台湾の蝶 <シジミチョウ科- ヒメシジミ亜科2


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アシナガシジミ亜科・ウラギンシジミ亜科,ここをクリックすると見ることができます

ベニシジミ亜科・ミドリシジミ亜科1は,ここをクリックすると見ることができます

ミドリシジミ亜科2は,ここをクリックすると見ることができます

ヒメシジミ亜科1は,ここをクリックすると見ることができます

・ヤマトシジミ 藍灰蝶 (台湾産)   Zizeeria maha okinawana (Matsumura,1929)

♂  高温期型
写真数: 154枚

♀  低温期型
出現頻度
★★★★★
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 日本産は,argia(日本本土亜種),okinawana(琉球亜種) に分かれており,台湾産は,沖縄産と同じ亜種である。台湾産は,日本本土産とは別亜種になっている。
 小型のシジミチョウである。草むらの上をはうように飛び,ホリイコシジミよりも行動範囲は広く,発生地では、数多くの個体数を見ることができる。時には,地上から離れ,樹上で占有行動を行うこともある。
【雌  雄】 標本では,♀は,翅表の外縁部に黒帯が発達するので,雌雄を区別することができるが,裏面だけの生態写真では,雌雄を区別することはできない。
【生  態】  周年,年数回発生している。
 高温期では,♂は前翅の外縁に黒帯が発達し,♀は,青色麟が基部近くにのみ見られるが,低温期では,♂は前翅の外縁近くまで青色麟が発達し,♀も,青色麟は亜外縁まで発達する。

♂  高温期型

♂  低温期型

♀  高温期型

♀  低温期型
高温期の裏面の黒点はよく発達するが,低温期では,黒点はほとんど消失し,地色と同色になる。

♂  高温期型

♂  低温期型
【生息地】  台湾の低・中・高標高(〜3000m)の常緑広葉樹林周辺,海岸林,草原,荒地,都市緑地などで見られる。
 台湾の北部,中部山岳,南部,離島などに広く分布している。台東縣蘭嶼では,限られた場所に多数の個体が発生していた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド,ヒマラヤ,インドシナ半島,マレーシア,中国の南西部・南部,日本の本土南西諸島に分布している。
 中国では,西蔵區,陳西省,山西省,河南省,雲南省,四川省,貴州省,広西區,湖南省,広東省,海南省,福建省,上海市に,名義タイプ亜種 Z.maha maha が分布している。
【近似種】  ヒメシルビアシジミに似ているが,後翅裏面の中室外側の黒斑の並び方が滑らかな曲線を描くことで区別すること,前翅裏面の最前縁の黒点の位置が,中室にある「くの字型班」よりも翅頂に近づいた位置にあること,後翅表面の外縁部に円形の黒斑があることなどで区別することができる。
 

・ハマヤマトシジミ  (台湾産)   Zizeeria karsandra (Moore, 1865)


写真数: 35枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 日本産と同じ亜種である。小型のシジミチョウである。ヤマトシジミと同じように,地上近くをチラチラと飛ぶ習性があるが,より小型なので,よく見ていないと見失ってしまう。よく飛び回るが,発生地から離れようとしない。ヤマトシジミより細かくはばたき,ホリイコシジミに飛び方は似ている。
【雌  雄】 ♂は,翅表の外縁に同じ幅の黒帯が広がり,♀は,翅表の基部側に青藍色の斑紋があり,翅形が丸みを帯びるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】  台湾の中部・南部の低標高(〜500m)の常緑広葉樹林周辺,海岸林,草原,荒地,都市緑地などで見られる。
 高雄市六亀区宝来の南にある直瀬溪では,橋のたもとにある小さな荒れ地で発生していたが,その周辺の荒れ地や対岸の荒れ地には発生しておらず,発生地は極めて狭かった。台南市七股區,龍崎區,高雄市大崗山でも撮影されたが,発生地は限られる。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド,ヒマラヤ,インドシナ半島,フィリピン,ボルネオ島,インドネシア,ニューギニア,オーストラリア北部,中国の南西部・南部,日本の南西諸島に分布している。
 中国では,四川省,雲南省,貴州省,広西區,湖南省,広東省,海南省,福建省に,台湾や日本と同じ亜種が分布している。
【近似種】  ヤマトシジミに似ているが,本種は,小型で,後翅の小黒斑は発達せず,前後翅の外縁の黒帯は幅が同じになること,前翅裏面の最前縁の黒点の位置が中室にある「くの字型班」に近づいた位置にあることから区別することができる。
 

・ヒメシルビアシジミ 折列藍灰蝶 (台湾産)   Zizina otis riukuensis (Matsumura, 1929)


写真数: 54枚


出現頻度
★★☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 日本産と同じ亜種である。小型のシジミチョウである。ヤマトシジミと同じように,地上近くをチラチラと飛ぶ習性がある。
【雌  雄】 ♂は,翅表の外縁に同じ幅の黒帯が広がり,♀は,翅表の基部側に青藍色の斑紋があり,翅形が丸みを帯び,裏面の黒班がよく発達するので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】  台湾の低・中標高(〜1000m)の常緑広葉樹林周辺,海岸林,草原,荒地,都市緑地などで見られる。
 台湾の南部の墾丁国家公園では,特定な場所では,十数頭が生息していた。社頂自然公園,高雄市田寮區,台南市東山區,高雄市左営區,台南市新化區でも確認できた。ちなみに,墾丁国家公園社頂自然公園は,法律で,昆虫採集は禁止されている。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド,ヒマラヤ,インドシナ半島(ラオスシンガポール),フィリピン,ボルネオ島,インドネシア,ニューギニア,オーストラリア北部,グァムハワイ,中国の南西部・南部,日本の南西諸島に分布している。
 中国では,四川省,雲南省,貴州省,広西區,湖南省,広東省,海南省,福建省に,名義タイプ亜種 Z.otis otis が分布している。
【近似種】  ヤマトシジミに似ているが,本種は。後翅裏面の中室外側の黒斑の前縁から2つ目の斑紋が,基部側にずれることで区別することができる。

・ホリイコシジミ  (台湾産)   Zizula hylax (Fabricius, 1775)


写真数: 48枚


出現頻度
★★★★
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 日本産と同じ亜種である。極小型のシジミチョウである。荒れた草むらの上をはうように飛ぶ習性がある。ランタナを食草としているため,発生地では,かなりの個体数を見ることができる。長時間に渡って飛び続け,なかなか止まらない習性がある。葉上に止まって落ち着くと,翅全体を左右にゆっくりと動かす変わった習性がある。


2023.11.7  高雄市 金獅湖
【雌  雄】 標本では,♀は,翅表の外縁部に黒帯が発達するので,雌雄を区別することができるが,裏面だけの生態写真では,雌雄を区別することはできない。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】  台湾の低標高(〜1000m)の常緑広葉樹林周辺,海岸林,草原,荒地,都市緑地などで見られる。
 台湾の南部の墾丁国家公園社頂自然公園台東縣蘭嶼高雄市寿山高雄市直瀬溪で見られた。ちなみに,墾丁国家公園社頂自然公園は,法律で,昆虫採集は禁止されている。屏東縣台南市でも撮影された。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド,ヒマラヤ,インドシナ半島,フィリピン,ボルネオ島,インドネシア,ニューギニア,オーストラリア北部,中国の南西部・南部,日本の南西諸島に分布している。
 中国では,四川省,雲南省,貴州省,広西區,湖南省,広東省,海南省,福建省に分布している。
【近似種】 ハマヤマトシジミに似るが,本種は,前翅裏面の前縁に黒点が2つあることで,区別することができる。

・ツバメシジミ 燕藍灰蝶 (大陸亜種) (台湾産)   Everes argiades diporides Chapman,1909 


写真数: 8枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 大陸亜種で,人為的に持ち込まれた可能性がある。小型のシジミチョウである。飛び方は,日本産と同じで地上近くを飛び,♂はなかなか止まらない。
 名義タイプ亜種の♂では,前翅翅表の中室の外縁側に鮮明な黒条が現れるが,大陸亜種では,黒条が不鮮明になる。また,両亜種では,後翅裏面の黒点の配置が違っている。
【雌  雄】 標本では,♀は,後翅表面の黒斑が発達するので,雌雄を区別することができるが,生態写真の裏面だけでは,雌雄を区別するのは難しい。
【生  態】 8月〜10月に,年1〜2回発生している。
【生息地】  台湾の低・中標高(〜1000m)の草地,荒れ地,林間空地などで見られる。
 2017年9月12日,新北市の南雅一帯を探して見つからなかったが,同年9月17日に基隆市で撮影され,少ないながらも継続して生息していることが確認された。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド,インドシナ半島,フィリピン,ボルネオ島,インドネシア,中国の南西部・南部・東部,日本に分布している。
 中国では,黒竜江省,吉林省,遼寧省,河北省,山東省,河南省,江蘇省,安徽省,湖北省,浙江省,江西省,湖南省,福建省,広東省,海南省,広西區,雲南省,四川省,西蔵區,上海市に分布している。
【近似種】 タイワンツバメシジミに似ているが,本種は,後翅裏面の黒点列が円弧状に並ばないことで区別することができる。

・ツバメシジミ 燕藍灰蝶 (名義タイプ亜種) (台湾産)   Everes argiades argiades (Pallas, 1771) 


写真数: 33枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 日本産と同じ亜種の扱いになった。小型のシジミチョウである。最近は激減し,絶滅が危ぶまれている。
【雌  雄】 標本では,♀は,後翅表面の黒斑が発達するので,雌雄を区別することができるが,生態写真の裏面だけでは,雌雄を区別するのは難しい。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】  台湾の低・中・高標高(500m〜2300m)の草地,荒れ地,林間空地などで見られたが,より低い標高の低地でも発生していることが分かった。しかし,どの発生地でも個体数は少なく,絶滅危惧種である。
 雲林縣古坑郷で撮影できたが,発生地は非常に狭い場所で,発生数も極めて少なく,2♂♂1♀がいただけであった。台南市でも撮影された。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド,インドシナ半島,フィリピン,ボルネオ島,インドネシア,中国の南西部・南部・東部,日本に分布している。
中国では,黒竜江省,吉林省,遼寧省,河北省,山東省,河南省,江蘇省,安徽省,湖北省,浙江省,江西省,湖南省,福建省,広東省,海南省,広西區,雲南省,四川省,西蔵區,上海市に分布している。
【近似種】  タイワンツバメシジミに似ているが,本種は,後翅裏面の黒点列が円弧状に並ばないことで区別することができる。

・タイワンツバメシジミ 南方燕藍灰蝶 (台湾産)   Everes lacturnus rileyi Godfrey,1916


写真数: 43枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
小型のシジミチョウである。日本産は,
  Everes lacturnus kawaii Matsumura, 1926 タイワンツバメシジミ 日本本土亜種
  Everes lacturnus lacturnus (Godart, [1824]) タイワンツバメシジミ 名義タイプ亜種, 琉球亜種
に分かれている。
 最近は,台湾でも日本でも激減し,絶滅が危ぶまれている。台湾で本種が以前発生していた場所には,現在も食草はあるのであるが,全く姿は見えなかった。温暖化の影響で乾燥化が進んだことが理由なのか,原因は不明である。現在,残っている発生地は数ヶ所で,その場所を知っている人は,台湾の多くの研究者の中でも数名しかいない状態である。環境は,よい状態で保たれており,発生状況の研究が年間を通して行われており,詳細なデータを記録されておられた。
 観察できた♂は,足元の草地から現れ,センダングサの花で吸蜜を行い,その後,近くのブッシュの樹上へ飛び去って行った。高く飛ぶ習性があることは意外であった。その後,♀も見つけることができた。
【雌  雄】 標本では,♂は,前翅表面に青色斑が発達するので,雌雄を区別することができるが,生態写真の裏面だけでは,雌雄を区別するのは難しい。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】 台湾の低・中標高(100m〜1000m)の森林周辺,林間空地に生息し,近似種のツバメシジミとは対照的な生息環境に棲んでいる。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド,ヒマラヤ,インドシナ半島,フィリピン,ボルネオ島,インドネシア,ニューギニア,オーストラリア北部,中国の南西部・南部,日本の四国・九州南西諸島に分布している。
 中国では,陳西省,山西省,河南省,雲南省,四川省,貴州省,広西區,湖南省,広東省,海南省,福建省,上海市に分布している。
【近似種】  ツバメシジミに似ているが,本種は,後翅裏面の黒点列が円弧状に並ぶことで区別することができる。

・タイワンクロツバメシジミ 臺灣玄灰蝶 (台湾産)   Tongeia hainani (Bethune-Baker,1914)   台湾特産種


写真数: 37枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 小型のシジミチョウである。岩場があるような荒れた場所を好み,地上付近を低く飛ぶ習性がある。
【雌  雄】 ♂は,前脚の附節が短くなり,♀は,後翅表面の亜外縁の白斑が発達し,翅形が丸くなるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】  台湾の低・中・高標高(〜2000m)の常緑広葉樹林周辺,海岸林,岩場,荒地などで見られる。
 台湾の南部の社頂自然公園,台東市の知本渓,中部山岳の南山渓本部溪,花蓮市緑水歩道で見られた。屏東縣霧台郷でも撮影された。
【分  布】 台湾以外には分布せず,台湾の特産種である。
【近似種】  ムシャクロツバメシジミに似ているが,本種は,前翅裏面の中室に黒斑が1つしかないことで区別することができる。

・ムシャクロツバメシジミ 密點玄灰蝶 (台湾産)   Tongeia filicaudis mushanus Tanikawa,1940   台湾亜種


写真数: 15枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 日本でも,中国からの別亜種が外来種として発生し,名古屋市では,各所に生息地が広がり,九州の福岡市でも見つかった。
 小型のシジミチョウである。岩場があるような荒れた場所を好み,地上付近を低く飛ぶ習性がある。
【雌  雄】 ♂は,前脚の附節が短くなり,♀は,後翅表面の亜外縁の白斑が発達し,翅形が丸くなるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】  台湾の低・中・高標高(200m〜2800m)の常緑広葉樹林周辺,岩場などで見られる。
 南投縣松崗の南にある青青草原のバス停近くの草むらで見つけることができたが,すぐに樹上に飛び去って行った。このバス停には,数十回立ち寄っているが,本種を見かけたのは1回だけであった。しかし,この近くに発生地があるものと思われる。
【分  布】  種としては,台湾以外では,中国の南西部・南部・東部・北部,日本の名古屋市九州の福岡市神奈川県に分布している
 中国では,陳西省,山西省,河南省,四川省,湖北省,江西省,浙江省,福建省,上海市に分布し,別亜種 T. filicaudis filicaudis 名義タイプ亜種である。
【近似種】  タイワンクロツバメシジミに似ているが,本種は,前翅裏面の中室に黒斑が2つあることで区別することができる。

・ゴイシツバメシジミ 森灰蝶 (台湾産)   Shijimia moorei taiwana Matsumura, 1919   台湾亜種


写真数: 6枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 日本産は,別亜種 S. moorei moorei (Leech, 1889) 名義タイプ亜種である。小型のシジミチョウである。森林性が強く,吸水のために地面に降りたり,各種の花を訪れたりする。
【雌  雄】 ♀は,翅形が丸みを帯びるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】  台湾の低・中・高標高(200m〜2500m)の樹林内で見られる。
 ちなみに,北部貫公路の明池国家森林遊楽区は,法律で,昆虫採集は禁止されている。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド,アッサム,中国の西部・南部・東部,日本の関西以西に分布している。 
 中国では,西蔵區,陳西省,山西省,河南省,雲南省,四川省,貴州省,湖南省,広東省,浙江省,江西省,福建省に分布している。
【近似種】  タイワンクロツバメシジミ,ムシャクロツバメシジミに似ているが,本種は,後翅裏面の黒斑の大きさが不ぞろいになること,尾状突起がないことで区別することができる。

・リュウキュウウラボシシジミ 丸K灰蝶 (台湾産)   Pithecops corvus cornix Cowan, 1966


写真数: 9枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 日本産は,別亜種ryukyuensis である。小型のシジミチョウである。樹間をチラチラと飛び回る。40年前は,墾丁で見ることができたが,自然が開発されて見られなくなった。
【雌  雄】 ♀は,翅形が丸みを帯びるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】  台湾の北部を除く低・中標高(〜1300m)の樹林内で見られる。
 台湾の各所で探したが,台東市知本渓の楽山の林道で見ることができた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド北部,ヒマラヤ,インドシナ半島,フィリピン,ボルネオ島,インドネシア,中国の南部,日本の沖縄本島以西に分布している。
 中国では,広西區,江西省,広東省,海南省に分布している。
【近似種】  ツシマウラボシシジミに似ているが,本種は,前翅裏面の前縁に黒点が2つ現れること,後翅前縁の黒斑は鮮明で大きいこと,裏面の亜外縁部に黒点列が現れることで区別することができる。

・ツシマウラボシシジミ 藍丸灰蝶 (ウライウラボシシジミ) (台湾産)   Pithecops fulgens urai Bethune-Baker, 1913    台湾亜種


写真数: 25枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 日本産は,別亜種tsushimanus である。小型のシジミチョウである。樹間をチラチラと飛び回り,なかなか止まらないので撮影は難しい。日本の対馬にいるツシマウラボシシジミの台湾亜種で,ウーライウラボシシジミとも呼ばれている。
【雌  雄】 標本では,♂は,翅表に青藍色の斑紋があり,♀は,翅表が黒褐色となるので,雌雄を区別することができるが,裏面だけの生態写真では,雌雄を区別することは難しい。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】  台湾の北部の低・中標高(〜1300m)の樹林内で見られる。
 分布域が狭く,なかなか撮影出来ない種の一つである。新北市烏来区福山村の南勢溪周辺の林道,烏来区桶後林道で見ることができた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド北部,インドシナ半島,中国の南部,日本の対馬に分布している。
 中国では,広西區,江西省,広東省,海南省に,名義タイプ亜種 P.fulgens fulgens が分布している。
【近似種】  リュウキュウウラボシシジミに似ているが,前翅裏面の前縁の黒斑がないか,あっても1つで小さいこと,後翅裏面の亜外縁部に黒点列は不鮮明になること,後翅前縁の黒斑は鮮明で大きいこと,本種の♂は翅表に青藍色が現れることで区別することができる。

・ヒメウラボシシジミ K點灰蝶 (台湾産)   Neopithecops zalmora fedora (Butler, [1870])


写真数: 56枚


出現頻度
★★☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 日本産と同じ亜種である。小型のシジミチョウである。地上付近をチラチラと飛び回り,なかなか止まらない習性がある。
【雌  雄】 標本では,♂は,翅表に白色斑が発達するので,雌雄を区別することができるが,裏面だけの生態写真では,雌雄を区別することは難しい。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】  台湾の低・中標高(〜1300m)の樹林内で見られる。
 台湾の南部の台東の知本渓,中部山岳の本部溪羅東新城溪台北市剣南山,台南市東山區,台南市龍崎區で見られた。台北市剣南山では,産卵行動が見られた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド南部,ヒマラヤ,インドシナ半島,フィリピン,ボルネオ島,インドネシア,中国の南西部・南部,日本の八重山諸島に分布している。
 中国では,四川省,雲南省,貴州省,広西區,湖南省,広東省,海南省,福建省に分布している。広東省に分布しているものは,別亜種 N.zalmora dolona で,それ以外は,名義タイプ亜種 N.zalmora zalmora である。
【近似種】  ツシマウラボシシジミ,リュウキュウウラボシシジミに似ているが,前後翅裏面の亜外縁に黒点列があること,後翅裏面の前縁の黒斑が本種は小さいことで区別することができる。

・タイワンクロボシシジミ K星灰蝶 (台湾産)   Megisba malaya sikkima Moore, 1884


写真数: 90枚


出現頻度
★★★★★
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 日本産と同じ亜種である。小型のシジミチョウである。♂は非常に速く飛び,主に樹上で生活している。各種の花に集まる。
【雌  雄】 ♀は,翅形が丸みを帯びるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】
 台湾の低・中・高標高(〜2500m)の常緑広葉樹林で見られる。
 台湾の北部,中部山岳,南部,離島など各所で見られた。墾丁国家公園社頂自然公園高雄市寿山では,最も個体数の多いチョウの1種である。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド,ヒマラヤ,インドシナ半島,フィリピン,ボルネオ島,インドネシア,ニューギニア,オーストラリア北部,中国の南西部・南部,日本の南西諸島に分布している。
 中国では,四川省,雲南省,貴州省,広西區,湖南省,広東省,海南省,福建省に,台湾や日本と同じ亜種が分布している。
【近似種】 なし

・タイワンルリシジミ  (台湾産)   Acytolepis puspa myla (Fruhstorfer,1909)    台湾亜種


写真数: 184枚


出現頻度
★★★★
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 日本産は,別亜種ishigakiana である。小型のシジミチョウである。♂は,樹上や樹間を速く飛び回り,占有行動をし,渓流付近で吸水集団を作ることもある。裏面の斑紋は,個体変異が大きい。
【雌  雄】 ♂は,腹部の先端の毛が円筒状になり,♀は紡錘状に尖ること,♀の翅表の外縁部は黒帯が発達し,翅形が丸みを帯びるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】  台湾の低・中・高標高(〜2500m)の常緑広葉樹林,海岸林,都市林で見られる。
 台湾の各所で見られた。ちなみに,墾丁国家公園社頂自然公園拉拉山陽明山一帯は,法律で,昆虫採集は禁止されている。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド,ヒマラヤ,インドシナ半島,フィリピン,ボルネオ島,インドネシア,日本の中部地方以南に分布している。
 中国では,西蔵區,陳西省,山西省,河南省,雲南省,四川省,貴州省,湖南省,広東省,海南省,浙江省,江西省,福建省に分布している。海南省に分布しているものは,別亜種 A.puspa hermagoras で,それ以外は,別亜種 A.puspa gisca である。
【近似種】  他のルリシジミ類に似ているが,本種は,本種は,前翅裏面の亜外縁の大きな黒斑列の中で,上から2つ目の角度が変わること,上から4つ目が基部側にずれること,後翅裏面の中室外側の上から2つ目の角度が変わるこ,後翅裏面の前縁の中央にある斑紋が大きくなること,前翅裏面の亜外縁の大きな黒斑は5つであることで区別することができる。

シロモンルリシジミ 白紋琉灰蝶 (台湾産)   Celatoxia marginata (Niceville,1884)


写真数: 9枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 小型のシジミチョウである。♂は,渓流の水場に集まる習性があり,♀は各種の花を訪れる。生息地は極限され,個体数は少ない。
【雌  雄】 ♀は,翅表の外縁部に黒帯が発達し,翅形が丸みを帯びるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】  台湾の北部・中部の低・中・高標高(300m〜2800m)の常緑広葉樹林で見られる。
 ちなみに,北部貫公路の明池国家森林遊楽区や拉拉山一体,南部貫公路は法律で,昆虫採集は禁止されている。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド,ヒマラヤ,インドシナ半島,マレーシア,インドシナ,中国の西部・南部・東部に分布している。
 中国では,西蔵區,四川省,雲南省,貴州省,広西區,湖南省,広東省,海南省,福建省に分布している。
【近似種】  他のルリシジミ類に似ているが,本種は,前翅表面に白斑が発達すること,♂は前翅形が尖ること,前翅裏面の亜外縁の大きな黒斑列の中で,上から3つ目が外縁側にずれること,後翅裏面の亜外縁の黒点列の前縁に近い1つが大きくなること,後翅裏面の前縁の黒点は円形にならず,扁平になることで区別することができる。

ルリシジミ 琉灰蝶 (台湾産)   Celastrina argiolus caphis (Fruhstorfer,1922)


写真数: 4枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 日本産は,別亜種 ladonides である。小型のシジミチョウである。♂は,渓流の水場に集まる習性があり,♀は各種の花を訪れる。日本では,普通に見られるが,台湾では,超珍種の1つである。
【雌  雄】 ♀は,翅表の外縁部に黒帯が発達し,翅形が丸みを帯びるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 3月〜10月に,年数回発生している。
【生息地】 台湾の中部の低・中・高標高(300m〜2500m)の常緑広葉樹林で見られる。
【分  布】  種としては,台湾以外では,ヒマラヤ,インドシナ半島,インドネシア,ボルネオ,フィリピン,オーストラリア北部,中国の西部・南部・東部,日本に分布している。
 中国では,西蔵區,陳西省,山西省,河南省,雲南省,四川省,貴州省,広西區,湖南省,広東省,海南省,福建省,上海市に分布している。
【近似種】 他のルリシジミ類に似ているが,本種は後翅裏面の黒斑が全体的に小さいことで区別することができる。

スギタニルリシジミ 杉谷琉灰蝶 (台湾産)   Celastrina sugitanii shirozui Hsu, 1987   台湾亜種


写真数: 15枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 台湾産は,shirozui,日本産は,ainonica(北海道亜種),kyushuensis(九州亜種),sugitanii(本州・四国亜種) に分かれている。
 小型のシジミチョウである。♂は,渓流沿いの林道や砂地で吸水する習性がある。
【雌  雄】 ♀は,翅表の外縁部に黒帯が発達し,翅形が丸みを帯びるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 1月下旬〜5月上旬に,年1回発生している。
【生息地】  台湾の低・中・高標高(300m〜2500m)の常緑広葉樹林で見られる。
 分布域が狭く,なかなか撮影出来ない種の一つである。台湾では,中部山岳の南山溪,北部の福山村で確認できた。南部横貫公路でも確認された。ちなみに,南山溪福山村,南部横貫公路は,法律で,昆虫採集は禁止されている。
【分  布】  種としては,台湾以外では,中国の南西部・南部,朝鮮半島,日本(北海道本州・四国九州)に分布している。
 中国では,西蔵區,陳西省,山西省,河南省,雲南省,四川省,貴州省,湖南省,広東省,海南省,浙江省,江西省,福建省に分布している。
【近似種】  他のルリシジミ類に似ているが,本種は,前翅の裏面の亜外縁の4つの黒点は,下の2つが基部側に位置すること,後翅裏面の中室外側の斑紋が,2つと1つに分かれて出現すること,後翅裏面の亜外縁の斑紋が発達しないことで区別することができる。
 

ホリシャルリシジミ 細邊琉灰蝶 (台湾産)   Celastrina lavendularis himilcon (Fruhstorfer, 1909)    台湾亜種


写真数: 142枚


出現頻度
★★★☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 日本産と同じ亜種である。小型のシジミチョウである。樹上や樹間を速く飛び回ったり,地上で集団吸水することも多い。前後翅の裏面の黒斑は,斑紋異常になることが時々あるので,同定には注意が必要である。

前翅裏面の斑紋欠損
後翅裏面の斑紋異常発達

前後翅裏面の斑紋欠損

前翅裏面の斑紋欠損
後翅裏面の斑紋異常発達

後翅裏面の斑紋異常発達
【雌  雄】 ♀は,翅表の外縁部に黒帯が発達し,翅形が丸みを帯びるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】  台湾の低・中・高標高(〜3000m)の常緑広葉樹林,海岸林で見られる。
 墾丁国家公園社頂自然公園南投縣南山渓台東市知本渓投縣本部渓太平山鳩之澤拉拉山上巴陵新北市烏来区福山村新北市熊空南投縣仁愛郷ナールー湾桃園市林班口花蓮市碧緑慈恩で見られた。ちなみに,墾丁国家公園社頂自然公園拉拉山一帯は,法律で,昆虫採集は禁止されている。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド北部,ヒマラヤ,インドシナ半島,ボルネオ島,インドネシア,中国の南西部・南部に分布しており,日本の八重山諸島でも記録がある。
 中国では,西蔵區,陳西省,山西省,河南省,雲南省,四川省,貴州省,湖南省,広東省,海南省,浙江省,江西省,福建省に,別亜種 C.lavendularis limbata が分布している。
【近似種】  他のルリシジミ類に似ているが,本種は,後翅裏面の中室外側の黒斑が前縁部の黒斑に比べて小さく,タイワンルリシジミのように中室外縁の黒点が斜傾しないこと,前翅裏面の亜外縁の大きな黒斑は4つであることで区別することができる。

ヘリブトルリシジミ 寛邊琉灰蝶 (台湾産)    Callenya melaena shonen (Esaki,1932)   台湾亜種


写真数: 8枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 小型のシジミチョウである。。飛び方は,他のルリシジミ類に比べると緩やかで,各種の花を訪れ,♂は水辺に集まる習性がある。生息地は極限され,個体数は少ない。
【雌  雄】 ♀は,裏面の黒斑が発達しないので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】  台湾の北部を除く低・中標高(500m〜1500m)の常緑広葉樹林で見られる。
 南投縣魚池郷で撮影された。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インドシナ半島,中国の南部に分布している。
 中国では,海南省に分布している。
【近似種】  他のルリシジミ類に似ているが,本種は,後翅裏面の前縁部の黒斑が発達することで区別することができる。

アリサンルリシジミ 大紫琉灰蝶 (台湾産)    Celastrina oreas arisana (Matsumura, 1910   台湾亜種


写真数: 107枚


出現頻度
★★☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 やや小型のシジミチョウである。♂は湿地に集まるが,樹上や樹間を速く飛び回り,なかなか地上には降りてこないことも多い。
【雌  雄】 ♀は,翅表の外縁部に黒帯が発達し,翅形が丸みを帯びるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 3月〜11月に,年数回発生している。
【生息地】  台湾の北部を除く中・高標高(1000m〜3500m)の常緑広葉樹林,亜高山常緑林,針葉樹林周辺で見られる。
 台湾では,梨山晉元橋(標高1858m),阿里山塔塔加遊憩區,南投縣鳶峰(標高2764m),花蓮市碧緑で撮影された。ちなみに,梨山一帯,阿里山塔塔加遊憩區,南投縣鳶峰,中部往還公路一帯は,法律で,昆虫採集は禁止されている。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド北部,ヒマラヤ,インドシナ半島北部,中国の西部・北部,朝鮮半島北部に分布している。
 中国では,吉林省,遼寧省,河北省,山東省,河南省,江蘇省,安徽省,湖北省,浙江省,江西省,湖南省,福建省,広東省,広西區,雲南省,四川省,西蔵區,上海市に分布している。
【近似種】  他のルリシジミ類に似ているが,本種は,前翅・後翅裏面の黒斑が小さく,前翅亜外縁の黒斑は3〜4斑で小さく,4斑目はさらに小さいか出現しないことで区別することができる。

タッパンルリシジミ  (台湾産)   Udara dilecta dilecta (Moore, 1879)    名義タイプ亜種


写真数: 49枚


出現頻度
★★☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 日本産と同じ亜種である。小型のシジミチョウである。樹上や樹間を速く飛び回るが,♂は,地上で集団吸水することもある。
【雌  雄】 ♀は,翅表の外縁部に黒帯が発達し,翅形が丸みを帯びるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】  台湾の低・中・高標高(〜2500m)の常緑広葉樹林で見られる。
 台湾の中部山岳の本部溪南山渓南投縣翠峰阿里山の沼平(標高2274m),梨山晉元橋陽明山二子坪高雄市直瀬溪南投縣仁愛郷梅峰で見られた。ちなみに,翠峰梨山陽明山一帯は,法律で,昆虫採集は禁止されている。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド北部,ヒマラヤ,インドシナ半島,ボルネオ島,インドネシア,中国の南西部・南部に分布し,日本の九州から南西諸島でかけても記録が出ている。
 中国では,西蔵區,陳西省,山西省,河南省,雲南省,四川省,貴州省,湖南省,広東省,海南省,浙江省,江西省,福建省に,台湾や日本と同じ名義タイプ亜種が分布している。
【近似種】  他のルリシジミ類によく似ているが,本種は,前翅亜外縁の黒斑列は,きれいに並び,後翅裏面の黒斑は,大きさがほぼ同じであること,♂の前後翅表面の青白色斑の中央に白斑が出ることで区別することができる。
 

サツマシジミ  (台湾産)   Udara albocaerulea albocaerulea (Moore, 1879)     名義タイプ亜種


写真数: 18枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 日本産と同じ亜種である。小型のシジミチョウである。湿地で吸水したりし,各種の花によく集まる。
【雌  雄】 ♀は,翅表の外縁部に黒帯や裏面の黒点が発達するので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】  台湾の中部の低・中標高・高標高(200m〜2500m)の常緑広葉樹林で見られる。
 陽明山の二子坪で撮影することができた。太平山鳩之澤でも撮影された。
 北部貫公路,屏東縣霧台區,南部貫公路で撮影された。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド北部,ヒマラヤ,インドシナ半島,ボルネオ島,インドネシア,中国の南西部・南部,日本の中部地方以西に分布している。
 中国では,西蔵區,陳西省,山西省,河南省,雲南省,四川省,貴州省,湖南省,広東省,海南省,浙江省,江西省,福建省,上海市に,台湾や日本と同じ名義タイプ亜種が分布している。
【近似種】  他のルリシジミ類によく似ているが,本種は,後翅裏面の亜外縁の斑紋が鮮明になり,その内側には円弧状の斑紋がないことで区別することができる。

シロゴマダラシジミ 白雀斑灰蝶 (台湾産)   Phengaris daitozana (Wileman,1908)   台湾特産種


写真数: 11枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 大型のシジミチョウである。草原を低く活発に飛ぶ習性がある。
【雌  雄】 ♀は,翅表の外縁部に黒帯や裏面の黒点が発達し,特に後翅の外縁部の黒斑が発達するので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 6月下旬〜9月に,年1回発生している。
【生息地】 台湾の中部の中標高・高標高(1400m〜2500m)の常緑広葉樹林で見られる。
【分  布】 台湾以外には分布せず,台湾の特産種である。
【近似種】  ウスアオゴマダラシジミに似ているが,本種は,後翅裏面の亜外縁や基部近くに黒斑が発達しないので区別することができる。

ウスアオゴマダラシジミ 青雀斑灰蝶 (台湾産)   Phengaris atroguttata formosana (Matsumura, 1926)   台湾亜種


写真数: 54枚


出現頻度
★★☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 大型のシジミチョウである。草原を低く活発に飛ぶ習性があり,特定な場所の周辺にはかなりの個体数が見られた。
【雌  雄】 ♀は,翅表の外縁部に黒帯や裏面の黒点が発達するので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 5月〜9月に,年1回発生している。
【生息地】  台湾の中部の中標高・高標高(1200m〜2500m)の常緑広葉樹林で見られる。
 台湾の中部山岳の阿里山沼平(標高2274m),梨山晉元橋(標高1858m),花蓮市碧緑慈恩で見られた。ちなみに,阿里山梨山一帯は,法律で,昆虫採集は禁止されている。
【分  布】  種としては,台湾以外では,中国の南西部部に分布している。
 中国では,河南省,雲南省,四川省,貴州省に,名義タイプ亜種 P.atroguttata atroguttata が分布している。
【近似種】  シロゴマダラシジミに似ているが,本種は,後翅亜外縁や基部近くに黒斑が発達すること,後翅裏面の基部に黒点が2つあることで区別することができる。

クロマダラソテツシジミ 蘇鐵綺灰蝶 (台湾産)   Luthrodes pandava peripatria (Hsu, 1989)   台湾亜種


写真数: 36枚


出現頻度
★★☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】  クロマダラソテツシジミは,台湾にいるコウシュンルリシジミ Chilades 属 と同じ属に分類されていたが,最近の研究(2023年)では, Luthrodes 属に変更され,遺伝子解析によって,日本本土で見られる個体は,名義タイプ亜種で,八重山諸島に生息する個体は,台湾亜種であることが判明した。なお,台湾には,台湾亜種が分布するが,台湾の西部には,名義タイプ亜種が生息するようになったという報告がある。
 小型のシジミチョウである。ソテツの新芽に産卵し,その葉を食べる。発生地では,かなりの数の個体を観察できる。
 高温期型(後翅裏面の黒点が発達)と低温期型(後翅裏面の亜外縁の白斑が発達し,黒点は灰色)がある。
 冬期や秋期には,高温期型と低温期型の中間の斑紋を持つ個体(中温期型)も出現する。
 ちなみに,日本本土では,11月下旬から1月に寒冷期型が出現することがある。日本本土では,越冬できず,死滅するが,鹿児島県の南部の島では越冬でき,春になると北上し,拡散している。
【雌  雄】 ♂は,翅表に青藍色が現れ,♀は,翅表の基部側に藍色が現れ,裏面が黒褐色になるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】  台湾の低・中標高(〜1300m)の海岸林,都市緑地で見られる。
 台湾の南部の墾丁国家公園羅東清水溪苗栗縣三義,台南市東山區,台南市新化區,新北市瑞芳區南雅で見られた。しかし,墾丁国家公園では,ソテツの害虫として農薬散布され,見られなくなった。ちなみに,墾丁国家公園は,法律で,昆虫採集は禁止されている。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド,ヒマラヤ,インドシナ半島,フィリピン,マレーシア,ボルネオ島,インドネシア,韓国南部,中国の南西部・南部,日本の八重山諸島に分布し,日本の関東地方以南でも毎年,記録が出ている。
 中国では,広西區,広東省,海南省,福建省,上海市に分布しており,浙江省にも生息していると思われる。広東省,福建省,海南省に分布しているものは,台湾と同じ亜種で,広西區,上海市,韓国南部に分布しているものは,日本と同じ名義タイプ亜種である。
 ちなみに中国の上海市で発生している本種は,日本と同じで,7月〜11月にかけて発生を繰り返している。
【近似種】  よく似ているシジミ類は多いが,本種は,前翅表面の亜外縁の斑紋が後角付近の2個がややずれること,後翅裏面の前縁と基部付近の黒斑は5つで,その内3つが大きく鮮明になることで区別することができる。

コウシュンルリシジミ 綺灰蝶 (台湾産)   Chilades lajus koshuensis Matsumura,1919   台湾亜種

♂  低温期型
写真数: 64枚

♀  低温期型
出現頻度
★★☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 小型のシジミチョウである。荒れた岩地の周辺や草地など,限られた場所で見られ,あまり遠くへ飛ばず,その周辺のみで生息していた。
 高温期型低温期型があり,低温期型は,後翅裏面に黒褐色が発達する。

高温期型

低温期型
【雌  雄】 標本では,♀の翅表の外縁部には黒帯が発達するので,雌雄を区別することができるが,裏面だけの生態写真では,雌雄を区別することは難しい。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】  台湾の南部の低標高(〜500m)の海岸林で見られる。
 台湾の南部の墾丁国家公園社頂自然公園高雄市寿山,高雄市田寮區で見られた。台東市の沖の離島・蘭嶼でも確認できたが,非常に稀なようで,台湾蝴蝶図鑑(徐)では,蘭嶼の記録があるが,台湾蝴蝶大図鑑(林,蘇)では,蘭嶼には産しないことになっている。屏東縣恒春,屏東縣台南市でも撮影された。ちなみに,墾丁国家公園社頂自然公園は,法律で,昆虫採集は禁止されている。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド,ヒマラヤ,インドシナ半島,ボルネオ島,インドネシア,中国の南部,日本の八重山諸島に分布している。
 中国では,広西區,広東省,海南省,福建省に分布している。
【近似種】 なし

タイワンヒメシジミ 東方晶灰蝶 (台湾産)   Freyeria putli formosanus (Matsumura,1919)   台湾亜種


写真数: 74枚


出現頻度
☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】
 極小型のシジミチョウである。明るい背の低い草地に生息し,ヤマトシジミと混生していることが多い。
【雌  雄】 ♀は,後翅外縁の赤褐色斑が発達し,腹部の先端が尖るので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 周年,年数回発生している。
【生息地】  台湾の南部の低標高(〜800m)の海岸草地・荒地,河岸,都市緑地で見られるが,自然開発の影響を受け,非常に少なくなっている。
 高雄市内の公園で発生しているが,移植されたマメ科の植物に卵がついていて,偶産的に発生したものである。8月下旬には,多数の個体を確認することができた。同じ場所にヒメシルビアシジミ,ヤマトシジミが生息していた。
【分  布】  種としては,台湾以外では,インド,ヒマラヤ,インドシナ半島,フィリピン,ボルネオ島,インドネシア,ニューギニア,オーストラリア北部,中国の南部,日本の八重山諸島に分布している。
 中国では,広西區,広東省,海南省,福建省に分布している。
【近似種】 なし

コウトウシジミ K列波灰蝶    Nothodanis schaeffera schaeffera (Eschscholtz, 1821)     名義タイプ亜種

(裏面)
写真数: 1枚
(参考:マレーシア産)


出現頻度
☆☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】 小型のシジミチョウである。迷蝶である。森林の周辺や内部のやや暗い場所に生息している。
【雌  雄】 ♀は,翅形が丸くなり,翅表に白斑は現れるので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 2009年5月26日に記録されている。
【生息地】 蘭嶼で複数の個体が記録されている。
【分  布】 種としては,南ベトナム,マレー半島,ボルネオ,フィリピン,インドネシア,ソロモン,ニューギニアに分布しており,日本の石垣島でも記録がある。
【近似種】 なし

クロホシヒメシジミ 單點藍灰蝶    Famegana nisa (Wallace, 1866)

写真数: 1枚
(参考:タイ産)


出現頻度
☆☆☆☆☆
分布域 と 記録地点
【特  徴】  小型のシジミチョウである。迷蝶,偶産蝶である。明るい草原や荒れ地で見られ,地上近くを低く飛ぶ習性がある。
 本種の学名には,これまで Famegana alsulus (Herrich-Schaffer, 1869) が用いられていたが,國立臺灣師範大學の徐教授によって,2020年,クロホシヒメシジミ類の分類研究がなされ,近似種のいくつかがシノニムになり,いくつかあった学名も,クロホシヒメシジミ Famegana nisa (Wallace, 1866) となることが明らかにされた。この情報は,日本鱗翅学会の千葉秀幸先生より提供していただけた。ここに感謝の意を表する。
 (論文: https://www.eurekalert.org/pub_releases/2020-09/pp-oac090920.php , https://zookeys.pensoft.net/article/51921/ )
【雌  雄】 ♂は,青白色斑が亜外縁まで広がり,♀は,亜外縁の黒灰色の斑紋が発達するので,雌雄を区別することができる。
【生  態】 1912年8月5日,1932年10月30日に記録がある。
【生息地】 台東縣蘭嶼,彰化縣員林市で記録があるが,近年はない。
【分  布】 種としては,フィリピン,インドネシア,ニューギニア,オーストラリアの北部に分布し,タイ,ベトナム,中国,日本の西表島でも迷蝶,遇産蝶として記録がある。
【近似種】 ヒメシルビアシジミ,ホリイコシジミに似るが,本種は,後翅裏面の斑紋が鮮明でなく,後角部に大きな黒点があるので,区別することができる。




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