後翅裏面の黄斑が楕円形で大きく,その大きさがほぼ同じであることで区別することができる。

・タカサゴミヤマシロチョウ 白絹粉蝶 (台湾産)   Aporia genestieri insularis , 1959    台湾亜種


写真数: 36枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 中型のシロチョウである。飛び方は,かなりゆっくりで,花に止まっているときは,あまり動かない。
【雌  雄】 ♀は,翅表が薄黒くなり,裏面の黒条も薄くなるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 5月〜7月に,年1回発生している。
【生息地】  台湾の中・高標高(1000m〜2200m)の常緑広葉樹林で見られる。
 花蓮市碧緑神木花蓮市碧緑慈恩で見られた。南横公路でも撮影された。
 ちなみに,碧緑がある中部貫公路一帯,南部貫公路一帯は,昆虫採集は禁止されている。
【分  布】  種としては,台湾以外では,中国の北西部・西部・南西部・に分布している。
 中国では,河南省,甘粛省,陳西省に,名義タイプ亜種 A.genestieri genestieri が分布している。
【近似種】 なし

・ギガンテアミヤマシロチョウ 截脈絹粉蝶 (オオミヤマシロチョウ) (台湾産)   Aporia gigantea cheni Hsu & Chou,1999    台湾亜種


写真数: 28枚

♂  ♀
出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 やや大型のシロチョウである。飛び方は,かなりゆっくりで,花に止まっているときは,あまり動かない。飛び方は,日本のミヤマシロチョウとそっくりで,ふわふわと優雅に飛ぶ。眼球が赤く,前後翅に黒条が発達する。
【雌  雄】 ♀は,前翅が後翅に比べて色が淡くなるので,雌雄を区別することができる。。
【生  態】 4月中旬〜6月上旬に,年1回発生している。
【生息地】 台湾の南部の中・高標高(1000m〜2000m)の常緑広葉樹林,崩壊地周辺で見られる。発生地は極限され、幻のミヤマシロチョウと言われている。
【分  布】  種としては,台湾以外では,中国の西部・南西部,ベトナム北部に分布している。
 中国では,四川省,雲南省に分布している。
【近似種】 なし

・モンシロチョウ 白粉蝶 (台湾産)   Pieris rapae crucivora Boisduval, 1836


写真数: 49枚


出現頻度
★★★★★
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 日本産と同じ亜種である。中型のシロチョウである。タイワンモンシロチョウよりは,活発に飛び回る。
【雌  雄】 ♀は,前翅の黒斑が発達するので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】
 台湾の低・中・高標高(〜3000m)の常緑広葉樹林,荒地,都市林の周辺で見られる。
 1970年代の台湾には,本種は生息していなかったが,その後,移入し,現在では,各地で普通に見られた。特に,中部山岳の南山渓では,キャベツの栽培をしており,多数の個体を確認することができた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド北部,ヒマラヤ,インドシナ半島北部,中国,朝鮮半島,日本に分布している。最近は,ハワイ,オーストラリア北部,ニュージーランドにも分布を広げている。
 中国では,黒竜江省,吉林省,遼寧省,河北省,山東省,河南省,江蘇省,安徽省,湖北省,浙江省,江西省,湖南省,福建省,広東省,海南省,広西區,雲南省,四川省,西蔵區,新疆ウィグル自治区,上海市に分布している。新疆ウィグル自治区に分布しているものは,別亜種 P.rapae eumorpha で,雲南省に分布しているものは,別亜種 P.rapae yunnanensis で,それ以外は,別亜種 P.rapae orientalis である。
【近似種】  タイワンモンシロチョウに似ているが,本種は,前翅の翅頂部にしか黒斑がないことで区別することができる。

・タイワンモンシロチョウ 縁點白粉蝶 (台湾産)   Pieris canidia canidia (Sparrman, 1768)   名義タイプ亜種


写真数: 101枚


出現頻度
★★★★★
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 日本産は,kaolicola(対馬・朝鮮半島亜種),canidia(八重山亜種)に分けられ,台湾産と八重山諸島産は同じ亜種である。
 中型のシロチョウである。♀は,産卵行動のため,食草にすぐに止まるが,♂は,♀を探して飛び回っているため,なかなか止まらない習性がある。
【雌  雄】 ♀は,黒斑が発達するので,雌雄を区別することができる。
【生  態】  周年,年数回発生している。
 3月から4月にかけては,多くの個体を観察できたが,6月上旬では,少なかった。
【生息地】  台湾の低・中・高標高(〜3000m)の常緑広葉樹林,荒地,都市林で見られる。
 台湾では,各地で普通に見られた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,イラン東部,アフガニスタン,パキスタン,インド,ヒマラヤ,インドシナ半島中国の南西部・南部,朝鮮半島,日本の八重山諸島対馬に分布している。
 中国では,吉林省,遼寧省,河北省,陳西省,甘粛省,山東省,河南省,江蘇省,安徽省,湖北省,浙江省,江西省,湖南省,福建省,広東省,海南省,広西區,雲南省,四川省,西蔵區,上海市に分布している。陳西省,甘粛省に分布しているものは,別亜種 P.canidia mars で,海南省に分布しているものは,別亜種 P.canidia sordida で,それ以外は,名義タイプ亜種である。
【近似種】  モンシロチョウに似ているが,本種は,翅頂部以外の外縁に黒斑が出るので区別することができる。

・カルミモンシロチョウ 飛龍白粉蝶 (台湾産)   Talbotia nagana karumii (Ikeda, 1937)    台湾亜種


写真数: 29枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】 日本産(迷蝶)と同じ亜種である。やや大型のシロチョウである。本種を撮影するために,この3年間,これまでに記録のある8か所を発生期に合わせて訪れたが,全く見ることはできなかった。飛び方は,日本のスジグロシロチョウに似ている。
【雌  雄】 ♀は,黒斑が発達するので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 2月〜12月に,年数回発生している。
【生息地】  台湾の北部の低・中標高(〜2000m)の常緑広葉樹林で見られる。
 分布域が狭く,なかなか撮影出来ない種の一つである。台湾の北部の山地である新平市の汐平路仁愛橋で撮影することができた。この新平市の汐平路仁愛橋は,記録はなかったが,これまでの経験からして発生していてもおかしくはないという考えから出かけたのであったが,撮影の最終日に実際に撮影できるとは驚いた。翌年の4月も確認することができた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インドシナ半島北部,中国の南西部・南部に分布し,日本の八重山諸島でも記録されている。台湾産,日本産は分布の東限に当たる。
 中国では,湖北省,湖南省,雲南省,広西省,江西省,浙江省,広東省,福建省に,名義タイプ亜種 T.nagana nagana 分布している。
【近似種】  タイワンモンシロチョウに似ているが,本種は,大型で丸みを帯び,前翅の黒斑が外縁側にずれること,前翅中室の外側の黒斑が,三日月型になるので区別することができる。
 

・ウスムラサキシロチョウ 淡褐脈粉蝶 (台湾産)   Cepora nadina eunama (Fruhstorfer,1908)    台湾亜種


写真数: 109枚


出現頻度
★★★★
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 中型のシロチョウである。飛び方は非常に速く,樹間や草原を活発に飛び回る。
【雌  雄】 ♀は,翅表の黒斑が発達するので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】
 台湾の中部・南部の低・中・高標高(〜2500m)の常緑広葉樹林で見られる。
 中部・南部で普通に見られた。北部の新北市烏来区福山村新北市烏来区桶後林道でも確認ができ,温暖化の影響で分布を広げている可能性がある。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド南部,インドシナ半島,スマトラ島,中国の南西部・南部に分布し,台湾産は分布の東限に当たる。
 中国では,四川省,雲南省,貴州省,広西區,湖南省,広東省,海南省,福建省に分布している。海南省に分布しているものは,別亜種 C.nadina hainanensis で,それ以外は,名義タイプ亜種 C.nadina nadina である。
【近似種】  ♂は,裏面がタイワンスジグロチョウと似ているが,本種は,前翅裏面の前縁部がほぼ同じ幅の黄緑色の地色になることで区別することができる。

・タイワンスジグロチョウ K脈粉蝶 (台湾産)   Cepora nerissa cibyra (Fruhstorfer, 1910)   台湾亜種


写真数: 44枚


出現頻度
★★☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 Cepora nerissa cibyra の和名 タイワンスジグロチョウ は,原色台湾蝶類大図鑑(白水隆,1960) の中で用いられた。属は,Cepora である。斑紋が似ている日本のスジグロシロチョウは,属 Pieris である。ところが,最近,ネット上で和名をタイワンスジグロシロチョウとしているものが見られるようになった。誤情報の発信源は個人のHPであることが分かり,訂正をお願いしたが現在もそのままである。日本人にとってスジグロシロチョウは呼びやすい名前であるが,スジグロシロチョウとは全く系統が異なる種である。本種の和名には,日本のヤマトスジグロシロチョウ,エゾスジグロシロチョウと同じ系統を連想させるタイワンスジグロシロチョウという和名ではなく,元来のタイワンスジグロチョウを用いたいものである。
 中型のシロチョウである。活発に飛び回り,各種の花を訪れる。
【雌  雄】 ♀は,翅表の黒斑が発達するので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】  台湾の中部・南部の低・中標高(〜1300m)の常緑広葉樹林,海岸林で見られ,中部では少なく,南部には多い。
 墾丁国家公園社頂自然公園,台東縣達仁區,高雄市で見ることができた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド,ヒマラヤ,インドシナ半島,インドネシア,中国の南西部・南部に分布し,台湾産は分布の東限に当たる。
 中国では,四川省,雲南省,貴州省,広西區,湖南省,広東省,海南省,福建省に分布している。広西區,福建省に分布しているものは,台湾と同じ亜種で,海南省に分布しているものは,別亜種 C.nerissa coronis で,それ以外は,名義タイプ亜種 C.nerissa nerissa である。
【近似種】  低温型は,裏面がウスムラサキシロチョウと似ているが,本種は,前翅裏面の前縁部の翅頂に近い部分が白色になることで区別することができる。高温型は,裏面に黒条が発達するので区別することができる。

・キシタシロチョウ 黄裙脈粉蝶 (台湾産)   Cepora iudith olga (Eschscholtz, 1821)


写真数: 27枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 中型のシロチョウである。非常に速く樹間を飛び回り,なかなか止まらない。
【雌  雄】 ♀は,翅表の黒斑が発達するので,雌雄を区別することができる。
【生  態】  周年,年数回発生している。
 3月上旬では,♂しか見ることができなかった。
【生息地】
 台湾では,台東市の沖にある離島の蘭嶼のみに生息している。
 蘭嶼を一周し,いろいろな場所を調べたが,平地では,全く見ることができなかった。北西部の断崖の途中にある林道のみで,計4頭を見ることができた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,フィリピン,インドネシア(一部)に分布し,台湾産は分布の北限に当たる。
 中国には分布していない。
【近似種】 なし

・ヤエヤマシロチョウ 鑄邊尖粉蝶 (スジグロトガリシロチョウ) (台湾産)   Appias olferna peducaea Fruhstorfer, 1910


写真数: 75枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 徐(2013)は,亜種名をpeducaea (タイプ産地はフィリピン)としているが,名義タイプ亜種に含まれる可能性が高く,検討が必要である。
 本種の学名を Appias libythea (Fabricius, 1775) (猪又,2013)とする場合もある(宇野彰,日本鱗翅学会誌YADORIGA aD243)。ここでは,宇野彰氏の論文に従い,種名をolferna とした。
 中型のシロチョウである。非常に速く飛び回り,各種の花を訪れる。
【雌  雄】 ♀は,翅表の黒斑が発達するので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 周年,年数回発生している。春から夏にかけては,個体数が非常に少なく,秋には,個体数が増える。
【生息地】
 台湾の南部の低標高(〜600m)の都市荒地・草地で見られる。
 台南市山上區では,多数の個体がセンダングサの群落に飛来しているのが見られたが,他の場所では,全く見ることができなかった。台南市新化區でも撮影されている。高雄市左営區にある大東湿地公園では,多数の個体が樹木の花に飛来しているのを見ることができた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インドシナ半島(ラオスタイシンガポール),フィリピン,インドネシアに分布している。日本の石垣島でも記録がある。 
 中国には分布していない。
【近似種】  タイワンスジグロチョウの高温型の♀に,本種の♀の裏面は似ているが,本種は,後翅裏面の中央が濃い褐色になるので区別することができる。

・カワカミシロチョウ 尖粉蝶 (台湾産)   Appias albina semperi (Moore, [1905])


写真数: 62枚


出現頻度
★★☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 日本産と同じ亜種である。中型のシロチョウである。非常に早く飛び,明るい場所に咲く花に飛来するが,ジャングルの暗い場所にも飛来し,葉上で翅を休める様子をしばしば観察することができた。
【雌  雄】  ♀は,翅表の黒斑が発達するので,雌雄を区別することができる。
 低温期型と高温期型があり,♀には,白色型と黄色型がある。

♀ 低温期型 白色型

♀ 高温期型 白色型

♀ 高温期型 黄色型
【生  態】  周年,年数回発生している。
 墾丁では,3月や4月では,少なかったが,5月下旬では,シロチョウ類の中では,最も数多い種であった。
【生息地】  台湾の北部・中部の西海岸・南部の低・中標高(〜1000m)の熱帯雨林,海岸林で見られ,北部・中部では少なく,南部には多い。
 南部の墾丁国家公園社頂自然公園で撮影できた。屏東縣霧台區阿禮でも撮影された。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド南部,インドシナ半島,フィリピン,ボルネオ島,インドネシア,ニューギニア,オーストラリア北部,中国の南西部・南部,日本の南西諸島に分布し,台湾産,日本産は分布の東限に当たる。
 中国では,雲南省,貴州省,広西區,湖南省,広東省,海南省,福建省に分布している。海南省に分布しているものは,別亜種 A.albina confusa で,それ以外は,名義タイプ亜種 A.albina albina である。
【近似種】  ナミエシロチョウに似ているが,本種は,前翅の翅形がとがっていることや本種の♂は,翅表に黒点が現れないこと,♀は前翅外縁の黒帯部が翅頂から後角まで連続することで区別することができる。

・ナミエシロチョウ 黄尖粉蝶 (台湾産)   Appias paulina minato (Fruhstorfer, [1899])


写真数: 28枚


出現頻度
★★☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 日本産と同じ亜種である。中型のシロチョウである。非常に早く飛び,各種の花に飛来する。
【雌  雄】 ♀は,翅表の黒斑が発達するので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】  台湾の北部と南部の低標高(〜500m)の熱帯雨林,海岸林で見られるが少ない。
 台東縣蘭嶼では,3月上旬には,多数の個体が発生していた。台東市知本溪でも撮影することができた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド南部,インドシナ半島,フィリピン,ボルネオ島,インドネシア,ニューギニア,オーストラリア北部,中国の南部,日本の南西諸島に分布し,台湾産,日本産は分布の東限に当たる。
 中国では,海南省に,別亜種 A.paulina darada が分布している。
【近似種】  カワカミシロチョウに似ているが,本種は,♂については,前翅の翅頂付近に黒点が現れること,♀は,前翅外縁の黒帯が,下端部で途切れることで区別することができる。

・タイワンシロチョウ 異色尖粉蝶 (台湾産)   Appias lyncida eleonora (Boisduval, 1836)


写真数: 87枚


出現頻度
★★★★
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 日本産と同じ亜種である。中型のシロチョウである。非常に早く飛ぶが,花に止まっていると容易に近づくことができた。
【雌  雄】 ♀は,翅表の黒斑が発達するので,雌雄を区別することができる。
【生  態】
 周年,年数回発生している。
【生息地】  台湾の低・中・高標高(〜2500m)の常緑広葉樹林,熱帯雨林,海岸林で見られる。
 各地で見られたが,高地では少なく,低・中標高の森林地帯の周辺に数多く生息していた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド南部,インドシナ半島(マレーシアラオスタイ),フィリピン,ボルネオ島,インドネシア,中国の南西部・南部,日本の八重山諸島に分布し,台湾産,日本産は分布の東限に当たる。
 中国では,四川省,雲南省,貴州省,広西區,湖南省,広東省,海南省,福建省に分布している。海南省に分布しているものは,別亜種 A.lyncida eleonora で,それ以外は,別亜種 A.lyncida vasava である。
【近似種】 なし

・クモガタシロチョウ 雲紋尖粉蝶 (台湾産)   Appias indra aristoxemus Fruhstorfer, 1908    台湾亜種


写真数: 21枚


出現頻度
★★☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 日本産と同じ亜種である。台湾亜種 aristoxenus は,名義タイプ亜種と酷似しており,この分類については再検討が必要である(宇野彰,日本鱗翅学会誌YADORIGA aD243)。
 中型のシロチョウである。飛び方は,大変速く,各種の花に飛来する。周りの気配に敏感で,危険を感じると直ぐに飛び立つ習性がある。川沿いに,小便のトラップをかけると,多数の個体が集まることがある。
【雌  雄】 ♀は,翅表の黒斑が発達するので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】  台湾の低・中・高標高(〜2000m)の常緑広葉樹林,熱帯雨林,海岸林で見られる。
 墾丁国家公園社頂自然公園台東市知本溪苗栗縣三義で見られた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド南部,インドシナ半島,ボルネオ島,インドネシア,中国の南西部・南部に分布し,台湾産,日本産は分布の東限に当たる。
 日本の八重山諸島でも記録がある。
 中国では,四川省,雲南省,貴州省,広西區,湖南省,広東省,海南省,福建省に,別亜種 A.indra menandrus が分布している。
【近似種】  カワカミシロチョウ,ナミエシロチョウに似ているが,本種は,後翅裏面に小黒点が広がっており,全体が黄土色になるので区別することができる。

・ベニシロチョウ 紅尖粉蝶     Appias nero domitia (C. Felder et R. Felder, 1862)


写真数: 1枚
(参考:マレーシア産)


出現頻度
☆☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 中型のシロチョウである。偶産蝶で,5頭が記録されている。
【雌  雄】 ♀は,翅表の黒色斑が発達するので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 1933年10月に記録がある。
【生息地】 南部の墾丁で記録された。
【分  布】  種としては,ブータン,ビルマ,インドシナ,中国,マレー半島,フィリピン,ボルネオ,セレベス,スマトラ,ジャワ,セラムに分布している。
 日本の八重山諸島でも記録がある。
 中国では,雲南省,広西區,広東省,海南省に分布している。
【近似種】 なし

・イワサキシロチョウ 南尖粉蝶     Appias panda nathalia (C. Felder et R. Felder, 1862)


写真数: 1枚
(参考:マレーシア産)


出現頻度
☆☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 中型のシロチョウである。迷蝶である。誤同定の可能性もある。
【雌  雄】 ♀は,翅表の黒色斑が発達するので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 不明
【生息地】 詳細は不明
【分  布】 種としては,インドネシア,マレー半島,フィリピン,ボルネオ,セレベス,スマトラ,ジャワ,スラ諸島に分布している。
【近似種】 なし

・マダラシロチョウ 鋸粉蝶 (台湾産)   Prioneris thestylis formosana Fruhstorfer, 1903    台湾亜種


写真数: 70枚


出現頻度
★★☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 日本産と同じ亜種である。大型のシロチョウで非常に速く飛ぶが,すぐに花に止まる習性がある。地上で吸水するのも良く見られた。
【雌  雄】 ♀は,黒斑が発達するので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】  台湾の低・中標高(100m〜2500m)の常緑広葉樹林,熱帯雨林で見られる。
 台東市の知本渓,中部山岳の南山渓本部溪,高山地帯の松崗南投縣恵孫林場高雄市直瀬溪南投縣梅峰花蓮市碧緑慈恩南投縣仁愛郷ナールー湾で見られた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド北部,ヒマラヤ,インドシナ半島,中国の南西部・南部に分布し,日本の八重山諸島でも記録され,台湾産,日本産は分布の東限に当たる。
 中国では,雲南省,広西區,広東省,海南省,福建省に,名義タイプ亜種 P.thestylis thestylis が分布している。
【近似種】  裏面は,ゴマダラシロチョウなどの Delias に似ているが,本種の裏面の斑紋は,斑紋の境界線が不鮮明になること,前翅表面の中室付近には,白斑が発達することなどで区別することができる。
 

・クロテンシロチョウ 纖粉蝶 (台湾産)   Leptosia nina niobe (Wallace, 1866)    台湾亜種


写真数: 62枚


出現頻度
★★★★
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 日本産と同じ亜種である。小型のシロチョウである。独特の飛び方で,地上近くをフラフラと飛ぶ習性がある。
【雌  雄】 生態写真では,顕著な違いはなく,雌雄を区別することは難しい。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】  台湾の低・中標高(〜1200m)の常緑広葉樹林,熱帯雨林,海岸林,都市荒地で見られる。
 各地の森林内で普通に見られた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド,ヒマラヤ,インドシナ半島(ラオスタイ),フィリピン,ボルネオ島,インドネシア,中国の南西部・南部,日本の八重山諸島に分布し,台湾産,日本産は分布の東限に当たる。
 中国では,四川省,雲南省,貴州省,広西區,湖南省,広東省,海南省,福建省に,台湾と同じ亜種が分布している。
【近似種】 なし

・メスシロキチョウ 異粉蝶 (タイワンメスシロキチョウ) (台湾産)   Ixias pyrene insignis Butler, 1879    台湾亜種


写真数: 84枚


出現頻度
★★★★
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 台湾亜種の交尾器の分析から,台湾亜種を種に格上げする説(和名:タイワンメスシロキチョウ)と従来の台湾亜種(和名:メスシロキチョウ)とする説がある。ここでは学会での最新の論文(宇野彰,日本鱗翅学会誌YADORIGA aD243,2014)に従い,台湾亜種として扱うことにした。日本産と同じ亜種である。
 中型のシロチョウである。飛び方はかなり速く,活発に飛び回るが,♂は吸水集団を作ることがある。
【雌  雄】 ♀は,斑紋が白色になるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】
 台湾の低・中・高標高(〜2000m)の常緑広葉樹林,熱帯雨林で見られる。
 本部渓では,5月・6月には,100頭以上の個体が吸水している様子が見られた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド,ヒマラヤ,インドシナ半島,フィリピン,中国の南西部・南部,日本の八重山諸島に分布し,台湾産,日本産は分布の東限に当たる。
 中国では,四川省,雲南省,貴州省,広西區,湖南省,広東省,海南省,福建省に分布している。海南省に分布しているものは,別亜種 I.pyrene hainana で,雲南省の中部・北部に分布しているものは,別亜種 I.pyrene yunnanensisで,雲南省の南部に分布しているものは,別亜種 I.pyrene verna で,それ以外は,名義タイプ亜種 I.pyrene pyrene である。
【近似種】 なし

・ツマベニチョウ 橙端粉蝶 (台湾産)   Hebomoia glaucippe formosana Fruhstorfer, 1908   台湾亜種


写真数: 55枚


出現頻度
★★★☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 日本産は,別亜種liukiuensis である。大型のシロチョウである。各地で見られたが,なかなか止まらず,撮影できないことが多かったが,訪花や吸水している場合は,あまり動かず,容易に撮影することができた。
【雌  雄】 ♀は,黒斑が発達するので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】  台湾の低・中・高標高(〜2500m)の常緑広葉樹林,熱帯雨林で見られる。
 各地で見ることができた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド,インドシナ半島,フィリピン,ボルネオ島,インドネシア,中国の南西部・南部,日本の九州南部以南に分布している。
 中国では,雲南省,貴州省,広西區,湖南省,広東省,海南省,福建省に,名義タイプ亜種 H.glaucippe glaucippe が分布している。
【近似種】 なし


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