台湾の蝶 <セセリチョウ科- セセリチョウ亜科2


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アオバセセリ亜科,チャマダラセセリ亜科,チョウセンキボシセセリ亜科は,ここをクリックすると見ることができます
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・イチモンジセセリ 稲弄蝶 (台湾産)   Parnara guttata guttata (Bremer & Grey, 1853)   名義タイプ亜種


写真数: 18枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 日本産と同じ亜種である。中型のセセリチョウで,非常に速く飛ぶため,飛んでいるときは本種を他の種から区別することはできない。
【雌  雄】 ♀は,若干大型で翅形はやや丸くなり白斑が発達する。尾端が真横から見える場合は,♀の尾端は,産卵口が下を向くので,尾毛が斜めに生えており,♂は,尾毛が円筒形に近い形になるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】
 周年,年数回発生しているが,発生数はあまり多くない。
【生息地】  台湾の北東部のみに生息し,低・中標高(〜1200m)の常緑広葉樹林の周辺,水田・沼周辺の草地で見られる。
 分布域が狭く,なかなか撮影出来ない種の一つである。台北市立動物園虫虫探索谷新北市汐平路仁愛橋苗栗縣三義新北市五堵で撮影することができた。苗栗縣三義は,従来の分布域より,北西部に位置しており,北東部とされていた分布域を北西部にも拡大した。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド,ヒマラヤ,インドシナ半島,ボルネオ島,インドネシア,中国の南西部・南部・東部,朝鮮半島,日本に分布し,台湾産,朝鮮産,日本産は分布の東限に当たる。
 中国では,黒竜江省,吉林省,遼寧省,河北省,山東省,河南省,江蘇省,安徽省,湖北省,浙江省,江西省,湖南省,福建省,広東省,海南省,広西區,雲南省,四川省,西蔵區,上海市に分布している。雲南省,四川省,西蔵區に分布しているものは,別亜種 P.guttata mangala で,それ以外は,名義タイプ亜種である。
【近似種】  ヒメイチモンジセセリに似ているが,本種は,前翅表面中室に小白斑が2つ現れること,後翅裏面の4つの白点は,ほぼ直線に並び,大きさが前縁側から,中・大・大・大となるで区別することができる。

・ヒメイチモンジセセリ 小稲弄蝶 (台湾産)   Parnara bada bada (Moore, 1878)   名義タイプ亜種


写真数: 39枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 日本産と同じ亜種である。中型のセセリチョウで,非常に速く飛ぶ。止まることが少なく,止まってもすぐに飛び立ってしまう習性がある。
【雌  雄】 ♂は,前翅裏面の前縁部の白点が2つで,♀は3つになること,♀は,翅形が丸みを帯び,白斑が発達することで雌雄を区別することができる。
【生  態】 周年,年数回発生しているが,発生数はあまり多くない。
【生息地】
 台湾の低・中標高(〜2500m)の常緑広葉樹林,水田・沼周辺の草地で見られる。
 台湾の墾丁の社頂自然公園で,5月下旬に2頭を撮影することができたが,少ないチョウの一つである。台東市の沖にある離島・蘭嶼台東市知本溪苗栗縣三義拉拉山上巴陵,台南市東山區,台南市龍崎區,陽明山大屯自然公園で確認することができた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド,インドシナ半島,ボルネオ島,インドネシア,中国の南西部・南部,日本の南西諸島に分布し,台湾産,日本産は分布の東限に当たる。
 中国では,浙江省,江西省,湖南省,福建省,広東省,海南省,広西區,雲南省,西蔵區,上海市に分布している。
【近似種】  イチモンジセセリに似ているが,本種は,後翅裏面の4つの白点は,ほぼ直線に並び,大きさが前縁側から,小・小・大・中となることから区別することができる。♂では,小・小の斑紋を消失し,2斑になる個体もある。

・ユウレイセセリ 禾弄蝶 (台湾産)   Borbo cinnara (Wallace, 1866)


写真数: 76枚


出現頻度
★★★★
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 日本産と同じ亜種である。中型のセセリチョウで,非常に速く飛ぶ。人の気配に敏感で,短時間しか止まらない習性がある。
【雌  雄】 生態写真では,顕著な違いはなく,雌雄を区別することは難しい。
【生  態】  周年,年数回発生している。
 茶褐色のセセリチョウ類の中では,比較的数多い種である。
【生息地】
 台湾の低・中・高標高(〜2800m)の常緑広葉樹林,熱帯雨林,海岸林,都市林,水田・沼周辺の草地で見られる。
 各地で普通に見られた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド,ヒマラヤ,インドシナ半島,フィリピン,ボルネオ島,インドネシア,ニューギニア,オーストラリア北部,中国の南西部・南部,日本の八重山諸島に分布している。
 中国では,浙江省,江西省,湖南省,福建省,広東省,海南省,広西區,雲南省,四川省,西蔵區,上海市に分布している。
【近似種】  コモンチャバネセセリに似ているが,後翅裏面の白斑が少し離れて3つ並ぶこと,前翅の翅形が,翅頂近くの外縁部が独特の丸みを帯びることや前翅中室に小白斑が現れることなどで区別することができる。
 稀に,後翅裏面に白点がない個体も出現する。

・コモンチャバネセセリ 假禾弄蝶 (台湾産)   Pseudoborbo bevani (Moore, 1878)


写真数: 12枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 中型のセセリチョウで,非常に速く飛ぶ。花に飛来していたが,すぐに飛び立つ習性がある。
【雌  雄】 ♀は,翅形が丸くなるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 3月〜12月に,年数回発生する。
【生息地】  台湾の中部・南部の低・中標高(〜1600m)の常緑広葉樹林,渓流付近崩壊地で見られる。
 台東市の知本渓南投縣恵孫林場,高雄市田寮區,高雄市桃源區籐枝で見られた。南投縣本部渓でも撮影された。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド,インドシナ半島,フィリピン,ボルネオ島,インドネシア,ニューギニア,オーストラリア北部,中国の南西部・南部に分布している。
 中国では,浙江省,江西省,湖南省,福建省,広東省,海南省,広西區,雲南省,四川省,西蔵區に分布している。
【近似種】  他のチャバネセセリ類に似ているが,体全体の翅形が丸みを帯び幅広く,前翅表面の白斑が小さく,4つが直線的に並び,さらに前縁側に小白斑が現れることで区別することができる。

・チャバネセセリ 褐弄蝶 (台湾産)   Pelopidas mathias oberthueri Evans, 1937


写真数: 18枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】 日本産と同じ亜種である。中型のセセリチョウで,非常に速く飛ぶ。
【雌  雄】 ♂には前翅に性標が現れるが,生態写真で,前翅翅表が見えない場合は,他の斑紋には顕著な違いはなく,雌雄を区別することは難しい。
【生  態】 周年,年数回発生する。
【生息地】  台湾の低・中・高標高(〜2150m)の常緑広葉樹林,海岸林,都市林,水田・沼周辺の草地で見られる。
 墾丁国家公園南投縣南山渓拉拉山上巴陵,台南市新化區,新北市瑞芳區南雅花蓮市碧緑神木(標高2150m)で撮影することができた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド,ヒマラヤ,インドシナ半島,フィリピン,ボルネオ島,インドネシア,ニューギニア,オーストラリア北部,中国の南西部・南部,東部,朝鮮半島南部,日本の本州以西に分布し,台湾産,朝鮮産,日本産は分布の東限に当たる。
 中国では,山東省,河南省,江蘇省,安徽省,湖北省,浙江省,江西省,湖南省,福建省,広東省,海南省,広西區,雲南省,四川省,西蔵區,上海市に,台湾や日本と同じ亜種が分布している。
【近似種】  他のチャバネセセリ類に似ているが,後翅裏面の白点がどれもほぼ同じ大きさで,円弧状に並ぶことで区別することができる。

トガリチャバネセセリに酷似している。本種は,トガリチャバネセセリに比べ,前翅表面の♂の性標が長く,2斑紋を延ばした直線が性標にかかる。♀は,表面の白斑が小さく,後翅表面には白点が出ないので,区別することができる。

チャバネセセリ ♂ 前翅

チャバネセセリ ♀ 前翅

チャバネセセリ ♀ 後翅

トガリチャバネセセリ ♂ 前翅

トガリチャバネセセリ ♀ 前翅

トガリチャバネセセリ ♀ 後翅

・トガリチャバネセセリ 尖翅褐弄蝶 (台湾産)   Pelopidas agna agna (Moore, [1866])    名義タイプ亜種


写真数: 70枚


出現頻度
★★★☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】 日本産と同じ亜種である。中型のセセリチョウで,非常に速く飛ぶ。比較的数多く見ることができるが,葉上に止まっている時間は非常に短く,訪花している場合でも,短時間で飛び去る習性がある。
【雌  雄】 ♂は前翅に性標が現れ,♀は白斑が発達するので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 周年,年数回発生しているが,発生数はあまり多くない。
【生息地】  台湾の低・中・高標高(〜2000m)の常緑広葉樹林,熱帯雨林,海岸林,都市林,水田・沼周辺の草地で見られる。
 台湾の南部の墾丁国家公園台東市の知本渓中部山岳の南山渓奥萬大拉拉山下巴陵(標高656m),羅東新城溪苗栗縣三義新北市五堵拉拉山上巴陵屏東縣大漢山,台東縣達仁區,新北市万里區,台南市龍崎區,台南市新化區,台南市東山區,本部渓で撮影することができた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド,インドシナ半島,フィリピン,ボルネオ島,インドネシア,ニューギニア,オーストラリア北部,中国の南西部・南部,日本の南西諸島に分布し,台湾産,日本産は分布の東限に当たる。
 中国では,山東省,河南省,江蘇省,安徽省,湖北省,浙江省,江西省,湖南省,福建省,広東省,海南省,広西區,雲南省,四川省,西蔵區,上海市に,台湾や日本と同じ名義タイプ亜種が分布している。
【近似種】  ユウレイセセリに似ているが,前翅表面の白斑が小さくなること,後翅裏面の白点が小さく,円弧状に並び,その大きさは前縁側から中・小・中・中となることで区別することができる。稀に,後翅裏面に白点が発達しない個体も出る。

チャバネセセリに酷似している。本種は,チャバネセセリに比べ,前翅表面の♂の性標が短く,2斑紋を延ばした直線が性標にかからない。♀は,表面の白斑が大きく,後翅表面には白点が出るので,区別することができる。

チャバネセセリ ♂ 前翅

チャバネセセリ ♀ 前翅

チャバネセセリ ♀ 後翅

トガリチャバネセセリ ♂ 前翅

トガリチャバネセセリ ♀ 前翅

トガリチャバネセセリ ♀ 後翅


・タイワンチャバネセセリ 中華褐弄蝶 (台湾産)   Pelopidas sinensis (Mabille, 1877)


写真数: 7枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】 中型のセセリチョウで,発生地が限られ,個体数も少ない。
【雌  雄】 ♂は前翅に性標が現れ,♀は白斑が発達するので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 年数回発生し,3月〜11月に発生する。 
【生息地】  台湾の低・中・高標高(500m〜2200m)の常緑広葉樹林で見られる。
 台東市知本渓で撮影することができた。南投県仁愛郷屯原にて撮影された。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド北部,ヒマラヤ,インドシナ半島北部,中国の南西部・南部・東部,朝鮮半島南部に分布する。
 中国では,浙江省,江西省,湖南省,福建省,広東省,海南省,広西區,雲南省,四川省,西蔵區,上海市に,台湾と同じ亜種が分布している。
【近似種】  トガリチャバネセセリに似ているが,本種は,後翅裏面の基部近くに白斑が現れること,後翅裏面の白点列の前縁から2つ目の白点が小さくなること,後翅裏面の白点列の後縁から2つ目の白点が小さくなること,前翅翅表の白斑が良く発達し,前縁部に鮮明な白斑が2つ現れることで区別することができる。

・タイワンオオチャバネセセリ 巨褐弄蝶 (台湾産)   Pelopidas conjuncta conjuncta Herrich-Schaffer, 1869   名義タイプ亜種


写真数: 7枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】 やや大型のセセリチョウで,非常に速く飛ぶが,各種の花を訪れる。夕方が曇りの日に活動する習性がある。撮影できた日は,ポイントで夕方まで待っていたところ,花に飛来した個体を見つけた。しかし,雨が降ってきたので,傘をさしての撮影であったが,雨の中でも平気で飛翔し,習性の違いを見出すことができた。
【雌  雄】 ♀は翅の幅が狭くなるが,生態写真では,雌雄を区別するのは難しい。
【生  態】 周年,年数回発生する。
【生息地】 台湾の低・中・高標高(〜1300m)の常緑広葉樹林,熱帯雨林,海岸林で見られる。発生地は局部的で,撮影が難しい種の一つである。台南市龍崎區で見つけることができた。屏東縣春日郷大漢山でも撮影されている。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド北部,ヒマラヤ,インドシナ半島北部,中国の西部・南部・東部に分布する。
 中国では,浙江省,江西省,湖南省,福建省,広東省,海南省,広西區,雲南省,四川省に,台湾と同じ名義タイプ亜種が分布している。
【近似種】  ムモンセセリ,アトムモンセセリに似ているが,後翅裏面の基部近くに白斑が現れること,後翅裏面の後翅裏面の白点列が円弧状に並ぶが,不鮮明であることで区別することができる。

・キモンチャバネセセリ 黄紋孔弄蝶 (台湾産)   Polytremis lubricans kuyaniana (Matsumura, 1919)


写真数: 62枚


出現頻度
★★☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 中型のセセリチョウで,非常に速く飛ぶが,すぐに止まるの習性がある。
【雌  雄】 ♂は,前翅表面の中央にある斑紋がよく発達し横長の四角形に近い形なり,♀は,その斑紋が正方形に近い形になり,後翅裏面の白斑が5つが鮮明に出現するので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 周年,年数回発生する。
【生息地】  台湾の低・中・高標高(〜2000m)の常緑広葉樹林,熱帯雨林,海岸林で見られる。
 台東市の知本渓南投県南山渓南投縣翠峰知本渓楽山高雄市直瀬溪羅東寒溪羅東清水溪南投縣恵孫林場,台南市東山區,高雄市田寮區,南投縣本部渓で撮影することができた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド,インドシナ半島,インドネシア,中国の南西部・南部に分布し,台湾産は分布の東限に当たる。
 中国では,浙江省,江西省,湖南省,福建省,広東省,海南省,広西區,雲南省,四川省に分布している。台湾以外は,名義タイプ亜種 P.lubricans lubricans が分布している。
【近似種】  他のチャバネセセリ類に似ているが,翅の幅が広く,前後翅裏面の支脈の色が地色よりも明るい褐色になるので,その線が鮮明に表れること,後翅裏面のW字型に斑紋の2つ目と3つ目の斑紋が大きくなること,前翅表面の中央の白斑が大きくなること,後翅裏面の白点が♂では2班になり,メスでは,日本のオオチャバネセセリのように,W型になることで区別することができる。
 

・キライザンチャバネセセリ 奇来孔弄蝶 (台湾産)   Polytremis kiraizana (Sonan, 1938)   台湾特産種


写真数: 30枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】 中型のセセリチョウで,非常に速く飛び,渓流沿いや林道で見ることができ,動物の排泄部に集まる。
【雌  雄】 ♂の前翅後縁部に性標があり,♀は翅全体の白斑が発達するので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 年1回,5月〜9月に発生している。
【生息地】  台湾の低・中・高標高(600m〜2500m)の常緑広葉樹林で見られる。
 碧緑で撮影することができた。ちなみに,碧緑がある北部貫公路の明池国家森林遊楽区や拉拉山一体は,法律で,昆虫採集は禁止されている。南部貫公路でも撮影された。
【分  布】 台湾以外には分布せず,台湾の特産種である。
【近似種】  シナオオチャバネセセリに似ているが,後翅裏面に白点が4つ,ジグザグに並び,さらにその白点が大きさが,他の近似種に比べると大きさにあまり差がないこと,♂は,前翅後縁部に性標があることで区別することができる。

・タッパンチャバネセセリ 碎紋孔弄蝶 (台湾産)   Zenonoida eltola (Hewitson, 1869)   台湾亜種


写真数: 18枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 中型のセセリチョウで,非常に速く飛ぶ。
 分類学上,本種をPolytremis属に分類する図鑑があるが,ここでは,最新の学会の研究報告に従い,Zenonoida属とした。
【雌  雄】 生態写真では,顕著な違いはなく,雌雄を区別することは難しい。
【生  態】 周年,年数回発生する。
【生息地】  台湾の低・中・高標高(300m〜2500m)の常緑広葉樹林で見られる。
 台東市の知本渓,中部山岳の梨山の晉元橋(標高1858m),屏東縣大漢山南投縣本部溪,高雄市桃源區籐枝で撮影することができた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,ヒマラヤ,インドシナ半島の北部,中国の南西部・南部に分布し,台湾産は分布の東限に当たる。
 中国では,浙江省,江西省,湖南省,福建省,広東省,海南省,広西區,雲南省,四川省,西蔵區に分布している。
【近似種】  他のチャバネセセリ類に似ているが,後翅裏面の白斑が,非常に大きく発達することで区別することができる。

・トガリオオチャバネセセリ 長紋孔弄蝶 (台湾産)   Zinaida zina taiwana (Evans,1932)   台湾亜種


写真数: 38枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】  近似種シナオオチャバネセセリ(短紋孔弄蝶)は,徐・他(2019)の研究により,台湾には分布せず,これまでシナオオチャバネセセリ(短紋孔弄蝶)とされていたものは,本種(長紋孔弄蝶)の個体変異であったことが判明した。
 やや大型のセセリチョウで,非常に速く飛び,明るい草原と森林との境に咲くセンダングサに,複数の個体が飛来していた。
 分類学上,本種をPolytremis属に分類する図鑑があるが,ここでは,最新の学会の研究報告に従い,Zinaida属とした。
【雌  雄】 ♂の前翅基部近くの白斑が細長くなり,♀は前翅基部近くの白斑が丸く,翅全体の白斑が発達するので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 年1回,5月下旬〜8月上旬に発生している。
【生息地】  台湾の低・中・高標高(〜2000m)の常緑広葉樹林,竹林周辺で見られる。
 2015年7月12日に陽明山の二子坪で撮影することができた。6月27日に再度,同じ場所を探索したが見つからなかった。その後も,数回,同所を探索したが,見つからなかった。陽明山での発生期は,7月上旬〜中旬と思われる。
 さらに4年間,台湾の各所を探索したが,上記以外,全く見つからなかった。しかし,2019年7月19日には,陽明山の大屯自然公園で4♂♂を確認することができた。少々痛んでいたので,盛期は7月12日頃であろう。
【分  布】  種としては,台湾以外では,中国,朝鮮半島に分布する。
 中国では,黒竜江省,吉林省,浙江省,山西省,山東省,河南省,陳西省,湖北省,江西省,福建省,四川省,貴州省,上海市に,名義タイプ亜種 Z.zina zina が分布している。
【近似種】  キライザンチャバネセセリに似ているが,中型のセセリチョウで,後翅が大きく,♀の前翅中室の白斑は楕円形になり,後翅裏面に白点が4つ,ジグザグに並び,さらにその白点が大きいことで区別することができる。
 

・ムモンセセリ 變紋黯弄蝶 (台湾産)   Caltoris bromus yanuca (Fruhstorfer, 1911)   台湾亜種


写真数: 17枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】  これまでは,斑紋減退型と斑紋発達型があるとされていたが,遺伝子解析によって,斑紋発達型は,独立種タイワンムモンセセリとなった。
 やや大型のセセリチョウで,非常に速く飛ぶが,すぐに止まる習性がある。夕方や曇りの日に活発に活動する習性がある。撮影できた日は,夕方で,雨が降っている中で傘をさしての撮影であったが,雨の中を普通に吸蜜に来ており,他の蝶との習性の違いを実感した。しかし,2023年11月には,日中に吸蜜に来ている個体を確認した。
 日本のネット上でムモンセセリとされている個体は,露出不足の暗い画像を使って同定しており,今のところ全て誤同定である。(※ 下記参照) (2024年9月現在)
日本のネット上で出ている誤同定の例

ガンマー補正すると,前翅裏面の
翅頂付近に大きな白斑が2つあり,
アトムモンセセリである

ガンマー補正すると,前翅裏面の翅頂
近付に大きな白斑があり,翅形からしても
タイワンアオバセセリである

ガンマー補正すると,後翅裏面に褐色斑があり,
ホリシャアカセセリである

ガンマー補正すると,前翅裏面に数個の白色斑があること,および外縁の
形状の曲線が強く,翅頂が尖っていないことからして,ユウレイセセリである
【雌  雄】 腹部の先端の形状が見えない生態写真では,雌雄を区別することは難しい。
【生  態】 周年,年数回発生する。
【生息地】  台湾の低・中標高(〜1000m)の常緑広葉樹林,竹林周辺で見られるが,発生地は限られ,個体数も非常に少ない。
 台南市龍崎區,高雄市田寮區で撮影することができた。南投縣南山渓でも撮影された。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インドシナ半島,ボルネオ島,インドネシア,中国の南西部・南部・東部に分布し,台湾産は分布の東限に当たる。
 中国では,浙江省,山西省,河南省,陳西省,湖北省,河西省,福建省,四川省,貴州省,雲南省に,名義タイプ亜種 C.bromus bromus が分布している。
【近似種】  アトムモンセセリに似ているが,本種の縁毛は白っぽい黄色であるが,アトムモンセセリでは,黄色っぽい白色であること,本種の前翅裏面には白点が全くで出ないか,出ても2小点であることで区別することができる。

・タイワンムモンセセリ  臺灣黯弄蝶 (台湾産)   Caltoris ranrunna (Sonan, 1936)   台湾特産種 (新種)


写真数: 5枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点

【特  徴】  これまでは,ムモンセセリの斑紋発達型として扱われていたが,Hsu et al. (2019) が斑紋の形態比較,遺伝子系統解析を行い,ムモンセセリのシノニムとして扱われていた C. ranrunna 新種として復活させた。
 やや大型のセセリチョウで,薄暗い場所を好み,曇った日や雨上がりのまだ暗い時などを好んで飛び回る習性がある。
【雌  雄】 ♂は,白斑があまり発達せず,♀は,翅形がやや丸くなるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 周年,年数回発生する。
【生息地】  台湾の低・中標高(〜1000m)の常緑広葉樹林,竹林周辺で見られる。
 台南市で撮影された。
【分  布】 現在のところ,台湾以外には分布せず,台湾の特産種である。
【近似種】  アトムモンセセリに似ているが,本種の縁毛は白っぽい黄色であるが,アトムモンセセリでは,黄色っぽい白色であること,前翅表面の中室の外側の斑紋は,前縁側の2斑より同じ大きさか小さくなるので,区別することができる。

・アトムモンセセリ 黯弄蝶 (台湾産)   Caltoris cahira austeni (Moore, 1883)


写真数: 87枚


出現頻度
★★★★
分布域 と 記録地点
【特  徴】 やや大型のセセリチョウで,非常に速く飛ぶ。薄暗い場所を好み,曇った日や雨上がりのまだ暗い時などを好んで飛び回る習性がある。
【雌  雄】 生態写真では,顕著な違いはなく,雌雄を区別することは難しい。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】  台湾の低・中・高標高(〜2200m)の常緑広葉樹林,竹林周辺で見られる。
 各地で普通に見られた
【分  布】  種としては,台湾以外では,インドシナ半島,中国の南西部・南部に分布し,日本でも迷蝶の記録がある。台湾産は分布の東限に当たる。
 中国では,浙江省,江西省,湖北省,福建省,広東省,広西區,雲南省,海南省,四川省,貴州省,湖南省,河南省,山東省に分布している。海南省と台湾には,C.cahira austeni が分布し,その他には,名義タイプ亜種C.cahira cahira が分布している。
【近似種】  タイワンムモンセセリに似ているが,本種の縁毛は黄色っぽい白色で,タイワンムモンセセリでは白っぽい黄色であること,前翅表面の中室の外側の斑紋は,前縁側の2斑より大きくなるので,区別することができる。




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